平成29年6月定例県議会【2.多目的ダムの運用変更】

その1は、多目的ダムの運用変更についてであります。

多目的ダムは、治水と利水の二つの目的のために整備されたダムです。治水の目的は、洪水予防が主ですが、利水の目的は、工業用水、水道用水、農業用の灌漑用水の供給及び水力発電などがあります。ところで、治水と利水は、それぞれがダムに求めることが相反しています。治水のためには、大雨や集中豪雨時に、雨水をダムにため込む容量、これを治水容量あるいは洪水調節容量と申しますが、これが大きい程いい訳で、そのためにはダムの水位を下げて、空き容量を大きくしておくことが求められます。一方、利水のためには、ダムには多くの水があった方が望ましい訳で、ダムの水位は出来るだけ高く保って、ダムの空き容量を少なくすることが求められます。

多目的ダムは、この治水、利水の相反する双方の求めを共に満たすために、治水容量と利水容量を合わせた規模のダムとして整備することが求められます。この場合ダムの水位は、ダムの治水容量及び利水容量が確保される水位に設定されることになります。従って、多目的ダムの場合、通常の水位は、水を実際ためることができる満水時の最高水位よりも、治水容量分ほど低く設定されています。この水位を常時満水位と言っていまして、この水位の時の水量が、ダムの利水容量であります。

また、ダム建設地の地形に係る制約等から年間を通して治水容量と利水容量の双方を満たす規模のダム整備が困難な場合、梅雨や台風などで大量の雨が降ることが予想される時期、即ち6月半ばから9月末頃までの洪水期の期間は、治水容量の確保を優先して、常時満水位より低く水位を設定し制限する、このことを制限水位と申しますが、その制限水位を設けることで治水、利水双方の目的を果たしている多目的ダムもあります。

このように多目的ダムでは、年間を通して、あるいは洪水期の数か月余、洪水予防の目的で治水容量が確保されていますが、その治水容量は、確率的に数十年に一度の大雨に対応できるマックスの空き容量であります。

こうした多目的ダムの水位の運用は、今日の発達した気象予報を活用することで、治水機能をしっかり確保しつつ、利水の機能を向上させる方向に改めることができるというのが、竹村氏の見解であります。

このことを水力発電で見てみますと、水力発電は、一般的に水量が多いほど発電量が増え、また同じ水量の場合、水位が高いほど電力は大きくなります。要するに、水を多く貯めれば水位も高くなり、より多くの発電が可能になるのであります。然るに現状は、数十年に一度の大雨に対応する治水容量を、年間を通して、あるいは洪水期の数か月余、固定的に確保する水位設定になっていまして、その分ダムが有する発電能力が、減じられる結果となっております。

大雨が予測される時、治水容量を確保して洪水の予防を図ることは、多目的ダムの最優先の役割であることは、論をまたないところであります。ただ、気象予報が発達した今日、年間を通して、あるいは数か月余、固定的に治水容量としてマックスの空き容量を確保しておく必要があるのかは、見直しの余地があるのではないでしょうか。このことは、洪水期とされる6月半ばから9月までの期間の中で、梅雨明け以降は、渇水期となり工業用水や上水等の確保に苦労して、度々節水を求める事態になる地域への対応という点からも考慮されていいと思われます。

現在、国では「既存ダムを有効活用するダム再生の取組をより一層推進していく」ため、「ダム再生ビジョン」の策定を進めており、先月5月17日に開催された第3回検討会では、「ダム再生ビジョン」の案が示されております。

それによりますと、「水力発電の積極的導入」として、「発電機能を低下させることなく治水機能を向上させる手法、治水機能を低下させることなく発電機能を向上させる手法、治水と発電の双方の能力を向上させる手法の検討に着手する。」「例えば、洪水後期に通常よりも放流量を減量してダムの貯留を続け発電に利用するなど、洪水調節容量の一部を活用するための操作ルール化に向けた検討を今年度中に実施する。」と明記されています。

そこでお尋ねです。竹村氏の指摘や国の「ダム再生ビジョン」策定への取り組みなどを踏まえ、本県の多目的ダムにおける水力発電を含む利水機能の向上を図るため、水位設定に係るダム操作規則の見直しなど運用変更の検討に着手すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。