令和2年2月定例県議会【1.(1)行財政構造改革の総括と今後の見通し】

(1)現状の総括と今後の見通し

 

平成29年度から取組みが開始された行財政構造改革は、本県の財政が恒常的に歳出が歳入水準を上回る硬直した構造になっているのを改めて、収支均衡した持続可能な財政構造への転換を図ろうとするものであります。計画期間は、平成29年度含めての5年間で令和3年度までです。当初、この改革の取組みを行わなかった場合見込まれる財源不足額は、総額で1350億円もの巨額にのぼると推計されています。

令和2年度当初予算案の概要に示されている行財政構造改革の見通しを見ますと、確実に改革の取組みは効果を上げており、令和4年度からは臨時的な財源確保対策に依存することなく収支均衡した財政運営が実現するようです。

つきましては、行財政構造改革は現在進行中ですが、現状の総括と今後の見通しについてお伺いいたします。

令和2年2月定例県議会【1.(2)収支均衡の構造化】

(2)収支均衡の構造化

次に、収支均衡の構造化についてです。

私は、これまで弘中副知事を統括本部長として推進されてきた行財政構造改革の取組みを評価するものですが、この改革を一時的な財源確保対策に終わらせることなく、収支均衡した財政運営を安定的に持続可能にする構造化を実現していくことが大切です。そのためには、巨額の財源不足が毎年生じることになった背景、理由の分析を、定性的に一般論、総論で済ませるのではなく、定量的に具体論、各論で実情、実態に即して行う必要があります。

私は、行財政構造改革について質問するのは平成29年11月県議会に続いて2回目ですが、前回、質問をしたときの問題意識は、「小泉内閣時の三位一体の改革による地方交付税の減額やリーマンショックに起因する県税収入の減といった事由がないのに、なぜ巨額の財源不足が生ずるのか。」ということでした。そして、今回質問を行うにあたって持っている問題意識は、「我が国では、地方自治体が標準的な行政サービスを行うための財源は、地方交付税制度によって保障されているのに、なぜ山口県は巨額の財源不足が生ずるのか。」ということであります。

そうした問題意識からお尋ねいたします。今回の行財政構造改革を、一時的な財源確保対策に終わらせることなく、恒常的な収支均衡の財政構造を確立する改革にしていくためには、本県の行財政の在り方及び行政サービスが標準的な水準に照らして妥当なのかという観点から、定量的に、そして個別、具体的に分析し点検する必要があるのではないかと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和2年2月定例県議会【1.(3)総人件費の縮減】

(3)総人件費の縮減

ただ今、標準的行政サービスという観点からの分析、点検の必要性について伺いましたが、この度の行財政構造改革の取組みで、そのことが定量的に示されているのは公共投資等の適正化についてであります。これは、本県の公共事業費を国予算等の伸び率から10%引き下げようとするものですが、本県の普通建設事業費が全国標準に比して10%程高いとの分析を踏まえて歳出構造改革の柱の一つに位置付けられました。その効果額は、計画期間の5年間で44億円で大きくはありませんが、そうしたことの積み重ねがこの改革においては大事であります。

この度の行財政構造改革は、臨時的な財源確保対策を別とすれば、歳出構造改革がそのほとんどであります。その歳出構造改革で最も効果額が大きいのは、公債費の平準化です。これは、これまで県債の償還期間が最長20年であったのを30年に改めるもので、その効果額は、計画期間の5年間で541億円と見積もられています。そして、これに次いで効果額が大きいのが総人件費の縮減で、その効果額は241億円と見積もられています。この総人件費の縮減ということの内容は、657人の定員削減とされていますが、このことに関しても標準的な水準に照らして本県の職員数及び給与水準が妥当なのかを定量的に示す必要があるのではないでしょうか。

そこでお尋ねです。本県の職員数及び給与水準の現状は、標準的な水準に照らしてどうなのかご所見をお伺いいたします。また、この度の行財政構造改革における総人件費縮減の取組みは、県の職員数及び給与水準を標準的なものにする取組みと見なしていいのかお伺いいたします。更に、総人件費の縮減は、計画期間中の取組みを通して構造化され完了する見通しなのか、併せお伺いいたします。

令和2年2月定例県議会【1.(4)公の施設の見直しについて】

(4)公の施設の見直しについて

ア.基本的方針について

行財政構造改革の一環である「公の施設の見直し」では、平成30年2月にその基本方針が示されました。①地元の利用割合が高い施設は、市町への移管を基本とし、移管できないものは廃止。②利用が低迷している施設や県民ニーズに合致していない施設は、廃止を基本とする。ただし、希望があれば市町への移管。③地域振興の観点から、市町へ移管した方が効果的な活用が図られる施設については、市町へ移管を打診。④その他、すべての施設について、今後の利用見込みや施設の老朽化等の状況も踏まえ、複数施設の統合や運営手法の抜本的な見直しを実施の4方針であります。

これら4方針のうち、③ ④については異論はないと思いますが、① ②については、見落とされている重要な観点があるのではないかと思っています。①の場合は、県内市町の市民、町民は、山口県民であるという観点です。そういう観点からすれば、特定の市町に地元利用の割合が高い県施設があってもいいのではないでしょうか。

②の場合は、地域戦略の観点です。その観点から存在意義が失われて利用が低迷している施設の廃止は止むを得ないでしょう。ただ、地域戦略の観点から存在意義が明確な施設は、利用状況や県民ニーズ以上に、地域発展のためにその施設をどう活用し、生かすかが考慮されるべきと考えます。

公の施設の見直しの基本方針については、以上申し上げましたような考えもあることに留意して、今後の検討や協議を行っていただくよう要望いたします。

イ.秋吉台芸術村について

秋吉台芸術村、正式には秋吉台国際芸術村ですが、この施設は、本県が文化芸術の分野で、特に現代音楽で世界の最高水準、世界の最先端と係わることを可能にする施設です。これを、本県の地域戦略に生かさない手はありません。秋吉台芸術村は、これを金の卵を産む鳥にしていくことを、本県の地域戦略の中に文化政策として位置づけるべきだと考えます。

1998年(平成10年)の夏、秋吉台国際芸術村のオープニングイベントで20世紀不朽の名作オペラと位置づけられている「プロメテオ」が上演されました。「プロメテオ」は、イタリアが生んだ現代音楽の巨匠ルイジ・ノーノの集大成的作品で、独唱、合唱、管弦楽とライブ・エレクトロニクスを駆使し、極めて複雑な音響的、時間的構造を持つことから音の反響の仕方まで厳密に計算して作曲されています。

このオペラ「プロメテオ」を、作曲したノーノがイメージしているように表現できる音楽ホールは、世界的にも稀ですが、秋吉台芸術村のホールはそのひとつです。秋吉台芸術村を設計した磯崎新氏は、ホールにおいてはこのノーノの「プロメテオ」の上演を念頭に設計を構想し、それがうまくいったことを、ここでの上演で確認しています。

古典的なクラシック音楽と比べて現代音楽は、愛好者は少ないかもしれませんが、現代音楽を通して今日の時代だからこそ可能な新しい領域の音楽創造に係わることは意義ある貢献であり、そういう施設が在ることは、本県の評価を国内外において高め、そのことは様々な面でプラスの影響をもたらすものと思われます。勿論、秋吉台芸術村は、現代音楽だけではなくあらゆるジャンルの音楽全般、また美術、ダンス、演劇など幅広い芸術文化活動に対応できる施設であることは言うまでもありません。

また、秋吉台芸術村は、アーティスト・イン・レジデンス(滞在型創作活動)ができる施設として世界的に知られ評価されています。私が、1月にこの施設を視察した時、ドイツ在住の日本人アーティストで、芸術村のアーティスト・イン・レジデンス事業の支援を受けて、ここに滞在し創作活動に取り組んでいる方に会いましたが、彼は、秋吉台芸術村は、世界のアーティストの間では有名ですと語っていました。

このように秋吉台芸術村は、世界的水準の芸術文化施設ですが、この施設を最も利用しているのは、県内の小中高校生、大学生でして、低料金で宿泊もできる施設もあることから、吹奏楽などの合宿練習の場としても大いに活用されています。こうした施設は、県外の高校や大学にとっても魅力的なようで、利用の申し込みが県外の高校、大学からも数多くあるようです。秋吉台芸術村は、芸術を志す若い世代を山口県に引き寄せる、そういう魅力を発しているようです。

さらに、秋吉台芸術村は、その建物そのものがみごとな造形作品であり、背景の山々とも見事に調和していてワールドクラスの文化施設として遜色ない空間を形成しています。本県では、元乃隅神社が、その魅力的な風景がSNSで拡散して多くの人々が訪れる所となりましたが、秋吉台芸術村は、それ以上に世界各地から多くの人々が訪れる地になる可能性を秘めているように私には思われます。

秋吉台芸術村について思うところを申し述べてまいりましたが、この施設が公の施設の見直しにおいて廃止になるのではないかとの懸念が広がっています。発端は、昨年8月23日に読売新聞が、秋吉台芸術村・秋吉台青少年自然の家の県2施設は廃止の方針との記事を掲載したことです。その翌月に開催された行財政改革統括本部会議では、公の施設の見直しについて中間報告が行われ、芸術村は、県施設として存置する192施設には含まれず、関係市町とさらに協議するものとされた12施設に分類されました。このことから、廃止への懸念は一層強まり、県民の間で存続を求める署名活動が始まりまして年明けの1月に1万8000名を超える多くの署名が県に提出されました。また、2月には山口大学の先生方20名の有志による存続を求める要望書が提出されています。知事は、記者会見においては、「廃止と決めたわけじゃない。」と述べられる一方、年間1億6000万円もの財源を投入し続けることの財政上の困難さも語っておられます。

芸術村は創立当初からすると、利用率は今日増加しており、幅広く県民の様々な文化芸術活動に使われていることから県民ニーズにも合致していると言えます。また、地元美祢市だけではなく県内各地からも多くの利用があり、公の施設の見直しの基本方針が想定している廃止の施設には該当しないと思われます。さすれば、唯一考えるべき課題は、知事が述べていることで、秋吉台芸術村の維持管理や運営事業に、1億6000万円もの県費を毎年投入し続けることが妥当かどうかということです。

私は、この課題解決の方向は、はっきりしていると思います。それは、先にも申し上げたことですが、秋吉台芸術村を、金の卵を産む鳥に相当する施設にしていくことです。その可能性を追求して必要とあらば現在以上に財源と人を投入することもありと考えます。そのためには、改めて秋吉台芸術村を本県の地域戦略の中において文化政策を担う拠点施設として位置づける必要があります。地域戦略としての文化政策は、「選択と集中、そして重点化」でありまして、その位置づけが明確であれば、1億6000万円の県費投入も,生きることになると思われます。

ただ私は、秋吉台芸術村が、県の施設で在り続けるかどうかは本質的な問題ではないと考えています。大事なことは、67億円もの巨費を投じ「世界に広がる文化県やまぐちの創造」という大きな旗印のもと建設された秋吉台芸術村が、どのような形であれその可能性を最大限に生かし、活用され、輝いていくようにしていくことであります。従って、秋吉台芸術村において廃止という選択肢はないと考えます。それは、本県の地域戦略において文化政策の有力な武器を放棄するに等しいからです。

以上申し上げてきましたことを踏まえ、お尋ねいたします。県の公の施設の見直しにおいて廃止が懸念されている秋吉台国際芸術村は、廃止ではなく存続し、この施設が有する可能性が最大限発揮されるよう事業運営を図っていくべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

令和2年2月定例県議会【2.(1)地方公会計の意義と活用について】

(1)地方公会計の意義と活用について

地方公共団体の会計制度は、これまで予算の適正・確実な執行を図るという観点から、単式簿記による現金の収支に着目した現金主義会計が採用されてきました。ところが単式簿記では、発生主義の複式簿記を採用する企業会計と比べて、過去から積み上げた資産や負債などの状況を把握できないこと、また減価償却や引当金といった会計手続きの概念がありませんでした。

そこで国は、単式簿記・現金主義会計の補完ということで複式簿記による発生主義会計を導入し、資産や負債などのストック情報と減価償却費や引当金などの現金支出を伴わないコストも含めたフルコストでのフロー情報の把握を可能にする地方公会計の整備を検討し、進めてきました。

そして、平成27年1月に統一的な基準による地方公会計マニュアルを公表し、この統一的な基準での財務書類の作成を、平成29年度までに行うよう全ての地方公共団体に要請しました。このことにより全国の地方公共団体は、複式簿記・発生主義会計に基づく財務書類(貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書)を作成し、単式簿記・現金主義会計を補完することになりました。

山口県議会において、公会計の重要性を再三、一貫して訴えてこられたのが公明党の先城議員でして、その見識と熱意に敬意を表したいと思います。

そこでお尋ねです。県は、統一的な基準による地方公会計の意義をどう認識し、本県の行財政運営に、今後これをどう生かし、活用していくお考えなのかご所見をお伺いいたします。

令和2年2月定例県議会【2.(2)財務書類の作成について】

(2)財務書類の作成について

次に、本県も平成29年度から作成している地方公会計の財務書類について数点お伺いいたします。

ア.県民にわかり易い書類に

その1は、県民に分かりやすい説明を付記した財務書類にしてほしいということです。地方公会計導入の目的の一つは、地方公共団体の財政状況を、現金のフローだけではなく、資産や負債のストックの面からも明らかにして、住民や議会に対して説明責任を果たすことであろうと思われます。
つきましては、地方公会計の財務書類は、一般的な常識があれば理解できるような説明がある、わかり易いものにするよう努めるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

イ.公表の時期

次に、この財務書類の公表の時期についてであります。県財政に関しフローだけではなくストック情報も含めて県民や議会に対して説明責任を果たすことになる地方公会計の財務書類は、議会の決算審査に間に合うよう作成し公表するのが望ましいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

ウ.固定資産台帳

次に、固定資産台帳についてです。地方公会計の統一的な基準による財務書類の作成にあたっては、財務書類の作成に必要な情報を備えた補助簿として固定資産台帳を整備することが求められています。

固定資産台帳とは、固定資産を、その取得から除売却処分に至るまで、その経緯を個々の資産ごとに管理するための帳簿で、所有するすべての固定資産(道路、公園、学校、公民館等)について、取得価額、耐用年数等のデータを網羅的に記載したものです。

従前の制度では、地方公共団体は、公有財産を管理するための公有財産台帳や個別法に基づく道路台帳等の各種台帳を備えていましたが、これらの台帳は、主に数量面を中心とした財産の運用管理、現状把握を目的としており、資産価値に係る情報の把握が前提とされていない点で、固定資産台帳と異なります。

そこでお尋ねです。固定資産台帳の整備は、個別の行政評価や予算編成、公共施設の老朽化対策等に係る資産管理等においてベーシックな情報を提供するものとして重要であり、また、その情報が公表されることにより、民間事業者のPFI事業等への参入促進につながることが期待されています。つきましては、本県における固定資産台帳の整備状況、記載内容及びその情報の公表方針についてお伺いいたします。

令和2年2月定例県議会【3.内部統制制度について】

3.内部統制制度について

平成29年の地方自治法改正により、都道府県及び指定都市は内部統制制度を導入して、内部統制に関する方針の策定及び必要な体制整備が義務付けられました。

平成31年3月に技術的助言として策定された内部統制制度の導入・実施のガイドラインを見ますと内部統制とは、基本的に、①業務の効率的かつ効果的な遂行、②財務報告等の信頼性の確保、③業務に関わる法令等の遵守、④資産の保全の4つの目的が達成されないリスクを一定の水準以下に抑えることを確保するために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、①統制環境、②リスクの評価と対応、③統制活動、④情報と伝達、⑤モニタリング(監視活動)及び⑥ICT(情報通信技術)への対応の6つの基本的要素から構成されます。

何か勿体ぶった言い方をしているな、もっとわかり易く表現すればいいのにと思われますし、国に言われるまでもなく既に全国の地方公共団体はやっていることではないかとの感がありますが、この制度の背景には、第31次地方制度調査会の「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」(平成28年3月)があることを考えますと、これから我が国において人口減少が進行する中、限られた人的資源で多様な課題に対応することが求められる地方行政体の質的レベルアップを、ルーティン化を通して実現していこうとするのが、内部統制制度だと見做すことができます。

私は、そういう見方に立って内部統制制度の導入を、県の業務執行体制のレベルアップを図る仕組みとして活用し、現在進行中の行財政構造改革にも生かしていくことを期待するものです。

平成30年度の山口県歳入歳出決算に係る審査意見書においても、令和2年4月から内部統制制度が導入されることに触れ、「財務に関する事務の適正な執行を確保するためには、リスクを可視化し、その情報を共有し、リスク管理を行うことが重要であることから、こうした視点を踏まえ、内部統制体制の整備を進められたい。」と述べられています。

そこでお尋ねです。本年4月から本格施行となる内部統制制度の導入に向けて、県として方針の策定や体制の整備及び評価の仕組みづくり等にどう取り組んでおられるのか、お伺いいたします。