(3)水田汎用化の促進について
水田汎用化の促進についてであります。
米を基幹作物とする我が国農業の将来への展望は、いまだ開けていません。民主党政権が導入した農家への戸別所得補償制度も、むしろ米価下落の要因になったのではないかとの指摘もあり、補償を上回る米価の下落が懸念されています。
我が国では、米づくりのために整備された水田が、さまざまな国土保全の役割も果たしており、米づくりを中心にして集落が形成されてきた歴史もあり、米を中心とした農業を守ることが、今日も農政の最大の課題であります。
しかし、日本の米を高関税で守ってきた国境措置も、ことしになって急浮上してきたTPPに我が国も参加するとなった場合、一定の時間的猶予はあっても、原則廃止という方向になるものと思われることから、日本農業は重大な危機に瀕することになります。
こうした経済活動のグローバル化への対応は、当然国の政策としてなされるべきことですが、私たち県政に携わる者は、常に地方の現場にあって地域の実情を知る者として、国の政策が適正なものとなるよう発言し行動して、地域経済を守っていく役割を果たしていかなければなりません。
そこでお尋ねであります。米価の下落傾向、経済のグローバル化という中にあって、強い地域農業を育てていくためには、水田を汎用化して、米だけに頼らず、状況に応じて野菜等も含めて必要な農作物の生産に取り組むことができる農業生産基盤の整備が重要と思われますが、次年度の予算において水田の汎用化には、どう取り組まれる方針なのかお伺いいたします。
【回答】◎農林水産部長(藤部秀則君)
水田汎用化の促進についてのお尋ねにお答えします。
お示しのように、米価の下落傾向や経済のグローバル化など、農業をめぐる環境が大きく変わる中、本県農業の担い手となる集落営農法人等の経営安定化のためには、土地利用率を高める畑作物の生産拡大が重要であり、これを支える基盤となる水田汎用化の一層の促進が不可欠と考えております。
こうしたことから、本県では、これまでも国の補助事業等を活用し、降雨後の地表水を早期に排水する浅層暗渠や、排水機能とかんがい機能をあわせ持つ地下かんがいシステムの導入により、「やまぐち食と緑・水産チャレンジ実行計画」に掲げる、平成二十四年度末までの水田汎用化の整備目標一千ヘクタールに対し、昨年度末までに六百六十七ヘクタールの整備が進んだところですが、貿易の自由化や農業の産地間競争の激化などが避けられない中で、麦・大豆・タマネギ等県内での安定的な需要が見込まれる作物の生産を拡大するためには、水田汎用化のさらなる推進が必要と考えています。
このため、九月補正予算において、光市束荷地区ほか六地区で地下かんがいシステム等の整備に必要な予算措置を行うとともに、今次補正予算において、山口市川西地区ほか四地区で水田汎用化のための区画整理工事等を前倒しで実施することとしています。
県といたしましては、来年度予算に向けて、公共事業費の削減など国の予算が厳しい中にありますが、整備が急がれる水田汎用化については、経営体育成基盤整備事業等による計画的実施はもとより、基盤整備済み農地についても、畑作物等の生産拡大のための新たな国の事業の導入に努めてまいりたいと考えています。
(4)情報通信基盤の整備について
情報通信基盤の整備についてであります。
四国には、小さいけれど、きらりと光る村や町があります。その一つが高知県の馬路村であります。高知県東部の千メートル級の山々に囲まれた山間に位置する馬路村は、総人口はことしの十月末現在で千四十六人の小村ですが、ゆずジュースなどゆず加工品のブランド化に成功し、インターネットを使っての通信販売も行っておりまして、年間の売り上げは三十億円を突破しております。また、森林面積が村の96%を占める全国屈指の森の村で林業も盛んであります。林業は、木を切り出し販売するだけではなく、木のバッグなどの加工品の製造・販売に株式会社を設立して取り組んでおり、ハイクオリティー・デザインに仕立て上げられた商品は、東京、パリ、ミラノ、ニューヨークなど、世界のファッションの先端を行く都市に出展されて人気を呼んでいます。
徳島県の中部に位置する上勝町も、人口千七百七十五人の小さな町ですが、葉っぱビジネスで全国的に著名な町になりました。葉っぱビジネスを支えているのは、パソコンが使えるお年寄りですが、光ファイバー網のカバー率が100%で、家庭の86%が加入しているという上勝町の情報通信基盤が、このビジネスを可能にしていると言えます。
馬路村の場合は、役場や農協が、光ファイバーに接続していまして、インターネットを通して全世界に向け情報発信をし、馬路村ブランド品の売り込みを図っています。
本県の情報通信基盤の整備は、ブロードバンドの世帯カバー率は、現時点でほぼ100%に達しておりますが、光ファイバーによる超高速ブロードバンドの世帯カバー率は、平成二十一年三月末時点で79.3%で全国平均の90.1%より10%強低く、都道府県順位も三十二位であります。
IT推進戦略において情報通信基盤の整備は、国の政策としては民間事業者を競わせることによって推進してきたことから、投資効率のよくない中山間地域や離島が、どうしても取り残されがちになります。しかし、上勝町や馬路村の例からもわかるように、こういうところこそ本当は活性化のツールとして、超高速ブロードバンドの情報通信基盤の整備が必要なのでありまして、そのための公的な支援策が求められます。
そこでお尋ねであります。本県も情報通信基盤の整備は、次のステップとして光ファイバーによる超高速ブロードバンド通信が中山間地、僻地、離島においても可能になるよう、そのカバー率100%に向けて施策の推進を図るべきと考えます。ついては次年度予算編成において、このことにどう取り組もうとしているのかお伺いいたします。
以上で、一回目の質問終わります。
【回答】◎地域振興部長(山部哲郎君)
情報通信基盤の整備についてお答えをいたします。
県では、高速・大容量の光ファイバー網であるやまぐち情報スーパーネットワーク、いわゆるYSNを基幹網として、民間通信事業者による情報通信網の整備を促進し、ブロードバンド・ゼロ地域の解消に取り組んできたところであります。
こうした中、中山間地域では、採算性の面から、民間通信事業者による整備が進まなかったことから、YSNを開放して、市町が実施する地域イントラネットや、CATVなどの支線網の整備を促進するとともに、離島におきましては、YSNと無線技術を活用した環境整備も進めてきたところです。
この結果、本県のブロードバンド世帯カバー率は、ほぼ100%に達したところであります。このうち、お示しの、より快適に情報のやりとりができる光ファイバー網による超高速ブロードバンドの世帯カバー率につきましては、平成二十一年三月時点で79.3%となっておりますが、その後もCATVのエリア拡張などにより、着実に伸びております。
全国的にも、ブロードバンド・ゼロ地域の解消に見込みが立ったことから、国においては、二○一五年ごろを目途に、すべての世帯で超高速ブロードバンドサービスの利用を実現する構想を推進するため、現在、公的支援のあり方も含め、検討されているところであります。
今後、国における検討状況を注視していく必要もあることから、県としては当面、超高速ブロードバンドの整備に向けた新たな支援措置は考えておりませんが、中山間地域等において、情報通信サービスを活用した地域づくりの取り組みが進むよう、引き続きYSNを活用して、市町や民間通信事業者による情報通信基盤の整備を促進してまいりたいと考えております。
◆(合志栄一君)
私学の耐震化への取り組みについて再質問いたします。
次年度予算編成につきまして、十月に総合政策部が各部局等に示した文書がございます。この中においても、これは当然知事の考えであるとも思うわけでありますが、加速化プランの総仕上げということで、特に優先すべき重点事業は、次のとおりであるということで、「くらしの安心・安全基盤の強化」ということで、学校等の耐震化の推進というのが上げられておりますね。
学校は、もちろん公立学校だけではなくて、私学もあるわけでありますから、私学も含めた耐震化の推進が優先すべき重点事業になってると、こう理解していいと思うんですね。
いわゆる私学の耐震化が公立学校の耐震化と同様に進められるべきだというのは、私学に進んでいる子供たちも、同じ県民である、また、県民の子弟であるということでありまして、教育環境の安全に公私間の格差があってはならないということであります。
私立学校の耐震化八○%、二十四年度までに達成するというのは、先ほども触れましたように、四期目の知事選前に、マニフェストにおいて示されたことであります。そしてまた、当選後の加速化プランにおいても、具体的に示されてきていることであります。
先ほどの佐々木議員の質問の中では、三公社の改革のことを、知事取り上げられまして、自分の任期中に、次に負担を残していかないためにも、自分の任期中に解決するんだと、こういう答弁をされたところであります。
先ほど総務部長からの答弁がありましたように、山口県が私学の耐震化に向けて、特段の取り組みをしていることは、私も認め、評価するところでありますけれども、ただそれでも進んでいないという現況があります。
幾らか進んでおりますけども、知事の加速化プランの期限であります平成二十四年度までに八○%というのは、とても見通せる状況ではないわけでありまして、平成二十七年度までに私立学校施設の耐震化率を九○%以上にするという計画が、平成十九年度に耐震改修促進計画ということで策定されておりますので、私は二十四年度は無理としても、平成二十七年度までに達成していくということでの具体的な施策を、二井知事が任期中にきちっとやるということが大事だと思うわけであります。
最近は、政治の世界における言葉の軽さが、また政治への信頼を失っている面がありますけども、二井知事におかれては、言葉への重さを感じ、評価している一人であります。どうか平成二十七年度までには、私学においても公立と同様、九○%以上の耐震化を実現するという方向での施策をぜひ任期中にとっていただきたいと思いますが、知事のお考えをお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
【回答】◎知事(二井関成君)
御承知のとおり、加速化プランの数値目標につきましては、県が頑張ればできるもの、それから県が民間の協力を得てやりたいと考えていること、そういうものが一緒に入っておるわけであります。
したがいまして、県立学校については、県が設置者でありますから、みずからの力で耐震化をぜひ進めていきたいと考えて、今、来年度も重点施策として掲げております。
先ほど総務部長から答弁がありましたように、私学については、私学の設置者がみずから主体的に、建設等も含めて整備は図るというのが基本的なことでありまして、それがまさに私学の経営者の責任であるわけであります。
したがいまして、そういう前提に立ちながらも、少しでも私学の耐震化の促進を図りたいということで、先ほど御答弁をいたしておりますように、全国トップレベルの県費補助制度を設けたわけでありまして、現在、多くの学校で耐震化工事を前倒しをしていきたいということで、今取り組みが加速化しておりますから、この県費補助制度を維持する中で、少しでも私立学校の耐震化が進むように、私の任期いっぱい全力で取り組んでまいりたいと思います。
もちろん今後とも耐震化率を上げていく努力はしなければいけないと思っておりますから、私、余り先の話、任期の後の話を申してもどうかと思いますが、この制度が引き続いて行われますように、私もしっかりと維持する方向で努力をしていきたいと考えております。
以上でございます。
(1)治水対策について
「コンクリートから人へ」は、現民主党政権の基本的な姿勢を示す政策スローガンですが、人々の命と暮らしを守るコンクリート、公共事業が、今日の時代においても多くの方面で必要とされていることは言うまでもありません。この耳ざわりのいいスローガンに影響されて、地域と人々の暮らしに必要な公共事業がおろそかにされるようなことは、あってはならない。最初にまず、このことを強調いたしまして、今回は治水対策についてということで数点お伺いいたします。
治水の根幹をなしてきたのは、御案内のとおり河川の整備であります。戦後、我が国は、死者・行方不明者が一千名を超える水害が、七回発生いたしております。犠牲者が最も多かったのは昭和三十四年の伊勢湾台風でありまして、死者・行方不明者は五千九十八名を記録しました。しかし、これを最後に水害の被害は、人的な面においても、被災家屋数においても激減いたしました。水害発生の原因となった台風の勢力規模は、その後襲来した台風においても、そう変わりなくとも、被害が減少した背景には、堤防やダム等の河川整備が着実に進んだことがあります。
国は、平成九年に新河川法を施行し、現在は、この法に基づき河川整備は進められています。この新河川法は、従来の工事実施基本計画を、河川整備基本方針と河川整備計画とに分けました。河川整備基本方針は、河川整備の百年の大計とも言うべきもので、河川整備の長期的将来像を示すものであります。河川整備計画は、当面する二十年ないし三十年間に行う整備事業及びそのことにより達成すべき整備水準を具体的に計画として示したものでございます。
山口県では、現在、県管理の河川のうち、二十八河川の水系において河川整備の基本方針と整備計画の両方を策定しており、四河川の水系において基本方針のみを策定しております。
そこで、治水対策についての質問の第一は、この河川整備計画についてであります。
ただいま申し上げましたように、本県では、二十八の県管理河川水系において河川整備計画が策定されておりますが、気になりますのは、近年の異常気象とも言うべき雨の降り方にも対応できる内容になっているだろうかということであります。
より具体的に言えば、昨年やことしの豪雨で堤防越水による浸水被害を生じた椹野川、厚狭川、木屋川は、整備計画が実現しておれば、そうした越水被害は生じなかったのかということであります。
知事は、さきの七月臨時議会の議案説明において、「昨年の七月二十一日豪雨災害に続き、過去に経験したことのない大規模災害が、二年連続で発生したことを踏まえ、新たに防災等の専門家からなる検討委員会を設け、河川ごとに整備内容を定めた河川整備計画等をしっかり検証し、県民生活の安心・安全の基盤づくりを一層推進していく」と表明しておられます。また、質問に答えて「集中豪雨による大規模災害が二年連続して発生したことを踏まえ、このような災害は、いつでもどこでも起こることを想定して、さらなる防災対策の強化を図っていく」と述べておられます。
福岡管区気象台は、異常気象レポート二○○九を発表し、九州・山口県における観測結果から得られた大雨増加の長期傾向は、全国と同様の傾向を示しており、地球温暖化の影響があらわれている可能性があると記しております。
つきましては、検討委員会の検証結果の報告も含め、本県が策定している河川整備計画は、今後予想される大雨にも対応できる内容となっているのか、御見解をお伺いいたします。
河川整備計画についてお尋ねしたいことの第二は、財源確保の見通しについてであります。
国は、平成十五年に、社会資本整備重点計画法を制定し、従来の九本の事業分野別の計画を一本化しました。一本化された各事業分野は、道路、交通安全施設、空港、港湾、都市公園、下水道、治水、急傾斜地、海岸の九本であります。これ以降、国は、五年間を期間とする社会資本整備重点計画を策定し、これを閣議決定して社会資本の整備を進めることとしております。現在は、平成二十年度から二十四年度を計画期間とする社会資本整備重点計画が閣議決定され、進行中であります。
河川整備も、この計画に基づいて遂行されているわけですが、私は、二つの理由で河川整備計画の財源が、将来にわたって確実に確保されるのか不安を抱いております。その一つの理由は、この計画では、河川整備は、治水事業の分野に記されておりますが、河川整備計画についての言及は何らないということであります。もう一つの理由は、この計画が、事業額を示していないということであります。
本県の、二十八水系別河川整備計画の事業額総計は三千七十三億円に上りますが、平成二十一年度末実施済み事業額総計は千百八十二億円でして、整備事業進捗率は三八%であります。この数字をどう見るかは見解の分かれるところでしょうが、私は、本県はこれまで河川整備費をよく確保してきていると受けとめております。進捗率が最も高いのは、三隅川水系で九九%ですが、計画策定から五年以上経過しても、いまだ進捗率が二%の柳川水系、五%の玉鶴川水系、六%の南若川水系等もありまして、本県において河川整備推進の重要性は、いささかも変わっておりません。
こうした中、平成二十二年度から、公共事業への国補助金は廃止され、社会資本整備総合交付金として交付されることになりました。
公共事業の抑制基調が続いている今日、以上のような一連の公共事業に係る国の制度設計の変更が、河川整備計画の財源確保にどう影響するのか、気にかかるところであります。
そこでお尋ねいたします。公共事業の計画策定は、九本の分野別事業計画から一つの「社会資本整備重点計画」に変わり、個別の公共事業への国補助金はなくなり、社会資本整備総合交付金として一括交付されることになりましたが、こうした公共事業に係る国の仕組みの変更は、本県の河川整備計画の遂行に影響はないのか、そして今後の財源確保の見通しはどうなのか、さらに財源確保に向けてどう取り組んでいかれるのか、御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、治水対策に関する御質問のうち、財源確保についてお答えをいたします。
お示しがありましたように、国の公共事業は、平成十五年度以降、道路、治水等の各事業分野ごとに五カ年計画を策定し、これに基づいて事業が進められてまいりました。現在も、形式的には、平成二十年度を初年度とする「社会資本整備重点計画」の期間中であります。
しかしながら、昨年の政権交代で、公共事業そのもののあり方が大きく変わることとなり、国の本年度予算におきまして、公共事業費は前年度比マイナス一八・六%と大幅に削減をされたところであります。その中にあって、河川整備計画も当然例外ではありません。
こうした中、私は、集中豪雨等による洪水被害から県民の生命と財産を守り、県土の保全の活用を図る観点から、治水対策につきましては、本年度予算の編成に当たりまして、厳しい財政状況にはありましても、予算の重点配分に努めたところであります。
具体的には、お示しがありました、国の新たな社会資本整備総合交付金も、これを主体的に活用すること等によりまして、河川整備費につきましては、前年度を上回る一○○・八%の事業量を確保したところであります。
一方、国は、明年度予算におきましても、公共事業費の抑制を継続することといたし、前年度比一○%の削減を概算要求の基準といたしております。このため、全国知事会は、今月六日、「社会資本整備予算の総額確保に関する緊急声明」を発表し、国への積極的な要請活動を展開をしたところであります。
今後、国の予算編成を通じて、公共事業がどのように取り扱われるのか、さらには、明年度からの導入が予定されている公共事業関係補助金の一括交付金化がどのように具体化されるのか、極めて不透明な状況にあります。
私は、これらの動向をしっかりと見きわめて、どこまでも、安心・安全基盤の強化を図るという観点に立って、明年度予算編成に取り組んでいかなければならないと考えております。
いずれにいたしましても、私は、長期的な視点に立って、治水対策を総合的・計画的に進めていくという観点に立って、今後とも、必要な予算の確保に全力で取り組んでまいる考えであります。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
(2)河川整備計画について
河川整備についてのお尋ねの第三は、阿武川水系についてであります。
阿武川は、本県を代表する県河川の一つでありますが、この水系は、河川整備の基本方針も整備計画も策定されていません。阿武川水系は、既に河川の整備が完了していてその必要がないということなのか、それとも今後策定する予定があるのか、御所見をお伺いいたします。
次に、内水浸水被害についてお伺いいたします。
私たちが普通水害と言えば、河川のはんらんによる浸水被害を想像しますが、今日、河川のはんらんではなく、雨水が河川に排水されないために生じる内水、その内水による浸水被害が増加しております。
昨年七月の豪雨で、山口市において椹野川流域で千四百二十二戸の浸水被害を生じましたが、その九八%に当たる千三百九十七戸は、内水によるものでありました。しかも、そのうちの三百戸以上の家屋は、床上浸水に見舞われています。
ことし七月の豪雨による山陽小野田市の浸水被害は、厚狭川堤防の越流と内水はんらんが複合したものでしたが、浸水戸数は床上、床下含めて八百二十一戸であります。これと比べますと、昨年の山口市椹野川流域の浸水被害は、内水浸水だけで、ことしの山陽小野田市の被害を上回っていることがわかります。
昨年の豪雨災害は、土石流災害に関心と対策が集中しましたが、山口市においては内水による浸水被害も大きかったことを指摘し、その再発防止に向けての取り組みも大事な政策課題であることを、まず強く訴えておきたいと思います。
私の見るところ、ことしの豪雨による厚狭川流域、木屋川流域での浸水被害対策は、県主導でしっかり取り組まれ、再発防止に向けての河川整備も見通しが立っているように思われます。
一方、山口市における内水浸水被害対策への取り組みは、遅々たる感があります。
内水浸水対策事業は、基本的に雨水処理の下水道事業として取り組まれますので、事業主体は市町となります。そして、原則国二分の一の補助メニューにのっとって行われることから、県関与の余地はほとんどないように思われます。
しかし、私には、山口市における内水浸水対策事業の現状を見るにつけ、このことに県が関与を考慮していいケースがあるように思われてなりません。その一つが、山口市の問田地区浸水対策事業であります。
山口市の大内を流れる県河川問田川沿いに集落を形成している問田地区は、もともと低地であるため、昔から少し大雨が降ると内水被害に悩まされてきた一帯であります。昨年の豪雨では、道路や水田が広い範囲で冠水し、三十八戸の家屋が床上浸水の被害を受けました。この地が、床上浸水被害に見舞われたのは、山口市が戦後最大の洪水被害に見舞われた昭和四十七年に次いで二度目であります。山口市は、これへの対策として昭和五十年代に五年確率での都市下水路の整備をしたものの、これの受け先である問田川が、大雨が降ると水位が高くなるため、むしろ水の逆流が起こるありさまで、浸水被害は解消されるに至っておりません。子供たちの通学路になっている道路が冠水して通行不能になることはたびたびで、抜本的な内水浸水被害解消の対策が求められています。
地元住民からは、三十年余にわたり再三再四対策を求める要望が、県、市に対してなされてきましたが、日の目を見るに至っておりません。
現在、山口市は市内八地区において浸水対策事業を実施する計画を立てておりまして、問田地区もそれに含まれていますが、事業着手は見送られて見通しが立っていません。一方、昨年同様に浸水被害に見舞われた隣接の下千坊地区は、今年度から地元協議が始まっており、平成二十五年度ころまでには浸水対策事業が完了する予定となっております。
ずっと以前から要望活動を続けており、同様にと言っても、床上浸水被害は二度目である問田地区こそ、先に事業着手されていいのに、先送りされているのはなぜか。このことを市の担当者に問いただしましたところ、最大の理由は事業費が巨額に上ることでありました。
なぜ事業費が巨額になるのか、それは、問田地区の抜本的な浸水対策事業として想定されているのは、地区下水路の問田川への流れ出口に、逆流防止のゲートと内水排除のポンプを整備する工事でして、特に排水ポンプの整備に巨費を要すると思われるからであります。
県は、この工事において逆流防止のゲートの整備は、県河川である問田川の整備にかかるものとして県が負担してもいいとの意向を示しておりますが、排水ポンプの整備は、下水路整備の一環の事業ということで当然に市負担で行うべきものとの立場であります。
通常は、こうした考えの整理に立って役割分担し、事業を行っていくことは当然ですが、問田地区の浸水対策事業においては、県はいま一歩踏み込んで、排水ポンプの整備にも応分の負担をすることを検討すべきだと考えます。
県は、厚狭駅周辺の市街地において、内水はんらんによる浸水被害が生じないようにするためには、大正川の水位が高くならないようにする対策が必要だということで、大正川が厚狭川と合流する部分に水門と排水機場を整備しました。この大正川排水機場には、これまで一基ポンプが設置されておりましたが、この夏の災害対策緊急事業として、さらに二基増設される予定であります。
同様に、問田川の水位を高くしない対策が可能であれば、問田地区の内水被害対策として、県は、それに取り組むでしょう。しかし、実際問題、それは不可能と思われることから、それにかわる対策として、地区下水路の問田川への流出口にゲートとポンプを整備するとの見方に立てば、ポンプの設置にも県が応分の負担をすることには、合理性があると言えるのではないでしょうか。
そこで、内水浸水被害対策についてのお尋ねであります。
理屈はともあれ、最も内水被害を受けており、最も長い間要望してきており、最も切実に対策を求めているにもかかわらず、事業費が巨額になるため浸水対策事業実施の見通しが立っていない問田地区のようなケースには、県が支援できるよう制度の創設を図り、内水浸水対策事業の円滑な実施を促すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
治水対策についての質問の第三は、雨水対策であります。
近年、都市化の進行により土地の保水力が低下する一方、大量の雨水流出となる局所的な短時間の集中豪雨が全国各地で頻発する傾向にありまして、総合的な雨水対策の必要性が高まってきています。
御案内のように市街地の雨水対策のためには、下水道事業として都市下水路が整備されています。この都市下水路は、全国の市街地ほとんどが、十年に一回の確率で発生する降雨ということで、一時間五十ミリほどの雨を想定して整備されています。ところが、近年は一時間百ミリの雨も珍しくなくなってきました。
ちなみに、山口市の都市下水路は、一時間降雨量五十五ミリに対応したものになっています。それが昨年七月の集中豪雨の際、山口市は、レーダー解析で一時間百ミリの降雨があったと観測されていまして、市内各所で内水はんらんを生じました。また、平成になっての二十年余の間に、一時間五十五ミリ以上の降雨が、確率からすれば二回と推計されるところ、実際は六回発生しています。
こうした実情は、雨水対策としてのハード面の整備が、近年の降雨状況に対応してないことを示しています。しかし、財政面での制約が強い今日、ハード面で整備水準を高めていくことは困難と思われます。そこで必要になってくるのがソフト面での対応を含めた総合的な雨水対策であります。
そうした意味での雨水対策の柱は二つでして、一つは、土地の保水力を低下させないこと、もう一つは、雨水処理の分散化を進めることであります。
第一の柱、土地の保水力を低下させない対策としては、開発行為によって土地の保水力が低下する場合、調整池等を設置することによってカバーする方法があります。本県は、昭和六十二年に指導要領を定め、一ヘクタール以上の開発行為には調整池の設置を求めております。
ただ、この指導要領の問題点は、一ヘクタール未満の開発行為は対象にならないこと、もう一つは、一ヘクタール以上の開発であっても、一ヘクタール未満に分割して一年以上の間隔をあけて順次開発をやることにすれば、対象にならないことであります。
景気の後退により、近年一ヘクタール以上の開発行為は少なくなっているようですが、一ヘクタール未満の開発行為が、そういう形でどんどんなされていくとすれば、増加する流出雨水の影響が懸念されます。
そこで、雨水対策についての第一のお尋ねであります。調整池設置に関する指導要領は、現在のままでいいとお考えなのか、それとも見直しの必要があるとお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
土地の保水ということに関連しての雨水対策でお尋ねしたいことの第二は、公共工事における雨水対策についてであります。道路の舗装や、公共施設の建設の場合は、それが一ヘクタール以上であっても調整池等の設置が求められているわけではありません。しかし、公共工事によって増加する流出雨水への対策は、当然にとられていると思いますが、どういう配慮をしておられるのか、御所見をお伺いいたします。
次に、雨水処理の分散化ということについてお尋ねいたします。
雨水処理の分散化は、降った雨が一気に流れ出ないように、地域のあちこちで、雨水をしみ込ませたり、ためたりして、降った雨を分散させ、一気に集まらないようにする対策のことであります。
具体的には、舗装を浸透性あるものにしていく、一定規模以上の都市施設や住宅団地には雨の貯留施設を設ける、大雨のときは遊水池になる広場を整備しておく等のことが考えられます。
そこで、私は、こうしたことを盛り込んだ山口県版雨に強いまちづくりガイドラインを、県下の市町と連携して策定することを提案したいと思いますが、このことにつき、御所見をお伺いいたします。
最後に、浸水被害の分類把握についてお伺いいたします。治水対策を確実に進めていくためには、浸水被害の原因と実態を正確に把握することが不可欠ですが、本県の場合、浸水被害が、河川堤防の越流によるものなのか、内水はんらんによるものなのか、それともその両者の複合によるものなのかの分類把握が不十分であります。
それは、県や市町の河川や下水の各管理者ごとには把握されているものの、担当者間の十分なすり合わせが行われていないため、浸水被害全体としての原因別分類把握が明確になっていないからであります。
こういうことでは、特に内水浸水被害対策がおろそかになってしまうのではないかと心配であります。
つきましては、浸水被害の原因、実態を、県・市一体となり、各担当者が連携して、河川越流か内水はんらんかの分析も含め把握するようにすべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。
【回答】◎土木建築部長(山本則夫君)
治水対策のお尋ねのうち、河川整備計画の二点についてです。
まず、本県の河川整備計画は、今後予想される大雨にも対応できる内容になっているのかというお尋ねです。
県では、近年、ゲリラ豪雨が頻繁に発生していることを踏まえ、現行の河川整備計画の検証を行うこと等を目的として、専門家からなる検討委員会を設置したところです。
具体的な検討状況ですが、まず、最新のデータがある厚狭川、木屋川を事例とし、集中豪雨の総雨量、時間的・地域的分布、河川流量や浸水被害の発生区域などを現行の河川整備計画と比較したところ、計画を上回る降雨量や整備区間外での浸水被害などが認められました。
このため、委員会では、河川ごとに、地域特性や集中豪雨を勘案し、河川整備の計画規模、整備方法、整備区間などを改めて検証することとしております。
県としましては、今後、当委員会から、それぞれの河川について、順次提言をいただき、これらを踏まえて、現行の河川整備計画の妥当性を検討した上で、今後、予想される大雨にも対応できるよう、必要に応じて見直すこととしております。
なお、主要十河川以外の河川整備計画の検証につきましては、十河川の検証結果を踏まえ、検討してまいります。
次に、阿武川の河川整備基本方針等の策定についてです。
阿武川は、主要十河川の一つとして、当委員会で検証を行うこととしています。
当河川は、旧河川法に基づき策定した「阿武川水系工事実施基本計画」により、河口から約十キロメーターの河川改修と阿武川ダムの建設を実施したことから、おおむね五十年に一回程度の確率で発生する洪水を流すことができ、近年大きな浸水被害は発生しておりませんが、当委員会からの提言を踏まえ、現行の工事実施基本計画を改めて検討し、必要に応じて、河川整備基本方針や河川整備計画を策定することとしています。
次に、治水対策のお尋ねのうち、内水浸水対策事業に係る県の支援制度の創設についてです。
お示しの問田川では、河川改修に当たり、問田川に排水機場を設置すれば大規模施設となり、多数の家屋移転や工事費など、膨大な費用が必要となることから、経済性や実現性の観点から、堤防をかさ上げする方法により実施することとし、これまで仁保川合流部から整備を進め、約五キロの区間の河川改修を完成しております。
問田地区の浸水対策につきましては、山口市と協議の上、県と市の役割分担のもと、問田川からの逆流を防ぐ施設は、河川管理者である県が設置し、問田地区下水路を問田川に流すポンプ施設は、下水道の管理者である山口市が設置することとしております。
県としましては、お示しの問田地区のようなケースにおいても、内水浸水対策は、市町との役割分担で行うこととしており、新たな制度の創設は考えておりませんが、今後、市町が内水対策を実施する時期に合わせた逆流防止施設の設置や、下水道の補助事業採択に向けての国との調整、下水道計画策定への助言など、できる限りの支援に努めてまいります。
最後に、治水対策のお尋ねうち、雨水対策について四点のお尋ねです。
まず、一ヘクタール未満の開発行為に関する調整池の取り扱いについてお答えします。
一ヘクタール未満の開発行為については、調整池設置に関する指導要領に基づく調整池の設置は義務づけておりませんが、放流先の河川の流下能力が不足する場合には、水路の改修や調整池の設置を行うよう指導をしているところです。
また、お示しの、結果として一ヘクタール以上となる規模の開発については、全体として一ヘクタール以上の開発行為ととらえ、調整池の設置について指導してまいります。
これらについては、権限移譲している市町にも改めて周知することとしていることから、調整池設置に関する指導要領の見直しまでは考えておりません。
二点目は、公共事業によって増加する流出雨水対策についてです。
県が行う公共事業のうち、道路事業については、道路構造令に基づき設計をし、道路土工要綱に基づく排水計画によって、雨水排水路の断面が不足する場合には、排水路の新設等により、必要な断面を確保しております。
また、大規模な道路事業で雨水の流出量が多く、水路の新設等では対応が困難な場合などには、雨水の流出抑制対策として調整池を設置し、付近の住家、水路、公共施設等に影響をしないよう措置をしております。
また、大規模な公園事業等についても、開発指導要綱を準用し、調整池を設置し、下流の水路や河川への影響を軽減しているところです。
県としましては、今後とも、公共工事における雨水対策について、十分配慮していきたいと考えています。
三点目は、雨水処理の分散化のための山口県版ガイドラインの策定についてです。
都市部の雨水対策につきましては、市町が下水道整備を進めておりますが、近年、下水道の流下能力を大きく超える集中豪雨により、浸水被害が増大しております。このため、国は平成十八年三月に、浸水被害の軽減を図る具体的な手法を示した「下水道総合浸水対策計画策定マニュアル」を作成しました。
当マニュアルには、公共施設の地下雨水貯留施設、浸透ますや浸透側溝などの雨水の流出を抑制する施設の整備、局地排水用小型ポンプの設置、さらには、不要となった浄化槽の雨水貯留タンクとしての使用など、雨水を分散処理する対策手法が示されております。
県としましては、現在、お示しのようなガイドラインを作成することは考えておりませんが、まずは、このマニュアルの普及に努めるとともに、市町の実態に即したマニュアルの活用方法や、活用するに当たっての諸課題について検討してまいります。
四点目は、浸水被害の原因と実態の把握についてです。
治水対策を確実に進めていくためには、浸水被害について、本川がはんらんした外水はんらんか、支川がはんらんした内水はんらんか、両者が複合されたはんらんかを正確に把握することが重要であります。
しかしながら、お示しのように、現在、県や市町の各河川管理者が、浸水の原因について独自に把握をしているものの、十分なすり合わせが行われていないため、今後のより一層の内水浸水被害対策の強化に向けては、県や市町が一体となった形での浸水被害の原因や実態の把握が有効と考えます。
こうしたことから、県としましては、今後は、市町が管理する河川の浸水状況や原因などについて、情報提供を受け、双方の浸水情報のすり合わせを行い、改めて、はんらんの形態について、市町の意見も聞きながら、調査・分析を行い、その結果を情報提供することで、浸水被害の原因や実態について、県や市町間の情報共有に努めてまいります。
また、事業計画の策定に当たっては、河川の現在の流下能力や河川改修の目標流量などの情報を双方が持ち寄って協議するなど、連携・調整に努めてまいります。
以上でございます。
問田地区のようなケースの場合も、特別、県としての対応は考えないと。市と県と役割分担に基づいて対応していくという答弁であったように思います。
この問田地区の内水による浸水被害は、県河川である問田川の水位が高いために生じている面があるわけでございますので、これの対策には、県も市と責任を共有しているんだということを、まず申し上げておきたいと思います。
さて、問田地区の内水被害対策として、ゲートやポンプを整備することは、地元住民からの要望に対する回答において、県河川課が示した解決策であります。
一方、地元関係者が期待している対策は、高井堰の撤去と問田川のしゅんせつであります。高井堰は、問田川が仁保川と合流して少し下がった地点、県立山口中央高校の横にある井堰であります。もともと固定堰だったものが、昭和四十八年に改修されまして、川幅の半分が可動堰になっております。
この高井堰の設置目的は、平川方面の農業用水の確保で、許可工作物として県が設置を認めているもので、管理は水利権者にゆだねられております。
さきの地元住民からの要望においても、この高井堰を撤去して、必要な農業用水はポンプアップで確保することが提案されておりますが、この提案への県河川課の回答は、高井堰を撤去しても水位が下がるのは二十センチ程度なので、抜本的な解決にならないというものでありました。
このことに関しまして、私見を申し上げますと、問田川の水位が二十センチ下がることになれば、問田地区の内水被害は相当程度軽減されるのではないかということであります。あわせて問田川のしゅんせつをやれば、ほぼ浸水被害対策としては、目的を達するのではないかと見ております。
ただここで問題になるのは、高井堰のことであります。川のしゅんせつは県の判断でできることでありますが、高井堰を撤去することには、水利権者の了解が要ります。また、高井堰の役割が農業用水の供給のためだけなのかということも、よく調べる必要があるでしょうし、高井堰の撤去と排水ポンプの設置との費用対効果の比較検討もすべきでありましょう。
そこで、私は、問田地区の浸水被害対策を具体的に決定するための協議会を県、市の担当者、地元関係者、水利権者、有識者等を構成メンバーとして設置すべきと考えます。
そして、県、市の担当者が想定している対策、地元関係者が期待している対策のいずれが、本当の浸水被害の解決策になるのか。また、費用対効果という面から、どちらが妥当なのか、関係者の理解が得られるのか等々のことをしっかり議論して、コンセンサスを得ることが、問田地区浸水被害対策実現に向けての第一歩になると考えます。
こうした協議会の設置に、県は市と連携して取り組むべきと考えますが、このことにつきましてお考えをお伺いいたしまして、二回目の質問といたします。
【回答】◎土木建築部長(山本則夫君)
問田地区の浸水被害対策のための協議会設置についてのお尋ねでございます。
先ほど申し上げましたとおり、問田川の浸水対策につきましては、県と市の役割分担のもと、それぞれの管理者が取り組んでいくべきものでありますことから、浸水対策については、引き続き市と協議は行ってまいりますけども、協議会の設置については考えてはおりません。
以上でございます。
(1)地方分権の制度改革について
山口から日本をよくする、これが山口県政に携わる者の気概でなければならないと考えます。
県議に復帰して三年余、大小さまざまな諸課題に取り組むことを通して、県議の役割の大事さを、日々痛感いたしております。
強固な中央集権国家である我が国では、私たちの地域と暮らしにかかわることも、その根幹部分は、国が政策形成をいたします。
しかし、その政策を起案する官僚も、立法措置をする国会議員も、日ごろは地方にいません。そこで、地方の現場にあって、私たちの地域と暮らしにかかわる国の政策を現場検証することが、県政に携わる者の大事な役割であります。
そして、実情に合わないものは改めるように国に働きかけ、国ができないことは、県や市町が補完するようにして、地域と人々の暮らしがよくなるようにしていくことが、県政を担当する知事、また県議として県政に参画する県議の責務であると考えております。
今日、明治維新、戦後改革に続く第三の改革が進行していると言われています。明治維新は、薩長雄藩を中心とした地方からの変革でありました。そしてまた、今日進行している変革も、地方からの変革のうねりに基づくものであってこそ本物であると言えると思います。
それは、しっかり地方に根差し、地域と人々の暮らしをよくしていく、新しい国の仕組みをつくるものでなければならないからです。そういう意味で、地方の現場にあって政治に携わっている私たちこそ、現在進行している日本変革の担い手たらねばならないのではないでしょうか。
もちろん、本県にあってその先頭に立つべきは二井知事であります。
平成八年は、夏の知事選に熱く燃えた年でありました。当時を振り返りますと、松陰先生が言われる草莽崛起とでも言うべき盛り上がりが、二井知事誕生を実現させたように思われます。そこには、日本全国のモデルとなる山口県をつくり上げてくれるであろうとの期待がありました。
当然二井知事は、そういう思いで山口県政を担当してこられたと思いますが、その二井県政も、はや四期目後半、総仕上げの時期を迎えようとしております。私は、この二井県政の総仕上げが、山口から日本をよくする県政の総仕上げになることを望むものであります。
そこで、二井知事にお伺いいたします。
今日進行している第三の変革の方向は、言うまでもなく中央集権国家から分権国家への転換であります。この変革が、地域と人々の暮らしをよくする、地に着いた真に実りある変革となるためには、二井知事のように、国と地方の双方で地方自治行政に携わり、さらに県知事として多年重責を担ってこられた方の考えが生かされ、そういう方が主導的役割を果たすべきだと思います。
よって、二井知事には、我が国の分権国家への変革も視野に入れて、県政の総仕上げを進めてほしいと期待するものであります。
ついては、新しい国のかたちとしての分権国家のあるべき姿をどう考え、県政の総仕上げを行おうとしておられるのか、御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、新しい国のかたちとしての分権国家のあるべき姿をどう考え、県政の総仕上げを行おうとしているのかというお尋ねにつきまして、少し長くなりますけれども、お答えをさせていただきます。
私が知事に就任をいたしました平成八年は、第一次地方分権改革がスタートし、それ以降、順次、地方分権推進法や地方分権一括法が施行されるなど、地方分権の取り組みが本格的に始まってまいりました。
そのような中、私は、二十一世紀には、必ず地方分権型社会が到来すると考えまして、大きく二つの視点から県政を推進をしてまいりました。
一つは、県民の意識改革であります。
御承知のとおり、地方分権とは、地方のことは地方みずからが責任を持ってやるということでありますから、単に行政だけではなく、そこに住んでいる住民の皆さんが、自分でできることは自分ですると、依存から自立に向けて大きく意識を変えていくことが重要になってまいります。
私は、そのような視点に立って、山口きらら博や国民文化祭等を活用しながら、いわゆる県民力を高める努力を重ねてまいりました。
したがいまして、私は県民の意識改革の面からは、来年の「おいでませ!山口国体・山口大会」を、県民力をジャンプさせる総仕上げとして位置づけております。そして、その県民力を、二○一五年の世界スカウトジャンボリーへとつなげていきたいと考えているところであります。
もう一つの視点は、制度改革であります。
私は、地方分権の制度改革は、近接と補完の原理に基づいて行うべきであると考えております。すなわち政治行政の果たすべき責務は、まず住民に最も身近な市町村が優先して行い、市町村ではできない広域的な分野は都道府県で行い、そしてどうしても国でなければできない分野のみ国が行うということであります。
したがいまして、まずは市町村が地方分権の受け皿になれる力をつけること、すなわち市町村の行財政基盤を強化し、政策能力、行政能力を高めていくことが必要であると考えまして、そのための最も有効な手段である市町村合併に鋭意取り組んできたところであります。
今後、市や町との関係での総仕上げとしては、住民サービスの向上につなげていけるよう、県の権限をできる限り市や町に移譲していきたいと考えております。
また、私は、国の役割は近接と補完の原理に基づき、外交・防衛や社会保障、経済対策、国家的プロジェクトなどに限定し、その他は地方に権限と財源を大幅に移譲し、すべて地方に任せるべきであると考えております。
私は、それが新政権でいう地域主権国家であると理解をいたしております。したがいまして、地域主権国家が早期に実現できるように、任期いっぱい全力投球してまいりたいと考えております。
以上、二つの視点から総仕上げの方向を申し上げましたが、当然のことながら、県みずからも、来るべき分権型社会における県づくりの確かな基盤をつくり上げていくことが重要であります。
したがいまして、私はデザイン21の第六次実行計画として策定した加速化プランに沿い、総仕上げに向けた限られた期間の中、これまで以上に選択と集中の視点に立ち、真になすべきことを見きわめた上で、所要財源の見通しをつけ、可能な限りの実現に向けて取り組んでいく考えであります。こうした観点から、「財源確保対策本部」に必要な作業を急ぐよう、既に指示をいたしております。
また、真の分権型社会におきましても、次代に負担を先送りすることなく、しっかりとした行財政基盤を確立していくために、行政改革、財政改革、公社改革について確実に進めてまいります。
私は、こうした取り組みを通じて、分権国家にふさわしい山口県の確固たる基盤をつくり上げ、その成果を次なる世代に確実に引き継いでいけるように、「住み良さ日本一の元気県づくり」を進め、デザイン21の総仕上げをなし遂げられるように、全力で取り組んでまいります。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
(2)教育問題について
その一は、教育目標についてであります。
山口大学の学長も務められた広中平祐先生は、本県由宇町の生まれで、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞された日本を代表する数学者であります。その広中先生が、山大の学長をやめられた後も、学長をしておられた市民大学の講座で講演されたのを聞いたことがあります。その講演で、先生は数学の定義について語られ、「数学とは、無限なるものの有限化である」と話されました。そして、「有限化とは、コンピューター処理できるようにすることである」と補足されました。
私は、講演が終わった後、広中先生に尋ねました、「存在するものすべてを百とした場合、コンピューター処理できるものの割合はどれほどですか」と。この問いに対して広中先生は、「五十です。心の世界はコンピューター化できません」と答えられました。
この先生の答えは、教育を考える上で大事な視点を提供していると思います。コンピューター処理できるようにするということは、いわゆる数値化するということであります。今日の時代、教育も含めあらゆる面で、その数値化が進行し、そのことに基づいて物事を評価し、対応していくということが一般化しています。しかし、そのとき、私たちは、数値化できるのは、存在するもののすべてではない、半分にすぎないということを見失ってはならないのであります。
私は、このことは、特に教育において大事なことで、教育の基本は、数値化できない心の教育も含めた全人的なものでなければならないと考えます。
本県では、そうした全人的教育を推進する上において、目指す教育の基本目標を示して取り組んできております。
これまで、どういう基本目標を掲げて本県の教育が推進されてきたかを振り返ってみますと、昭和五十年代の井上教育長時代は、「たくましい防長っ子の育成」でありました。その後の高山教育長時代は、「心の教育・情の教育の推進」で、これは高浜教育長、小河教育長と引き継がれます。
そして、平成八年に就任した上野教育長は、「夢と知恵を育む教育の推進」を本県教育の基本目標とすることを定めました。これは、以降ことしの春まで牛見教育長、藤井教育長と継承されてきました。
そこで、まず新しく本県の教育長に就任された田邉教育長にお伺いいたします。田邉教育長、あなたはこれから、どういう子供たちを育てることを教育目標にして、本県の教育行政を推進していくお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
第二は、情操教育についてであります。
さて、先日私は、小中学校で音楽を教えておられる先生方とお話しする機会がありました。その先生方は、最近、音楽の専科の教師がいない小学校がふえていることを憂えていました。
「子供たちの現状を見ると、集中力の低下、感情のコントロールができない、人とかかわるのが苦手、個人主義といった子供たちがふえている。小学校時代から、子供たちの心を育てる情操教育として、音楽教育がしっかり行われる必要があるのに」。音楽教育に携わる者としての使命感に発するそうした声には、切実な響きがありました。
小学校でも、中規模、大規模校では専門性を必要とする教科は、専科教員が配置されることになっています。
音楽はもちろん、専門性を必要とする教科で、以前は中規模、大規模の小学校には、必ず音楽専科の先生がいましたが、近年は理科や算数等に配置される専科教員が多くなり、音楽専科をなくす学校がふえています。
山口市で見ますと、生徒数六百五十名の白石小学校も、生徒数六百七十八名の湯田小学校も、音楽専科の先生がいません。白石小は、算数専科が一人、理科専科が二人、湯田小は、理科専科が二人配置されております。
学級担任教諭とは別に配置される専科教員は、その学校の学級数に応じて加算されますが、この加算配置された専科教員に、何の教科を担当してもらうかは学校長判断であります。
その判断が、理数系重視、数値による評価という大きな流れに沿わざるを得ないため、その教育成果が、数値によって評価されがたい音楽教育を、学校教育全体の中で隅のほうへ追いやってしまうことになっているとしたら残念なことであります。
そうした現状を憂えて、音楽を学ぶことの大事さを訴えた声を紹介いたします。
仲間と心を通わせ、他人を思いやる気持ちや心を合わせる喜びを味わう。心を開き、自分の声を聞いてもらったり、相手の声に寄り添ったりしながら気持ちを合わせて音楽を楽しむ中で、子供たちはよりよいものを求め合ったり、お互いに助け合ったりすることを学んでいる。音楽という教科は、国語の要素、体育の要素、道徳の要素をかけ持った総合的な学習なのである。個人で楽しむものではなく、学校教育の中で集団で学ぶ意味、幼児期から思春期まで、味わうだけでなく学ばせなくてはならぬ教科なのである。
あるスクールカウンセラーが「歌がしっかり歌える学校に問題はない」と言っていた。心の成長に欠かせない音楽という教科。数字には出ないが、県として力を入れてもらえないだろうか。
これは、私に寄せられた声ですが、そのことを通して県政に携わる者すべてに知ってほしいとの思いで寄せられた声であると思います。
金子みすゞの詩に、「見えないけれど、あるんだよ」という一節がありますが、情操教育としての音楽教育は、「数字には出ないけど、大事なんだよ」ということなのではないでしょうか。
心の教育、情操教育は、決して理数教育と相反するものではありません。心が育てば、心の働きである知・情・意が育ち、理数教育の基礎がしっかりすることにつながると思われます。
やはり、日本が生んだ天才的数学者であった岡潔先生は、数学史上の巨人ポアンカレの「数学の本体は調和の精神である」との言葉を引用して、数学は、情緒、情操であると明言しておられます。
その情緒、情操をはぐくむ音楽教育が、小学校教育において、なおざりにされることがあってはならないとの趣旨で、この質問を行っている次第であります。
音楽教育をしっかりするということは、音楽教育の先生を適切に配置するということであります。その第一として、中規模以上の小学校には、音楽専科の教諭が、必ず配置される必要があると考えます。第二に、それ以外の数多くある小規模の小学校にも、音楽教育が行き届く教員配置のあり方が工夫されなければならないと考えます。
十五学級以上ある小学校を、中規模以上の小学校とみなした場合、本県では七十一校ありますが、音楽専科の教員数は五十七人ですので、これらの学校すべてに音楽専科の教諭を配置しようとすれば、その絶対数がまず足りていません。
県下の市で見ますと、岩国市は十六人の音楽専科の先生がおられて際立っていますが、それ以外の市は、すべて中規模以上の学校数より、音楽の専科教員が少ないという現状であります。下松市は、中規模以上の小学校が三校ありますが、専科教員は、理数が主で音楽専科の教諭はいません。また、美祢市は、小学校が二十二校ありますが、十五学級以上の小学校はなく、音楽専科の先生がいません。また、五十七人の音楽専科の先生の中には、ほかの専科を受け持っている先生もおられるものと思われます。
こうした現状を踏まえまして、県教育委員会が、義務教育課程の小中学校人事も一元的に管理しておりますことから、田邉教育長に、二点お伺いいたします。
第一点は、中規模以上の小学校には、純粋専科の音楽担当の教諭を必ず配置する方向を目指すべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
第二点は、二百五十校にも上る数多くの小規模の小学校にも音楽教育が行き届くよう、教員配置の工夫をすべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
最後に、部活動を理由とする就学校の変更についてお伺いいたします。
平成二十一年度の中学校全国柔道大会に、山口県の女子代表選手として個人戦に出場したIさんは、柔道だけではなく学業にもしっかり取り組む中学生で、同年開催された中学生の中国地区英語弁論大会では優秀賞を獲得しました。
彼女の場合、幼稚園のときから続けてきた柔道を、中学に進んでも部活でやることができる環境で中学生活を送ることができたことが、学業への励みにもなっていたように思われます。
ただ、彼女が現在小学六年生であったとしたら、来年中学に進学するとき、同様の中学生活が送れる中学校に進学することは不可能になりそうであります。
山口市教育委員会が、今年度から中学校に進学するとき、部活動が理由で校区外の中学校に入学することは認めない方針を、厳格に適用しようとしているからであります。
御案内のように、我が国の教育制度においては、公立の小学校、中学校、高校には、校区の定めがあり、それに基づき、義務教育課程である小中学生が公立学校において学ぶ場合は、市町村の教育委員会が、学びにつく学校、すなわち就学校の指定を行うことになっております。
この就学校の指定は、入学する生徒が住んでいる校区に基づいて行われますが、相当と認められる特別の事情がある場合は、保護者からの申し立てにより、就学校の変更が可能となっております。
このことにつき、文部科学省は、就学校の変更が認められていい事由として、いじめへの対応、通学の利便性など地理的理由、部活動等学校独自の活動等を示してはいるものの、最終的には各市町村の教育委員会が判断するものとしております。
この最終的判断をゆだねられている各市町村教育委員会は、いじめへの対応としては就学校の変更をおおむね認め、地理的要件による変更は緩和の方向にあるように思われます。
そこで、この就学校の変更につき、最も問題になるのが、小学校から中学校に進学するとき、部活動による校区外の中学校への進学を認めるかどうかということでありまして、本県の市町においても、このことには慎重な教育委員会が多く、十九市町のうち、これを認めているのは、柳井市、光市、長門市、下関市の四市だけであります。
冒頭に紹介しましたIさんの家がある山口市も、これを認めていません。そこで、彼女は中学への進学時、住所を移して、他の校区の中学校に入学しました。そうまでしたのは、彼女が実際住んでいる校区の中学校には柔道部がなく、その他校区の中学校に入学すれば、部活動で柔道ができたからであります。
ありのまま事実を語らなければ、課題の認識、問題の解決に至りませんので申し上げますが、Iさんは、住民票上の住所は移しましたが、実際は家から通学しました。そこにはとにかく、住民票を移しさえすればいいという暗黙の了解があったようであります。
昨年の三月、こうした部活動のために住民票だけを移して、実際は家から校区外の中学校へ通学することを問題視する記事が朝日新聞の社会欄に掲載されました。
見出しは、全国中学駅伝V、光市・大和中、女子部員五人越境となっております。光市大和中の女子陸上部が、その前年、二○○八年十二月に、本県のセミナーパークで開催された第十六回全国中学校駅伝大会で初優勝したものの、その登録選手八人のうち五人は、住民票を大和中校区に移してはいるが、実際は周南市や柳井市等、校区外の自宅から通学している部員であったことを明らかにした記事で、「住民票を移していれば適正と思っていた」という学校長のコメントも紹介されており、Iさんの場合と同様、暗黙の了解があったことを示唆する報道内容になっております。
文部科学省は、先ほど述べましたように部活動等を理由とする就学校の変更については、その最終的判断を各市町村の教育委員会にゆだねておりますが、その判断の基準となる要件及び手続については、これを定め公表、周知するよう通達しております。
光市の教育委員会は、この報道があった後、就学校の変更を認める要件の一つに、部活動を理由とする場合を明記し、校区外のみならず市外からも就学を許可する方針を公表して、部活動において越境が問題にならないよう対応しました。一方、山口市の教育委員会は、たとえ住民票を移しても、そこから通学するという実態が伴わなければ、就学校の変更は認めない方針を徹底することを通して、部活動による越境問題をなくそうとしているように思われます。
暗黙の了解事項について、光市は正式にこれを認め、山口市は以降これを認めないという方針を固めたとも言えるでしょう。
光市の対応は、市教育委員会内の協議で決めたように伺っていますが、山口市は、教育委員会が昨年十二月に、市内の公立小中学校の通学区域についての審議会を設置し、部活動を理由とする就学校の変更のことも含めて諮問しております。この審議会は、二回開催されて、ことしの三月に答申しており、その議事録及び答申書は公開されております。
私は、このように政策の形成過程の議論を公開する姿勢を評価するものですが、そうした議論の公開も、それが評価、批判、検証されることを通して、よりよき政策の形成に資することになると思われます。
そこで、山口市のこの審議会における議論について、率直な批判、検証を行ってみたいと思います。
審議会の意見では、基本的に部活動を理由として就学校の変更を認めることには慎重で、その理由の第一が、これを認めた場合、小規模の中学校が消滅することになるのではないかという懸念であります。
私は、まずこの懸念は心配し過ぎであり、事実に照らしてみるとき、杞憂にすぎないことを指摘したいと思います。
実際、本県で部活動による就学校の変更を認めている市で、今年度、中学進学時にその申請がどれほどあったかを調べてみました。その結果、市内における校区外への変更ということでは、光市は一名、柳井市は九名、長門市は一名で、下関市は五ないし十名ということでした。
この調査は、それぞれの市の教育委員会を訪ねて担当者にお伺いしたもので、部活動による就学校の変更を認めたにしても、その数は、そう多いものではないことがわかります。
普通、子供たちは中学に進学するとき、友達関係が続く地元の学校へ進学するものです。そういう中、部活のために校区外への進学を望むのは、よほど強い思いがある子であって、そう多くはないということであります。
柳井市の九名が多いように思われるかもしれませんが、部活動以外の理由での変更申請が十一名で、部活動の場合よりも多いというのが実情であります。柳井市は、柳井中が生徒数五百四十四名の大規模校で、次いで柳井西中の百六十七名、大畠中の六十八名、柳井南中の五十八名の四つの中学校がありますが、以前から柳井中に統合する計画もあったりして、小規模校の校区の子供たちが、部活で大規模校に進学しようとすることに対しては、一般的に理解があり、担当者の方は、部活動を理由に就学校の変更を認めたことによるトラブルは、聞いていないと語っておられました。
私は、以上のことから、部活動を理由とする校区外就学を認めれば、小規模校が消滅するとの懸念は、このことの影響の過大視であり、事実に即していないと考えます。
第二に、学校は地域のセンターの役目があり、それを大事にすべきだという意見であります。
私は、こうした学校を地域コミュニティーの核とみなす考え方は、小学校の場合は重視されていいと思いますが、その役割を中学校に求めるのは間違っていると考えます。
中学校では、生徒の可能性を伸ばす教育環境を整えることを中心にして、学校のあり方は考えられるべきであり、そういう観点からして、中学校においては適正規模の学校が、適正配置されることが望ましく、どこの中学校に行っても部活動を含めて等しい教育環境が整っているあり方こそ、追及されるべきなのではないでしょうか。
審議会は、答申において「部活動を理由とする就学学校の変更を無制限に認めるべきではない」としておりますので、どういう制限のもとでは部活動による就学校の変更を認めるのかを、審議会での議論を通して推察しました。その一つは、小規模校が、単独で野球チーム等をつくれないとき、隣の中学校と合同チームをつくって部活動をすることや、そうした合同チームの試合への出場資格を認めるということのようであります。それから、親のかわりになる人、あるいは親戚などがいるところへ住所を変更して、そこから通うというのであれば認めてもいいということのようであります。
私から言わせれば、これらのケースは、いずれも就学校の変更と言えるものではなく、前者は、合同チームによる部活動を認めているにすぎず、後者は、現に住所を移している実態があることになるわけだから、通常の校区への就学であります。
山口市の教育委員会の現在の考えからすれば、Iさんが、今年度入学であったとしたら、進学する中学校の校区に実際下宿することを求めたであろうと思われます。その場合、Iさんが、どうしたであろうかはわかりませんが、はっきり言えることは、Iさんが、柔道と学業の両立ができたのは、家から通学できて家族の支えがあったからだということであります。
山口市は、いじめへの対応等では、校区外の学校へ自宅から通学することを認めています。私は、同様にIさんのような場合も認めるのが、教育的配慮であると考えます。
この答申は、結論として「実情に応じて、できるだけ子供自身が取り組みたい部活動が可能となる環境づくりに努めるべきである」としています。
ついては、この答申を受けて山口市が、子供たちの可能性を伸ばす観点から、どういう場合に、部活動を理由とする就学校の変更を認めるのか、県下の市町のモデルとなる基準づくりに取り組まれることを期待するものであります。
部活動を理由とする校区外就学について、私の考えを申し上げますと、Iさんの場合のように、継続的に取り組んでいるものの部が、校区の中学校にない場合は、その部がある校区外の中学校への就学を認めるということは、本県の小中学校におけるガイドライン的な考え方として共有されていいのではないかと思っています。
小学校時代はやっていない、すなわちそれまでの継続的な取り組みはないが、中学生になったらやりたいと思う部が、校区の中学校にないという場合も認めるのか。校区の中学校に部はあることはあるが、同じ部活動でも他の校区の中学校の部がすぐれているので、そちらに行きたいという場合も認めるのか等々のことについては、判断が分かれるであろうことは理解できます。
しかし、私には、継続した取り組みがあり、部活への強い思いを持った子に対して、部活ができる環境を整える責任を果たさないまま、望む部活ができる校区外の学校への就学変更を認めようとしない考え方や姿勢は理解できません。果たしてそれは教育の名に値するものなのか、私は疑問に思います。
御案内のように、中学校における部活動は、教育課程外の学校教育活動として位置づけられており、それは、生徒の自主的、自発的な参加により行われる活動とみなされております。しかし、本県では平均して八割近くの中学生が、何かの運動部の部活動に参加している現状からして、部活動が適正に行われるようにしていくことは、中学校教育における重要な課題であることは言うまでもありません。
もちろん、小中学校の教育事務を直接担当するのは、市町村の教育委員会でありますが、都道府県教育委員会は市町村に対し、市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言または援助を行う役割が求められています。
そこで、以上、るる申し述べてまいりましたことを踏まえ、教育長に、部活動を理由とする就学校の変更につき、三点ほどお伺いいたします。
その一は、部活動を理由とする就学校の変更に関する調査についてであります。地方教育行政の組織及び運営に関する法律、いわゆる地教法は、その五十三条において、都道府県教育委員会は、指導、助言及び援助等を行うため必要があるときは、市町村長または市町村教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について、必要な調査を行うことができるとしております。
私は、部活動を理由とする就学校の変更に関する判断基準の設定が、子供たちの可能性を伸ばすという観点から適正に行われているのか、指導、助言する役割を県教委が果たすことが望ましいと考えております。地元の事情や意見に影響されやすい市町の教育委員会より、県教委のほうが、このことについても第三者的に公平、かつ客観的に見ることができると思うからです。
県教育委員会は、昨年三月十七日付の文書で、県下の市町教育委員会に、「就学すべき学校の指定の変更や区域外就学については、市町教委において、地理的・身体的理由、さらには、いじめの対応などを理由とする場合のほか、児童生徒の具体的事情に即して相当と認めるときは、保護者の申し立てにより、これを認めることができる」旨、周知いたしております。
この通達文書にある、「児童生徒の具体的事情に即して相当と認めるときは」との文言が想定している主要な事由の一つが、部活動を理由とする場合であろうと思われます。
そこで、県教育委員会は、昨年周知した趣旨の実現が適正に図られているか、まず現況を把握するため、特に議論が分かれる部活動を理由とする就学校の変更について調査に取り組むべきと考えます。このことにつき、まず教育長の御所見をお伺いいたします。
その二は、情報や意見交換を行う協議会の設置についてであります。
私は、いじめへの対応というマイナス要因をなくすために校区外就学を認めるのであれば、子供の可能性を伸ばすというプラス要因での校区外就学も認められていいと考えるものであります。ただ本県では、それを認めたら大変なことになるという憶測で、慎重な市や町が多いようであります。
しかし、本県でも既に四市において、部活動を理由とする校区外就学が認められていることから、事実に基づいて望ましい基準づくりに向けての議論が可能と思われます。
そこで、部活動を理由とする就学校の変更について、情報、意見交換を行う協議会を設置して議論を深め、このことに関してのコンセンサスづくりを目指すべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
その三は、さきにお尋ねしました一及び二の取り組みを踏まえ、部活動を理由とする就学校の変更について、ガイドラインづくりに取り組むべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
以上で質問を終わります。
【回答】◎教育長(田邉恒美君)
教育問題の数点のお尋ねのうち、まず、教育目標についてお答えいたします。
県教委では、山口県教育の歴史や伝統を受け継ぎながら、社会の変化や、子供たちの状況等を踏まえ、お示しのとおり、その時々の目指す目標を掲げ、本県教育の振興を図ってまいりました。
近年、社会経済情勢が急激に変化し、教育が抱える課題が複雑・多様化する中、目的意識を持って意欲的に物事に取り組むことが、以前にも増して難しくなってきていると考えております。
このため、現在の教育ビジョンの基本目標であります「夢と知恵を育む教育」を受け継ぎ、一人一人の夢が実現できるよう全力で取り組み、将来に向かって夢や希望を抱き、さまざまな困難を乗り越えていく、知・徳・体の調和のとれた生きる力を身につけた子供たちをはぐくんでまいりたいと考えております。
次に、情操教育について、二点のお尋ねですが、まとめてお答えさせていただきます。
県教委といたしましては、音楽教育を初め、各教科や道徳、特別活動等の教育活動を通じて、豊かな情操が養われるものと考えております。
小学校におきましては、発達段階を考慮し、子供たちの状況をよく把握している学級担任が、音楽を初め、すべての教科等を受け持つことが原則となっており、こうしたことから、音楽専門の教員を採用していないところであります。
また、お示しのように、規模の比較的大きな小学校におきましては、学級担任以外の教員が、いわゆる専科教員として、音楽や理科、算数などの指導に当たっておりますが、どの教科を担当させるかにつきましては、教員の専門性も考慮しつつ、各学校の課題解決や特色ある学校づくりのために、校長が判断し、決定しているところであります。
こうしたことから、県教委といたしましては、学校の規模を問わず、お尋ねの純粋専科の音楽担当の教諭を一律に配置することは難しいと考えております。
今後、教員の指導力の向上や人事配置の工夫、小中連携の促進などにさらに取り組み、小規模校も含めた小学校における音楽教育のより一層の充実に努めてまいります。
次に、部活動を理由とする就学校の変更についての三点のお尋ねにお答えいたします。
近年、地方分権が進む中、地域に根差した教育行政を推進するため、市町教委の権限が拡大されているところであります。
こうした中、就学すべき学校の変更を認める具体的な理由につきましては、住民に最も身近な教育行政を行う市町教委が、地域・学校の実情や教育的配慮の観点から、より主体的に判断していくことが、ますます求められてきております。
県教委といたしましては、市町教委の就学に関する事務が適正に行われるよう、指導・助言しているところであります。
まず、お尋ねの調査の実施についてでありますが、部活動を理由とした就学校の変更に関する具体的な判断基準や、その設定理由等につきましては、市町教委が主体的に判断されるものと考えており、お尋ねのような調査を行うことは考えておりません。
次に、お尋ねの協議会の設置についてでありますが、県教委といたしましては、これまで各市町教委の取り組みについての情報提供に努めてきたところでありますが、市町村合併や学校統合が進む中、就学校の指定について各市町に共通する課題もありますことから、県、市、町の教育長会議において、意見や情報を交換する場を設けてまいりたいと考えております。
次に、お尋ねのガイドラインを作成することは、現時点では考えておりませんが、教育長会議において、部活動を理由とする就学校の変更等についての共通理解を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
(1)森林づくりについて
緑の砂漠が広がっている。山口近郊の山林を案内してくれた彼は、今日の我が国の山の現状をそう表現いたしました。
一見、青々とした木々の緑に覆われている山も、一歩踏み込んでみると、至るところで荒廃が進んでいます。
我が国は、国土の三分の二が森林で森林資源が豊かな国でありますが、森林の四一%は人工林であります。その人工林は、戦後の国策としての造林推進で拡大したものでありまして、その面積は一千万ヘクタールに及んでいます。我が国の国土面積は、三千八百万ヘクタールでありますので、国土の四分の一以上が人工林になったことになります。
この造林事業は、燃料が木炭や薪から電気・ガス・石油に切りかわる燃料革命の進展に伴いまして、建築用材として経済的価値の高い杉、ヒノキの針葉樹をメーンとして推進されました。
燃料革命以前は、農家周辺にある里山の雑木林が、天然林の広葉樹で、家庭燃料や農業に必要な肥料・飼料の供給源としてあり、生活に欠かせないものでありました。それが戦後、燃料革命により価値が薄れて、広葉樹は伐採され、杉、ヒノキ等の針葉樹を植林していく拡大造林が、急速に進められたのであります。
これは、戦後復興期、そしてそれに続く高度経済成長期と、建築の木材需要が増大していく中、それにこたえる将来を展望した取り組みであったと言えるでしょう。
しかし、植林した杉、ヒノキがすぐに建築用材として役立つわけではありません。昭和三十年代、高度経済成長期に入り、住宅を初めとする木材需要の増大に国内供給量は追いつかず、それを補うため、外国からの木材を輸入するようになります。段階的な木材輸入の自由化がスタートしたのであります。そして、昭和三十九年に木材輸入は全面自由化されました。
現時点から振り返ってみると、この木材輸入の自由化が始まった際に、このことが我が国林業にどういう影響を及ぼすかを長期的に見通しての政策的措置が必要であったように思われます。
以来、国産材と比べて安く、かつ大量のロットで安定的に供給される輸入木材、すなわち外材への需要は次第に高まり、輸入量は年々増加し、シェアを高めていきます。
それでも、高騰を続けていた国産材の価格は、ついに昭和五十五年ごろをピークにして下落に転じます。以後、その傾向は今日まで続き、国産木材の価格は、現在ピーク時の三割ないし五割にまで下落しました。このため、日本の林業経営は極めて苦しい状況に追い込まれ、林業離れ、林業の衰退が進行しています。
そして、膨大な人工造林の多くは、将来利益を生む見通しが見えないため、施業管理に経費を投ずることが困難になっており、適切に間伐等が行われることなく放置され、今日の山林荒廃の原因となっております。
また、木材自給率は昭和三十年には九割以上であったものが、今では二割にまで落ち込んでいます。
山口県に目を向けますと、森林面積は四十三万九千ヘクタールで、県土面積の七二%を占めております。この森林の四五%は人工林で、十九万七千ヘクタールあります。
所有形態別に森林面積の割合を見ますと、本県は国有林が三%、県有林や市町有林等の公有林が一三%、そして民間の私有林が八四%であります。国全体で見ますと、国有林が三一%、民間の私有林が五八%となっておりますことから、本県は、いかに国有林が少なく、民間の私有林が多いかがわかります。この私有林の四二%に当たる十五万六千ヘクタールが人工林であります。
県は、平成十五年度に、この私有林における人工林の整備状況を調査しました。その結果、十年以上の長期にわたり放置され、手入れの行き届かない森林が五一%を占めていることが明らかになりました。
木が密植して日光が差さず下草も生えていない。地肌がむき出しになっており、表土が流れて木の根が洗い出されている。木が立ち枯れている。私はこうした杉林、ヒノキ林を目の当たりにして、長いこと林業の仕事に従事してきた彼が言う緑の砂漠、青々とした山の荒廃が、本県でも人工林の各所で生じており、看過できない森林問題であることを知りました。
県が、平成十六年三月に策定した「やまぐち森林づくりビジョン」は、こうした現状や課題を的確に把握した上で、豊かな森林の再生に向けて、その考え方、施策の方向、具体的対策を余すところなく網羅しています。
このビジョンは、森林づくり県民税の導入に当たって、県民の理解を得るために作成された面もあろうと思われますが、その内容は、本県の森林づくりの指針書足るにふさわしいものになっています。私は、このビジョンが目指す方向を是とした上で、「森林再生のかぎは、木を使うことにある」との観点から、本県の林業施策について質問いたします。
早稲田大学准教授白井裕子著「森林の崩壊」は、我が国の森林問題のよって来るゆえんと所在を明らかにし、木づくりの伝統構法を守ることの大切さを訴えた好著ですが、この本の中で著者は、「世界の森林問題が『木を切り過ぎる』ことならば、我が国の森林問題は『木を切らな過ぎる』ことであろう」と指摘しております。
日本は世界有数の木材消費国でありますが、国内で自然に育つ木の増加分だけで、国内需要量を大方賄えるほど森林資源が豊かな国であります。しかるに、我が国の木材需要において国産材が占める割合、すなわち、木材自給率はわずか二割であります。
ある意味、ここに今日の日本の森林問題のすべてが集約されていると言っても過言ではありません。
そういう意味からして、私は、現政権になって、農林水産省が昨年十二月に、「コンクリート社会から木の社会へ」と銘打って「森林・林業再生プラン」を公表し、目指すべき姿として「十年後の木材自給率五○%以上」を打ち出したことを、遅きに失したとはいえ評価するものであります。
そこで、第一にお伺いいたします。国のこうした方針を受けて、私は、県として木材自給の向上に向けて、目標を設定して取り組むべきと考えます。
木材自給の割合を高めていくということは、林業振興のみならず、山、森林と地域とのつながりを回復していく施策としても意義あるものと考えます。
ただ、ここで留意していただきたいのは、木材自給率ではなく木材自給と申し上げていることであります。現在の山口県の木材自給率を調べてもらったところ三割で、国に比べて高いことはわかりました。
ただ、自給率を計算する場合、素材生産量から国の場合は輸出に回った分、県の場合は県外に流通した分を差し引いた量が木材自給量になりますことから、木材輸出がわずかな国の自給率と、県外への木材流通の割合が高い県の自給率を同様にみなすことは適切でありません。自給率の計算式では、生産された木材の中で県外に売れる木材の割合が高いと、県の木材自給率は低くなります。しかし、県産材が、県外に売れることは歓迎すべきことであります。
そこで私は、県における木材自給の目標設定は、率ではなく量にすべきだと考えます。本県の木材需要量の見通しを立てて、その五○%以上を県産材とする目標を設定することが、県の林業政策としては妥当であると考えます。
また、林業振興の観点からは、県外流通分も含めた県産素材生産量の目標設定も当然にあってしかるべきと考えます。もちろん、素材生産も木材市場を無視して行うことはできませんので、県産材の需要喚起と利用促進の取り組みが不可欠であります。
以上のことを踏まえお尋ねいたします。県は、木材自給の向上に向けて、目標設定や県産材の需要喚起、利用促進に今後どう取り組まれていくお考えなのか、その基本方針について御所見をお伺いいたします。
第二に、公共建築物への県産木材使用促進についてお伺いいたします。
赤松農林水産大臣は、年が明けて一月五日の記者会見で、公共建築物等への木材利用を法制化して促進しようという意欲を示し、「この通常国会へ法案を提出してやろうということを、今林野庁のほうへもお願いしております」と語っております。
こうした大臣の意を受けて、林野庁は、法案提出の準備をしているようですが、二月十八日に開催された全国木材組合連合会の会議において、林野庁木材利用課長が、その概要を説明しております。
その会議資料によりますと、(仮称)公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律案の趣旨は、木材の利用の確保を通じた林業の持続的かつ健全な発展を図るため、農林水産大臣及び国土交通大臣が策定する公共建築物等における国内で生産された木材その他の木材の利用の促進に関する基本方針について定めるとしております。
そして、法律の条文には、「都道府県及び市町村における方針の策定」という項目を設け、都道府県知事及び市町村は、「公共建築物における木材の利用の目標等を内容とする、公共建築物等における木材の利用の促進に関する方針を定めることができる」とのできる規定を盛り込む内容となっております。
本県では、国に言われるまでもなく、公共工事への県産木材の利用促進は、既に取り組んできており、着実に成果を上げております。
県及び市町における公共施設・土木工事の県産木材の使用量は、平成十年度と比べて、平成二十年度は、その二・四倍に伸びております。また平成二十年度の県内公共工事に使用された木材のうち、県産材の利用率は八○%であります。
ただ、民間も含めた本県の全木材消費量の中で、公共工事利用の県産材が占める割合はどの程度かというと、二・八%でわずかであります。まだまだ、本県において、公共建築物等の中で木造化する対象をさらに広げ、県産木材の利用を一層広げていく余地は大いにあり、それを推進していかなければなりません。
私は、そこで、これまでの取り組みを一歩進め、山口県では、公共建築物等への木材利用の実施計画を三ないし五カ年の期間で策定することを提案したいと思います。
この学校は平成二十五年度に改築する。それにはあの山の木を使う。そういう計画を可能な限り把握し、また立てて、三ないし五カ年の実施計画をつくるということであります。
なぜ三ないし五カ年計画かと申しますと、木づくりのよさを生かす建築には時間がかかるからであります。これを単年度予算、単年度事業でやろうとすれば、無理を生じます。工業製品と違って、木の製品は、いいものを提供しようとすれば時間を要します。最近は、製材した木は人工乾燥される場合が多いようですが、でき得れば木のよさを生かすには、半年から一年余りかけて自然乾燥するのがいいようです。
もう一つの理由は、この計画は、森林循環の林業モデルを盛り込んだ内容にすべきと考えるからであります。
本県の公共建築物への県産材利用促進の取り組みは、さらに進化させて、木の選定、伐採から始めて、伐採後の植林も含んだ森林の循環をつくり出す林業モデルの形成につながる事業として、県下の市町や森林組合等と協働して計画の策定に取り組むことが望ましいと考えます。そうした計画の期間は、少なくとも三ないし五年は必要かと思われます。
私は、こうした木の選定に始まり、それ以後の伐採、搬出、製材、建築に至るまで、林業の全プロセスを包含する計画の策定と実行が、産業として成り立つ林業システムの構築にもつながっていくことを期待するものであります。
そこでお尋ねです。公共建築物等への県産木材利用を一層促進するために、県下の市町や森林組合等と協働して、三ないし五カ年の実施計画を策定して推進すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
第三に、林業の生産性向上についてお伺いいたします。
先ほど紹介した「森林の崩壊」の著者白井裕子女史は、日本と欧州先進国との間では、林業の生産性に圧倒的な差があることを指摘しています。
例えば、木を切り出して製材するまでの生産性を比較してみると、スウェーデン、フィンランドの切り出しコストは、一立米――一立方メートルということでありますが、一立米当たり日本円で千五百円程度ですが、我が国ではそれが七千円から一万一千円にもなります。
また、一人が一日に生産する量を見ると、北欧諸国では一九五○年ごろにはおおよそ一・五立米で、日本とそう違いはなかったのが、二○○○年には三十立米に達し、林業の高度化が進んでいます。片や日本は、今でも三ないし四立米で、数値だけで見れば生産性に十倍もの違いが生じております。
この格差は、戦後五十年ほどの間に開いたものであります。欧州の先進国は研究開発を積極的に実施し、林業の機械化を進め、それとともに山林所有者の共同化などのソフト政策を進めてきました。
日本は、昭和三十年代、木材輸入の自由化を開始したとき、同時にこうした林業の生産性向上のための施策に着手すべきであったと思われます。
国際貿易において自由化の傾向は、将来とも一層強まると予想されることから、一たん自由化された木材の輸入が、制限される方向に向かうことは、今後とも期待できません。
とすれば、我が国林業の生産性を上げる基盤整備を着実に進めて、その上で価格競争力においても外材にまさるとも劣らぬ国産材、県産材の林業経営が育つよう図っていかなければなりません。
さきの質問で、公共建築物に県産材の利用を徹底していくことを求めました。もちろんこのことは大事ですが、いかんせん県全体の木材消費において、現在のところ公共工事が占める割合は少なく、九五%以上は民間消費であります。だから、林業の本格復興のためには、その民間の木材市場でシェアを広げなければなりません。そのためには、価格競争力を強めることが求められ、林業の生産性の向上が不可欠なのであります。
「やまぐち森林づくりビジョン」は、森林施業の団地化・共同化の促進、効率的な路網の整備と機械化の促進に取り組むこととしており、林業の生産性向上に向けた基盤整備の一般的方向を示しておりますが、今求められているのは、それらのことを計画的に具体化していく取り組みであります。
そこでお伺いいたします。私は、本県林業の生産性向上の目標を定め、それを達成するための林業の生産基盤の整備水準を具体的に設定して、計画的にその実現に取り組むべきと考えます。このことにつき、御所見をお伺いいたします。
第四に、森林バイオマスの取り組みについてお伺いいたします。
森林再生は、森林と人々の暮らしとのつながりを回復する営みであるとも言えます。地元の森林の木で家を建て、それをまた生活の燃料、エネルギーとして使っていく。一方、木を伐採したら、植林して施業管理を適宜行い、森林を保全していく。こうした関係が人々の暮らしと森林との間で成り立っていたのが、途切れてしまいました。家を建てるのも輸入外材が多くなり、燃料も石油・石炭にかわり、国内の木の使用が減り、放置され荒廃する森林が増大する原因となりました。
そこでさきに、建築面で木を使うことを促進して森林とのつながりを回復し、林業復興、森林再生を図っていくべしとの趣旨から、木材自給、公共建築物への県産木材使用、林業の生産性向上について質問いたしました。
次に、燃料やエネルギー源として、森林が再び地域や人々の暮らしに活用され、そのつながりを回復していくことを期待して、森林バイオマスへの取り組みについて質問しようとする次第であります。
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mas)をあらわす言葉で、地球に降り注ぐ太陽エネルギーを使って、生物が光合成によって生成した有機物であり、持続的に再生可能な資源であります。その中で、森林が生み出す木は、主要なバイオマスエネルギー源の一つでありまして、木質バイオマスとも称します。
日本は、豊かな森林資源に恵まれた国でありますので、石油や石炭の化石燃料では資源小国ですが、森林バイオマスをエネルギーとして活用できるようになりますと、一気に資源大国になります。しかも、石油、石炭はいずれ枯渇しますが、森林バイオマスは持続的に再生可能なエネルギー資源であります。
また、バイオマスは、燃焼等により二酸化炭素を放出しても、その二酸化炭素は、バイオマス形成過程で吸収・貯蔵した二酸化炭素の量と同等であることから、バイオマスエネルギーは、トータルとして大気中の二酸化炭素を増加させません。このことをカーボンニュートラルと申しますが、石油や石炭等の化石燃料の使用を、こうしたカーボンニュートラルのバイオマスにかえていくことは、地球温暖化の原因とされている二酸化炭素の増加を抑制することとなり、地球環境を保全していく上からも、喫緊の最重要課題であります。
本県は、平成十四年三月に「やまぐち森林バイオマスエネルギー・プラン」を策定して、森林バイオマスへの取り組みを本格化させ、このプランに基づいて、三つのプロジェクトを推進してまいりました。
私は先般、その三プロジェクトを視察いたしましたが、その一つ、既設石炭火力発電所施設での混焼システムは、新小野田発電所で実施されているもので、燃料の石炭に、林地残材や間伐材等の木質バイオマスをまぜて燃焼させる、いわゆる混焼による火力発電を実現しています。
木質バイオマスの混焼の割合は三%で、年間の量は現在一万トンですが、受け入れ施設を増設する予定で、それが完成すると年間受け入れ量は三万五千トンに増加する見通しであります。
新小野田発電所の発電量は百万キロワットで、山口県の全家庭に供給する電力の五六%をカバーしているそうですが、木質バイオマスを受け入れての混焼は、全国の発電所の中でもトップレベルの水準で、他の電力会社からの視察も多いようであります。私が行ったときも、それに遭遇しましたが、新小野田発電所の所長は、「山口県が森林バイオマスに熱心に取り組まれ、一緒にやってきたことが、今生きています」と、本県の取り組みを評価しておられました。
その二は、中山間地域電熱供給システムということで、岩国市錦町で実験的に行われている木質チップをガス化して発電と熱供給を行うガス化コージェネレーション施設であります。この施設がつくり出す電力や熱は、隣接する二つの老人施設に供給されており、森林バイオマスによる地域エネルギーの地産地消を目指しての実験モデル施設になっております。この施設も、全国からの視察が多いようであります。
その三は、小規模分散型熱供給(ペレットボイラー)システムであります。岩国市の山奥、天尾に県森林連合会の木材市場がありまして、ここにペレット生産工場が併設されております。
ペレット――これがサンプルでございますけどね、(提示)ペレットは、木材を細かく破砕して、直径数ミリ、長さ一センチ前後の小さな木質固形燃料につくりかえたもので、袋詰めにして供給し、部屋ストーブから施設ボイラーまで灯油の代替燃料として普及していこうというものであります。そのための原料である森林バイオマスの収集から、ペレットの製造、そして熱利用施設の整備とそれへの供給を効率的にシステム化していく取り組みが推進されています。
これら三つのプロジェクトは、森林バイオマスの取り組みとして全国に先駆けるもので、二井県政の志が感じられます。
そこでお尋ねいたします。地域や人々の暮らしの燃料、エネルギー源として森林バイオマスを活用していくことは、我が国を資源大国にし、森林再生・林業復興につながり、さらには地球環境保全に資するもので、その意義は極めて大きいものがあります。本県は、その森林バイオマスのプロジェクト事業を全国に先駆けて推進してまいりましたが、これまでの取り組みの総括と、今後の展望について御所見をお伺いいたします。
第五に、森林づくり県民税と山地災害対策について、三点お伺いいたします。
今議会には、平成十七年度から施行された森林づくり県民税に関する条例の改正の議案が提案されております。改正内容は、この税を賦課する期間を、平成十七年度から平成二十一年度までの五年間としていたものを、さらに五年間延長して平成二十六年度までと改めるものであります。
私は、このことに異存はなく、全面的に賛成でありますが、この県民税が五年間延長されることによって行われる森林整備事業において、昨年七月の豪雨によって発生した山地災害対策はどうなるのかに関心があります。
私は、昨年の九月県議会で、土砂災害の検証と対策について質問し、樹木の植生等により山それ自体を強くしていく取り組みが必要なのではないかと尋ねました。これに対し、松永農林水産部長から「山地災害対策検討委員会を設置して、防災の視点から森林整備のあり方について意見・提言をいただき、これを踏まえて、今後の対策や整備の方向を検討したい」との答弁がありました。
設置されました山地災害対策検討委員会は、ヘリコプターによる現地調査を実施し、四回の委員会を経て、昨年の十二月にその検討結果を報告書にまとめました。その報告書を見ての私の所感は、原因の究明は詳細であり、災害復旧対策は具体的であるが、防災の視点からの森林づくりについては、一般論が述べられているにすぎず、どういう植生の山地にしていくべきなのかの具体像が明確でないということであります。
「想定される原因」という項目で、この報告書は、崩落地周辺の植生状況を明らかにしておりますが、被災地の九三%は通常災害に強いと思われている松、広葉樹地帯でした。なぜ、そうなのか。松は松くい虫にやられて松枯れしていたからなのか、広葉樹も高い木が育っておらず、低木で根が張っていなかったからなのか、とにかく尋常でない数百年に一度の大雨が降ったからなのか、素人的にもいろいろ考えてしまいますが、この報告書はその点についての分析を明確にしていません。
この報告書は、急がれる災害復旧対策については具体策を示すも、防災の視点からの森林づくりについては、一般的方向を示すにとどまり、その具体策の検討は県にゆだねる内容になっております。
そこでお尋ねの第一点です。植生の観点から、災害に強い森林づくりを、昨年七月の豪雨で山地災害が発生した山口・防府地域の山々において、具体的にどう進めていくのか、御所見をお伺いいたします。
お尋ねの第二点は、その具体的対策の一つとして抵抗性松を植えるべきだとの提案がありまして、このことにつきお伺いするものであります。
この対策の提案者は、昨年の豪雨災害発生のメカニズムを地質や植生との関係において分析された工学博士であります。
抵抗性松とは、松枯れ病の原因であるマツノザイセンチュウが侵入しても枯れない抵抗性のある松のことで、枯れてしまった松林の中に生き残っている松から、そうした松が選定育成されたものであります。
山口・防府地区で豪雨による山地災害が発生した箇所は、花崗岩分布地域にほぼ重なりますが、このことは花崗岩分布地域の豪雨に対する脆弱さを反映しています。その花崗岩分布地域の植生の特徴は松類であります。花崗岩は、風化して真砂土化しても栄養分の貧弱な土壌にしかなりませんが、松はそうした土壌に育ちます。そして松は、枯れなければ根が地中に深く真っすぐ上に伸びる直根があり、降雨・流水で流されやすい花崗岩風化による真砂土の土層を緊縛して、流亡を防ぐことができる植物であります。
報告書も山口・防府地区における森林づくりということの一つに、「未立木地に、防災の観点から抵抗性松の植栽など検討することも必要です」と記しております。
そこでお尋ねであります。山地災害が発生した山口・防府地区の花崗岩分布地域における抵抗性松の植樹は、防災の視点からの森林づくりに有効と思われ、その実施を期待していますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
さて、ことしの一月十八日に「第四回やまぐち森林づくり推進協議会」が開催され、森林づくり県民税の延長によって行われる森林整備事業の見直し最終案が了承されました。しかし、この事業案を見る限りにおいて、豪雨による山地災害の対応が、どう反映されているのか定かでありません。
森林づくり県民税は、県民が関心を持ち、必要性を感ずる森林整備事業に有効に使われてこそ、県民の理解を得られるものであります。
そこでお尋ねの第三点であります。森林づくり県民税で、豪雨のため被災した山地を災害に強い森林にしていくため、どういう森林整備事業を行っていくお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
最後に、森林づくりに関連して藻場・干潟の再生についてお伺いいたします。
森林を再生することは、豊かな海の再生にもつながります。森、川、海はすべてつながっており、「森は海の恋人」などとも言われているのであります。
豊かな森林は、水を蓄える緑のダムとなり、きれいな水をはぐくみます。そして植生豊かな森林は、多様な生態系をはぐくみ、海の生物に必要な栄養素をつくり出し、その栄養は川を伝って海に届けられます。そのため漁師が、自分たちの海を豊かにするため、上流域の水源地域に植樹するなどの取り組みが行われております。
私の地元山口市においても、市内を流れます椹野川をモデルに「源流の森づくり」「自然豊かな川づくり」「山口湾の藻場・干潟の再生」など流域全体を豊かにしていく取り組みが行われ、全国的な先進事例となっております。
山口湾では、かつて多くのアサリがとれておりましたが、他の瀬戸内海沿岸部と同様、アサリの資源は壊滅状態となっておりました。しかし、この取り組みにより、壊滅状態だったアサリ資源が順調に回復するなど、山口湾の再生が着実に進んでいるようであります。
森と海をつなぐ、本県におけるユニークな取り組み事例としては、逆さ竹林魚礁なども上げられます。逆さ竹林魚礁とは、干潟に竹の枝が逆さになるように設置する魚礁で、平生町にある水産大学校田名臨海実験実習場で発案されたものであります。
平生湾に設置された逆さ竹林魚礁には、ナマコが大量に繁殖していることが確認されるなど、豊かな漁場回復への効果が認められており、全国的にも広まっているようであります。
このような森と海をつなぎ、豊かな海を取り戻す取り組みは、全国に誇れるものではないでしょうか。
藻場・干潟は「海のゆりかご」とも呼ばれ、魚の産卵場であり、稚魚の生育の場でもあります。県では、「儲かる漁業」の実現を目標に掲げておられますが、この目標はそこに豊かな海があって、その海に育てられた豊富な水産資源があってこそ実現できる目標であります。
今後とも全国発信できるような取り組みを進め、水産資源の回復につながる藻場・干潟の再生に努めていただきたいと考えます。
そこでお尋ねいたします。豊かな漁場回復に向けた藻場・干潟の再生に、今後どのように取り組まれるのか、御所見をお伺いいたしまして、一回目の質問を終わらさせていただきます。(拍手)
【回答】◎知事(二井関成君)
ただいま合志議員から国の「森林・林業再生プラン」などを示されての多岐にわたる御質問がありましたが、私からは、木材自給の向上に向けた取り組みの基本方針と森林バイオマスの取り組みの二点についてお答えをさせていただきます。
まず、木材自給についてであります。
木材価格の長期低迷や担い手の減少・高齢化、農山村地域の過疎化など厳しい経営環境の中で、荒廃した人工林が増加をするなど森林・林業を取り巻く現状を踏まえまして、私は、県民の暮らしや産業を支える豊かな森林づくりを進めるために、平成十六年三月に「やまぐち森林づくりビジョン」を策定をし、本県における森林づくりや林業振興の方向性をお示しをさせていただきました。
また、このビジョンに基づきまして、荒廃した人工林を再生をし、森林の持つ多面的な機能の回復を目指す森林づくり県民税の導入や、未利用森林資源の利活用にもつながる森林バイオマスエネルギーの実証実験、優良県産木材の認証制度等、これを利用した木造住宅への助成制度の創設など、全国に先駆けた取り組みを果敢に進めてまいりました。
このような中で、今回、国において、国内の木材自給率を十年後に現行の二四%から五○%まで引き上げることなどを骨子とした「森林・林業再生プラン」が示されたところであります。今後一年をかけて、その具体的な検討をされるということになっております。また、プランでは、森林の持つ多面的機能の持続的な発揮や林業・木材産業の再生、木材利用・エネルギー利用の拡大などの方向性が示されております。
この中で、バイオマスエネルギー分野など、既に本県におきまして先駆的に取り組んでいるものもありますし、これまでの取り組みの結果として、住宅分野での県産木材の利用なども進んできておりますので、私としては、国のプランが具体化されていない現段階におきましては、本県におけるこれまでの取り組みを着実に進めていきたいと考えております。また、今後、国の検討状況なども踏まえながら、本県における取り組みのあり方を適宜見直しながら、地域における木材の利用を促進をしていくことが重要と考えております。
なお、御提言のありました、本県における木材自給の数値目標のあり方につきましては、国のプランの掲げる数値は大変意欲的であり、このための具体化策にも期待をいたしておりますが、私としては、関係者の理解も必要な目標の設定に当たりましては、国の支援策などの具体化も踏まえまして、その要否も含めて検討させていただきたいと考えております。
次に、森林バイオマスの取り組みについてであります。
間伐材など未利用森林資源をバイオマスエネルギーとして利用いたしますことは、木材の利用促進や森林整備を初め、中山間地域における新たな産業や雇用機会の創出、さらには、世界的な問題となっている地球温暖化の防止などさまざまな効果が期待をされます。
私は、平成十四年三月に、いち早くやまぐち森林バイオマスエネルギー・プランを策定をし、その基本的な方向をお示しをいたしますとともに、平成十七年十二月には、国のNEDOのバイオマスエネルギー地域システム化実験事業の指定を受けまして、関係市や森林組合、企業などと連携をして、地域エネルギーシステムとして確立をしていくための実証実験に取り組んでまいりました。
本県の取り組みは、石炭火力発電所での大規模な混焼やガス化発電、ペレット利用という利用形態が多様でありますし、間伐などの伐採から輸送を含めた、川上から川下までの総合的な取り組みとして全国的にも大きな注目を集めております。また、これまでの取り組みの結果として、各システムの運用体制につきましても、関係機関の連携が図られる段階になってきております。
私は、本県におけるこれまでの取り組みを確実なものとするために、加速化プランの中でも森林バイオマスエネルギーの活用を重点事業に掲げますとともに、国に対しましても大規模な利用を図るための制度の創設などを要望してまいりました。この結果として、お示しがありましたように、石炭火力発電所での混焼システムでは、当初予定をされた一万トンの利用体制から三万五千トンへと大幅な利用の拡大が図られているところであります。
今後においては、利用量の拡大に応じた間伐材などの供給体制の整備や、各システムのエネルギー効率のさらなる向上などの課題もありますので、私としては、関係機関と連携をして、これらの課題の克服に取り組み、新たな地域エネルギーシステムである森林バイオマスエネルギー利用システムの定着化、さらには活着を図ってまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、農林水産部長より答弁をさせます。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
森林づくりに関する四点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、公共建築物への県産木材の利用促進についてであります。
公共分野での県産木材の利用促進につきましては、庁内の関係部局、教育委員会等で構成する「県産木材利用推進連絡会」を設置し、小中学校の校舎や体育館の内装の木質化、公園施設・公共土木工事での木材利用などに関係部局が連携して取り組みますとともに、今年度から、国の経済危機対策の中で措置された森林整備加速化・林業再生基金を活用して、保育園などの施設における園舎の木質化などの取り組みを進めているところであります。
現在、国において、公共建築物等への木材の利用の促進に関する法律案が検討され、この中で、都道府県の責務として、国の施策に準じた取り組みに努めるとともに、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する方針を定めることができる」とされ、今後、具体的な内容が検討されることとなっております。
したがいまして、今後の国の検討結果などを踏まえまして、お示しのありました実施計画の要否も含め、県としてのあり方の検討も進めてまいりたいと考えております。
次に、林業の生産性向上についてであります。
小規模・零細な森林所有者が多く、担い手の減少・高齢化など森林・林業を取り巻く厳しい経営環境の中で、持続可能な林業経営を実現するためには、生産基盤の整備や経営の効率化は重要な課題となっております。
また、生産基盤の整備には、団地化に向けた合意形成や森林現況調査の実施、効率的な路網の配置、高性能林業機械の導入、機械オペレーター等の人材育成などハード・ソフト両面にわたる多般な取り組みが必要と考えております。
このため、県といたしましては、平成十九年度に、山口市阿東町において約三百ヘクタールの人工林を対象に、施業の集約化などを中心としたモデル事業を実施し、この結果をもとに県内各地域での普及に努め、現在二十カ所、約六百ヘクタールでの取り組みがなされております。
また、森林整備加速化・林業再生基金を活用いたしまして、森林組合などと連携して、間伐の促進や、これに必要な作業道など林内路網の整備や高性能林業機械の導入など、経営の効率化に資する基盤整備に取り組むこととしているところでありまして、本基金の実施期間三年間におきまして、約千ヘクタール程度の基盤整備を予定をしております。
林業経営は、五十年から百年にわたる樹木の育成が基本でありまして、経営の起点となる木材価格の動向は、このような超長期の中では見きわめがたいところもございますので、県としては、地域林業を担う市町、森林組合との連携のもと、将来を見据えた基盤整備や担い手の育成を図る中で、経営の効率化を進めることが重要と考えており、生産性向上の目標も、このような取り組みを進める中で、地域の実情に応じて集約されるものと考えております。
次に、森林づくり県民税と山地災害対策についての三点のお尋ねであります。
まず、昨年七月豪雨で被災をした山口・防府地区における災害に強い森林づくりについてであります。
山地災害対策検討委員会におきましては、防災や減災の面において、森林の果たす役割を指摘をし、今後における本県の森林づくりのあり方につての提言をいただいたものでありまして、県としては、この提言も踏まえて、地域防災計画の見直しを行ったところであります。
また、山口・防府地区においては、十七カ所に及ぶ大規模な山腹の崩落を生じておりますので、県としては治山事業の計画的な実施により、この復旧に全力で取り組みますとともに、市や森林組合、森林所有者などと連携しながら、杉、ヒノキの人工林や広葉樹林につきましては、保安林整備事業や造林事業などにより、森林の現況に即した間伐や天然林改良など適切な森林整備を実施し、また、樹木の大きな生育が見られない未立木地につきましては、その実態を見きわめながら、保安林整備事業などにより、抵抗性松やコナラなど広葉樹の植栽を進めることで、防災機能の高い森林づくりを着実に進めていきたいと考えております。
二点目は、抵抗性松の植栽についてであります。
松くい虫被害に強い抵抗性松は、お示しのとおり樹木の生育条件に劣る花崗岩地域におきましても生育するだけでなく、深くまで伸びる根を持ち土砂崩壊防止などの防災機能の高い樹種の一つであります。
また、このような植栽に当たりましては、ヤシャブシやヤマモモなどの広葉樹の肥料木と針葉樹の抵抗性松を混植するなどして、森林の再生を図ることが、防災の視点からの森林づくりに有効な手法とされております。
したがいまして、花崗岩地域の多い山口・防府地域における未立木地におきましては、今後、森林所有者の理解も得ながら、保安林などの指定を行いまして、抵抗性松の植栽による森林の再生を進めていきたいと考えております。
三点目は、森林づくり県民税についてでございます。
森林づくり県民税での事業は、山地災害の防止を初め、水源の涵養、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収源としての役割など、森林の持つ多面的な機能の回復を目指して導入された制度でありまして、県内全域にわたり、荒廃した人工林の再生などの取り組みを進めているところであります。
昨年七月の豪雨災害などの復旧等に当たりましては、治山事業等により適切に対応することが基本であり、森林づくり県民税事業では、県民が幅広く受益できる荒廃森林の再生に主眼を置いた取り組みを進めることが適当と考えておりますが、次期事業におきましては、本県のこれからの森林づくりにつながるモデル事業として豊かな森林づくり推進事業を実施することとしております。
この事業の中で、山口・防府地区で見られるような荒廃したアカマツ林の回復再生を図るための手法の検討などを行うこととしておりますので、こうした検討結果を踏まえ、効果的な治山事業や造林事業への新たな提案を行うなど、災害に強い森林づくりを進めてまいりたいと考えています。
また、こうしたハード事業にあわせまして、森林所有者や下流地域住民が一体となった森林づくりを進めていくことが重要でありますので、森林づくり県民税事業で新たに導入をすることとしている森林づくり活動支援事業を活用して、地域住民が参加して行う植樹活動や育樹活動などを通して、森林の持つ機能への理解や防災意識の高揚を図りながら、地域が連携した森林整備を推進していきたいと考えております。
最後に、藻場・干潟の再生についてであります。
お示しのとおり、豊かな漁場は、森・川・海の一体的な管理によりもたらされることから、県ではこれまで漁業者の行う植林活動を支援いたしますとともに、平成十五年からは、お示しのありましたように山口湾におけるアマモ場造成や干潟の耕うんなど、藻場・干潟の再生に向けた取り組みを進めてまいりました。
また、今年度からはこうした取り組みを県内十市町に拡大をし、ウニの駆除、アサリの被覆網による漁場管理等の漁業者グループが行う藻場・干潟の保全活動を支援をしているとこであります。
その結果、山口湾や周南地域の干潟では、これまでほとんど見られなかったアサリが収穫できるなどの成果があらわれてまいりました。
県としては、今後、こうした藻場・干潟の再生に向けた取り組みを加速化するため、藻場を構成するヤツマタモク、アラメの人工採苗や干潟の再生につながるアサリ人工種苗放流等の技術開発を引き続き進めますとともに、来年度からは新たに、本県のみにまとまった分布が認められ市場評価の高いカイガラアマノリの量産化技術開発に取り組み、「紅きらら」という商品名で、地域特産化を目指す漁協の取り組みを支援するなど、干潟の有効利用による生産性の向上にも努めてまいります。
また、漁業者主体で行われております保全活動の重要性を、地域住民参加の干潟耕うんや、高校での実習、小中学校の体験学習等を通じまして広く普及啓発することにより、活動の輪を広げてまいりたいと考えております。
県としましては、今後とも森・川・海をつなぐ多様な生態系がもたらす豊かな漁場の回復に向けまして、藻場・干潟の再生に積極的に取り組んでまいります。
二回目の質問であります。
藻場・干潟の再生では、また子供たちがアサリ狩りに行けるような干潟の再生を期待いたしております。よろしくお願いいたします。
再質問、時間がありませんので、ペレットに限って再質問をいたします。
ペレットを燃料にいたしましたボイラー、いわゆるペレットボイラーを導入した施設が本県では既に十五施設ありまして、さらに来年開催される国体施設でも導入されるようであります。
今後、積極的な導入が望まれるわけでありますが、設置費用とその後の維持管理を含めたコストが大きな問題になると思われます。原油価格の相場などで大きく異なると思われますが、電気や灯油、ガス等を使用した場合と比べて、どの程度コストに差が出るのか、お伺いいたしたいと思います。
また、参考資料にも載せておりますけれども、徳佐小学校で各教室にはペレットストーブがありまして、また、多目的ホールの床暖房はペレットを燃料として行われておりまして、子供たちに喜ばれております。これから学校施設においてペレットストーブ、ペレットボイラーの導入を図っていくということは、教育環境の整備という面からのみならず、子供たちへの環境教育という面からも望ましく、そのことへの取り組みを期待するところでありますが、このことにつき教育長の御所見をお伺いいたしまして、二回目の質問といたします。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
ペレット利用に係るコストについての再質問であります。
まず、設備の導入費用でありますが、ペレットボイラーは他のボイラーと比べまして、二倍から三倍程度の額となっております。また、維持管理費の大半を占める燃料費としては、石油価格がやや高目になっております、現時点では、同じ熱量で灯油などとペレットを比較いたしますと、ほぼ同一の価格となっております。
県としましては、ペレットボイラーの導入に当たりましては、初期費用の負担が課題となりますので、国の助成制度などを活用して負担の軽減を図りますとともに、ペレットの利用を促進するために製造や輸送コストについてさらに削減を図ってまいりたいと考えております。