先ずもって先月、岩国市・和木町及び広島市の大雨・土砂災害において犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げますと共に、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
さてこの度の広島大雨・土砂災害は、74名の方々がお亡くなりになるという大惨事になりましたが、その被災地となった広島市安佐南区・北区は、平成11年にも土砂災害に見舞われ、9名の犠牲者が出たところです。15年前のこの大雨・土砂災害では、広島市や呉市等で被害が顕著でしたが、広島県全体で32名の方々が犠牲になられました。
その後、このことが契機となり、土砂災害防止法が制定されました。しかし、それが功を奏することなく、再び広島市の安佐南区・北区において、70名を超える犠牲者を出す土砂大災害が発生したのであります。
山口県は、平成21年7月防府市で14名の方々が亡くなられる土砂災害に見舞われていることから、この度の広島での土砂災害の経緯を真摯に受け止め、同様の大雨が降った場合でも、土砂災害の発生を防ぐ、また災害を減災して人の犠牲が生じないようにするとの決意のもと、本県における土砂災害の再発防止に取り組まなければなりません。そのような思いから、今回は「防災対策について」ということで、具体的な事例を示した上で、必要と思われる対策について一般質問を行います。
(1)土砂災害対策について
先ず、土砂災害対策について4点お伺いいたします。第1点は、特別警戒区域の指定についてであります。
広島市安佐南区八木3丁目に、今年4月、山際に建てられた小さなアパートがありました。そこには、昨年11月に結婚して今年の7月に引っ越してきた新婚夫婦や仲の良い母娘等、4世帯8人が入居しておられましたが、全員がこの度の土砂災害の犠牲となられました。
仮定上のことでありますが、もしこの地域が土砂災害防止法の特別警戒区域に指定されており、アパートが土砂災害を防止・軽減するための基準を満たす構造になっておれば、彼らは助かっていたかもしれません。また、このアパートを宅建業者から紹介された際、必ず伝えなければならない重要事項として、アパートが立地しているところが土砂災害の特別警戒区域であることを知らされていれば、このアパートに入居することを避けて、災害にあうことがなかったかもしれません。
ところがこの度、広島市で土砂災害が発生した箇所の76%は、土砂災害の警戒区域外で、このアパートが建てられたところもそうでした。そのため、特別警戒区域に指定されていれば為されていたであろう、アパート建築の構造規制や、土砂災害特別警戒区域であることの伝達は行われず、悲劇を招いてしまいました。
平成11年、主に広島県で発生した土砂災害が契機になって制定された土砂災害防止法であるにもかかわらず、その法による警戒区域の指定が進捗せず、同じ地域で土砂災害が発生し、旧に倍する犠牲者が生じたことは、残念なことでした。
そこで、山口県における土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定についてでありますが、本県では、イエローゾーンといわれる土砂災害が発生するおそれがあることを住民に周知しなければならない土砂災害警戒区域の指定は、平成24年10月に、県下全市町において完了しております。このことは、本県が平成21年7月の土砂災害を真摯に受け止め、取り組んでいる証左として評価したいと思います。
本県では、さらにその後、レッドゾーンといわれる土砂災害特別警戒区域の指定を平成29年度までに完了するとのスケジュールで作業を進めて来ました。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められる区域で、特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等が行われます。
現在、宇部市、山口市、防府市、下松市、周南市の5市で、その指定が完了していまして、未指定の市町も平成29年度までに完了する予定でありました。それを、村岡知事は今議会初日に、1年前倒し実施する旨、表明されたところであります。私は、このことを「土砂災害から県民を守る。」という強い決意のもと村岡知事が、決断し指導力を発揮された結果と受けとめ、高く評価すると共に、その確実な実施を期待するものです。
そこで先ず、村岡知事が、土砂災害特別警戒区域の全県指定完了を、1年前倒し実施することを決断された真意についてお伺いいたしますと共に、その前倒し実施を、どのようにして確実にするのかご所見をお伺いいたします。また、このことに関連して、住民理解についてお伺いいたします。特別警戒区域の指定作業が加速化されることは、基本的に歓迎すべきことですが、住民理解を得る手続きが疎かになるようなことがあってはなりません。特別警戒区域に指定されると、その区域は住宅宅地分譲や社会福祉施設等の建築のための特定の開発行為が許可制となり、建築物の構造規制が行なわれます。また、災害リスクの公表による土地評価への影響等も懸念されることから、住民の理解を得る丁寧な説明が、指定実施に当っては求められると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
次に第2点、砂防ダムの整備についてお伺いいたします。
今回の広島土砂災害で、最も犠牲者が多かった八木地区では、平成19年から9基の砂防ダムを建設する計画が進められていたものの、砂防ダムの建設には1基当たり数億円かかり、予算上の制約があることや、急勾配の住宅密集地の近くに造成するには、時間がかかる等の理由で整備が遅れ、1基も完成していなかったことが明らかになっています。地元の自治会長は、「早く砂防ダムを整備してくれていれば、相当違ったはずだ。」と肩を落とした、と新聞で報じられています。
3時間雨量217.5ミリという観測史上最大の猛烈な大雨が原因で発生した土石流を、砂防ダムが整備されていれば、完全に防ぎ止め得たかどうかはわかりませんが、少なくとも減災の役割は果たして被害は相当軽減されたであろうと思われ、被災された八木地区の方々の無念さは、察するに余りあります。
土砂災害には、ソフト対策としての土砂災害防止法に基づく取り組みと併せ、ハード対策として砂防ダム等を整備していくことが重要であることは、改めて申すまでもありません。広島市八木地区の砂防ダム整備は、平成11年の土砂災害後、国が直轄事業として計画したものですが、本県における砂防ダムの整備は、基本的に県事業として行なわれています。
そこでお尋ねです。土砂災害対策として、砂防ダムの整備は、優先度の高い公共事業であると考えます。ただ本県は土砂災害危険個所数が全国第3位で、22,248箇所と数多くあり、一気に整備を行うことは困難で、危険度や住宅地への影響等から優先順位を定めて計画的に整備を行なっていくことが求められます。ついては、県は今後、どういう方針、計画で砂防ダムの整備を進めていくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
次に第3点、急傾斜地崩壊対策事業についてお伺いたします。
8月6日、岩国市・和木町に局所的に降った大雨により、岩国市新港町では、土砂災害が発生し家屋が倒壊して20代の男性一人が亡くなられました。この土砂災害が起こったところは、地元の同意があれば急傾斜地崩壊危険区域の指定を行い、急傾斜地崩壊防止工事を行うことになっていました。しかし、地元関係者全員の同意の取り付けが出来ず、着工が見送られていました。
この岩国でのケースが、どうであったのかは分かりませんが、往々にしてあるのは、不在地主が地権者としておられ、その方と地元住民との間に感情的なトラブルが生じたりして、地元関係者全員の同意取り付けが困難になるというケースです。
こう云う問題の解決は、なかなか地元関係者だけでの努力では難しく、何らかの法的な対応が必要なのではないかと思っています。例えば、急傾斜地崩壊防止工事が必要と判断される場合は、県や市町が、不在地主の地権者の権利のうち、工事施行に係る部分については、代位出来るよう法整備を行う等のことであります。
そこでお尋ねいたします。急傾斜地崩壊対策事業が円滑の行なわれるようにするためには、関係する地権者のうち不在地主については、必要に応じてその権利を県や市町が代位出来るよう法整備することが望ましいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
次に第4点は、防災能力の正確な周知についてであります。
私は先に、土砂災害の特別警戒区域の指定がなされていれば、新築のアパートは、土砂災害を防止・軽減する構造の建物になっていたであろうから、アパートの住人は助かっていたかもしれないと申し上げました。また、砂防ダムが整備されていれば、犠牲者数が最大であった八木地区の被害は相当程度軽減されていたであろうと述べました。
しかし、こうした見方は、観測史上最大の猛烈な雨によって発生した土石流の破壊力や規模からして、科学的な検証が必要であることを申し上げておかねばなりません。果たして新築アパートは、特別警戒区域の指定に基づく構造規制があれば、本当に今回の土石流に耐えることが出来たのか、また砂防ダムが整備されていたら、土石流は堰き止めることが出来て被害の発生は防ぐことが出来たのか、若しくは減災の役割を果たすことが出来たのか、専門的な見地からの科学的な検証が必要であります。
東日本大震災の時には、高さ10メートルの防潮堤が整備されているところの人たちが、襲来する津波の高さが10メートル以上あることを知らず、防潮堤があるから大丈夫と思って逃げずに、数多く亡くなられました。
私が申し上げたいことは、特別警戒区域の指定に基づいて建築物の防災力が強化されたとしても、また砂防ダムが整備されたとしても、そのことにより防ぎ得る土石流等の土砂災害は、どの程度までなのかということを、定量的に知っておくことが重要であるということです。そのことが分かっておれば、その限界を超える土砂災害発生の予測があるときは、避難する判断が出来て、身の安全を守る行動に繋がるからです。
そこでお尋ねです。特別警戒区域の指定に基づく建築物の構造規制や砂防ダムの整備により、防ぎ得る土石流等の土砂災害はどの程度までなのか、その防災能力について定量的で正確な情報を、関係する住民に周知することが重要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(村岡嗣政君)
合志議員の御質問のうち、私からは、防災対策のうち、土砂災害対策に係る特別警戒区域指定の前倒しの真意と確実な実施についてのお尋ねにお答えします。
本県は、地理的特性から、全国三位の多くの土砂災害危険箇所を有しており、近年、頻発する集中豪雨により県内各地で土砂災害に見舞われたことから、県下全域における警戒避難体制の整備を図るため、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定を平成二十四年度に完了し、平成二十九年度を完了予定として、特別警戒区域の指定に取り組んできたところです。
こうした中、去る八月六日に、県東部において土石流や崖崩れが多数発生し、多くの家屋が被災し、とうとい命が失われました。さらに、このわずか二週間後には、広島市において大規模な土石流や崖崩れが発生し、多くの人命が犠牲になる甚大な災害となりました。
これらの災害から、私は、土砂災害が一たび発生すると、人命に深刻な被害をもたらすことを改めて認識し、県民の生命を守るためには、大規模な土砂災害に備えた対策の一層の強化に取り組まなければならないと考えました。
このため、警戒区域よりもさらに危険度の高い特別警戒区域を県民に早急に明らかにすることで、適切な避難行動をとっていただくとともに、新規住宅の立地抑制や建築物の安全確保を一日も早く図る必要があると考え、県下全域の指定完了を最大限前倒しすることとしたものです。
私は、こうした考えのもと、来年度に予定していた基礎調査を今年度に繰り上げて実施することとし、このたびの議会に必要な経費を計上したところです。
今後は、直ちに基礎調査に着手し、平成二十七年度末までに県内全域の調査を完了させ、順次、各地域の住民説明会を開催するなど、市町とも連携して、住民の理解を得るよう丁寧な説明に努め、平成二十八年度までに確実に指定を完了させてまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
【回答】◎土木建築部長(北﨑孝洋君)
防災対策に関する数点のお尋ねにお答えします。
まず、土砂災害特別警戒区域の指定に際しての住民説明についてです。
県では、これまで、特別警戒区域の指定に当たり、新規住宅の立地抑制、建築物の安全確保などの指定の目的、指定する区域等を、基礎調査の完了後、住民への各戸配布、住民説明会、県ホームページへの記載等により、速やかに住民に周知し、理解を得るように取り組んできたところです。
今後も、指定に当たっては、これらの取り組みを行うとともに、指定に伴う制限等をわかりやすく説明したリーフレットを新たに作成し、住民説明会等さまざまな機会を通じて丁寧な説明を行ってまいります。
さらに、指定後も、市町と連携しながら、防災訓練などの機会を利用して周知を継続的に行うなど、引き続き住民の理解に努めてまいります。
次に、砂防ダムの整備についてです。
本県は、県土の八割以上を山地や丘陵地が占めるなど、地形的特性から多くの土砂災害危険箇所を有しており、県内各地で土砂災害が多発しています。
このため、県では、土砂災害対策として、ハード・ソフト両面からの総合的な土砂災害対策に取り組んできたところであり、ハード対策としては、砂防ダムなどの土砂災害防止施設の整備を進めています。
こうした中、平成二十一年七月の県央部やこのたびの県東部において土石流が発生しましたが、砂防ダムにより土砂などが食いとめられ、人家への被害を免れた事例も多く見られたことから、お示しのとおり、砂防ダムなどのハード対策の重要性を再認識したところです。
このため、県では、今後も砂防ダムを着実に整備していくこととし、この整備に当たっては、過去に土石流災害が発生した箇所、病院などの災害時要援護者関連施設や避難施設が立地する箇所など、危険度や緊急性の高い箇所から重点的・計画的に進めてまいります。
次に、急傾斜地崩壊対策事業についてです。
本事業は、事業用地の寄附及び地元負担金を求めていることや、事業用地と保全家屋の所有者が異なる場合に、用地の確保や工事の実施に支障が生じることも懸念されることから、事業の実施に当たっては不在地主も含めた地元関係者の理解と協力が不可欠であり、事前に関係者全員の同意を受けて着手しているところです。
お示しの不在地主の承認を得ずに工事施工に係る権利を県や市町がかわって行使することを可能とする法整備につきましては、財産権の保障に抵触するおそれもあり、現時点では困難と考えておりますが、県としては、崖崩れの兆候が見られるなど極めて危険度が高い箇所については、既存の制度を活用しながら、市町と連携し、円滑な事業実施に努めてまいります。
次に、防災能力の正確な周知についてです。
土砂災害の規模は、地質、崩壊土砂の量、土石流の速度や含まれる巨石の大きさなど、さまざまな要素により決まるものであり、代表的な一つの指標により、定量的にその程度を示すことは現時点では困難な状況です。
また、砂防ダムは、降雨量などの標準的な設計基準に基づき計画され、土砂の堆積容量は算出できるものの、降雨のたびにダムの堆積容量は変化します。
したがいまして、砂防ダムの堆積容量を避難判断基準の一つとして使用する状況にはありません。
県としては、防災対策として、まずは警戒避難体制の整備を図ることとし、危険箇所に住んでいる住民がその危険性を理解し、災害時に適切に避難できるよう、土砂災害警戒区域の指定を平成二十四年に完了し、このたび、より危険度の高い特別警戒区域の指定について、一年前倒しして平成二十八年度までに完了することとしたところです。
さらに、県のホームページにおいて、土砂災害降雨危険度や気象情報等をリアルタイムで提供している土砂災害ポータルについて、住民の警戒避難行動に一層活用していただけるようさらに充実を図ってまいります。
次に、防災意識の向上についてのお尋ねのうち、放射線炭素年代測定法による調査と住民周知についてです。
お示しのとおり、放射線炭素年代測定法による調査は、土石流の発生年代を推定するものであり、現在、専門家により研究が進められていることは承知しています。
しかしながら、この研究を土石流の発生予測手法として実用化するに当たっては、雨量と土石流発生との相関関係の解析や発生する土石流の場所や規模の予測など、多くの解決すべき課題があるとされています。
このため、県としては、現時点では特別警戒区域での放射線炭素年代測定法による調査の実施は困難な状況ですが、今後、この研究の動向を注視してまいります。
(2)防災意識の向上について
2点お伺いいたします。
第1点は、防災知識の普及についてであります。
自然災害に直面した時、どういう行動を取ることが身の安全を確保することに繋がるのかということに関する知識、これを防災知識と申し上げたいと思いますが、この防災知識の普及、周知が、災害が発生した時に人の犠牲が生じないようにする上において重要であると考えます。
広島の土砂災害では、安佐南区山本地区に住んでいた小学校5年のサッカー少年と2歳の幼い兄弟2人の命が、家の一階に流れ込んだ土砂のために失われました。この兄弟は、最初は2階にいたのに、2階にいることが不安になったのでしょうか、一階に移動したため土砂に襲われてしまいました。
土砂災害に対する防災上の知識としては、家から出て避難できない場合は、「家の2階で、山の反対側の部屋にいるようにする。」、というのがあります。
このことが、この兄弟の家族において防災上の知識として共有されていれば、あるいは、小学校における防災教育で、お兄さんが教えられていれば、この二人の尊い命は失われずに済んだかも知れません。
東日本大震災の時、釜石市においては市内小中学校、全児童・生徒約3千人が即座に避難し、生存率99.8%という素晴らしい成果を挙げ、「釜石の奇跡」と言われました。この背景には、「津波てんでんこ」と言って、「津波が来るとわかったら、肉親にもかまわず、各自てんでんばらばらに一刻も早く高台に逃げて、自分の命を守れ。」という教訓に基づき、防災教育、避難訓練が徹底されていたことがありました。
こうした事実は、災害から身を守るための知識、そういう意味での防災知識を、日頃から身につけておくことの大事さを、私たちに教えています。
そこで、お尋ねです。防災対策の一環として、県民に対して防災知識を普及し啓発していくこと、また学校教育において防災知識を教える防災教育を充実していくことが重要と考えますが、これらのことにどう取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いいたします。
第2点は、災害の歴史の周知についてであります。
岩手県にある普代村は、太平洋に面した人口3000人弱の小さな村ですが、東日本大震災では、死者はゼロで住宅への浸水被害もありませんでした。高さ15.5mの水門や防潮堤が、この村を津波から守ったからです。水門や防潮堤の建設が計画された時、高さが15.5mというのは高すぎるとの批判もあったそうですが、当時の和村村長は、15m以上を譲りませんでした。明治に15mの津波が来たという言い伝えが、村長の頭から離れなかったからです。災害の歴史についての記憶が、防災計画に生かされ効を奏した顕著な例であります。
この普代村の事例から学ぶべき教訓は、災害の歴史を知っておくことの大切さです。土地、土地でどういう災害が過去あったのか、災害の歴史を知り、そのことを防災計画に生かすと同時に、住民に周知して災害に備える防災意識の向上に役立てていくことは、防災のソフト対策として大事なことであると考えます。
では、私たちは、どうして過去の災害の歴史を知ることが出来るのでしょうか。先ず思いつくのは、昔からの言い伝えや地域に残る古文書、石碑等に記されている災害の記録を通して知ることです。
それから近年、特に土砂災害においては、地層の中で土石流等の土砂災害に係る堆積物中に残された樹木の炭化物を測定して、過去の土砂災害の発生年代を知ることが出来るようになりました。放射性炭素年代測定(AMS法)により土石流等の発生年代の推定を行うもので、山口大学大学院理工学研究科・准教授の鈴木素之先生が、その方面では先駆的な取組みをしておられます。
この方法によれば、災害の記録が残っていないところにおいても過去に土石流等が発生した年代を知ることができますし、古文書等に記録があれば、それと照合して「土石流災害発生年表」などの作成も可能となります。
この度の広島土砂災害を受けて、土砂災害防止法の改正が図られようとしていますが、その改正内容は、警戒区域指定の前提として都道府県が実施する地形や地質などの基礎調査の結果公表を義務付けて、住民への危険性周知を徹底することのようです。土砂災害防止法は、元々ソフト対策であり、制定趣旨は、関係する地域住民に土砂災害発生のリスクを認識してもらい、日頃から備えておいていただこうというものでありますから、その趣旨をより徹底する方向での改正であると思われます。
ただ、私に言わせれば、この改正は何とか対応しなければならないという苦肉の策で、ほとんど実質がない小手先のものであります。住民へ危険性周知を徹底するというのであれば、現時点での地形や地質等の基礎調査だけではなく、過去の土砂災害の履歴も調査して住民に周知するようにする方向での改正が望ましいと思われます。特に、特別警戒区域に指定されたところの住民に対しては、そのことが必要なのではないでしょうか。
そこでお伺いいたします。先ず、防災意識の向上という観点から、住民へ災害の歴史を周知する取り組みが重要と考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。次に、土石流等の土砂災害については、AMS法により発生年代を調査することが出来るようになりましたので、特に土砂災害の特別警戒区域ではその調査を行い、その結果を防災計画に生かすと同時に、住民に周知するようにすることを検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎総務部長(渡邉繁樹君)
防災対策についてのお尋ねのうち、防災意識の向上についてお答えします。
まず、防災知識の普及についてです。
災害から身を守るためには、県民一人一人がみずからの命はみずからが守るという自覚を持ち、平常時から災害に対する備えを心がけるとともに、発災時には的確な行動がとれるよう、正しい防災知識を身につけることが重要です。
このため、県では、ハザードマップによる危険箇所や避難場所の把握等、日ごろの備えや二階への垂直避難など、災害時の具体的な行動や心構えを示した防災ガイドブックの作成を初め、防災シンポジウムや出前講座の開催、住民参加型の防災訓練の実施など、市町とも連携し、防災知識の普及啓発に取り組んでおります。
また、避難の判断に参考となる気象情報など、リアルタイムの防災情報についてもホームページで提供していますが、このたび県民が情報を入手しやすくなるよう、ホームページの改修を行ったところです。
県としましては、今後とも、実際の災害時に県民の自主的な避難行動につながるよう、こうした取り組みの充実強化に努めてまいります。
次に、災害の歴史の周知についてです。
お示しのように、防災意識の向上を図るためには、過去、地域において発生した災害を正確に理解し、防災計画などに生かしていくとともに、後世に伝えていくことは非常に有効です。
県内でも、周防大島町における津波の襲来に係る伝承や、過去、水害で被災した岩国市美川地域で到達水位を標示している例などがあり、県としては、こうした過去に発生した災害の教訓を、市町と連携し、専門家の知見も得ながら、収集して事例集等に取りまとめ、広く県民へ周知するとともに、防災対策や防災教育等において活用してまいります。
【回答】◎教育長(浅原司君)
防災意識の向上のお尋ねのうち、学校における防災教育の充実についてお答えいたします。
自然災害から子供たちの命を守るためには、お示しのように、子供たちが災害についての正しい知識をもとに状況を的確に判断し、主体的に行動できる力を身につけていくことが重要であります。
このため、県教委では、災害についての知識や適切な避難行動、家族の避難方法等の確認の必要性などを示した防災教育テキストを全ての児童生徒に配付し、学校と家庭が連携して防災教育に取り組むとともに、災害現場の写真等を見ながら、子供たち自身が危険を予測し、回避する方法を考え、話し合う危険予測学習を積極的に推進しているところです。
さらに、災害から身を守るための知識が行動に結びつくよう、実際の災害に即した避難訓練や、大学教授、気象台職員等の専門家による防災出前授業の実施など、実践的な防災教育に努めています。
今後は、学校と家庭、地域が一体となって防災教育の取り組みを推進する中で、防災知識の共有と定着を図り、子供たちの安全をより確かなものとしていくことが必要でありますことから、各学校のコミュニティ・スクールにおける学校運営協議会にも働きかけ、過去の災害の状況や教訓を踏まえつつ、それぞれの地域で想定される災害への対応を総合的・実践的に学ぶ防災訓練を実施するなど、子供たちが家庭、地域の方々と防災知識をともに学び、共有する機会の拡充に努めてまいります。
県教委といたしましては、子供たちのかけがえのない命を守るため、災害から得られた教訓を決して無駄にすることなく、今後とも、市町教委と一体となって、学校、家庭、地域の緊密な連携のもと、防災教育の一層の充実を図ってまいります。
(3)県施設の避難場所指定について
県施設の避難場所指定については、県も前向きであるべきだとの趣旨でこの質問を行います。
山口市の吉敷に山口県総合保健会館があります。6階建てのビルで2階には500人収容可能なホールもあり、近隣の住人からは、何かの災害で避難しなければならなくなった時、ここに避難出来れば安心だということで、避難場所として使えるようにしてほしい旨の要望があります。
市町が指定して住民に周知する避難場所は、二通りあります。一つは、指定緊急避難場所で、災害が発生するおそれがある時や災害発生時に、緊急的に避難し、身の安全を確保する場所です。もう一つは、指定避難所で、災害発生時に、一時的に被災者の避難生活の場所となるところです。山口市の場合、149の施設が指定されていますが、その全てが緊急避難場所と避難所の双方を兼ねています。また、直接管理しやすいということでしょうが、指定されている施設の9割は、市の施設であります。
思いますに、避難場所に求められる第一のことは、災害の危険を避けることが出来る安全な場所として、災害の危険が去るまでの間住民を受け入れることであることから、緊急避難場所と避難所は、必ずしも兼ねる必要はなく、緊急避難場所としてだけの指定施設があっていいと考えます。そして、緊急避難場所としてだけの指定であれば、応ずることが出来る県施設は、結構あるのではないかと見ております。総合保健会館もそうであります。
避難場所の指定は、市町の事務ですが、災害時、住民の身の安全確保のためには、県施設も出来る限り使えるようにするという姿勢が、県に求められると思います。住民は、市民であると同時に県民であり、災害時その身の安全を確保するためには、県も市も同等の責任があり、共同して取り組むべきと考えるからです。
そこでお尋ねいたします。県施設を、災害時の避難場所として指定することには、県も前向きに取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
県の見解について
平成24年9月に、山口市の防災危機管理課が、災害時の避難場所としての指定を、県に打診したところ、「総合保健会館には健康福祉センターもあり、災害時には支援活動等の拠点になることが想定され、会館を部分的にも避難場所として指定することはなじまないものと思われる。」との回答があり、山口市もこれを了承して避難場所指定は見送られた経緯があります。
私は、この県の回答には、全く納得できません。避難場所の指定を断る理由として挙げられているのは、「健康福祉センターがあって、災害時支援活動の拠点になるから。」ということですが、支援活動の最たるものは、先ず住民の身の安全確保にたいする支援ではないでしょうか。
また、山口市では、各地区にある地域交流センターが、地区における災害対応、住民支援の拠点になっており、また避難場所にもなっております。災害支援の拠点になっているから避難場所にはなじまないなどということはあり得ません。
【回答】◎総務部長(渡邉繁樹君)
次に、県施設の避難場所指定についてお答えします。
災害時における住民の避難先については、東日本大震災の教訓を踏まえ、切迫した災害の危険から逃れるための緊急避難場所と、避難生活を送るための避難所を区別して指定することとされました。
このため、現在、市町では、想定される災害の状況や人口等を踏まえ、おおむね自治会や小学校区単位で避難場所等の指定に取り組まれているところであり、県有施設につきましても、既に県立学校を中心に六十七施設が指定されています。
県としましては、県有施設の避難場所への指定につきまして、市長から個別に要請があり、施設の使用目的や利用実態等を踏まえて、特に支障がないと判断される場合には、避難場所としての指定に協力してまいりたいと考えております。
(1)産業戦略の推進体制
県の職員録は、巻末に県庁組織の分掌事務を掲載しています。これを見ますと、各部局の分掌事務が、所属する課ごとに記されています。ところが、産業戦略部だけは、「産業に関する総合的な政策の企画及び推進に関すること。」と、記されているのみであります。
総合企画部の政策企画課は、8項目の分掌事務があり、その1の項目は、「県の総合的な政策の企画及び調整に関すること。」となっております。従って、この総合企画部の政策企画課の項目1の分掌事務を記した文言のうち、「県の」を「産業に関する」に、「調整」を「推進」に、言葉を置き換えますと、それが、産業戦略部の分掌事務を記した文言と、全く同様になります。
産業戦略部は、平成25年度から設置されていますが、これは、山本繁太郎前知事が、産業力増強を県政運営の最重要課題と位置付け全力を投入されたその強い思いに基づくものと思われます。その目的が、産業力強化に係る施策の推進体制の強化であることは当然でありますが、部の設置までに至った背景には、併せて産業力強化の政治姿勢を象徴的に示す意味合いもあったのではないでしょうか。
ただ産業力強化に関しては、そのことを直接的に担う部としては、商工労働部や農林水産部があり、産業インフラの整備に係ることは土木建築部が担当しています。よって、新設された産業戦略部が担うのは、結局のところ、それら三部の企画の部分や横断的連絡調整の役割ということになっています。それでも産業戦略部が設けられたのは、産業力増強という政策課題を特別的に重視して取り組む姿勢を示す意味と、そのことに短期的、集中的に取り組む体制強化のためであったと思われます。従って産業戦略部は、特例の部であって、恒常的な部ではないと見ております。
勿論、産業力強化が、県政運営の中心課題として常にあることは言うまでもありませんが、若い村岡知事におかれては、これから腰を据えて、しっかり本県の県政運営を担当していただきたいと思っていることから、産業振興も、特出しではなく、県政の全体計画の中に位置付けて強力に推進されることが望ましいと考えます。
以上申し上げましたことから、私は、現在の産業戦略部には、現に担っている役割をしっかり果たし任務を全うしていただくよう期待するものですが、この部を将来にわたって常設の部とするかどうかは、検討の余地があると思っております。
そこでお尋ねです。村岡知事は、産業戦略部のあり方も含め、産業戦略の推進体制は、今後どのようにあるのが望ましいとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎産業戦略部長(宮地理君)
産業戦略の推進体制についてのお尋ねにお答えします。
県では、産業力の強化に向けて、昨年四月以降、民間と行政が一体となった産業戦略本部を指令塔とし、産業戦略部を事務局とした推進体制により、産業戦略を推進しているところであり、本年四月には知事みずから本部長に就任するとともに、産業戦略部に新たに室を設置するなど、体制の充実強化も図っているところです。
これまで、「やまぐち産業戦略推進計画」に沿った全庁挙げた取り組みにより、戦略ごとに一定の成果が上がりつつあり、地元産業界等からも評価や期待をいただいておりますことから、県としては、産業戦略については、今後ともこの推進体制のもとで、策定中のチャレンジプランとの整合も図りながら、着実に推進していくこととしております。
その上で、御指摘のありました産業戦略部の今後のあり方についてですが、県の組織については、もとより不断に検証、見直しを行うことが基本でございます。
このことを前提としつつ、本部委員等の意見・提言をさらに具現化し、新たなプロジェクトの構築等につなげていくためには、事業部局との連絡調整とともに、横断的な視点からの企画立案を行う事務局機能が不可欠でありますことから、産業戦略部としては、引き続き、その役割を担っていくことが適当と考えています。
(2)酒米の産地拡大について
「米が足りない。」、酒造りの現場では、そういう状況が続いています。特に本県の日本酒業界は、全国の中でも元気で伸びており、勢いがありますので、酒米の需要が急増しており、それに見合った生産量が確保されず、酒米の不足が顕著になってきております。
そのため、山口県酒造組合は、去る4月30日、村岡知事に対して、「山田錦」や「西都の雫」などの酒米の生産拡大を要望いたしました。これに対し、村岡知事は、県としても積極的に取り組む考えを示し、早速にこの6月県議会に提案された補正予算で、「やまぐちの酒米緊急生産拡大支援事業」を、措置されたところであります。私は、こうした知事の迅速な対応を評価するものですが、酒米に関しては、もっと大胆な産地拡大の取り組みを行うべきと考えています。
酒米は、正式には酒造好適米と呼ばれ、日本酒を醸造する原料で、主に麹米として使われる米であります。この酒造好適米の代表的な品種が山田錦で、本県では、この山田錦と、山口県が独自に開発した品種である西都の雫が、主に生産されています。酒米には、麹米に加える掛け米も含める場合もあり、掛け米には酒造好適米だけではなく一般の食用米も使われますが、この質問では、酒米といえば酒造好適米のことであることをお断りしておきます。
では、そういう意味での酒米が、本県ではどれほど不足しているのでしょうか。県酒造組合は、基本的に全農県本部に酒米の希望数量を示し、全農県本部から生産された酒米の供給を受けていますので、その関係での平成25年度の生産実績と、平成26年度以降の希望見込数量を対比して見てみますと、山田錦の場合、平成25年度生産実績2062俵に対し、平成26年度の希望見込数量は、3878俵で、生産実績のほぼ2倍であります。さらに平成28年度希望申込数量は5083俵でありますので、生産実績の2.5倍であります。西都の滴の場合は、平成25年度生産実績は1908俵ですが、平成26年度の希望見込数量は4097俵で、これも二倍強であります。従って、端的に申し上げれば、県酒造組合の今年度の酒米の需要に応えるためには、山田錦も西都の雫もその生産量を昨年に比して倍増する必要があり、将来的には更なる生産増量が望まれているということであります。
ただ、ここで留意しておかなければならないことは、純米吟醸酒では全国首位の獺祭の蔵元旭酒造が使用している山田錦は、今お示しした数字には含まれていないということです。旭酒造は、全国から山田錦を確保しており、本県でも全農県本部を経由せず、直接契約で生産者から購入しています。その旭酒造の平成26年現在の生産能力は1万6000石(1石は、一升瓶100本)で、フル稼働すれば年間7万俵の山田錦が、必要になるようでして、平成25年には4万1000俵確保して生産したものの、獺祭の品薄状態は続いているようです。そこで、旭酒造は、生産能力を現在の3倍強の5万石にまで増強するための整備を行なっておりまして来年春完成の予定です。こうした生産能力の増強が図られた後、旭酒造にとって最大の課題は、獺祭の生産目標に必要なマックスで年間20万俵と見込まれる数量の山田錦を安定的に確保することであります。
旭酒造が獺祭の生産に使用する酒米は山田錦のみというこだわりは、獺祭が獺祭であるための根幹的な要素であることから、このことが変わるということはないと思われます。一方、そのこだわりの山田錦を確保する上において、旭酒造は、県産ということにはこだわっておらず、全国から求めています。ただ、今後生産能力の増強に伴う山田錦の需要増に対して、山口県が安定的に山田錦を供給することが出来るようになれば、それは旭酒造にとっても望ましいことであり、有り難いことであろうと思われます。
本県は、昨年10月に「やまぐち農林水産業再生・強化行動計画」を策定し、その中で「需要に即した品目の生産拡大」ということで、結びつき米、大豆、はだか麦、主要野菜(たまねぎ、キャベツなど)等、目標項目の品目の平成28年生産目標数量を示し、その実現に取り組むこととしています。私は、その「需要に即した品目の生産拡大」の行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加え、県酒造組合の要望に応えることと併せ、旭酒造の山田錦需要増にも対応する酒米の産地拡大に向けた行動計画を早急に策定して取り組むべきだと考えます。
それでは以下、酒米の産地拡大に向けて本県が取り組むべきと思う施策について申し述べ、県のご所見をお伺いいたします。
第一は、唯今述べたことであります。「需要に即した品目の生産拡大」の行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加えるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第二は、酒米の作付面積の拡大目標についてであります。本県における酒米の作付面積は、本年度約180haであると推定されます。内訳は、全農県本部関係分が約100haで、酒造蔵元等が直接契約栽培している分が約80haであります。そこで、これからの酒米の作付面積の拡大についてですが、私は、先ず現状の180haを500haまで出来るだけ早期に拡大することに取り組み、当面する酒米の需要にこたえるべきだと考えます。そして、次のステップでは、酒米の需要の動向に即しつつ、1000haまで酒米の産地拡大に取り組んだらいいのではないでしょうか。そこでお尋ねです。県は、酒米の作付面積の拡大目標につき、どうお考えなのかご所見をお伺いいたします。
第三は、酒米の栽培技術の指導体制の強化についてであります。酒米は、食用の一般米とくらべて、栽培管理により細心の配慮と手間を要するようです。従って、酒米の産地を拡大するためには、酒米に初めて取り組む生産者に対して、行き届いた栽培技術の指導と、生育状況に応じたアドバイス等が適宜行われるよう、酒米の栽培技術の指導体制の強化が必要と思われます。ついては、このことにつき、どう取り組まれるのかご所見をお伺いいたします。
第四は、酒米生産に係る、農業用の機械や施設の整備についてであります。
山田錦を生産しておられる方から聞いたことですが、山田錦は、脱粒性といって実った籾が落ちやすい性質があるので、収穫作業もゆっくり丁寧に時間をかけて行う必要がある、そのためコンバインも通常より大型のものが必要となるとのことでした。また、収穫した籾を乾燥する作業も、山田錦の場合は、一般米より胴割れを起こしやすい性質があるので、同様に時間をかけてゆっくり丁寧に行う必要があり、乾燥調製施設は、通常の米とは別に整備することが求められるとのことでした。
このような酒米の生産に取り組むことに伴い、備えることが求められる農業機械や施設の整備に対する助成制度を、酒米の産地拡大に向けた施策の一つとして検討する必要があるのではないでしょうか。本県は、既に需要対応型産地育成事業ということで、麦や大豆、園芸品目等の生産拡大に向けて必要な機械や施設の整備に対する助成制度を設けています。ついては、酒米の需要に対応するということで、酒米の生産拡大につながる農業機械や施設の整備に対する助成制度を同様に設けるべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第五は、リスク軽減対策についてであります。酒米の産地が拡大するためには、経営上酒米の生産に取り組むことはメリットがあると判断する農家や農業法人が増加する必要があります。逆に、酒米の生産は経営上リスクが高いということであれば、どんなに県が酒米の産地拡大の旗を振っても進展しないでしょう。そこで、酒米の産地拡大のためには、酒米の生産リスクを軽減する対策が講じられることが望まれます。
では酒米には、どういう生産リスクがあるのでしょうか。山田錦に関しては、先ず稲の背丈が一般の食用米より高く、倒伏しやすいということがあります。また収穫の時期が遅く、本県では10月10日ごろになるので、それだけ台風などの被害に見舞われるリスクが高いと言えます。加えて、せっかく収穫しても規格外になる割合が、通常米よりも多いようです。品質が保持された酒米は高値ですが、規格外となると通常米よりも安くなり、そのことが経営上のリスクとなります。
そこで、酒米の産地拡大のためには、特に初めて酒米の生産に取り組む農家や農業法人に対して、その栽培技術等に習熟するまでの一定期間、一般の食用米を生産した場合と同等の収入を保証する等のリスク軽減策を講ずることが有効であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
第六は、西都の雫についてであります。西都の雫は、本県が長年かけて開発したもので、山田錦にくらべて稲の背丈が20cmほど短く、その分だけ倒伏に耐える性質が強化された品種の酒米であります。酒米としての品質においても山田錦と比べて遜色はないようで、「五橋」の酒井酒造は、西都の雫を使った大吟醸酒でここ数年連続して全国新酒鑑評会で金賞を受賞しています。この西都の雫の生産は、これまで下関市の豊田の生産者が主に担って来られたようですが、酒米の需要増に応えるためには、これから全県的に産地を拡大していくことも必要ではないかと思われます。ついては、西都の雫の産地拡大に、今後どう取り組むお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
以上、酒米の産地拡大に関して6点ほどお伺いいたしましたが、要は、酒米の需要が急増している今日の状況を絶好の機会と受け止め、酒米の生産量、品質、生産技術において日本一の県を目指して、大胆に酒米の産地拡大に取り組んでほしいということであります。前向きのご答弁を期待しております。
【回答】(3)食品産業の育成支援についてと合わせて回答
(3)食品産業の育成支援について
本県の農業や漁業の振興を将来に向けて展望する時、産業戦略上、重要な政策課題の一つは、県産の農産物や水産物を主原料として使用する食品産業を伸ばし、輸出産業にしていくことであると考えます。そこで、食品産業の育成支援ということで、そうした方向での政策課題の解決に向けて取り組むべき施策についてお伺いいたします。
その1は、「やまぐちブランド」についてであります。「やまぐちブランド」は、味や品質に優れる県産の農林水産物及び主な原料が県産100%の加工品を、独自の基準で厳選したもので、現在56の商品が「やまぐちブランド」として登録されています。
この「やまぐちブランド」の登録商品は、いわば県内産品の代表選手ともいうべきもので、それが県内はもとより全国の消費者に認知され、評価されるようになり、ブランド登録商品だけではなく、山口県の産品すべてのイメージアップにつながることを期待するものであります。
そこで、この「やまぐちブランド」というブランド戦略は、数的拡大と併せ質的向上の両面で展開されることが望まれます。「やまぐちブランド」の数的拡大ということでは、平成28年度までに登録商品数を100にするという目標が示されています。私は、このことと併せ、「やまぐちブランド」の質的向上ということで、「やまぐちブランド」登録商品を、「日本ブランド」の商品にしていくという方向での取り組みを期待するものです。
現在、「やまぐちブランド」として登録されている商品56のうち、20は加工食品でして、農産加工品が13商品、水産加工品が7商品であります。これら登録の加工食品が、「日本ブランド」の商品として認知、評価されるようになっていくことが、本県の食品産業の育成支援に大きなプラス効果をもたらします。
そこでお尋ねです。昨年スタートした「やまぐちブランド」は、県産農水産物を主原料とする食品産業を育成支援する上からも有効な施策であると見ておりますが、登録商品については、数的拡大と併せ、質的向上を図っていく必要があると考えます。ついては、このブランド戦略を、今後どう展開していくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
次にその2,六次産業化の支援についてであります。農業や水産業の六次産業化を進め、これを発展させていく取り組みは、地元県産の農水産物を主原料とする食品産業の発展を包含しております。
このような農水産業の六次産業化を進めていく上で重要なのは、食品加工部門の質的向上であって、そのためには技術的支援が適切に行われることが必要であります。本県では、食品企業に対する研究開発や生産技術の支援ということでの仕組みや体制は、充実したものになって来ているように思われますが、同様に本県の農水産業の六次産業化を本格的に進展させていくために、特にその食品加工部門への技術支援が、適切に充分行われるよう体制強化を図る必要があると考えます。つきましてはこのことにつき、ご所見をお伺いいたします。
次にその3は、輸出への取り組みについてであります。先ず、国の取り組みですが、農林水産省は、農林水産物・食品の輸出額を、現在の約4500億円から、2020年までに1兆円規模に拡大する方針を打ち出し、その目標達成に向けての国別・品目別輸出戦略を、昨年8月に策定して推進しております。その輸出戦略によりますと、最も大きなウェイトを占めるのは加工食品で、現在の輸出額1300億円を、5000億円まで拡大する内容となっております。
この国の農林水産物・食品輸出促進戦略の一翼を、当然に本県も担うべきであると考え、以下3点お伺いいたします。
第1点は、本県の農水産物・食品の輸出の現状と課題、そして今後の取り組み方針についてであります。輸出の現状については、農産物、水産物、そして加工食品の内訳もお示しください。
第2点は、「やまぐちブランド」の輸出についてであります。先に、「やまぐちブランド」を「日本ブランド」へ、ということを申上げましたが、それは当然に輸出を想定してのことです。この場合、主力となるのは農水産物の加工食品であると思われます。「やまぐちブランド」の加工食品が、輸出商品として成長していくことは、その主原料となる農水産物を供給する県内の農家、農業法人、漁業者等に安定的収入をもたらすことになり、当然に目指すべき方向です。
また、県内の食品産業が、これから大きく成長していくためには海外にマーケットを求めていかなければなりません。「やまぐちブランド」の加工食品には、そのために輸出を通して海外に市場を獲得していくリーディング・プレイヤーとしての役割を果たしていくことが期待されます。
そこでお尋ねです。「やまぐちブランド」加工食品を、輸出商品に育てていくことが重要と考えますが、このことに今後どう取り組まれていくのか、ご所見をお伺いいたします。
第3点は、ミラノ博についてであります。来年5月から10月まで、イタリアのミラノ市で開催される「ミラノ国際博覧会」の日本館に、本県は5月の24日から27日までの4日間、出展することになりました。この博覧会は、「食」が中心テーマとしてあるようですので、この博覧会への出展は、本県の農水産物や食品を、全世界へ発信し輸出に繋げていく絶好の機会であります。
ついては、このミラノ博覧会の出展にどう取り組まれる方針なのか、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(村岡嗣政君)
合志議員の御質問のうち、私からは食品産業の育成に関する数点のお尋ねのうち、やまぐちブランドについてお答えします。
本県の農林水産業を成長させていくためには、県産農林水産物の需要拡大が不可欠であり、その牽引役として、味や品質にすぐれ、全国に誇れるやまぐちブランドの取り組みを推進しているところです。
お示しのとおり、現在、二十の加工食品を含め五十六商品が登録され、流通加工関係者からも高い評価を得ていることから、「やまぐち産業戦略推進計画」におけるやまぐちブランド等の販路拡大プロジェクトを拡充し、今後、その取り組みをさらに強化することとしています。
具体的には、まず、農協や漁協などの関係団体等と協働して、登録商品をさらにふやしていくとともに、大都市圏での山口フェアや食材提案会の開催、取扱店の開拓など、全国的な認知度の向上と販路拡大に努めてまいります。
また、今後はさらなる需要拡大に向けて、海外展開にも積極的に取り組むこととし、台湾を初めとしたアジアに向けた県産農林水産物の加工品の輸出拡大を進め、さらにはミラノ博覧会において、本県の「食」の魅力を発信してまいります。
さらに、近年、六次産業化・農商工連携が注目され、農林漁業者や中小企業者からの相談がふえていることを踏まえ、このたびやまぐちブランドの育成にもつながる六次産業化と農商工連携を一体的に取り組むこととしました。
具体的には、総合的に支援する窓口を一元化し、魅力ある新商品開発への単県補助制度を創設するなど、全国に先駆け、相談から商品開発、販路拡大までを切れ目なく支援する体制を構築してまいります。
私は、こうした取り組みを通じ、やまぐちブランドを初め、本県のすぐれた農林水産物を活用した食品産業の育成を支援し、農林水産業の活力向上に取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
【回答】◎農林水産部長(野村雅史君)
食品産業の育成支援についてのお尋ねのうち、六次産業化の支援と輸出への取り組みについてお答えをいたします。
まず、六次産業化に関して、食品加工部門への技術支援についてのお尋ねです。
魅力ある新商品の開発を行う六次産業化を進めるためには、お示しの技術支援が必要と考えております。
このため、加工食品の開発等の研究を行う県農林総合技術センターや、食品の製造・保存等の技術を支援する県産業技術センター、さらには産学公で構成する新商品開発などのアドバイスを行う山口県食品開発協議会などがしっかり連携しながら、魅力ある新商品の開発に向けた技術支援に努めてまいります。
次に、輸出への取り組みについてであります。
まず、お尋ねの本県の農水産物・食品の輸出額については、生産地別の統計はありませんが、財務省の貿易統計によれば、県内の港からの平成二十五年の輸出額は約七十一億円で、そのうち農産物は約二億円、水産物は約三十五億円、加工品は約三十四億円となっております。
また、課題と今後の取り組み方針については、国ごとの規制や食文化の違いなどさまざまな課題があることから、国に対する検疫などの規制緩和の要望を実施するとともに、関係機関と緊密に連携しながら、アジア等に向けた輸出拡大にも取り組んでまいります。
次に、やまぐちブランドの加工食品を輸出商品にどう育てていくかとのお尋ねです。
やまぐちブランドの加工食品を輸出商品とするためには、商品の魅力向上を図るとともに、販路開拓が重要であると考えております。
このため、国の輸出戦略の動向等を注視しながら、ジェトロ山口などと連携し、台湾での日本酒と県産食材を組み合わせたフェアや、アジア各国からのバイヤーを招聘しての商談会を実施するなど、新たな海外の販路開拓にも取り組んでまいります。
最後に、ミラノ国際博覧会への出展については、本県の農水産物や食品のすばらしい魅力を世界に向けて発信することとしています。
このため、先般、農林水産や商工、観光など、庁内関係部局で構成するプロジェクトチームを設置したところであり、今後、関係団体等の協力も得ながら、具体的な出展内容の検討を進めてまいります。
次に、酒米の産地拡大についての数点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、やまぐち農林水産業再生・強化行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加えるべきとのお尋ねであります。
米の消費量が減少する中で、本県の水田農業を振興するためには、需要と結びついた品目の生産拡大を図ることが重要であります。
このため、需要が急増している酒米の行動計画への位置づけについては、新たな県政運営の指針となる未来開拓チャレンジプランの策定状況を踏まえ、検討してまいります。
次に、酒米の作付面積の拡大目標については、当面、酒造組合からの要望量を目標とし、種子の緊急確保を図るとともに、栽培適地を確認しながら、集落営農法人を中心とする新たな産地育成に取り組むなど、可能な限り作付面積の拡大に努めてまいります。
次に、栽培技術の指導についてです。
酒米栽培には高度な技術を要することから、新たに県内十一カ所に栽培実証圃を設置し、収量や品質向上のための技術確認を行うとともに、栽培経験の豊富な農家や指導者による現地研修会の開催など、指導体制の強化に緊急的に取り組んでまいります。
次に、農業機械や施設の整備についてですが、まずは国の事業の導入が可能となるよう、農地の集積による一定規模以上の産地育成に取り組んでまいります。
次に、技術を習得するまでの一定期間収入を保証する等のリスク軽減対策についてです。
一般的には、良質の酒米は食用米よりも高値で取引されており、当面、初年度から一定の収量や品質が確保できるよう技術指導を徹底することで、経営の安定化を図っていく考えです。
最後に、西都の雫の産地拡大についてです。
西都の雫は、農林総合技術センターと産業技術センターが協力して育成した県オリジナル品種であり、その品質は高い評価を受け、需要が急増していることから、奨励品種化も検討しながら、主産地である下関市において増産を図るとともに、気象災害等のリスク分散のため、岩国市を初め蔵元に近い地域で新たな産地を育成してまいります。
県としましては、生産者団体や酒造組合と緊密な連携を図り、急増する県産酒米の需要に的確に応えられますよう、産地拡大に全力で取り組んでまいります。
(1)知事の政治姿勢について
村岡新知事に、先ずお祝いを申し上げます。県知事選挙での御当選、そして山口県知事御就任、誠におめでとうございます。
地方自治の仕事を、国の立場と地方の現場と双方で経験したキャリアを持ち、その優れた能力と資質で将来を嘱望されていた国の官僚としての地位をなげ打って本県のために身を投ぜられた村岡知事の決断に、改めて敬意と感謝の意を表し、山口県政史に名知事としての名を残す今後のご活躍を期待するものです。
さて、若き知事を得て山口県政は今、新たなスタート地点に立ちました。村岡新知事就任とともに始動し始めた県政が、県民の期待に応えて、順調かつ円滑に発展軌道に乗っていくためには、執行部と議会が、県政の目的と課題を共有し、それぞれの役割をしっかり果たしていくことが重要でありまして、県議会も県民の代表として、新知事のお考えをしっかり受け止めて政策論議をしていくことが求められます。
ついては、村岡知事は、これからどういう政治姿勢で県政運営に当たられるお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(村岡嗣政君)
合志議員の御質問のうち、私からは、政治姿勢についてのお尋ねにお答えいたします。
山口県は今、全国よりも早いテンポで人口減少や少子・高齢化が進むなど、大変厳しい状況にあります。私は、そうした目の前の困難に対して臆することなく、県民の皆様の力を結集し、未来を拓く「突破力」で、これらの障壁を克服していきたいと考えています。
そのために、私は、こうした課題を解決していくための基本的事項として、「地域経済の活力を高めて、山口を元気にする」「未来を担う「人」を育てる」など、五つの政策の柱を掲げるとともに、これらを着実に推進するため、今後の山口県の目指すべき姿を示す中期的なビジョンを策定することとしています。
このビジョンの策定は山口県の方向性を決める重要なことでありますから、策定に当たりましては、私は、県民各界各層の御意見をしっかりとお聞きするとともに、県議会における議論も踏まえながら、県政の課題に的確に対応できるものにしていきたいと考えています。
私は、執行部と議会は、県民の負託を受け、県政を推進する車の両輪であると認識しており、お示しもありましたように、県民の御期待に応えるため、県政の目的と課題を共有しながら、県政運営に努めていきたいと考えておりますので、何とぞ御理解、御協力をよろしくお願いいたします。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。
(2)上関原発建設計画の転換について
上関原発の建設計画は、最先端の石炭火力発電所の建設計画に転換すべきであると考えます。
3.11の福島原発事故以後、上関原発の建設は事実上不可能になりました。
原発による町興しの旗印を掲げて原発誘致に多年にわたり変わることなく取り組んできた上関町、そして上関原発の建設を最重要の電源確保のための事業と位置づけ多くの労力と資金を投入してきた中国電力は、今なお国のエネルギー政策において上関原発の建設計画が位置づけられることを期待し、その実現を目指す姿勢に変わりはありません。
しかし、本年度内に閣議決定される予定の新たな国のエネルギー基本計画では、「原発依存度を可能な限り低減させる。」という政策の方向性が明記される見通しであります。このことが単なる言葉の上だけのジェスチャーではなく、福島原発の過酷事故を真摯に踏まえての政策意思の表明であるならば、上関原発の建設計画は、実際上困難になったと見るのが妥当だと思います。
勿論、上関原発の建設を、原発依存を減らす方向の中に位置付け、その意義を主張することも可能であります。上関は、我が国において原発の新設が可能な最後の場所と思われることから、それが建設されても長期的には原発依存を減らすという方向に変わりはなく、将来にわたってのエネルギーの安定的確保のために、そうすべきだとの見方も成り立つからです。
しかし、そうした考えは、今日の国民意識と大きく乖離しており、電力事業者の論理としては成り立ち得ても、国民意識と不可分の政治の論理とは成り得ず、政治判断に基づき国策民営で推進されてきた原子力発電の事業において、実現の見通しは殆どないといっても過言ではありません。
現在、11基の新規原発の計画がありますが、原発依存を減らすという方向の中で受け入れられる可能性があるのは、常識的に見て大方の建設が完了している島根3号機および建設の進捗率が4割近くの大間原発までだと思われます。上関原発の建設計画も、当然この新規原発の計画に含まれていますが、以下三点の理由により、繰り返し申し上げますように建設計画が受け入れられる可能性はないと見ております。
理由の第一は、上関原発は、新設の建設計画であるということです。原発の新規立地は、新設、増設、建て替えの三通りが考えられます。増設は、1号機、2号機の原発があるところに3号機を建設するというケースであり、建て替えは、1号機の原発が廃炉になった後に新規に原発を建設するといったケースであります。新設は、既存の原発がないところに全く新たに原発を建設するケースであり、上関原発の建設計画がこれに相当します。原発依存を減らすという方向の中で、許容される新規の原発があるとすれば増設ないし建て替えが限度で、新設はあり得ないと考えます。
理由のその2は、上関原発は未着工であるということです。上関原発は、準備工事の段階であり、未だ設置許可はおりておらず未着工であります。原発依存を減らすという方向に、未着工の新規原発の建設はあり得ないと考えます。尚、未着工の新規原発建設計画は8基ありますが、その中で新設は上関原発の計画だけで、他はすべで増設であることを付言しておきます。
理由のその3は、上関原発は、中国電力の原発依存度を大きく高めるということであります。平成23年度の中国電力における原子力発電の電源構成比は、8%ですが、島根3号機が稼働するようになると、これが16%ほどとなり、加えて上関原発の1号機、2号機が計画通り稼働するようになると、原発の電源構成比は30%になる見通しであります。これは、福島原発事故の前年、平成22年6月に策定されたエネルギー基本計画、それは2030年までに総発電量の5割を原子力発電とするという原発拡大路線の内容となっていまして、福島原発事故以後白紙に戻して見直すこととされたものですが、その計画にある原子力発電の目標を中国電力管内において実現することになります。かかることが、原発依存を減らすという方向の中で許容されるものでないことは明らかであります。
縷々申し上げましたが、これを一言に要約すれば何度も申し上げますように、「上関原発は、建設出来ない。」ということであります。安倍総理が、昨年の暮12月27日の山口放送の番組で、上関原発など原子力発電の新規立地の見通しについて、「過酷事故を経験した。今は考えていない。」と述べたのも、同様の認識があってのことだと推察されます。
では、上関原発の建設計画はどうしたらいいのか。私は、石炭火力への転換を検討すべきだと思います。石炭火力発電は、CO2の排出量が多いという問題があると一般的には見られています。ところが現在、石炭火力の発電効率を上げてCO2の排出量を減らし、究極的にはCO2の排出をゼロにするという地球温暖化対策にも適合した石炭火力発電の実用化に向けた実証実験の事業が行われています。
この事業に取り組んでいるのは、広島県大崎上島町にある大崎クールジェン株式会社で、中国電力と電源開発株式会社が折半出資で設立した会社であります。私は、先般この会社を訪ね、大崎クールジェンプロジェクトと称して取り組まれている事業概要の説明を受け、建設中の実証試験施設を視察してまいりました。
このプロジェクトは、第1段階が平成30年度までで、石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証実験を行います。現在、石炭火力のほとんどは、石炭を破砕して微粉炭にし、これを燃焼させる微粉炭火力発電方式ですが、IGCCは、石炭をガス化してガスタービンによる発電を行うとともに、その排熱を利用して蒸気タービンによる発電を複合して行うことにより高効率の発電を実現するものであります。IGCCには、石炭ガス化炉に酸素を吹き込む方式と空気を吹き込む方式の2種類ありますが、ここでは酸素吹IGCCの実証試験を行います。
第2段階は、第1段階の酸素吹IGCCに、CO2分離・回収設備を追設して、CO2ゼロエミッション発電の基盤となる実証試験を行うものです。期間は平成28年度から30年度までの予定です。
第3段階は、酸素吹IGCCに、石炭ガス化で生じた水素を燃料とする燃料電池を組み合わせた発電、これを石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)と申しますが、このIGFCによる発電をCO2分離・回収型で行おうとするもので、究極の高効率発電とCO2ゼロエミッションを目指す実証試験であります。期間は平成30年度から34年度までの予定です。
中国電力は、この実証試験を経て実用化の見通しが立ったならば、旧来の石炭火力発電所を、このIGCCもしくはIGFCの石炭ガス化複合発電所に更新していくことを計画していると思われますが、実際上計画実現が困難となった上関原発の建設予定地に、CO2分離・回収型IGCCもしくはIGFCを建設することを検討すべきではないでしょうか。
このことを、私に示唆されたのは、一橋大学の橘川武郎教授です。橘川教授は、電力事業を含め我が国の産業史に詳しく、国のエネルギー基本計画策定のために設けられた有識者会議、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員であります。私は、昨年秋この橘川先生を訪ねたのですが、その際新たに策定予定のエネルギー基本計画においては、「個々の原発計画について、どうすべきか判断できる基準となるものを示す内容とはならないであろう。」との見通しを述べられました。また、上関原発の建設計画については、その実現が困難との認識から、「中国電力は、元々石炭火力が強い。これまで原発建設に向けて協力してきた上関町のためには、世界最先端の石炭火力発電所をつくるのがいいのではないか。」との趣旨を語られ、酸素吹IGCCのことを紹介されました。
この話を聞いた後、私はその可能性をこの目で確かめたく、上関の原発建設予定地を視察し、IGCC、IGFCの実証試験施設の建設現場を訪ねた次第です。そして、素人目ではありますが、「中国電力がやる気になれば、上関の原発建設予定地に、石炭ガス化複合発電所、即ちIGCCもしくはIGFCを建設することは可能である。」との結論に至りました。
現在、我が国で実用化されている最高効率の石炭火力発電は、USCと言われる微粉炭式石炭火力発電で、従来の石炭火力では、発電効率が36%程度だったのが、USCでは41%まで向上し、燃料費とCO2の排出量が、1割以上低減されています。
2008年の主要国の電源別発電電力量構成比を見ますと、石炭火力の割合は日本は26.8%ですが、人口第一位の中国は78.9%、第二位のインドは68.6%、第三位のアメリカが49.1%でありまして、世界の中で人口上位3カ国において石炭火力発電の割合が高いことがわかります。しかも、この三カ国の石炭火力の発電効率は、我が国の石炭火力と比べると低いので、この三カ国に、USCのような日本で運転されている最新式の石炭火力発電が普及すれば、CO2排出量が年間13億4700万トン削減されると試算されています。
これは、鳩山元首相が、国連で2020年までに、我が国のCO2排出量を、1990年比で25%削減すると公約した量(3億2千万トン)の4倍強、1990年の日本の温室効果ガス総排出量の107%に相当します。先ほど紹介しました橘川教授は、このことを指摘して、我々が直面しているのは、「日本環境問題」ではなく「地球環境問題」であるから、我が国の世界トップレベルの石炭火力発電技術の海外移転を推進して、鳩山公約以上の地球温暖化防止に向けたCO2排出量の削減に、我が国は貢献すべきであると主張しておられます。
そのことはともかく、私が注目するのは、かように世界の中で抜きんでている我が国の石炭火力発電技術を、更に進化させて一層の高効率発電と低炭素化を実現しようとするのが、大崎クールジェンプロジェクトであるということです。先に触れました最新の微粉炭火力発電USCの発電効率は41%でありますが、このプロジェクトではIGCCでこれを48%までに、IGFCでは更に55%まで高める実証試験に取り組んでいます。発電効率が高まればCO2の排出量も低減されて、IGFCは、USCに比してCO2の排出量が25%削減される見通しです。しかも、その上で排出されるCO2は、全て分離・回収してゼロエミッションを実現することを、このプロジェクトは目指しています。
現在も、世界の電源の主力は石炭火力であり総発電量の4割を占めています。しかも、石炭は、人類社会の需要に向こう100年以上応え得る埋蔵量があると見做されていることから、このプロジェクトで取り組まれている石炭火力発電技術の実用化は、地球温暖化対策とエネルギー安定供給の両立を実現するものであり、21世紀の人類社会に希望と光明をもたらすものであります。
以上申し上げましたことを踏まえ、三点ほどご所見をお伺いいたします。
第一点は、中国電力への要請についてであります。
新たに策定予定の国のエネルギー基本計画では、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。」と記されており、上関原発の建設計画を、高効率の石炭火力発電の建設計画に転換することは、国の新たなエネルギー政策に沿うものです。また、先の県知事選挙で読売新聞が行なった世論調査では、上関原発に関しては、「建設を中止すべき」が45%、「建設を凍結すべき」が29%、「建設を続けるべき」が17%で、74%が上関原発の建設には否定的との結果が出ており、原発から高効率・低炭素石炭火力への計画転換は、こうした県民の意識に応えることになると思われます
そこでお尋ねです。県は、中国電力に対して、上関原発の建設計画を、大崎クールジェンプロジェクトで実用化予定の石炭火力発電所の建設計画に転換するよう要請し促すべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第二点は、国への要望についてであります。
上関町の原発建設計画が、石炭ガス化火力発電の計画に転換された場合は、懸念されることは原発立地予定の自治体ということで交付されていた電源三法による交付金が途切れることであります。電源三法交付金が交付されるのは、原子力・水力・地熱の発電所の立地が予定されている自治体であり、今後新たに計画される火力発電所については、立地地点が沖縄県にある場合しか交付されません。
従って、現行の電源三法交付金制度のもとでは、原発計画が火力発電に転換された場合、上関町は、財源の面から住民福祉サービスや行政水準を維持していくことが困難になります。
そこで、私が訴えたいことは、上関町のように国のエネルギー政策に協力してきた自治体の原発建設計画が、別の電源による計画に変更された場合、それが国のエネルギー政策の方向に沿うものであれば、電源三法交付金制度の適用は、継続されるべきだということであります。
電源三法交付金制度は、原子力・水力・地熱による発電というCO2を排出しない発電用施設を、原則として交付対象にしていますが、これに大崎クールジェンプロジェクトで実用化予定の高効率・低炭素の石炭火力発電所も含めるようにすることは、広い意味で電源三法が目指す方向に沿うものであり、且つ新たに策定予定の国のエネルギー基本計画が、原発依存度を可能な限り低減させるとして、再生エネルギーの導入とともに火力発電所の効率化を挙げていることから、新たな国のエネルギー政策に対応した措置として当然に検討されてよい改正の方向であります。
ついては、県は、電源三法交付金制度の交付対象となる発電用施設に、高効率・低炭素の火力発電所も含めるよう、制度の改正を国に要望すべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第三点は、公有水面埋め立て免許の延長申請についてであります。
来月、4月11日には、一年間県の判断が先送りされた上関原発建設用地整備のための公有水面埋め立て免許延長申請に関する補足説明の回答期限が来ます。結論から申し上げて、県はこの延長申請を不許可とした上で、中国電力の原状回復義務を免除することが、法の趣旨に則り、且つ現状に適合した対応として望ましいと考えます。
中国電力は、平成24年10月5日に免許延長申請をした際の報道資料において、「この申請の目的は、当面の現状維持であって、準備工事を直ちに進めようとするものではない。」旨、明らかにしております。
察するに、中国電力は、上関原発の建設計画を進めていくという方針に変わりはないということを内外に示す意味と、国のエネルギー政策の動向等も含めて、実際建設計画を進めることができるかどうか判断できる状況が整うまでの間、現状維持を確保したいということで、埋立免許の延長申請をしたのだと思われます。前者は、延長申請をしたこと自体で目的を達していますし、原状回復義務が免除されれば、現状維持という後者の目的も達されます。また、埋立免許の失効は、将来の新たな免許を受ける可能性を排除するものではありません。
ついては、上関原発の建設計画に係る公有水面埋め立て免許の延長申請は不許可とし、原状回復義務は免除することが望ましいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎商工労働部長(木村進君)
上関原発建設計画の転換について、二点のお尋ねにお答えします。
まず、中国電力への要請についてです。
お示しのありました石炭ガス化複合発電(IGCC)や、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)は、次世代の高効率な石炭火力発電技術であり、平成二十五年六月に閣議決定された日本再興戦略において、IGCCは二○二○年代、IGFCは二○三○年代の実用化を目指すとされています。
しかしながら、これら次世代の石炭火力発電技術が実用化される段階において、商業用発電施設として活用してくのか、また、どの地点に計画するのかについては、電気事業者である中国電力みずからが判断されるものと考えています。
したがって、県としては、中国電力に対し上関原発計画を石炭火力発電に転換するよう要請し促す考えはありません。
次に、国への要望についてです。
電源三法交付金は、発電用施設の設置及び運転の円滑化に資することを目的として、発電用施設の周辺地域における公共用の施設の整備、その他の住民の生活の利便性の向上及び産業の振興に寄与する事業を促進するために交付されるものです。
お示しのとおり、火力発電所の立地については、制度の対象外となっていることは承知しておりますが、上関町は、原発立地によるまちづくりを進めたいという政策選択をされており、県としては、上関町の政策選択を尊重するという立場で対応していますので、国に制度の改正を要望する考えはありません。
【回答】副知事(藤部秀則君)
私からは、上関原発建設計画の転換についてのお尋ねのうち、公有水面埋立免許の延長申請についてお答えいたします。
このたびの申請が適法なものであり、埋立免許権者である県には、事業者の主張について審査を尽くす責務がありますことから、現在、審査を継続し、事業者である中国電力に対し、補足説明の照会を行っているところであります。回答が提出された段階で、その内容をよく精査し、これまでの審査状況等も踏まえ、法に基づき適正に審査していく考えであります。
こうした審査を行った結果、法上の要件である正当な事由の有無を判断できるようになれば、埋立免許権者として、許可・不許可の行政処分ができるものと考えており、その回答の提出がない現時点において、すぐに許可・不許可の行政処分の判断を行うことは考えておりません。
なお、仮に埋立免許が失効した場合における原状回復義務につきましては、行政処分の段階で、法の規定に基づき適切に対応していくことになります。
(1)観光力の増強について
「秋吉台の地質構造を知ることは、日本列島の生い立ちを知ることになる。」、秋吉台科学博物館発行の「秋吉台3億年」には、こう記されています。
美しい広大なカルスト台地である秋吉台は、その地下に秋芳洞をはじめとする450もの鍾乳洞を蔵しており、学術的価値の高い自然の景勝地として、山口県を代表する観光地になっております。
山口県観光客動態調査によれば、昨年平成24年の県外からの観光客数第一位の観光地は秋吉台・秋芳洞で、694,884人県外から訪れています。以下県外からの観光客数ベストファイブをご参考までに紹介いたしますと、 第二位が岩国市の錦帯橋で649,062人、第三位がしものせき水族館「海響館」で470,884人、第四位が山口市の瑠璃光寺五重塔があります香山公園で466,791人、第五位が萩の松陰神社で450,704人となっております。 次に、インバウンド即ち海外からの観光客の動態を市町別に見れば、県内ビッグスリーは岩国市、山口市、美祢市でして、平成24年は美祢市が第一位で24,988人の外国人観光客が美祢市に訪れています。 その殆どは、秋吉台・秋芳洞を観光したであろうことは想像に難くありません。
このように秋吉台・秋芳洞が、今日も本県を代表する観光地であることに変わりはありませんが、かって年間200万人もの観光客が訪れて賑わっていた当時と較べると、現状はいささかさびしい感がいたします。
この景勝に優れ、学術的価値の高い秋吉台・秋芳洞に、かっての賑わいを回復することができれば、美祢市のみならず近隣の山口市、長門市、萩市、下関市、宇部市、ひいては岩国市を含む全県の観光力アップ、 経済活性化に繋がると見ております。県内で最も離れている岩国市との関連では、昨年12月に開港した岩国錦帯橋空港の復路の利用者の1割強は目的地が美祢市であり、秋吉台、秋芳洞等への観光客であることがうかがわれます。
県が今年の10月に策定した「やまぐち観光推進計画」を見ますと、本県観光の課題として「観光ポイントが分散」していることを指摘していますが、観光地としての評価、実績においても、 地理的位置が県内各地の観光地と観光ルートを組み合わせやすい点においても、秋吉台・秋芳洞を県内観光の核となるポイントとして育てていくことが、山口県全体の観光力増強に繋がるのではないでしょうか。
そこで、本県の観光力増強に向けてのお尋ねの第一点は、山口県観光の核となるポイントに、秋吉台・秋芳洞を位置づけることについてであります。
秋吉台・秋芳洞は、全国的に知名度があり誘客力ある本県を代表する観光地であります。私は、その秋吉台・秋芳洞への特に県外からの観光客が増えることは、県内各地の観光地が潤うことに繋がると見ております。 県外から秋吉台・秋芳洞の観光に来た人たちは、必ず他の県内観光地をセットで観光すると思われますし、宿泊は美祢市は受け入れ能力が小さいので、 大方は周辺の長門市の湯本温泉や山口市の湯田温泉あるいは萩市等になるであろうと思われまして、秋吉台・秋芳洞と県内観光地はウィン・ウィンの関係にあるからです。
ついては、秋吉台・秋芳洞を県観光の核となるポイントとして位置づけ、時代のニーズに応じた観光地としてのリニューアルとブラッシュアップに取り組むことを、県の観光力増強に向けた戦略の柱の一つにすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
次に第二点は、ジオパークへの取り組みについてであります。
ご案内のように、美祢市が世界ジオパーク認定に向けて取り組んでいます。
ジオパークとは、「地球科学的に見て重要な自然の遺産を含む、自然に親しむための公園。地球科学的に見て重要な特徴を複数有するだけではなく、その他の自然遺産や文化遺産を有する地域が、 それらの様々な遺産を有機的に結びつけて保全や教育、ツーリズムに利用しながら地域の持続的な経済発展を目指す仕組み」とされています。ジオパークのジオはギリシャ語で、土地、地理、地球などを表す言葉です。
ジオパークには日本ジオパークと世界ジオパークと二通りあり、先ず日本ジオパークの認定を経て世界ジオパークの認定を目指すことになります。日本国内におけるジオパークの評価や認定は日本ジオパーク委員会が行い、 この委員会が、日本ジオパークの認定を受けた地域の中から世界ジオパークの候補を推薦することとなっております。現在、日本国内において世界ジオパークの認定を受けた地域は、京都府・兵庫県・鳥取県の山陰海岸や島根県の隠岐など6地域、 日本ジオパークの認定を受けた地域は、伊豆半島、佐渡、阿蘇など32地域となっております。
美祢市においては、「世界遺産への登録を。」という声もあったようですが、世界遺産とジオパーク双方について議論検討をした結果、世界ジオパーク認定を目指すこととし、平成22年度に策定した「美祢市総合観光振興計画」に、そのことを重点プロジェクトとして掲げました。
その後、平成23年4月に市役所内にジオパーク推進室を設置、翌平成24年3月には、21団体で構成される「美祢市ジオパーク推進協議会」を設立、 この協議会には山口県も宇部県民局長を構成メンバーとする形で参加しております。そして、今年平成25年4月に、日本ジオパークネットワークに加盟申請書を提出、 審査結果は9月に開催された日本ジオパーク委員会において発表されましたが、「拠点施設、パンフレット、解説板等のジオパークを認識できる整備は進んでいない」等との理由で認定は見送りとなりました。
私は、美祢市が世界遺産登録ではなく世界ジオパーク認定を目指すことにされたことを、妥当な判断として評価するものです。美しいカルスト地形を造り、 その地下に秋芳洞をはじめとする巨大な鍾乳洞を育んだ秋吉台は、地球の歴史の中で自然が造りあげた大傑作であり、冒頭紹介しましたように日本列島の生い立ちを知るうえでの貴重な地質構造を、 今日に残している学術的価値が高い自然の景勝地であります。そうした秋吉台・秋芳洞をはじめとする地域の様々な大地の恵みと特質の広がりを、地道ではあっても時の経過とともに着実にブラッシュアップしていく方向として、 世界遺産よりジオパークの方がふさわしい、私は、そう理解しております。
今回は、美祢ジオパークの日本認定は見送りとなりましたが、この地域のジオパークとしての潜在的価値は卓越したものがあり、必ず近い将来、日本ジオパークの認定、そして世界ジオパークの認定に至るものと確信しております。
そして、そのことは結果的に秋吉台・秋芳洞をはじめとするこの地域の観光的価値もさらに高めることになり、ひいては本県観光の底上げにも資することになると思われます。
このような美祢市のジオパーク認定に向けての取り組みに対して、県はこれまで推進協議会の構成メンバーになり、支援の姿勢は取っていたものの、基本的には見守るスタンスではなかったでしょうか。 私は、美祢市のジオパーク認定に向けての取り組みは、県全体の観光力増強にもつながることを認識し、県も支援の姿勢から更に一歩踏み込み、美祢市と共に取り組むということにすべきだと考えます。
そこでお尋ねです。ジオパークの認定は、ジオパークとしての活動や事業がどういうものかということが問われ、そのためのハード、ソフト両面での整備が充分かどうかが審査されることになると思われます。 そうしたジオパークとしてのハード、ソフト両面での整備に、県も美祢市と共に取り組み、必要な役割を担うべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
観光力増強に向けてのお尋ねの第三点は、修学旅行についてであります。
明治維新に始まる近代日本の成り立ちを知る上において、また日本列島の生い立ちを知る上において山口県は恰好な県であります。明治維新に関する史跡は、萩市をはじめ県下各地に豊富にありますし、 自然が3億年にわたって造り上げた秋吉台からは、地球の歴史そして日本列島の生い立ちを学ぶことができます。従って、中学校・高校において特別活動として学校教育の一環に位置付けられている修学旅行の行き先として、 山口県は最も相応しい県の一つだと思われますが、実際はそうなっていません。
財団法人日本修学旅行協会が、平成23年度に実施された中学校の修学旅行に関して実態調査を行っておりますが、それによりますと、都道府県別旅行先順位は、 山口県は第18位で、構成比は0.6%であります。因みに、第1位は京都府で構成比は20.7%、第2位は奈良県で構成比は16.3%です。高校については、平成22年度の修学旅行に関して調査し、 見学先上位20位迄を公表しておりますが、そこには山口県の観光地は一つもなく、また、県の観光客動態調査でもそうした実態は十分に明らかにされていません。高校の修学旅行で特徴的なのは、 見学先上位10位迄に、首里城やひめゆりの塔など沖縄の見学地が6カ所含まれていることです。平和教育と今日主流になりつつある体験学習を含んだ修学旅行の適地として沖縄が選ばれるケースが多いようです。
中学生、高校生の多くが修学旅行で沖縄に行き、沖縄の自然や風土に触れると同時に、戦争の悲惨さ平和の尊さを学ぶことは意義あることで、それはそれでいいことだと思います。 ただ同様に、全国の中高生に山口県に来て明治維新の史跡に触れ、秋吉台・秋芳洞を訪ねてほしい、そして近代日本を築いた先人たちや日本列島形成に至る壮大な地球のドラマに思いを馳せ、立派な日本人に育つ糧にしてほしいと願う次第です。
明治維新の史跡と言えば、萩の松陰神社に在る松下村塾が代表的ですが、下関の桜山神社招魂場も感銘深いものがあります。維新の戦いに命を捧げた396柱の志士たちの御霊が、 偉大な指導者吉田松陰先生から奇兵隊小者弥吉といった名もない者にいたるまで、同じ墓標で等しく整然と祀られている様は、士農工商の身分制を超えた四民平等の近代日本への理念が、 維新の戦いには息づいていたことを今日に伝えています。また、平和教育ということでは徳山大津島の回天基地があり、日本の代表的な木の名橋である岩国の錦帯橋、大内文化を今日に伝える山口の瑠璃光寺五重塔など、 修学旅行で訪ねれば子供たちが喜び感動するであろうと思われるところが本県には多々あり、最近の修学旅行の概ね6割を占める体験学習型も、新たな人気の産業観光も、優れた魅力的なプランを提供することが可能とみております。
そこでお尋ねです。以上申し上げましたことから、当然に本県の観光力増強に向けた大事な課題として、加えて全国の青少年のための教育的貢献という観点から、 山口県は県観光客動態調査による正確な実態把握に努めた上で、修学旅行の誘致にもっと力を入れて取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事職務代理者副知事(藤部秀則君)
合志議員の観光力の増強に関する御質問のうち、私からは、秋吉台・秋芳洞の位置づけについてのお尋ねにお答えいたします。
本県は、観光地が各地域に分散し、名所旧跡の見学観光が多い中で、日帰り・通過型観光へのシフトが進んできております。
このため、県といたしましては、自然や歴史文化を初め食や温泉など、県内各地域の魅力ある多様な観光資源を組み合わせ、それらを十分に生かした広域観光エリアの形成や、テーマツーリズムの推進等により、宿泊滞在型観光への転換を図っていくことが重要と考えております。
お示しの、全国有数の観光地であります秋吉台・秋芳洞につきましても、こうした全県的な観光戦略の展開を図る中で、その再生や魅力向上等を図っていく必要があります。
このため、県におきましては、これまでも、JR西日本との連携による広域観光キャンペーンの展開や、地域資源を生かした地旅づくり等を通じ、また本年度からは、広域観光力強化事業により、秋吉台・秋芳洞の観光地としての魅力向上に向けた取り組みを積極的に支援してきたところであります。
一方、地元美祢市におきましても、総合観光振興計画を策定され、現在、観光振興条例の制定によるおもてなしの強化や、体験型エコツアーの充実など、計画的、重点的な取り組みが進められております。
こうしたことから、県といたしましては、今後とも、各地域で積極的に進められている地元の主体的な取り組みを支援しながら、全県的な立場に立って、全国に向けた観光情報の発信や広域観光ルートの形成、旅行業者等へのセールス活動等を展開するなど、戦略的、効果的な誘客対策の強化に取り組んでまいりたいと考えております。
県といたしましては、地元市町等と連携を図りつつ、秋吉台・秋芳洞を初めとした本県の多彩な観光資源の魅力を生かし、それらを相乗的に活用しながら、宿泊観光客五百万人の実現に向けた取り組みを積極的に展開してまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答えを申し上げます。
【回答】◎総合企画部長(藤井哲男君)
観光力の増強についての御質問のうち、ジオパークに関するお尋ねにお答えします。
秋吉台は、カルスト地形や鍾乳洞など、日本列島の生い立ちを知る上で貴重な地質構造を今日に残す、学術的価値が高い自然の景勝地であり、美祢地域のジオパークの認定は、お示しのように、本県観光力の増強につながるものと考えておりますことから、県としても、これまで、美祢市ジオパーク推進協議会への参画や、認定に係る政府要望を行うなど、美祢市の取り組みを支援してきたところであります。
美祢市では、このたびの認定見送りを受け、再申請を目指すため、組織体制の強化を図るとともに、日本ジオパーク委員会から示された課題の解決に向け、中核的人材の確保育成や、山口大学との連携強化などの取り組みを進めることとされたところです。
県といたしましても、再申請に向けた美祢市の取り組みを総合的に支援していくため、関係部局で構成する山口県美祢ジオパーク支援会議を設置するとともに、県と美祢市、合同でプロジェクトチームを立ち上げ、ハード・ソフト両面にわたる取り組みを協働して進め、県として必要な役割を担ってまいります。
【回答】◎商工労働部長(木村進君)
観光力の増強に関する御質問のうち、修学旅行についてのお尋ねにお答えします。
修学旅行の誘致は、大型の誘客だけではなく、将来的なリピーターの確保や本県観光の認知度、イメージの向上にもつながることから、自然や歴史文化、産業資産など、豊富な学習資源を有する本県におきましては、重要かつ効果的な観光戦略の一つと考えております。
しかしながら、修学旅行先は、近年多様化しつつあるものの、依然として、人気の高い関東、関西地方に集中し、さらに航空機を利用した沖縄や北海道方面のニーズが高まっていることから、本県の魅力を生かした誘客対策の強化が強く求められているところです。
このため、県においては、特に近年、農業や漁業、生活体験など、本格的な参加・体験型の学習ニーズが高まっていること等を踏まえ、平成二十二年に、体験型旅行誘致推進会議を設立し、こうした体験型旅行を大きなセールスポイントとして、旅行業者や学校関係者への誘致活動を積極的に展開してきているところです。
この結果、体験型修学旅行については、昨年度、周防大島町を中心に、二十六校、約四千五百名の受け入れを行ったところであり、県としては、引き続き、地元市町等と連携を図りながら、誘致活動の強化や受け入れ先の拡大、体験プログラムの一層の充実等に取り組んでまいりたいと考えております。
また、今後はさらに、お示しの県観光客動態調査による修学旅行の実態把握等に努めるとともに、学校側のニーズを踏まえながら、県ならではの歴史文化や産業、自然資源等を活用したテーマ型の学習素材の開発やモデルコースの充実等を図るなど、戦略的な誘致活動を展開してまいりたいと考えております。
(2)小学校の英語教育について
「英語は道具であって、人間の価値や人格とは関係ない。」
「小さい時からネイティブ(英語の場合は、英語圏で育ち、正しい英語を話す人を意味する)から英会話を学んだ子たちが、大学では一番下の基礎英語クラスにいる。彼らに共通しているのは、中学一年の時は、英語は楽勝で勉強しなくてもトップだったのが、 二年生後半から英語教育についていけなくなり、極端に苦手になることである。」
「学校教育が目指さなければならないのは、日本人が何よりも日本語を思考の道具として使いこなし、日本人としての資質を身に付けることである。」
「『一流の日本人づくり』が、『国際人づくり』の土台である。日本語での思考の土台が確立され、日本語をしっかり使いこなすことができなければ、どんなに他の言語が技術的にはできても、本当の意味での国際人になることはできない。」
以上は、山口大学で英語を教えておられる先生の論考からの引用です。私は、誠に正鵠を得た大事な指摘であり、今日小学校で進行している英語教育の導入を考える上で参考にすべき卓見であると思っています。
ご案内のように、平成23年度から小学校の5年生、6年生は、「外国語活動」ということで週1時間、年間で35時間、英語学習が行なわれるようになりました。小学校への英語教育の導入は、 平成14年度からで、「総合的な学習の時間」を中心に国際理解教育の一環として英語活動が行なわれるようになったのが始まりです。ただ、このやり方では学校によって内容や時間数にばらつきがあり、 教育の機会均等や中学校に入学した時に共通の基盤が持てるようにということで、小学校5.6年生を対象に英語学習が「外国語活動」として必修化されました。
そして、現在は安倍政権のもと内閣府が所管する教育再生実行会議の第三次提言において、小学校の英語学習の抜本的拡充ということで、実施学年を小学3,4年からにする早期化や指導時間の増加、 更には英語学習を「外国語活動」から正式な「教科」にする等について検討するよう提言されていまして、小学校への英語教育の導入は、一層進む見通しです。
こうした英語教育導入の背景には、アジアの国々が英語教育に積極的だということも影響していると思われます。韓国では1997年に小学3年から、中国では地域の状況に応じて差はあるものの、 基本的には2001年に小学3年から必修化されています。
私は、世界の一体化、そういう意味でのグローバル化が進行している今日、国際的共通語としての英語を学び、身に付け使えるようになることの意義は認めるものであります。ただ、現在導入され、 さらに一層拡充されようとしている小学校の英語教育については、検証が必要と思うことがあり、以下三点ほど、県教育長のご所見をお伺いしたいと思います。
先ずお尋ねの第一点は、現在小学校で行われている英語教育の効果についてであります。平成23年度から必修化された小学校の「外国語活動」は、英語による歌やゲームなどで英語に慣れ親しみ、 英語によるコミュニケーション能力の素地を養うことが目標とされています。意図するところは、そのことが中学校における英語教育の基礎となり、英語の実践的なコミュニケーション能力を培うことに 繋がるということであります。ただ、冒頭に紹介しました山大の英語教育の先生の指摘のように、小さい時からの英会話、コミュニケーション重視の英語学習の効果を疑問視する見方もあり、検証が必要です。 そこでお尋ねです。「総合的な学習の時間」としての英語活動を含めれば小学校への英語教育の導入は10年余経過していることになりますが、そのことは中学校の英語教育に、どういう効果をもたらしていると見ておられるのかお伺いいたします。
お尋ねの第二点は、教育体制についてであります。現在、小学校における英語学習は、学級担任がALT(外国語指導助手)を活用しつつ受け持っているということのようですが、それで中身のある英語学習ができているのか、 英語学習にかかる負担増で学級担任が受け持っている国語や算数などの教科の授業に影響はないのか、英語担当の専科の教諭配置もなされているのか、小学校の教員採用試験においては英語の扱いはどうなっているのかお伺いいたします。
お尋ねの第三点は、国語教育についてであります。2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治先生は、「グローバル化と国際化は連続していますが、区別して考えなければなりません。 国際化は自分たちの国の特質を堅持したうえで、諸外国と関係をつくること。グローバル化は世界の一体化です。」と、述べておられます。正しく至言で、これから日本の特に若い世代に求められる生き方は、 日本人としての特質をしっかり保持した上で、グローバル化に対応していくことではないでしょうか。
従って、グローバル化への対応として英語を道具として使いこなせるようになることは望ましいことでありますが、その土台は立派な日本人であることであり、日本語での思考の土台が確立されていることであります。
そこでお尋ねです。小学校への英語教育の導入により、国語教育がおろそかになるようなことがあってはならない、むしろ国語教育は一層充実されるべきであると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
【回答】◎教育長(田邉恒美君)
小学校の英語教育に関する三点のお尋ねにお答えいたします。
まず、中学校の英語教育への効果についてです。
小学校におきまして、英語教育は、平成十四年度から総合的な学習の時間の中で、国際理解に関する学習の一環として始まり、現在は学習指導要領の改訂により、外国語活動として実施されているところです。
各学校の外国語活動におきましては、歌やゲーム、簡単な日常会話など、子供たちは、楽しみながら英語になれ親しんでおり、今年度の六年生の調査におきまして、「英語が好き」と答えた児童の割合が八○%を超えるなど、外国語活動への興味関心が高まっているところです。
また、外国語指導助手との触れ合いにも物おじすることなく、英語を発することへの抵抗感が少なくなるなど、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が見られ、中学校の英語教育への円滑な導入につながっていると考えております。
次に、小学校の外国語活動を進める上での教育体制についてです。
外国語活動の実施に向けましては、何よりも教員の指導力向上が重要でありますことから、具体的な指導方法について理解を深める研修を、全ての小学校教員を対象に行いますとともに、研究指定校や学力向上推進教員のすぐれた指導事例を取り上げた校内研修を行うなど、効果的な外国語活動が進むよう取り組んでいるところです。
また、全ての小学校で、文部科学省が作成した教材やDVDなどを活用し、外国語活動に係る負担軽減を図っており、国語や算数など他教科の授業への影響が生じないよう取り組んでいるところであります。
英語担当の専科の教諭につきましては、配置していないところでありますが、学校によっては、教員の専門性等も踏まえ、必要に応じて専任化している事例もあります。
また、小学校の教員採用試験における英語の扱いにつきましては、平成二十年度実施の採用試験から、英検二級程度の資格を選考に当たっての評価項目とするとともに、二十三年度実施の採用試験からは、筆記試験に外国語活動に関する内容を出題しているところであります。
次に、国語教育の充実についてです。
急速に進展するグローバル社会で将来にわたり活躍できる人材を育成していくためには、英語学習を通じて豊かな語学力や国際感覚、コミュニケーション能力を身につけるとともに、自分の考えや意見を論理的に組み立て主張していく力が求められており、その基盤となる思考力や教養、情緒を育む国語教育を一層充実していくことが重要と考えております。
このため、小学校低学年の国語科におきましては、音読や漢字の読み書き、読書等の学習機会の拡充により、国語の基本的な力の確実な定着と言葉に対する感性等を育みますとともに、中・高学年におきましては、考えを深める話し合いなど、発展的な学習の取り組み等を進めております。
また、授業改善におきまして、校内研修を活性化させ、全ての学級において活用する力を高めるための言語活動を重視した授業を推進いたしますとともに、保護者や地域ボランティアとの連携などによる読書活動の充実にも取り組んでいるところであります。
県教委といたしましては、市町教委や学校、家庭、地域社会と連携を密にし、効果的な英語教育にもつながる、国語教育の一層の充実を図ってまいります。