令和4年6月定例県議会 (1)基本方針について

1.県政と大学の連携について

(1)基本方針について

県政における政策の形成と推進において、大学との連携を一層進めるべきとの観点から一般質問を行います。
先ず、県政と大学の連携を一層進めるべきと考える理由について、私なりの所見を二つ申し上げたいと思います。
その1は、時代の方向です。これから時代は、どういう方向に向かって進んでいくのか。この問いに対し我が国の科学技術政策は、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会未来像としてSociety5.0を提示しています。Society5.0は、平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。人間社会が、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、そして情報社会(Society4.0)と推移してきたとの時代認識に立ち、今日の情報社会(Society4.0)に続く新たな社会として想定されているのが、Society5.0であります。
第5期科学技術基本計画は、Society5.0について次のように記しています。

ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させる取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に進化させつつ「Society5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。

ここに記されているサイバー空間とフィジカル空間(現実世界)の融合とは、もののインターネットといわれるIoTを通してサイバー空間に蓄積された現実世界の膨大な情報ビッグデータが、AIによって解析され現実世界の課題解決の最適解が見出されてサイバー空間からフィジカル空間(現実世界)にフィードバックされ現実世界の課題解決が図られていくという等の関係が深まっていくことを意味していると思われます。

Society5.0において実現される超スマート社会については、次のように記されています。

必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会

こうした超スマート社会の実現に向かうSociety5.0は、情報社会の次なる新たな社会との位置づけですが、Society5.0を支える基盤技術がデジタル技術であることからすれば、Society5.0も広い意味での情報社会に包含される社会と見做すのが、私には正確な認識だと思われます。情報社会の出現は、世の中のあらゆる情報を0と1に数値化してデジタル情報に転換することを可能にした情報の理論の確立と、そうしたデジタル情報はコンピューター処理が可能でその技術が発達し、情報通信がアナログからデジタルへと転換が図られたことにより招来されたものでありまして、その情報社会が高度に進化したのがSociety5.0であると見做すのが、私は妥当な認識であると考えます。
そうした認識は、情報社会についての理解を深めれば当然共有されるものであるにもかかわらず、我が国の科学技術政策においてSociety5.0が、情報社会に続く新たな社会として掲げられたのは、AIやIoT等の活用により人間中心の視点からより高度にシステム化された情報社会、即ち超スマート社会が展望されることになったことから、その実現に向けて国の力を結集する国づくりの目標として、第二期情報社会というより新たな望ましい社会の到来をイメージさせるSociety5.0という表現になったものと推察しております。
令和3年3月に閣議決定された第6期科学技術・イノベーション基本計画も、Society5.0の実現を計画の主軸に位置付け、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会、一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」として提示しています。
こうしたSociety5.0に向かう国づくりの方向は、当然に地域づくりの方向でもありまして、これからの地域政策は、その方向に向かって人間中心の視点から高度な情報社会の在り方を構想し、具体化する知的総合力が求められます。このことが、県政と大学の連携を一層進めるべきだと考える理由その1であります。
次に、理由その2は、大学の役割です。平成17年に中央教育審議会は、「我が国の高等教育の将来像」について答申し、「大学は教育と研究を本来の使命としているが、社会貢献(地域社会・経済社会・国際社会等、広い意味での社会全体の発展への寄与)の役割を、言わば大学の『第三の使命』としてとらえていくべき時代になっている。」との見解を示しました。この答申を踏まえ、翌平成18年の教育基本法の改正において「社会貢献」が大学の使命であることが明文化されました。以来、教育や研究それ自体が長期的に見れば社会貢献活動であると言えますが、より直接的な社会貢献の役割を大学は求められるようになりました。更に、平成24年に文部科学省は、「大学改革実行プラン」を策定し、地域再生の核となる大学、生涯学習の拠点となる大学、社会の知的基盤としての役割を果たす大学のCOC(Center of Community)機能の強化を大学改革の方向性の一つとして示し、地域における大学の役割を明確にしました。
全国の大学は、こうした時代の要請に応えて地域貢献を、大学の在り方の主要な柱の一つに位置付けることになります。本県の国立大学法人山口大学は、大学創基200周年を迎えた2015年に「明日の山口大学ビジョン」を策定し、「地域連携」をそのビジョンの柱の一つに掲げました。そして、実際その役割を担うところとして「地域未来創生センター」を、創設しました。
山口県立大学は、教育基本理念の一つに「地域社会との共生」を掲げ、その理念を実現するための施設として地域共生センターを設置しています。また、今年の春公立大学として新たにスタートした周南公立大学は、「地域に根差し、地域の問題を地域とともに解決し、地域に愛され、地域に信頼され、『地域に輝く大学』となる。」ことを、大学が目指す姿ビジョンとして示し、「地域振興への貢献」の窓口として地域共創センターを開設しています。
このように今日、大学は地域との連携・貢献を自らの役割として位置づけ、地域課題の解決に、大学が有する知見や機能を役立て生かしていこうとしています。こうした大学の姿勢を、県政はしっかり受けとめるべきだと考えます。
そして、執行力を持つ県と知見を有する大学が連携を一層進めることにより、県政における地域課題解決の総合力を、高め強化していくことを図っていくべきではないでしょうか。そうすることにより、将来に向けてよりよい県づくりが進んでいくことを、県民は県と大学に期待していると思っています。
以上、県政と大学の連携について思うところを申し上げましたが、このことにつき、先ず県のお考えと基本方針を、お伺いいたします。

(知事答弁)