『地方創生と林業振興』

『地方創生と林業振興』

安倍政権の看板政策となった「地方創生」が、単なる政治的なパーフォマンスで終わるのかどうかの試金石は、林業振興に関して実効ある政策を推進することになるかどうかにあると見ております。
我が国は豊かな森林資源大国であるにもかかわらず、その天与の恵みを生かし切れていないのは誠に残念なことであります。
私は我が国における林業に政治の不在を感じております。
日本学術振興会特別研究員である白井裕子氏は、その著「森林の崩壊」において、一人が一日に生産する木材の量は、工950年頃には、北欧諸国ではおよそ1.5立方メートルで、日本とそう違
いがなかっだのが、2000年には、北欧諸国では30立方メートルにも達し、林業の高度化、生産性の向上が格段に進んだのに対し、日本は3~4立方メートルにとどまっていることを指摘して、このような木材の産出に関す270101-3-1る生産性の大きな格差は、戦後50年程の間に開いたものであることを明らかにしております。
我が国における林業振興への取り組みは、そのような北欧諸国との間に開いた林業に関する生産性の格差を解消する取り組みであると言えます。
表:木材(用材)の供給量の推移【自給率引き上げに希望】
資料:林野庁「木材需給表」
注:数値の合計値は四捨五入のため計と一致しない場合がある。

私は、安倍政権が「地方創生」の柱の一つとして、そうした方向での強い政治意思に基づく林業政策を推進するようになることを期待するものです。
ただ、この度の「地方創生」に向けての国の基本姿勢は、地方の自主的な取組みを基本とするということであり、要は、国がアイデアを出して引っ張るというのではなくて、地方の現場から出た優れたアイデアを国が支援するという方針であります。
それに応える形で、本県は来年度予算要望において地方創生に向けた取り組みとして、林業の成長産業化の先駆モデルとなる。スマート林業・実証プロジェクトの実施を政策提言しました。
しかし我が国の林業には、そのような最先端の林業モデルの実現に向けて解決しておくべき足下の課題があります。
山林の境界明確化や木材の安定的供給を実現していく課題です。
また、将来を見通して循環的森林整備を進めていくことも必要です。
私は、山口県が先ずそのような林業振興の土台となる課題解決にしっかり取り組み、林業振興による地方創生のモデルを示していくことになるよう力を尽くしていきたいと思っています。

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11月18日 徳地の三本杉にて

(合志 栄一)

2015年1月1日