平成28年9月定例県議会【公有水面埋立免許の延長について】

お尋ねの五は、公有水面埋め立て免許の延長についてであります。
県知事は、本年8月3日付で中国電力が申請していた上関原発建設計画に係る公有水面埋立免許の延長を許可されました。私は、この延長許可判断に関して問題と思うところを、指摘し、ご所見をお伺いしたいと思います。
その一は、埋立を続行する理由とされた土地需要についてであります。
二井元知事の埋立免許延長申請についての法的整理が、山本知事そして村岡知事に、二井元知事が意図した通り引き継がれてきたかどうかは、議論の分かれるところですが、「埋め立ての前提となる土地利用計画が不透明であれば、公有水面埋立法上の要件である正当な事由がなく、埋立免許の延長を認めることはできない。」とする法的整理は、議会答弁でも明らかなように引き継がれています。この法的整理では、埋め立ての前提となる土地利用計画が不透明であれば、許可できないとしている訳ですが、この度の許可判断では、土地需要があるので許可するとしています。
しかし、土地需要があっても、土地利用計画が具体的に確定していないで不透明という場合もあることから、土地需要があることを以って許可するとした判断は、これまでの議会答弁の域を超えており、その変更であります。そこで、どういう理由で、埋立の前提を、土地利用計画が確定していることから、土地需要があることに変更したのか、お伺いいたします。
その二は、延長許可判断の根拠とされた国の見解についてであります。
免許延長の許可に当たって公表された資料によれば、「上関原発に係る重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、事情の変化がない限り、解除することは考えていない。」との国に見解を得たことが根拠で、公有水面埋立免許の延長を許可したとの説明があります。
この説明については、二点の疑問があります。
第一点は、国の見解を含めての中国電力の回答は、去年と今年と基本的に変わっていないことであります。それなのに、なぜ今年は許可の判断になったのか、ということであります。資料に記されている中国電力の回答は、昨年5月の中国電力の回答の中で示されている内容と同趣旨であります。違うのは、中国電力の照会に対する資源エネルギー庁の電力基盤整備課長名による文書回答の言及が、昨年は重要電源開発地点の制度についてでありましたが、今年は上関原発に係るその指定の有効性についてのものであったということであります。
そこでお尋ねです。この度、県が許可判断をしたのは、上関原発に関して重要電源開発地点の指定が有効であり、解除を考えていないとの見解を、国が文書回答において示したからなのか、お伺いいたします。
第二点は、重要電源開発地点の指定が有効であることが確認されれば、それで国のエネルギー政策における位置づけが確定していると言えるのか、ということであります。
「原発依存度は、可能な限り低減させる」、「原発の新増設は、想定していない。」との政府方針がある限り、たとえ重要電源開発地点の指定が有効であり、解除は考えていないとの資源エネルギー庁担当課長の見解が示されたとしても、それは、重要電源開発地点指定制度において有効なのであって、そのことをもって、国のエネルギー政策に位置付けられているとするのは、一方的な無理筋の解釈であります。
加えて指摘しておきたいことがあります。それは、原発において重要電源開発地点の指定が、福島原発事故が発生した当時と今日と、何ら変わっていないことについてであります。このことは、福島原発の過酷事故の体験を経て、「原発依存度を可能な限り低減させる」という方向へ国のエネルギー政策が転換されたにもかかわらず、その政策転換が、重要電源開発地点指定制度における原子力発電所の指定の見直しにまで、未だ及んでいないことを意味しています。従って、指定に変更がないことをもって、原発の新増設計画の位置づけに変更がないと主張することは、政府の不作為によって見直しがなされていない状況を根拠にしている訳であって、到底受け入れられるものではありません。冷静に、エネルギー政策の全体状況を見れば、原発の新増設について政府の方針は、定まっていないと見るのが、衆目が一致する正確な現状認識であります。
そこでお尋ねです。重要電源開発地点の指定が有効と確認されたことをもって、上関原発は、国のエネルギー政策に位置付けられているとみなすことはできないと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
最後に、埋立免許の延長許可処分時の知事発言についてお尋ねいたします。県が、公有水面埋立免許の延長許可を公表した際、村岡知事は、ぶら下がりのマスコミ取材に応じ、「不許可は違法な処分。法的には許可せざるを得ない。」と発言しておられます。
私は、今回の質問において、観点、立場、立ち位置が異なると、正しいとされる理論も異なったものになることを申上げました。この度の、埋立免許延長の件においても、異なる立場から村岡知事とは反対に、「許可は違法な処分。法的には不許可にせざるを得ない。」との判断もある得ることを、先ず指摘しておきたいと思います。
この立場の違いは、福島原発事故後のエネルギー政策に関する状況変化を考慮に入れる立場と、それを考慮に含めない立場との違いであります。ハッキリ言って、公表された説明資料を見る限り、県の今回の判断は、後者の立場からのものと言わざるを得ません。説明資料にある「国の見解は、重要電源開発地点に指定された上関原発の国のエネルギー政策上の位置づけが当初免許時と変わることなく存続し、今後も存続する見通しであることを示す具体的な根拠となるものである。」との記述は、そのことを如実に物語っています。
一方、前者の立場からすれば、「政府の方針は、現時点において、原発の新増設は想定していないので上関原発の位置づけは不透明であり、新たな原発の規制基準による審査も受けていないので、埋立の前提となる土地利用計画も確定していないことから、免許の延長を許可する上での法律上の要件である正当な事由が有るとは認められず、不許可にする。」との判断も充分に成り立つのであります。こうした判断に基づく不許可処分が、法律上違反になるとは全く思えません。
公有水面埋立法に基づく免許権は、法定受託事務として知事が行使することから、同法を所管する国土交通省の有権解釈を参考にすることは当然ですが、地方分権改革により、国と地方の関係が同等となった今日、個々の事案にどう対処するかは、原則的に知事に委ねられているものと考えられます。
そこでお尋ねです。この度の公有水面埋立免許延長許可の判断は、福島原発の過酷事故の体験を経て、その後、我が国のエネルギー政策が変わったことへの考慮が欠けているように思いますが、ご所見をお伺いいたします。
(再質問―要望)

今回の質問は、埋立免許延長許可の撤回を求めてのものではありません。今回の許可処分は、村岡知事としては熟慮を重ねられての結果であろうと見ております。ただ、納得し難い疑問点、問題点があることも事実であります。今回の質問では、そうした点を率直に指摘したものでして、村岡知事には、真摯に受けとめていただきたいと望んでおります。
公有水面埋立免許の延長問題は、今回の処分で終わりではなく、延長許可期間が期限を迎える3年後に再燃することが予想されます。
そういう事態になった時点においても、「原発の新増設は、想定していない。」との国のエネルギー政策の方針に変わりがない時は、さらに埋立免許延長の申請があったとしても不許可処分にし、「原発依存度を、可能な限り低減させる。」との方向において上関原発問題を解決するため、村岡知事が政治的リーダーシップを発揮されることを要望して、今回の質問を終わります。

2016年11月28日