『安倍政権と使用済み核燃料』 外なる脅威同様に内なる脅威に備えを!

『安倍政権と使用済み核燃料』 外なる脅威同様に内なる脅威に備えを!

私は、安倍政権を支持し、安倍政権が長期政権、本格政権になることを願っています。
ただ、気になることが一つあります。
それは、原発政策に関してです。
原発は、二酸化炭素を出さずに質のよい電気を安定的に供給するメリットがあります。
しかし、一且事故が起こったら広範な地域が放射能汚染されるというリスクや、使用済み核燃料の最終処理のことが未解決だという深刻な問題を孕んでいます。
二年前の、3・11福島原発事故は、最悪シナリオとして首都圏を含む3千万人から5千万人避難、東日本壊滅という事態も想定されていました。
そうならなかっだのは、事故に対して適切に対応し、事態をコントロールできたからではなく、幸運な偶然が重
なったからだと、総理として事故対応に当った菅元首相は言っております。
考えてみれば、こわいことです。
原発はメリットもあるけれども、国の存立を脅かす内なる脅威になる存在でもあるのです。
安倍政権は、北朝鮮や中国等の外なる脅威への備えにはしっかり取り組んでいますが、原発は内なる脅威であるという認識が薄く、その脅威への備えという点での取り組みが不十分ように思われます。
表面上、原発の安全確保という面では、原子力規制委員会が新たに設置され、安全性の審査基準をこれまで以上に厳格化して行うことになり、前進しているように見えます。
しかし、ここで強調しておきだいことは、使用済み核燃料の最終処理をどうするかという問題を解決しなければ、本当の意味での原発の安全は成り立たないということです。
安倍政権は、この問題にまだ真剣に向き合っていないのではないか、そんな不安を覚えます。
福島原発事故で最も憂慮されたことの一つは、4号機の使用済み核燃料プールのことでした。
この燃料プールが強い余震やさらなる水素爆発で崩壊したり、プールの水が蒸発して保管されている使用済み核燃料が露出して放射性物質が放出されるようになった場合、首都圏まで含めた避難という最悪事態になる可能性があったからです。
このような使用済み核燃料は、現在はほとんどが原発に併設されている核燃料プールに保管されています。
使用済み核燃料を、全量再処理して可能な限り再利用しようとする核燃料サイクルの確立が、全く計画通り進展せず実現の見通しが立っていないからです。
使用済み核燃料が安全になるまでには10万年要すると見られており、万年単位での安全管理、安全確保を保証することは、今日の科学の能力の限界を超えています。
こうした核燃料を、我が国の各原発は抱え込んでいる訳ですが、原発が通常通り稼働すれば、今後6年間でそれらの核燃料プールは満杯になる見通しであります。
こうした使用済み核燃料の最終処理をどうするかについて、日本学術会議は、昨年9月に、暫定保管と総量管理の二つを提言し、国民的合意の形成に向けた議論を経て、原子力政策の大局的方針の確立に取り組むよう促しています。
暫定保管は、数十年もしくは数百年の期間、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管するという方法であります。
総量管理については、原子力政策が脱原発に向かうのであれば使用済み核燃料の「総量の上限の確定」を、一定程度の原子力発電を継続するのであれば「総量の増分の抑制」を行おうとするものです。
先に触れた現行の原子力政策に基づく核燃料サイクルにおいては、使用済み核燃料は、再利用のための処理をした後、残った高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体にして地下300mはどの地層に最終処分する計画になっております。
この地層処分という方法は、完全に人の管理外に放射性廃棄物を置くことになることから、後の将来世代に対する責任という観点からすれば、学術会議が提言している暫定保管の方法を採用すべきだと私は考えます。
使用済み核燃料についての総量管理は、これこそ政治が真剣に向き合うべき課題であります。
私は、安倍政権がこのような使用済み核燃料の最終処理問題に真剣に取り組み、外なる脅威に対してと同様に内なる脅威に対しても備えある本格安定政権として、国家安泰の盤石の基盤を確立することを期待しております。

(合志 栄一)

2014年7月1日