平成30年11月定例県議会【3. バス交通の確保維持改善】

「公共交通政策について」

3. バス交通の確保維持改善
県内の公共交通を構成しているバス・鉄道・タクシーは、いずれもが県民への移動手段の提供という点で重要な役割を果たしています。従って、これら交通機関への支援は、県民の移動手段の確保への支援という観点から、その妥当性の検討は行われるべきと考え、今回は、そのことに関しバス交通についてお伺いいたします。
言うまでもなくバス交通は、今日も公共交通における根幹的な交通機関の一つであります。しかし、以前は公営事業として運行されていたバス交通の多くは、民間事業者への移譲や民営化が図られ、現在、本県における公営バスは、宇部市営バスのみであります。このように、今日の時代におけるバス交通の大部分は民間事業者によって担われていますが、バス事業の経営は、年々厳しさを増しており、バス路線の多くは、運行経費から運賃収入額を引いた欠損額に対する公的補助により、どうにか維持されているというのが実情であります。
バス事業では、バスが運行する道路を路線と云い、その路線上をどういうルートで走行するか定めたものを運行系統といいまして、正確に言いますと、バス事業への補助は、路線に対してではなく運行系統の欠損に対してであります。
平成29年における本県の運行系統の総数は846で、補助による内訳は、国・県補助の系統が43、県・市補助の系統が156、単市補助の系統が340となっており、補助なしの自主運行の系統は307で、系統全体に占める割合は36%であります。尚、同年の本県の地方バス路線維持費への補助額の内訳は、車両購入費への補助を除いて国が2億5千万円、県が4億3千万円、市町が総計して10億2千万円であります。こうしたバス交通の現状を、私たちは、どう受けとめ、今後のバス交通への公的補助の在り方を、どういう考えに基づいて方向付けしていくべきなのでしょうか。私は、国土交通省が平成22年6月に発表した「交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方」に示されている「移動権の保障」という考え方に基づくのがいいと思っています。
そのことに関する記述を紹介しますと、次の通りです。

交通基本法の根幹に据えるべきは「移動権」だと思います。先ず、私たち
ひとりひとりが健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を
保障されるようにしていくことが、交通基本法の原点であるべきです。とり
わけ、お年寄りや体の不自由な方々にとって、移動権は極めて重要です。
どのような地域で暮らしていても、すべての人々にとってまちにでやすい
環境を整え、移動権を保障していくべきです。

こうした考え方に立てば、バス交通によってしか移動手段が確保されない地域の人々のために、公的補助によりバスの運行を維持していくことは、交通政策として当然の施策になります。
マイカーの利用が出来ない人たちの多くは、通学、通勤、通院、買い物等の日常生活における移動手段としてバス交通を利用していて重要な生活基盤になっています。また、観光面を含め交流人口の増加による地域活性化のインフラとして公共交通のネットワークは重要ですが、バス交通はその主要な担い手であります。
以上、バス交通について思うところを申し上げましたが、そのことを踏まえ、本県のバス交通について以下3点お伺いいたします。
第一点は、本県におけるバス交通についての認識と、今後のバス交通の確保・維持・改善に向けた取組みの基本的方針についてお伺いいたします。
第二点は、過疎地域におけるバス運行の確保についてであります。
過疎地ほど、バスの運行を必要としていると思われますが、乗車人数が、国・県・市の補助基準を満たさなくなったということで、それが廃止になる系統が、少しずつ増えています。本県の平成25年のバス運行系統総数は、911であったのが、平成29年には846となっており、55の系統においてバスの運行が廃止されています。
私は、移動権の保障という考え方から、過疎地等において移動手段がバスしかないという人たちがいる限り、曜日指定のバス運行の可能性なども検討して、可能な限りバス運行を確保維持していくようにすべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第三点は、交通ICカードの導入促進についてであります。利便性の高いバス交通ネットワークを形成しバリアフリー化していくことが、県民や観光等による来訪者のバス利用の増進につながるものと思われます。ついては、そのことに向けた施策の一環として、交通ICカードの導入普及を促進していくべきであると考えますが、このことにどう取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いいたします。