令和2年9月定例県議会【3.文化芸術活動の継続支援について】

3.文化芸術活動の継続支援について

本県の舞台イベント等の文化芸術活動を支えている照明、音響、道具、映像、舞台装飾などの技術を提供する事業者や、フリーランスなどの文化芸術関係者は、コロナの影響で仕事が激減し、その多くが事業継続に苦闘しています。

「人はパンのみに由りて生くるにあらず。」との言葉がありますが、音楽、演劇、美術等々の文化芸術は、私たちが生きていく上においての精神的糧として物質的なパンと共に不可欠のものであります。然るに、私の見るところ、この度のコロナ対策においては、文化芸術活動を支えている人たちに対する支援が、充分に考慮されていない感があります。そこで先ず、文化芸術活動への支援を考える上において、踏まえておくべき視点を紹介しておきたいと思います。

それは、本県由宇町出身で数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞された日本を代表する数学者であり、山口大学の学長もされた広中平祐先生が述べられたことです。先生は、「存在するものすべてを100とした場合、数値化してコンピューター処理できるものの割合は、50である。心の世界はコンピューター化できない。」との見方を、ある講演終了後の質問に答えて明言されました。この先生の答えは、世の中の在り方を考える上で大事な視点を提供しているのではないでしょうか。

世の中の全てが、コンピューター処理が出来るよう数値化できるわけではない。それができるのは、世の中の半分に過ぎない。こうした視点が、コロナの影響を受けて困難な状況に陥っている人たちへの支援においても必要だと思われます。言いたいのは、コロナの影響を数値的に示すことはできないが苦しい状況に陥っている人たちにも支援の手が行き届くようにすることを考えるべきではないかということです。

私が承知している範囲でそういう人たちが多いのは、文化芸術活動にフリーランス的な立場で係わり収入を得ている人たちです。そのひとりAさんは、イベント会場やお店などで電子ピアノの演奏をして収入を得ていましたが、コロナの関係で今年の2月から全く仕事がなくなり収入ゼロの日々が続きました。4月17日、安倍総理が記者会見で「フリーランスを含む個人事業者の皆さんには100万円を上限に、国として現金給付を行う」旨、表明されたのを聞いてAさんは、そのことに大きな期待を持ちました。そして、それが持続化給付金として給付されることを知り、申請しようとしましたが出来ませんでした。対前年収入減を証明する書類がないということで取り合ってもらえなかったからです。Aさんが言うには、このような事態は全く予想していなかったので、普段、収支に関する記帳や書類の保管などキチンとしていなかったとのことでしたし、また自分と同様の仕事をしている人たちは殆どそうだとのことでした。

私は、Aさんのようなケースは、音楽演奏で収入を得ていたという事実が確認できれば、そういう業種がコロナで収入が激減していることは明らかでありますので、減収を証明する書類がなくとも支援の給付金が交付されていいと考えるものです。

私は先に、コロナ対策において文化芸術活動を支えている人たちに対する支援が考慮されていない旨申し上げましたが、このことは、国や県の予算措置において明らかであります。観光業がコロナで大きな影響を受けていることはご案内の通りですが、県は6月の補正予算で、観光需要喚起の事業ということで宿泊料等の割引率50%のプレミアム券発行など17億3千万円措置しています。同様に影響を受けている飲食業に関しては、4月補正予算で飲食業の許可を受けている県下の事業者に、定額10万円を補助するなど総額14億5千万円の予算措置をしています。一方、文化芸術関係の事業活動も大きな影響を受けていますが、このことへの支援は、6月補正予算で、文化イベント開催に対して10万円を上限とする経費補助が、総額で400万円措置されているのみであります。同様にコロナの影響を受けておりながら観光関係、飲食業関係と比べて文化芸術関係に関する支援がなんと少ないことか。また、国においては、文化庁の文化芸術活動の継続支援事業というのがありますが、経済産業省が示す企業支援と比べてなんと慎ましやかなことか、との感を持ちます。

こうした現状のまま推移すれば、本県の文化芸術活動を支えている事業者や人材を失うことになるのではないかと危惧します。それは、本県が魅力のない県になることを意味し、回避しなければなりません。そのためには、コロナが収束し、普通の日常が回復するまでの間、持ちこたえることが出来るよう支援が必要です。

そこでお尋ねです。本県の文化芸術活動を支えている事業者やフリーランスの多くが、コロナの影響で仕事が激減し、事業や活動の継続が極めて苦しい状況に陥っています。ついては、観光や飲食業等と同様に、文化芸術活動を支えている事業者やフリーランスに対しても充分な支援を行い、その事業や活動の継続を図るべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)