平成30年6月定例県議会【4.高齢者のソーシャル・ビジネスへの取組支援について】

「高齢者が輝く地域づくりの推進について」
(4)高齢者のソーシャル・ビジネスへの取組支援について

私が、最近その考え方に共感している一人に、2006年にノーベル平和賞を受賞したバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏がいます。彼は、バングラデシュの貧困層の経済的自立を支援する目的で1983年に「グラミン銀行」を設立し、マイクロクレジットという無担保・少額融資の仕組みを確立して700万人以上の人々の経済的自立を果たし、この制度は世界60か国以上に広がっています。また、ユヌス氏はソーシャル・ビジネスの提唱者で、大きくは世界の貧困、飢餓、病気、気候変動等の人類的課題から、ローカルの様々な地域的課題までを、利己心ではなく無私の心に基づくビジネス的手法で解決する活動の世界的広がりを推進しています。
私が、ユヌス氏を知ったのは、今年3月28日NHKの夜9時からのニュース番組「ニュースウォッチ」で、「シニア世代のみなさんの背中を押してくれるかもしれません。」ということで、ユヌス氏が紹介されたのを、たまたま見たからです。
ここでムハマド・ユヌス氏は、「人間は決して引退しない。高齢者ではなく、人生の第二段階にいるというべきだ。人生の第二段階では家族を養うために心配をする必要がない。だから人生の第二段階こそ、最も自由で創造的な人生なのだ。自分ではなく、世界のために何かをすべきで、他の人のために生きることができる時期なのだ。」と語り、「若者とシニア世代がお互いに刺激しあい、パートナーとして共に働けば、高齢者が社会から無視され、孤立するというストレスからも解放される。」と訴えていました。
私は、「本当に、そうだ。」と思い、その後ユヌス氏の最新刊の著書「3つのゼロの世界」を買い求め、一層彼の考えへの共感を深めています。3つのゼロは、貧困・失業・CO2排出の3つをゼロにするという意味で、それを実現するための新しい経済秩序を、彼はこの書で説いていますが、失業ゼロについて述べているところで、「仕事は探すものではない。仕事は創るものだ。人は皆、起業家になれる。」と強調しています。
こうしたユヌス氏の考えは、高齢者が輝く地域づくりを推進する上において、ベースになるものではないでしょうか。ことに、高齢者が人生の第二段階をソーシャル・ビジネスの担い手として、自由に創造的にそれまでの人生で培った能力を生かして地域課題の解決に貢献していくことは、若い世代も歓迎し、地域社会全体の活性化にもつながると思われます。
ユヌス氏によれば、ソーシャル・ビジネスは、人類や地域社会への恩恵の最大化を目指し利益の配当を行わないという点で、利益の最大化を目指し利益の配当を行う通常のビジネスとは違います。また、事業活動は、通常のビジネスと同様に行いますが、公的団体の補助や税制上の特段の減免措置等を求めないという点で有償ボランティアとも異なります。ソーシャル・ビジネスが、課題解決に収益を生み出すように設計されたビジネス的手法で取り組むのは、事業の持続性を確保するためであり、そのためには経済的自立が不可欠だからです。ソーシャル・ビジネスの事業で生み出された収益は、人件費を含む必要な費用の支払いに充てられ、残った利益は、さらに事業目的に再投資されます。
以上申し上げましたことを踏まえ、お尋ねいたします。高齢者が、ソーシャル・ビジネスの担い手になって、地域社会の課題解決に貢献するという取組を、様々な形で支援し、そのための環境を整えていく施策を推進すべきと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。