(1)フードバレーについて
さきの総選挙で圧倒的な勝利を得た民主党を中心とした連立政権、鳩山政権が誕生いたしました。私が見たところ、鳩山政権、最も輝いておりましたのは、鳩山首相の所信表明演説までで、後は、やはり現実の課題と格闘、苦闘しているなと、それなりの支持は保っているけれども、評価する声と批判する声と相半ばしてきているなという感を持っているところであります。
さて、民主党が掲げております看板は、国民の生活が第一であります。ただ、今民主党が問われているのは、国民の生活が第一の政党なのか、それとも、選挙が第一の政党なのか、それが、まさしく今問われているのではないかなという感がいたします。
真に国民生活が第一の政党というのであれば、少なくとも、二十一世紀前半の一億数千万の国民生活と日本の国の命運がかかっている、そしてまた、同様に、二十一世紀前半のアジア太平洋地域の平和の基礎となる日米同盟が、揺るぎないものになるよう責任ある対応をすべきだと考えているところであります。
さて、今我が国は、格差の問題、雇用の問題、景気の問題、財政の問題と、さまざまな困難な問題に直面しております。私は、こういう困難な問題を解決する根本的な策は、グローバル経済の中で、第一次産業をいかにして成長産業にしていくのかというところにあると見ております。そういう観点から、このたびも、一般質問をさせていただきます。
それでは、早速一般質問に入ります。
日本は瑞穂の国であり、日本農業は我が国の基幹産業として世界市場で成長していく、私には、そういう確信があります。そして、そのことを実現していくことが、我が国の農業政策、すなわち、農政の目的でなければならないと考えます。
ところで、世界市場で成長していく日本農業と申しますと、「それは、とても無理」という声が返ってきそうであります。今日、日本農業弱小観が、しっかり定着しているからであります。しかし、この日本農業弱小観は、本当にそうなのでしょうか。
最近、農業問題について、鋭い的確な指摘と発言で注目されている本県山口市小郡出身の農業ジャーナリスト浅川芳裕氏は、日本農業弱小観は根拠がなく、我が国が世界の農業大国であることを、国際連合食糧農業機関(FAO)の具体的なデータに基づいて明らかにしております。
彼は、我が国農業の弱さを裏づけ、国民の不安を増幅させる大前提としてある、日本は、世界最大の食糧輸入国で、食糧の海外依存が際立った国であるとの認識は、間違っていると主張します。
二○○四年の先進五カ国の農産物輸入額を比べた場合、一位が米国の五百九十九億ドル、次いでドイツの五百八億ドル、日本はイギリスと三位同列の四百十五億ドルで、フランスの三百四十六億ドルという順になること。
実際の依存度をあらわすと見られる国民一人当たりの年間農産物輸入額を試算すると、一位イギリス六百九十ドル、続いてドイツ六百十七ドル、フランス五百五十七ドル、日本はそれらのほぼ半分の三百二十四ドルで、むしろ、一番少ない米国二百十四ドルのほうに近いこと。
さらに、対GDP農産物輸入比率を見ても、全く同順で、イギリス一・九%、ドイツ一・八%、フランス一・七%、日本○・九%、米国○・五%となっており、日本の国力に占める輸入食糧負担は決して多くないと言えること等が、彼の主張を裏づけています。
そして、農産物を生産額で見ると、日本の七百九十三億ドルは、フランス、ドイツ、イギリスを初めとするEU諸国のどこよりも多く、農業大国と言われるロシア二百十一億ドル、オーストラリア二百三億ドルの三倍超で、世界の中で日本は、農民人口が大多数を占める一位、二位の中国、インド、三位の米国、四位の農業立国ブラジルに次ぐ世界五位の農業大国であるのです。
生産量から見ても世界トップレベルの個別の品目は少なくなく、ホウレンソウ世界三位、イチゴ六位、キュウリ七位などトップテン入りするものもあれば、果物の王様リンゴで十四位、欧州メジャー作物ジャガイモでさえ十九位と健闘しており、四割減反の米は世界十位であります。生産額、生産量いずれにおいても日本が農業大国であることを示す、浅川氏の以上の指摘は説得力があります。
私たちは、日本農業弱小観は払拭して、日本農業の底力に着目し、その大きな可能性に自信を持ち、世界市場においてこれを成長させていく方向を目指すべきなのではないでしょうか。
さて、農業の原点は、言うまでもなく、健康な体をつくる命の源としての食糧を生産し供給することであります。この原点をしっかり踏まえた上で、これからの農業は、単に農産物を生産する第一次産業としての農業にとどまらず、第二次産業としての加工、第三次産業としての流通を包含し、食にかかわるさまざまな分野を広いすそ野として持つ、総合産業としての農業に進化していかなければなりません。
そうした認識に立って、事業経営体としての農業を確立し、生産技術と事業経営の両面において、その高度化を絶えず図っていく農業が、二十一世紀の日本農業を担い、成長させていくことになると考えます。
農業の原点を踏まえ、総合産業としての農業の高度化を、技術と経営の両面から絶えず図り成長していく農業、そういう意味での成長産業としての農業を確立し、本県農業が基幹産業として県勢振興の役割を果たすようになることを期待し、以下御所見をお伺いいたします。
まず第一は、米輸出への取り組みについてであります。
日本の主要作物である米の需要拡大が、我が国農業活性化の最大の課題であります。米の需要は長期的に減少してきましたが、直近では減少に歯どめがかかり、二○○七年七月から二○○八年六月の一年間で八百五十五万トンと、前年に比べて十七万トン(二○%)増加し、米の国民一人当たり年間消費量もピーク時の半分近くまで減少してきていたのが、二○○七年度は、○・四キログラムの増加となりました。
これは、小麦製品を含めた食料品全般の価格が上昇する中で、比較的価格が安定している米に需要がシフトしたためと見られておりますが、我が国が人口減少社会に移行したことを考えますと、将来を展望しての抜本的な需要拡大策は、米の用途を主食以外にも多方面に広げていくこととあわせ、海外に販路を開拓し需要をつくり出していくことであります。
国は、現在農林水産物・食品の輸出促進に力を入れており、平成二十五年度までに一兆円規模の輸出を目指すとしておりますが、その中で、二○○八年における米の輸出数量は千二百九十四トンで、ここ三年間でほぼ倍になっています。
これを国別に見ますと、輸出総量では台湾が四百五十三トンと最大の輸出先となっており、以下、香港三百四十一トン、シンガポール百七十三トン、中国九十トンと続いております。
本県も、平成十九年十一月から、JAあぶらんど萩産のコシヒカリを「維新伝心米」という商品名で台湾に輸出し、以来本年八月末までの二年弱で輸出総量は三十トンに上っております。
私は、台湾への米輸出を実現した関係者の努力を高く評価し、今後これが一層増大していくことを期待するものですが、台湾へは多数の産地から輸出されており、日本産米対象の市場は飽和状態にあると見られていまして、新たな海外の販路として中国への米輸出の期待が高まります。
しかし、膨大な人口を擁し、目覚ましい経済成長で富裕層も増大している中国には、日本産米の需要は相当にあると思われるものの、二○○八年の中国への米輸出量は九十トンで、台湾の五分の一の微々たるものであります。
これは、昨年九月県議会で、東アジア地域への米輸出について質問した際、松永部長が答弁されましたように、中国に向けた米輸出については、検疫条件が厳しく、関税割り当ての制限等、制度的に高い障壁が存在することによるものと思われます。
よって、中国への米輸出を増大していくためには、日中政府間交渉によって、その障壁解消が図られていくことが基本ですが、本県は、中国山東省と三十年近く友好交流の歴史を積み重ねてきており、培ってきた信頼関係がありますことから、これを生かして、県産米の山東省への輸出を実現していく有効策があるのではないかと思う次第であります。
これまで、本県と山東省は、経済交流ということでは、毎年交互に商談会を開催するなどして、それなりの実績を上げてきております。私は、この経済交流をさらに進一歩させ、双方の経済発展につながる交流として本格的に拡大していくために、具体的に双方が相手方に輸出したい重要品目を定め、その実現に向けて課題を共有し、課題解決に共同して当たる協議機関を、山口県、山東省双方の産学官の適任者を構成メンバーとして設置することを提案するものであります。
そして、本県としては、その機関で協議する重要品目に県産米を指定したらいいと考えます。
そこでお尋ねいたします。台湾に続いて、中国に向けて本県の米輸出が実現することを期待し、まずは、長い友好交流の歴史を積み重ねてきている中国山東省との間で、お互いが望む重要品目の相手方への輸出を実現するための協議機関を設置することを提案いたしますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
第二に、農商工等連携事業への支援についてお尋ねいたします。
このことにつきましては、昨日、塩満議員のほうから、農商工連携の全体像、意義等を踏まえての質問がありましたが、私なりの課題把握に基づいて質問をさせていただきます。
地域における農商工のさまざまな資源のよきマッチング、もしくは融合を促し、新たな事業を創出して地域内経済の好循環を実現し、活性化しようとする農商工連携促進の取り組みは、今日の地域政策の重要な柱でありますが、これは同時に、農業に代表される第一次産業を、第二次産業、第三次産業を包含した総合産業として成長発展させ、地域経済を豊かにしていく取り組みであるとも言えます。
国は、昨年五月に農商工等連携促進法を制定し、これを推進する仕組みを整えました。以来、国が定めた高い基準を達成して、全国で二百八十六事業が、農商工等連携事業の認定を受けております。
しかし、高いハードルを乗り越えて国の認定を受けた事業も、適宜支援策が講じられないと、事業計画の目標達成、そして、そのことによる地域経済へのプラス効果の波及が困難になります。
本県では、これまで三事業が、この認定を受けておりますが、その第一号は、有限会社クレアツーワン、屋号は、山口ごま本舗でありますが、このクレアツーワンと農事組合法人「あさグリーン優とぴあ」との連携事業で、山口県産黒ごまを原料として、昔ながらの製法で製造したこだわりの「国産黒ごま油」及び「国産黒ごま関連商品」の開発・製造・販路拡大の事業でした。
この認定事業で期待された地域経済への効果の一つは、黒ゴマ栽培農家を育成拡大し、本県を黒ゴマの一大産地とすることでした。
しかし、このことが計画どおり進んでいません。黒ゴマ生産を担当するはずだった農事組合法人「あさグリーン優とぴあ」が、初年度生産できた黒ゴマはごくわずかで、その後、生産撤退に等しい状況にあります。この農事組合法人は、建設会社が農業方面に進出したものでしたが、生産技術の蓄積と農業経営のノウハウがないと、農業への参入も、そうみやすくないことがうかがえます。
また、この事業の発足当初には、五十名もの方から黒ゴマ生産に取り組みたいとの申し出があったそうですが、続いている人は一人もいないそうです。
クレアツーワンは、これまで国産のゴマということで、鹿児島、熊本からゴマを購入してゴマ油を製造販売してきた実績があることから、本県にゴマの産地が形成されれば、生産されたゴマをすべて買い取ることは可能であります。
ところが、ゴマの生産をやろうという方々が求めたのは、生産されたゴマの買い取りだけではなく、計画どおり生産できなかった場合の補償でした。それがなければゴマ生産に取り組めないと言われても、そこまでは一企業として対応はできません。
幸いなことに、JAあぶらんど萩が五百キロ、JA山口中央が百キロの黒ゴマ生産に取り組んでいただいたことにより、それを使っての山口県産黒ゴマ油の製造販売はできましたけれども、この連携事業五カ年計画の目標達成に必要な年間九トンの県産黒ゴマの生産、それに向けた産地形成の見通しは全く立っていません。
私は、この連携事業が直面している黒ゴマの産地形成という課題は、県が農業政策上の課題として、農協等と一緒になって取り組むべきことであり、そうしてこそ解決できる案件であると考えます。
農商工連携での農は、農林漁業を代表しての農であり、そういう意味での農商工連携は、地方再生のかぎである第一次産業を、成長産業にしていく取り組みであるとも言えることから、これを県政上の重要政策として位置づけ、この連携事業が軌道に乗るよう支援していくことが大事と考えます。
そこで、農商工連携の視点から農業を成長産業にするための取り組みついて、三点お伺いいたします。
その一は、農商工等連携事業が果たす役割を、どう認識しておられるのか、その二は、農商工等連携事業への支援の具体的方針について、その三は、本県における黒ゴマの産地形成について、御所見をお伺いいたします。
第三に、フードバレーの形成についてお尋ねいたします。
私は、本県において新たな産業集積を実現していくために、フードバレーの形成に取り組むことを提言いたしたいと思います。
農と食のシリコンバレー版ともいうべき「フードバレー」の名称は、アメリカのコンピューター産業の集積地シリコンバレーに由来したもので、「食の集積地」という意味で使われております。
この言葉の最も的確な定義は、オランダ経済省企業誘致局の「フードバレーは、文字どおり食品・農業・健康をテーマとした専門知識の集積地である」との説明であります。
この説明は、平成十六年に、伊藤忠商事が、オランダのフードバレーの中核大学ワーヘニンゲン大学と、食料バイオ分野で提携することになったことを紹介した記事にあるもので、御参考までに、この記事の紹介をもう少しさせていただきます。
伊藤忠が先端技術戦略の提携パートナーをオランダから選んだ理由の一つは、ヨーロッパにおける新農業技術の開発や、食品健康分野における斬新な製品の開発にオランダが大きな役割を果たしてきたことが挙げられる。
オランダは、食品研究に向ける研究開発投資の面では世界有数の国で、食品産業総売り上げの二%以上を年間研究開発費に投じている。
ワーヘニンゲン大学は、これまで何十年にわたり農業技術や食品安全など、食品や健康にかかわるあらゆる分野での幅広い科学研究で知られている。
世界の食品研究において確固たる評価を築いてきた結果、ワーヘニンゲン大学の周辺には、食品関連の企業や各種機関が集まっている。
フードバレーで注目すべきは、企業・行政・研究機関の三者が緊密な協力関係にあることである。
フードバレーには、イノベーション力ある企業が多数集まっている。また、ワーヘニンゲン大学の周辺には、バイオテクノロジー関連の新規ベンチャー企業もふえてきている。
フードバレーのもう一つの大きな特徴は、「科学とビジネスの出会い」というコンセプトを実践して発展を続けていることだ。
以上のことから、フードバレーとは、どういうものかということは、おおよそ察していただけると思いますが、これらのことを要約して、私は、フードバレーは、農と食と健康への思いを形にする、知とわざの集積地であると申し上げたいと思います。
そうしたフードバレーが本県に形成されるとすれば、すばらしいことだなと、そう思うのは、私だけでしょうか。
フードバレーへの取り組みを全国的に見ますと、最も力を入れて取り組んでいるのが静岡県の富士宮市で、ここは平成十六年から「フードバレー構想」を掲げ、市役所にフードバレー推進室を設けて、市民と生産者・NPO・企業・大学が連携して、市を挙げて食のまちづくりに取り組んでいます。
また、大阪府を中心とする近畿地域は、平成十九年から産学官連携で食関連クラスター形成を目指して、オランダ・フードバレーと食品産業交流を進めています。
九州では、若い経済人の団体である青年会議所九州地区協議会が、九州産業活性化ビジョンをまとめ、その中で、フードバレーを九州経済圏として形成すべきだと訴えています。
私は、フードバレーの形成は、日本各地いずこでも可能で、条件の有利、不利、環境の適、不適の差は、そう大きくないと見ております。大事なのは、農と食と健康に関連する知とわざのネットワークを形成する意思で、その意思が明確で強いところにフードバレーは形成されると考えます。
しかし、そうとはいえ、条件が有利で環境が整っているところが、強い明確な意思でフードバレーの形成に取り組むことが望ましいことは言うまでもありません。
そして、山口県は、まさしくそういうところであると思います。農業、漁業ともに盛んで豊かな食材に恵まれ、食品製造業も多く、大学や官民の研究施設等のすぐれた研究機関が幾つもあり、交通の利便性も高い本県は、日本のフードバレーを形成し得る有力地の一つであると言っても過言ではないと思います。
私は、フードバレーの形成は、山口らしさを生かし伸ばす新たな産業集積の道であり、山口の農業を知識産業化して、付加価値の高い成長産業にする道であると考えます。
そこで、フードバレーの形成に向けて、三点お伺いいたします。
その一は、山口農業を成長産業にし、農と食を中心にした新しい産業集積を実現していくために、フードバレーの形成を、これからの県勢振興の重要政策と位置づけて取り組むべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
その二は、本県農業の加工分野の強化ということについてであります。
御案内のように、これからの農業経営においては、食品加工の分野がウエートを高め、食品加工を含めた農業経営、もしくは、食品加工分野と連携した農業経営が、これまで以上に推進されるべきと思われます。そして、それは同時に、フードバレーの土壌形成につながるものであります。
つきましては、本県農業の加工分野の強化が重要と考えますが、制度面、技術面からどう支援していかれるのか、御所見をお伺いします。
その三は、食品産業の集積についてであります。
本県は、製造業の中で食品製造業の事業所数が約二五%を占め、食品製造業の集積比率が全国的に見ても高い県であります。このことを、フードバレー形成に向けての本県の強みとして、食品産業の集積を戦略的に進めていくべきと考えますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の一般質問を終わります。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、フードバレーに関するお尋ねのうち、その位置づけについてお答えをいたします。
お示しのフードバレーは、食品・農業・健康に関する専門知識の集積地であり、食関連の産学公が連携する仕組みを構築し、食を中心とした産業集積を図るための取り組みであろうかと理解をいたしております。
本県では、豊かな自然と風土に恵まれた、特色ある農水産物が各地域で数多く生産されており、古くからこれらの素材を生かし、例えば、下関地域では、全国有数の水産加工業の集積地となるなど、食に関する産業の形成が図られております。
私は、こうした食品産業が将来に向けて発展をしていくためには、お示しのように産学公が知恵や技術を持ち寄り、本県のポテンシャルを生かした魅力ある産業の形成を図っていくこと、いわゆるフードバレー的発想が重要であり、私も、そのことが農林水産業の成長にもつながるものと考えております。
このために、私は、産学公の連携を県政の重要課題に掲げ、これまで、山口大学農学部との共同研究に関する包括協定の締結や、水産大学校や県立大学とも緊密に連携を図りますとともに、産学公の各機関の参加のもとに、食品の加工開発や知的財産の活用を推進する「山口県食品開発推進協議会」を設立するなど、その体制の整備を図ってきたところであります。
また、このような体制のもとに、食品産業と研究とのマッチングを進め、県産農水産物の特性を生かした食品の商品化にも取り組んでまいりました。
その結果、少し細かい話になりますが、「はなっこりー」や県産カボチャ「くりまさる」を材料として使用したオリジナル外郎や、フグや鯨を活用したしょうゆの開発、食品加工向けに大きな需要が期待されるウイルス病に強い自然薯の開発、さらには、本県オリジナルの酒米「西都の雫」を使った清酒の開発など、着実にその成果を上げているところであります。
また、地産地消を進め、ふるさと産業の振興を図る観点から、農商工連携制度を活用した新たな商品の開発や食品加工製造業者と農業者との情報交換会の開催など、本県農水産業の特性や魅力を食品産業に多様に活用する施策の展開も進めております。
私は、今後とも産学公の連携を一層進め、本県農水産業の振興と食品産業の育成に向けた取り組みを加速化してまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
数点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、中国への米輸出の取り組みに関する協議機関の設置についてであります。
御案内のように、世界的な日本食ブームや東アジア諸国の著しい経済発展によりまして、こうした地域をターゲットとした輸出の取り組みは、県産農水産物等の需要拡大を図る観点から、大きな意義があるというふうに考えております。
しかしながら、中国への米の輸出につきましては、検疫条件が非常に厳しいため、現在のところ、指定された精米工場が神奈川県の一カ所に限定をされていること、また、関税割り当ての制限等、制度的に高い障壁が存在することから、お示しのとおり、我が国から中国への輸出量も、低水準にとどまっており、現状では、本県独自での取り組みは極めて困難な状況にあると考えております。
このため、ことし六月には、国に対して輸出相手国における検疫等の障壁を軽減するための働きかけの強化を要望したところあります。
こうした状況を踏まえ、山東省との協議機関の設置に関する御提案がございましたが、まずは、米の輸出の可能性について、山東省と協議してまいりたいと考えております。
次に、農商工等連携事業への支援について三点のお尋ねであります。
まず、農商工等連携事業が果たすべき役割の認識についてでありますが、農商工連携は、県産農水産物の付加価値の向上や、新たな需要の掘り起こし等が促進され、県産農水産物の需給拡大や農家・漁家所得の向上につながりますことから、一次産業の振興を図る上で、その果たすべき役割は非常に大きいと認識をしております。
次に、農商工等連携事業への支援の具体的方針についてであります。
県では、農商工連携に取り組む農業者・漁業者や商工業者のマーケティングや経営面を支援をすることとして、中小企業制度融資や、やまぐち産業振興財団の中小企業育成基金を活用した助成、農業者・漁業者や商工業者のシーズやニーズを収集するアンケート調査などに、生産者団体、商工会、商工会議所等の関係機関と連携をして取り組んでおりますほか、産学公が連携した「山口県食品開発推進協議会」によりまして、県産品を活用した新商品開発、販路拡大を支援をしております。
また、生産者団体、流通・食品・外食関係者等で組織をいたしました「やまぐちの農水産物需要拡大協議会」での地産地消の取り組みの中におきましても、農商工連携の取り組みを推進をしているところでございます。
具体的には、農林水産業者と食品小売業者・飲食業者とが連携をいたしました販売協力店や、やまぐち食彩店を設置をいたしておりまして、しゅんの農水産物を対象とした販売促進キャンペーンや地産地消料理の提供に取り組んでおります。
また、農林水産業者と食品加工業者との連携によりまして、本県の豊富な水産物とその加工技術を組み合わせをした「山口海物語」の製品開発、あるいは、県産農水産物を使用した「やまぐち地産・地消弁当」、長門ゆずきちを使用したポン酢、ドレッシング等の商品開発、販路開拓に向けた商談会の開催等の取り組みも進めております。
今後とも、こうした取り組みを総合的に進め、市町、関係団体等と緊密に連携をいたしまして、農商工連携の促進に向けた、幅広くきめ細かな支援を行ってまいります。
次に、農商工等連携事業に係る黒ゴマの産地形成についてであります。
県としては、商工業者の需要にこたえられるよう、これまで、萩市や山口市での生産体制の整備に向け、JA等と連携して、生産者への栽培誘導や技術指導、産地確立交付金を活用した産地づくり等に取り組んでまいりました。
しかしながら、黒ゴマは、新たな品目でありますために、生産者の技術不足や、乾燥調製に多くの労力を要しますこと、さらには加工原料用であることから、安定的かつ低コストでの生産が求められることなど多くの課題がございまして、取り組み初年度の平成二十年産の出荷量は約六百キロにとどまっております。
このため、今後、商工業者が求める量を安定的に確保できるよう、栽培講習会の開催や巡回指導等による生産技術向上に向けた支援を行いますとともに、農業生産法人等を核に、地域の生産者が一体となった規模拡大の取り組みを促進するなど、商工業者、市町・JAと緊密に連携しながら産地形成に努めてまいります。
次に、農業経営における食品加工分野への支援についてのお尋ねでございます。
農産加工の取り組みにつきましては、これまで、県下各地で農山漁村女性グループを中心に、地域資源を活用したさまざまな加工品の開発に取り組まれておりまして、県では、そのノウハウを活用し、女性みずからが起業家を目指す、いわゆるルーラルビジネスの育成を積極的に支援をし、統一ブランド「やまみちゃん」として、現在百七十九の品目が認定をされるなど、多様な商品開発が進んできております。
また、これらの取り組みに加えまして、最近では、内発的な六次産業化に向けまして、経営の多角化を図るため、農産加工に取り組もうとする集落営農法人に対しまして、商品開発やマーケティングなどに関する研修の場を提供いたしまして、専門家を派遣して加工技術を指導するなどの各般の支援を強化した結果、これまで十近くの法人が、新たに豆腐やもちなどの農産加工を開始をしております。
また、大手食品企業が、サラダ等の材料に使用いたしますタマネギを、法人が安定的に供給できる仕組みの構築や、地産地消をコンセプトに、商品開発を目指すコンビニエンスストアに、生産者とのマッチングの場を提供するなど、法人と食品企業との結びつきについても、積極的な支援を行っているところであります。
さらに、技術面では、平成十九年度に農林総合技術センターに食品加工研究室を設置し、機能性の高い加工食品の開発に向けて、主要な県産農産物の成分分析などの研究を進めますとともに、農山漁村女性の行う漬物や調味料の改良から、商工関係者が希望する地域特産品の開発まで、きめ細かな支援を行っているところであります。
県としては、意欲ある農業経営者が食品加工に積極的に取り組んでいけるよう、今後とも制度面、技術面から一層の支援に努めてまいります。
【回答】◎商工労働部長(佐本敏朗君)
食品産業の集積についてお答えします。
本県の食品製造業は、お示しのように、県内事業所数に占める割合が高く、県内農林水産資源を有効に活用する上でも、新技術や新商品の開発及び販路拡大を通じた競争力の強化が重要であることから、これまでも、産業技術センターによる技術相談や共同研究、やまぐち産業振興財団の助成事業や商談会事業等の活用による支援を行ってきたところです。
この結果、粉末化技術による「やさいファインパウダー」や「はなっこりーの青汁」、お茶を素材にした石けんなど県内資源を素材とした生産技術の確立や商品化が図られたところです。
さらに、本年度新たに、大学や試験研究機関、企業等の連携により、新たな商品開発へつなげる取り組みも進めております。
また、食品製造業は、比較的景気の影響に左右されず、安定的な成長が期待できる分野であることから、これまでも、企業立地促進補助金等の優遇制度を活用し、食品加工企業の誘致にも努めてきたところです。
県といたしましては、引き続き、食品産業の県内への誘致に取り組むとともに、新技術等で新事業展開を図ろうとする企業に対し、成長過程に応じ、やまぐち産業振興財団など支援機関のネットワークを活用して支援することにより、集積を推進していくこととしております。
フードバレーの形成につきまして、二井知事から前向きな取り組みのお考えが示されたことをうれしく思い、また評価したいと思います。
オランダにフードバレーが形成されておりまして、それが、ある意味で、世界の最もモデル的なフードバレーの形成地になっていると思われますが、ここでその中心、核施設になっておりますのは、先ほども申し上げましたように、ワーヘニンゲン大学であります。
山口県におきまして、フードバレーを形成していく場合にも、やはり核になる施設が必要だと思いますが、そういう役割を果たすものの一つとして期待されるのは、本県の場合には、県の農林総合技術センター、そういったところではないのかなとも思われる次第でありまして、こういったところのやはり機能を強化していくということが、第一なんじゃないのかなという思いを持つわけでありますが、このことにつきまして、お考えを承っておきたいと思います。
それから、中国への米の輸出につきましては、その可能性を山東省と協議したいということでありましたので、ぜひ前向きの協議をお願いしたいと思います。
いろいろハードルが高いこともありますが、何事も実現しようと思うことから始まると思いますので、ぜひ中国山東省へ、本県の米輸出を実現しようという思いで協議を持ちかけて、また、臨んでいっていただきたいなと思う次第でございます。
以上で、質問を終わります。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
農林総合技術センターの機能強化が必要だということで、どう考えているかという再質問であったというふうに思います。
現在、農林総合技術センターでは、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、特に加工分野においては、農水産物の加工貯蔵技術の開発、あるいは、栄養機能性成分の情報提供といった、本県農林水産物の付加価値向上に向けた取り組みを重点的に進めております。また、新しく、省エネ対策として、生産コスト低減による経営の安定化に向けまして、トマトやイチゴなどの施設園芸での冬の暖房用燃料の節減技術、地中熱の自然エネルギーを利用した夏の施設冷房技術の開発等に取り組んでおります。
こうした取り組みは、いわゆる産学公の連携の取り組みとして推進をしておりまして、今後とも、そうした産学公の連携の中核として研究機能が担えるように取り組んでまいりたい、また、成長産業に向けた新たな研究課題にも、積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
(1)消防の広域化・土砂災害の検証と対策
新政クラブの合志です。まずもって、さきの七月二十一日豪雨災害で、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。そして、被災地の一日も早い復興と、安心・安全の県づくりに微力を尽くすことを誓うものであります。
それでは、通告に従い一般質問を行います。
ずっずっと堆積した土砂が動いている。これに誘発されて、いつまた土石流が発生するかわからない。土石流に襲われたら命はないだろう。しかし、引き返すわけにはいかない。現地確認の任務を果たすために、行かなければならない。五人の消防隊員は、命の危険に直面する中、土石流が流れた後に堆積した土砂のぬかるみに、時には腰までつかりながら、そうした思いで、孤立した村、稔畑に徒歩で向かいました。
七月二十一日、防府、山口の双方にかかる山稜の中腹、標高二百メートルの高地にある山口市小鯖の稔畑地区も、かつてない甚大な自然災害に見舞われました。
記録的な猛烈な大雨のため、至るところで山地崩落、土砂崩れ、土石流が生じ、幾つもの家屋が土石流に見舞われ、つい一月前、ことしの六月に竣工したばかりの基盤整備した水田の多くに土砂が流れ込みました。そして、この地区に至る三本の幹線道路はすべて通行不能となり、地区内の道路も寸断され、約七十戸ある稔畑は孤立してしまいました。
こうした稔畑地区の現況を確認する必要があるということで、山口市消防本部は、消防隊員を派遣、最初は自動車で向かったが、この地区に入るための三本の道路はことごとく不通、ついに隊員は、歩いて稔畑に向かうことを決断しました。
冒頭に紹介したのは、この消防隊員たちが命がけで任務遂行に立ち向かったさまであります。
稔畑の集落にたどり着いた消防隊員は、直ちにヘリによる住民の避難救出が必要と判断、その旨を消防本部に伝え、救援ヘリの派遣を要請しました。そして、各戸を安否確認に回り、救援ヘリのヘリポートの確保、住民の集結地誘導に取り組みました。
県は、山口市からの要請を受け、大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱に基づいて、ヘリコプター応援を近隣の県に要請、これにより広島市消防航空隊と福岡市消防航空隊及び愛媛県消防防災航空隊が来援し、七月二十一日、二十二日の二日間かけて、延べ九十四名の人員救出を完了しました。
かつてないすさまじい自然災害に見舞われた稔畑地区は、おかげで幸いなことに人の犠牲は一人も生じませんでした。そして今、復興に立ち向かっています。
火災発生時だけではなく、自然災害のときも消防の果たす役割は大きく、七月二十一日の豪雨災害時には、この事例と同じような消防関係者の奮闘が、各地であったであろうことを思います。
また、消防の関係者のみならず、同時に大きな危険と隣り合わせの中で、二次災害の発生防止、住民の安全確保、道路復旧等に取り組まれたさまざまな防災関係者、土木工事関係者のことを思います。
そして、これらのすべての方々に感謝をささげ、敬意を表しつつ、このたびは、災害発生時の初動において、人命を守る大事な役割を担う消防の広域化について、まずお伺いいたします。
なお、御案内のように、消防の広域化につきましては、六月県議会で国井議員さんが、そして昨日は、同会派の新藤議員さんが、大事なポイントを踏まえての質問をされたところでありまして、重なるところもございますが、私なりの視点で質問をすることをお許しいただきたいと思います。
さて、消防組織は、住民自治の消防組織としての消防団と、行政機関としての消防組織である常備消防の二通りあります。そして、消防は市町村の事務とされています。
しかし、そうとはいえ、行政機関としての消防組織である常備消防のあり方については、消防の目的を果たしていくために、どういう形が最も望ましいのかの議論に、県も、県民生活の安心、安全を確保していく責任を有する当事者として加わり、市町と共同してその実現に取り組んでいくべきと考えます。
御案内のように、国の消防広域化の方針を受けて、県は平成二十年五月に「県内四本部からスタートし、将来的には広域化の効果が最も大きい一本部の枠組みを目指す」とする「山口県消防広域化推進計画」を策定しました。
しかし、その後これに対して、県市長会から異議、異論が出まして、県市長会は、現行の十三消防本部体制を七本部体制とする対案を本年三月に県へ提出しました。
このため、県が担うべき役割ということで取りまとめた本県の消防広域化推進計画の内容と、消防事務として担う県下の市の市長会の消防広域化案が、相異なるという事態となり、それは解消されることないまま現在も続いております。
そうした中、ことしの七月大雨災害があり、これへの対応経緯から知事は、「今回の災害状況を踏まえて、今後の広域消防のあり方についても、いま一度検討を加える必要があると思っております」「今、市町で七消防本部案で検討されておりますが、果たして、今回のようなこれほど大きな災害が起きたときに、七消防本部でいいのかどうかを、ぜひ、関係市町の中で検討してもらいたいと思っています」「一番いい形としますと、やはり、県警本部と同じような形で、県が一つになっている形がいいのではないかと思います」との見解を、記者会見において明らかにされております。
そこで、お伺いいたします。知事は、消防の広域化は、特に今回の災害を踏まえて、一県一消防体制が一番いい形であると発言しておられますが、ことし本県で、現行の消防体制の圏域を越えて消防の広域連携が行われた事故災害としては、六月の秋芳プラザホテル中毒事故や、七月の大雨災害があります。これらの事故災害の場合、本県が一消防体制であったとしたら、どういう点でよりすぐれた対応が可能であったとお考えなのかお伺いいたします。
次に、県は、本県消防広域化の最も望ましい形としては、一消防体制がいいとの考えを有しながらも、その合意形成には相当の期間が必要と見込み、それを待っていては、平成二十四年度までに消防広域化を実現するとの国の方針に沿うのは困難との判断から、市町の意向を踏まえた現実的な枠組みとして、「四本部でスタートし、将来一本部を目指す」との計画をまとめたものと思われます。
しかし、県一消防体制がいいとの結論が明確なのであれば、消防力の強化、向上は、即、県民の命と暮らしの安全・安心に直結するものであることから、その最も望ましい形の実現に向けて、合意形成に全力を尽くすべきなのではないでしょうか。
たとえ、その合意形成に時間を要し、本県の消防広域化が、国が求める計画年度よりおくれたとしても、それを意に介することは全くなく、しっかり腰を据えて取り組むべきと考えます。
それは、国の、このたびの消防広域化推進施策は、ただ、そのメリットを示し推進を都道府県に促すだけで、実現すべき具体像と方法論について明確な政策を欠いているため、国の計画どおり、全国で消防広域化が進むことはなかろうと思われるからであります。
また、四本部体制整備のための投資と、その先、近い将来に予想される一本部体制整備のための投資という二重投資の無駄、それに伴う財政負担の無駄は、避けなければならないと考えます。
そこで、お尋ねいたします。まず、既に策定した本県の消防広域化推進計画は、枠組みについては、一消防体制とする内容に変更したほうが望ましいと考えますが、御所見をお伺いいたします。
そして、そうだとすれば、一県一消防体制ということで、時間はかかっても県下の市町との合意形成を図ることが先決となりますが、そのことに向けてどう取り組んでいかれるお考えなのかお伺いいたします。
さて、消防広域化の議論の順序は、まず県一消防体制の大方針を確定した後、個々の具体的課題をどう解決していくかの議論に移るということであろうと思いますが、県一消防体制のあり方も、大別して二通り考えられます。一つは、消防本部と各消防署というあり方、もう一つは、消防中央本部と各方面本部、そして各消防署というあり方であります。その、いずれが望ましいかの議論も必要と思います。
広域化の議論のプロセスで萩市試案ということで、現状の消防本部が、方面消防本部として管轄区域の本部機能は有するが、大規模災害発生時など広域的な対応が必要な場合、方面消防本部との調整や関係機関との連携を行うものとして中央消防本部があるとする、緩やかな一本部制が提案されましたが、これに対し県は、この案では消防体制の一体性が保持されず、消防力の強化につながらない。また、国の財政支援の対象にならない等の理由から、広域化案としては適当でないとの回答をされました。
私は、萩市試案に対する県の見解を支持するものでありますが、消防の命である初動が、的確かつ迅速に行われるための通信指令業務管轄の適正規模は、どうなのか、県一でいいのか、幾つかの区域に分けたほうがいいのか、消防通信指令業務従事者の意見をよく踏まえて、しっかり検討する必要があると思っています。その上で、県本部統括のもと方面本部を置くかどうか、それは必要ないかの議論をして結論を出すことにすればいいと考えます。
そこで、お尋ねいたします。一県一消防体制が実現した場合、消防の命である通信指令業務の的確性、迅速性の確保についてどうお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
ところで、改めて申すまでもなく、さきの七月豪雨災害の際、消防ヘリ「きらら」を有する本県の消防航空隊に加え、近隣県から四消防航空隊が来援し、救援活動に従事したことからもわかるように、今日、消防において航空消防のウエートが増してきています。
消防組織法は、「市町村の消防の支援のため、都道府県は航空消防隊を設けるものとする」と定め、航空消防隊は、都道府県が保有するものの、その役割は市町村消防の支援という補完的なものであります。
しかし、消防力強化の次なるステップは、消防本部による航空消防の一体的運用を図っていくということなのではないでしょうか。
消防力の強化が、そういう方向に進んでいくのであれば、航空消防を市町村消防で装備することは、政令市以外は困難と思われますので、当然に都道府県消防というものが考慮されるようになると予想されます。
一方、消防の生命線というべき消防救急無線は、平成二十八年五月までに、現在のアナログ方式からデジタル方式に移行することとされており、そのデジタル化に際し消防庁は、県を一ブロックとして整備計画を策定するよう求めています。
さらに、注目すべきは、全国四十七都道府県中、十二県が一県一消防体制とする広域化推進計画を策定していることであります。
こうしたことから、現在、国が推進している消防広域化を、時代の進展に即応したものにするのであれば、最大の課題は、長い歴史を有する市町村消防の原則を見直し、常備消防においては都道府県消防を選択できる消防制度にしていくことであると考えます。
そこで、お尋ねいたします。消防力の強化、向上につながる時代即応の消防広域化を実現するためには、常備消防においては、市町村消防の原則を見直して、都道府県消防も可能なように、消防組織法を改正すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
次に、土砂災害の検証と対策について質問いたします。
七・二一豪雨災害は、床上、床下合わせて四千棟を超える浸水被害をもたらし、十七名ものとうとい人命が犠牲となりましたが、そのうち十四名は土砂災害によるものであり、今なお災害のつめ跡を残しているのも土砂災害であります。
平成十一年六月二十九日、広島県を襲った豪雨災害は、死者三十一名を出し、そのうち二十四名は土砂災害によるものでした。
この広島災害の惨事を契機として、国は、総合的な土砂災害対策に本格的に取り組み、翌平成十二年に国会で土砂災害防止法が成立し、平成十三年四月一日より施行され、今日に至っております。
土砂災害防止法は、基礎調査に基づく警戒区域の指定を都道府県の事務としております。都道府県は、基礎調査を実施して、急傾斜地の崩落、土石流、地すべりなどの土砂災害のおそれがある区域を土砂災害警戒区域に指定し、さらに、その警戒区域の中で、建築物に損壊を生じ、住民に著しい危害が生じるおそれがある区域を、土砂災害特別警戒区域に指定します。
土砂災害警戒区域が指定されたら、市町村は地域防災計画に記載し、土砂災害に対する警戒避難体制に関する事項を定め、土砂災害ハザードマップを作成配布して、その危険を住民に周知することとされております。
また、特別警戒区域においては、住宅宅地分譲や、社会福祉施設等の開発行為は許可制となり、建築物の構造規制や移転勧告を行うことができるようになっています。
本県の、この土砂災害防止法に基づく調査、指定の進捗状況は、県下二十市町のうち、長門市、岩国市など七市において土砂災害警戒区域を指定しており、四市町が調査中、九市町が、これから調査着手予定という状況であります。
さきの八月臨時県議会で、柳橋土木建築部長は、「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定の進捗率は、約四割です。今後は平成二十九年度までに全市町で区域指定することとしており、それまでに基礎調査を終える予定ですが、できる限り前倒ししてまいります」と答弁しておられます。
なお、今議会、松永議員の代表質問で、知事答弁におきまして、平成二十四年度までに土砂災害ハザードマップを、県下全市町作成完了するようにしたいということでありますから、前倒しというのは、その二十四年度までに、この警戒区域の指定をやってしまうという方針が示されたものと理解しているところであります。
私は、そうした方針で、県が土砂災害防止法に基づく基礎調査、警戒区域指定の作業を加速化していくことは評価するものでありますが、そのことにまさるとも劣らず大事なことは、警戒区域指定の精度を上げていくことであると思っております。
土砂災害防止法が、その目的を果たしていくためには、警戒区域の指定が的確であることが求められます。そして、そのためには、山地崩落、土石流発生の原因、メカニズムを、実例に基づいて検証究明し、そのことを踏まえて、警戒区域指定の基準が、より一層実態に即した適正、妥当なものになるよう、常に点検、見直しされていく必要があります。
思うに、このたびの七・二一豪雨による土砂災害は、そういう意味での貴重な事例を提供しています。
犠牲になられた十四名の方々の死を無駄にしないためにも、本県は、このたびの土砂災害の調査に遺漏なきを期して取り組み、その調査結果を、山口県のみならず全国の土砂災害被害防止に役立てていく責務があると考えます。
そういう観点から、数点お伺いいたします。
まず第一に、七・二一豪雨による土砂災害の調査及びそのことに基づく防災対策について、基本方針をお伺いいたします。
第二に、このたびの豪雨により土砂災害が発生した、防府市、山口市においては、計九百四十五カ所の警戒区域指定が行われておりますが、土石流が発生した六十六カ所は、すべて警戒区域指定されているところなのか、指定以外のところでも発生しているのか、そうだとすれば指定外は何カ所か、また、指定区域外で土砂災害が生じたことをどう受けとめておられるのか、お尋ねいたします。
第三に、土砂災害の発生原因とメカニズムの検証究明は、土砂災害が起こったことの究明だけではなく、警戒区域に指定されていながら土砂災害が起こらなかったところについても、その起こらなかったことの検証究明を行うことも、あわせ必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
第四に、山崩れや土石流発生の原因は、物理的、力学的な面と、地質や植生などの応用理学的生態的な面との両面があると思われます。よって、原因究明の調査メンバーには、地質や山林植生などの専門家が必要と思いますが、どうなっているのでしょうか。
また、土砂災害防止法に基づく警戒区域指定は、基本的に力学的構造の面からの基準に基づいて行われているようですが、生態的側面も含めての調査に基づく指定であってこそ、実効性のあるものになると思われます。よって、土砂災害警戒区域指定のための調査にも、同様に地質や植生の専門家を加える必要があると思いますが、御所見をお伺いいたします。
さて、このたびの土砂災害について、地質的特徴をモデル化し解析した地質専門家によるレポートを読みましたが、山口、防府の土石流発生範囲が、ほぼ花崗岩分布地域におさまることを指摘し、花崗岩の山では、その岩盤の上にある花崗岩が風化してできた真砂土が、その上の表土が薄い場合は雨によって崩れやすく、二十度ないし二十五度の緩やかな勾配の場合も、雨で山崩れが起こり、それが発端となって土石流が発生する可能性があることを推定しています。
そこで、第五のお尋ねです。急傾斜地ということで指定される警戒区域は、傾斜度が三十度以上という基準になっています。しかし、このたびの土砂災害では、それ以下の傾斜度のところにおいてもがけ崩れが生じていないかお尋ねいたします。もし、そういうことがあれば、特に、花崗岩の山においては、警戒区域の基準を見直す参考事例になると思いますが、御所見をお伺いいたします。
第六に、山崩れや土石流が多発したのは、松くい虫などが原因として松がだめになり、山が弱くなったからだという指摘があります。また、先ほど紹介したレポートは、松が枯れた後、シダ類が繁茂している山は、灌木類が育つことが抑圧されて表土層の形成が進まないばかりか、低木の根による表層の緊縛がなされないため、雨による崩落が生じやすいことを指摘しています。
こうした指摘が当を得ているとすれば、土砂災害対策として、砂防ダム、治山ダムをつくるということのみならず、山それ自体を、樹木の植生等によって強くしていく取り組みが必要と思われますが、そうした対策について御所見をお伺いいたします。
三番目に、防災情報センターの設置について質問いたします。
防災情報は、個別的、具体的であって役に立つものであり、そういう防災情報を提供する機関が必要であるとの趣旨で、防災情報センターの設置について質問いたします。
さて、自然災害を防止するために、必要なハード面の整備を行うことは大事なことです。しかし、自然災害を完全になくしてしまうことはできません。どんなに膨大な予算を投入しても、それは不可能なことです。
そこで、次に大事なことは、自然災害が起こったとき、どういう被害軽減、回避の備えがあるかということであります。常日ごろから、自然災害が発生したとき、人命を守り、被害を軽減するための対応策を考え、準備しておくことが重要です。
そして、その備えのために不可欠なのが、自分のところの自然災害の危険がどういものであり、どう対応したらいいのか、そういう意味での防災情報を、個別的、具体的に把握しておくことであります。
自然災害の中でも、特にそのことが求められるのが土砂災害であります。そこで、まず、土砂災害の防災情報提供の現状を見ておきたいと思います。
土砂災害の場合、警戒情報は、県と気象台が共同して、大雨による土砂災害発生の危険度を降雨に基づいて判断し、市町単位で発表し、該当市町に通報します。
危険度は、レベル一からレベル四までの四段階に区分されており、レベル一は、土砂災害の発生に注意。レベル二は、土砂災害の発生に警戒。レベル三は、今後二時間以内に土砂災害が集中的に発生する危険性が高い。レベル四は、土砂災害が集中的に発生のおそれありとされており、レベル三が土砂災害警戒情報発表の目安とされております。
自分のところの土砂災害の危険度レベルは、県庁ホームページで山口県土砂災害警戒情報システムを検索すれば、見ることができます。そこでは、県内を五キロメートルメッシュ二百九十三区画に区切り、そのメッシュごとに土砂災害の危険度四段階を色分けして図示しています。
土砂災害警戒の通報を受けた市町は、この五キロメートルメッシュによる自分の市町の危険度表示を参考にして、土砂災害への対応を行うことが期待されています。こうした土砂災害警戒情報システムと、土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定があれば、土砂災害による被害は、回避もしくは軽減できなければならないのですが、七・二一豪雨災害では、そうなりませんでした。
土砂災害警戒区域の指定は済んでおり、土砂災害警戒情報も通報されていたにもかかわらず、防府市では十四名もの方が、土砂災害の犠牲となられたのであります。防府市が、土砂災害警戒情報を放置して対応しなかったこと、「ライフケア高砂」が、国の基準で作成が求められている風水害への対応マニュアルを備えていなかったこと等のことが、批判されています。
しかし、土砂災害警戒情報の通報があったとしても、警戒区域の指定が、現時点では、全県で約九千八百カ所、防府の場合は五百八十七カ所ある中、大まかな五キロメートルメッシュでの危険度表示を参考にして、避難勧告地域を特定するなどのことは困難と思われます。
被害防止の対応のためには、さらに一歩進めて、より個別的、具体的な土砂災害についての防災情報を、行政の側も、住民や施設等も、事前に備えていることが必要なのであります。
そのための取り組みを行政の側が進めていくことは当然ですが、住民や施設の側が、それぞれに応じた具体的な防災情報を持つことは、それ以上に重要であります。そうした防災情報があれば、住民は、公表される災害情報で、行政の指示を待つことなく、自主的に被害防止行動をとることができるからであります。
自分の家は、自分の町内は、自分の職場は、自分の施設は、どういう自然災害の危険があるのか、そしてそれにどう対応したらいいのか、そのことを常日ごろから、各自が、防災情報として具体的に承知していることが、自然災害の被害を軽減、回避する上でとても大事と思います。
そこで、お伺いいたします。住民や施設などの求めに応じて、個別的、具体的にどういう自然災害の危険があるのか、それにどう対応したらいいのかを、防災情報として提供することを役割とし、市民、県民と防災情報のかけ橋となる常設の機関として、防災情報センターを設置すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問とさせていただきます。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、消防の広域化のお尋ねについて、一県一消防本部体制に対する、基本的な考え方についてお答えをいたします。
私は、県民の安心・安全を確保する観点から、現場活動要員の増強や高度資機材の計画的な整備などの、消防組織の強化を図り、昨今の大規模化・多様化する事故や広域的支援を要する災害等に的確に対応することや、現下の厳しい地方財政下において、消防に関する行財政運営の効率化・基盤の強化を図るためには、消防の広域化を実現することが極めて重要であると考えております。
特に、今回のような災害を踏まえますと、初動時における救出・救助等の迅速・的確な対応を図るためには、一元的な指揮命令や資機材の有効活用の観点から、消防の広域化は重要であり、将来的には広域化の効果が最も大きい、県一本部体制を理想として目指していくことが必要であると考えております。
しかしながら、現在の消防組織法におきましては、市町村消防を原則としておりますことから、そうした県一の消防体制を確立する上においては、さまざまな課題や制度的な改善を要するものがあります。
具体的には、広域化された消防本部は、防災等に一義的責任を有する市町よりも広い管轄区域になりますことから、広域の消防本部と各市町の首長、あるいは、防災組織との連携のあり方が最も重要な課題になると考えております。
したがいまして、私としては、県一消防本部体制を理想としながらも、こうした連携のあり方等の課題を踏まえ、広域化について、市町において十分議論されるべきであると考えており、また、国においても検討されるべき課題であると認識をいたしております。
そのような中、一つのステップとして、国の有利な財政支援措置が受けられる平成二十四年度までに、可能な限りの消防の広域化が図られるよう、市町に対して強く働きかけていきたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
【回答】◎総務部長(岡田実君)
消防の広域化など、合わせて六点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、本県が一消防本部体制とした場合のすぐれた対応についてです。
県一の消防本部体制が実現した場合には、通信指令等の本部機能の統合等の効率化を通じ、救助や救急等の現場活動要員が増強され、また、はしご車や救助工作車等の高度な資機材等の計画的な整備が可能となり、お示しの六月の美祢市における中毒事故や七月の豪雨災害で発生したような、消防隊員の被災等の不測の事態にも、より的確に対応できる、強固な体制の整備が図られるものと考えております。
また、県下全域の被害状況や消防の出動状況があらかじめ的確に把握でき、同一指揮命令系統の中で、被災地への迅速な部隊の追加投入等、大規模災害時における初動対応の強化が図られるなど、あらゆる面で消防力の強化につながるものと考えております。
次に、消防広域化推進計画の枠組みに関し、県の推進計画の変更についてのお尋ねです。
市町における消防広域化の議論は、目下、始まったばかりであり、これから、大規模災害への対応の観点等からも、十分に議論を重ねていただくことが重要であります。
お尋ねの県の推進計画の変更については、今後、こうした市町による広域化の議論が進展し、合意が図られる際には、改めて見直すこととしております。
次に、県一消防本部体制に向けた合意形成についてです。
将来的には、適当と考えられる県一消防本部体制の実現に向けて、今後とも、市町に対し、一層の働きかけを行い、消防の実施主体である市町において十分な議論が行われるよう、県として必要な対応を図っていく考えです。
次に、通信指令業務についてのお尋ねです。
県一消防本部となり、指令業務が一元化された場合、火災や救急、救助等の要請に対し、災害等の現場からの距離に応じた部隊の出動順位や、効率的な経路、はしご車やドクターカー等の特殊な車両の出動等について、指令において、県下全域にわたる部隊を考慮した上で、適切かつ迅速な出動命令が可能となります。
また、指令業務の一元化によって、一一九番通報者が瞬時に把握できる発信地表示システム等の高機能装置を導入することなどにより、通信指令業務の的確性、迅速性は、これまで以上に向上するものと考えております。
次に、都道府県消防についてのお尋ねです。
昭和二十三年に消防組織法が施行されて以来、住民に最も身近な市町村が、消防の責務を負うとの「市町村消防の原則」のもとで、消防体制の強化が図られてきたところであります。
一方、お示しのように、災害の複雑化、多様化が一層進む中、以前にも増して、広域自治体である都道府県がその補完的役割を果たす期待も大きくなってきております。
お尋ねの都道府県消防を可能とすることについては、こうした状況も踏まえながら、今後、国・都道府県・市町村を通じて、なおさまざまな議論を重ねていく必要があると考えられます。
いずれにしても、本県としては、現行法に基づく体制のもとで、市町に対し、指導・助言を行いながら、消防防災体制の一層の充実強化に取り組んでいく考えであります。
最後に、防災情報センターの設置についてのお尋ねです。
災害発生時の被害の軽減を図るためには、住民がみずからの居住地についての過去の浸水や土砂災害等に関する危険度等を把握し、災害に備えておくことは極めて重要なことであります。
このため、県や市町など防災関係機関は、適切な役割分担の上で、住民に対し防災情報の提供を図るとともに、住民からの照会や相談に適切に対応する必要があります。
具体的には、市町においては、自主防災組織の紹介や、ハザードマップの整備による危険箇所・避難場所・避難経路など、地域に密着した、個別的・具体的な情報を提供する一方、県においては、お示しもありましたが、気象情報や河川水位、潮位さらには、土砂災害に関する情報など、広域的観点からの情報をホームページ等を通じて提供することとしております。
このように、県、市町においては、お示しのありましたような防災情報センターとしての役割を果たしているところであり、県といたしましては、今後とも、県、市町がそれぞれの役割に応じて、また十分連携を図りながら、おのおのが、いわば防災情報センター的機能を十分発揮できるよう、防災情報の一層の充実強化に努めてまいります。
【回答】◎土木建築部長(柳橋則夫君)
土砂災害の検証と対策に関する数点のお尋ねです。
まず、土砂災害の調査及び防災対策の基本方針です。
本県は、地形的、地質的特性から、全国三位の多くの土砂災害危険箇所を有しており、土砂災害がいつ、どこで発生してもおかしくない状況にあり、このたび、かつて経験したことのないような大規模な土石流が多数発生いたしました。
これに対するハード対策の実施には、膨大な期間と費用が必要となります。
このため、ハード対策とあわせてソフト対策、特に警戒避難体制の早急な確立が重要であると考え、土砂災害警戒区域、避難場所、避難経路等の防災情報が記載されている土砂災害ハザードマップを、これまでの砂防計画では平成三十年度までに整備することとしていましたが、今回の災害を踏まえ、平成二十四年度までに大幅に前倒しすることとしました。
一方、今回の災害では、従来の土砂災害警戒区域の調査や指定について、さまざまな教訓が得られました。
今後、土石流発生原因の究明などを行い、その成果を、土砂災害防止法に基づく警戒区域指定の調査の実施方法や、警戒区域指定の基準に反映させていくとともに、全国で広く成果を活用していただけるよう、国に対しても必要な情報提供を行う考えであります。
県としましては、今回の災害から得られた多くの貴重な経験、教訓を生かし、今後とも、土砂災害防止対策に全力で取り組んでまいります。
二点目は、土石流発生箇所についてです。
防府市では、警戒区域内で四十二渓流、警戒区域外で十一渓流の合わせて五十三渓流で土石流が発生しました。
警戒区域外の十一渓流のうち、保全対象の人家等がある三渓流については、今後、警戒区域の指定を行ってまいります。これらの三渓流は、谷の奥行きが浅いことや、河床の勾配が緩いなどの理由で、警戒区域指定の調査の対象外となっており、今後、調査方法の改善を検討してまいります。
一方、山口市では、十三渓流で土石流が発生しました。現在、警戒区域指定の調査を実施中であり、今回の災害を踏まえ、今後、警戒区域の指定を行ってまいります。
三点目は、土砂災害の検証究明についてです。
周辺で土砂災害が発生したにもかかわらず、警戒区域内で土砂災害が発生しなかった原因については、各分野の専門家から成る「土石流災害対策検討委員会」の中で議論していただきます。
四点目は、地質や山林植生の専門家についてです。
県では、土石流と山地災害の原因、復旧対策について検討を行う委員会を、それぞれ設置することとしています。
この二つの委員会では、お示しの地質や山林植生の専門家に委員として就任していただいております。
また、警戒区域指定の調査に、お示しの専門家を加えることは、委員会での成果を踏まえ、今後必要に応じて検討してまいります。
五点目は、急傾斜地についてです。
今回の豪雨により、県内において、百三十二カ所でがけ崩れが発生しており、その中で傾斜度三十度未満は一カ所です。土砂災害防止法では、傾斜度三十度以上で警戒区域を指定することとしておりますが、これは、傾斜度三十度を超えた場合、災害の頻度と危険度が増すとされていることからです。
今回の災害を受け、お示しの点につていも、今後、現地の状況を十分精査してまいります。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君
土砂災害対策のうち、森林整備についてのお尋ねにお答えをいたします。
今回の豪雨による山腹の大規模な崩壊につきましては、雨量や土質など多様な要因を検証して、今後の対策のあり方を検討する必要がございます。
このため、県としては、森林分野の学識経験者などで構成する「山地災害対策検討委員会」を設置をして、現在、幅広い観点からの調査検証を進めております。この委員会では、防災の視点からの森林整備のあり方につきましても、意見や提言をいただくこととしておりますので、その結果も踏まえながら、今後の対策や整備の方向について検討したいと考えております。
二回目の質問でございます。
消防の広域化につきましては、一消防体制がいいということが明確なのであれば、県としてもその方向に、もっと知事初め、前向きに取り組んでいただきたい、そう要望いたしておきます。
それから、防災情報センターは、いわゆる自然災害の被害が回避されるためには、繰り返しになりますが、行政の側と住民の側と双方が、防災への備えを常日ごろから持っておく。なかなか住民の側は、日ごろは生活に追われて、なかなかそういう意識を忘れがちになるわけでありますけども、必要が生じたときに、そのことを感じたときに、具体的にいろんなことに答えて防災情報を与えてくれる。そういう機関があり、そして、そこがまた、防災情報についてのさまざまなネットワークを持っておる。
そういうものがあることによって、住民サイドの防災の備えが大きく進んでいくことになると思いまして、今、県や市町が、その防災情報センター的な役割も果たしていくということでありますが、そういう役割を果たす機関が、やっぱり明確に常設されてあることが必要になってくると思いますので、このことも前向きに御検討していただきたいと要望しておきます。
それから、今回の土石流が発生したことで、ため池が大事な役割を果たしたということを申し上げておきたいと思います。
今回の土石流では、整備が完了したため池が土石流を受けとめ、下流の被災を防ぐ役割を果たしているケースがございます。
特に、防府の長尾ため池と斧磨(ちょうのとぎ)ため池の二つのため池は、下流を走る山陽新幹線が被災するのを防いでおります。土石流が直接新幹線を襲ったときの被害と影響の大きさを考えますと、このことは注目されている事例であります。
ため池が、農業用目的だけではなく、防災機能も含めて多目的効用があることを確認し、しっかりしたため池整備に取り組まれた関係者の努力を評価いたしたいと思います。
そして、今後とも、危険ため池の解消と、必要なため池整備には着実に取り組まれていかれますよう要望いたしまして、私の質問を終わらさせていただきます。
(1)難病患者のショートステイについて
同僚県議でありました久保田后子さんが、宇部市長選に立候補いたしまして、見事当選を果たして山口県初の女性市長が誕生することは、まことに喜ばしいことでありますが、おかげで一人会派になりました新政クラブの合志でございます。通告に従い、早速一般質問を行います。
「この呼吸器を外して、一緒に死んでしまおうか」そんな気持ちに一瞬なることがあったと、奥さんは述懐されました。
この方の御主人は、平成十二年にALSが発病しました。ALSは、筋萎縮性側索硬化症と言いまして、病状が進むと呼吸困難に陥るため、人工呼吸器の補助が必要となる難病であります。
発病の翌年、当時の県立中央病院で気管切開、人工呼吸器装着等の医療措置を行い、その後、柳井病院に七カ月ほど入院して、平成十三年の十二月から在宅での療養を開始されました。
在宅療養は、家族に精神的にも、体力的にも大きな負担を強います。それでも、よくなる見通しがあれば励みにもなるでしょうが、難病の場合はそれも期待できません。
「お父さんも、よくなるわけではないし、いつまでこの状態が続くかわからない」奥様が在宅療養の御主人を見ながら、つい、そういう思いに駆られて、死んでしまいたいという絶望的な気持ちになられることがあったであろうことは、想像にかたくありません。
それでも、この奥様は頑張られて、平成十九年五月に御主人が亡くなられる直前まで約六年半、家で御主人を見られました。その上で、大きな支えになったのは、山口市にある身体障害者療護施設N園が、一月ないし二月に一度、二泊三日のショートステイを受け入れてくれたことでした。これがなければ、二人は、心中しておったかもしれないと、その奥様は語っておられました。
そして、「家族に難病の方がおられるところは大変と思うので、よろしくやってくださいませ」とお願いされました。
以上は、難病の主人を家で見られたSさんという方をお訪ねして、いろいろお話をお伺いしたときのことであります。
このときのことを思い起こし、今回で三回目になりますが、分権時代における県医療福祉行政の役割という観点から、改めて難病患者のショートステイについて質問いたします。
この質問の発端は、平成十九年の九月県議会で、障害者自立支援法についての質問を行うに当たり、障害者施設を訪問して実情を聞いて回ったときに、N園から難病患者のショートステイ事業を継続していくことに苦慮している旨の話を聞いたことであります。
医療ケアを必要とする難病の方のショートステイは医療機関でということに制度上なっているが、実際はショートステイは福祉の領域だということで、医療機関が受け入れないので、身体障害者療護施設であるN園に難病の方のショートステイ受け入れの要請が来る。その場合、看護師の配置を通常より強化して医療ケアもできるようにして受け入れてきた。難病の方をショートステイで受け入れた場合、医療機関での対応も、福祉施設での対応も医療的対応の中身は同じであるが、福祉施設の場合は医療ケアのための経費が評価されないため、医療機関と福祉施設とでは報酬単価に大きな差があり、施設経営上難病患者のショートステイ事業を継続すべきか苦慮しているとの趣旨の話でありました。
この話を聞いて、これは国の制度上の不備であり、それを補完するのが県政の役割であるとの観点から、難病患者のショートステイ報酬の、医療機関と福祉施設の差額分を、県で助成するよう求めたのが、このことに関しての第一回の質問でありました。
この質問に対しての部長答弁は、報酬単価の設定は、制度の根幹にかかわることから、国において検討されるべきものであり、県独自の助成は考えていないというものでありました。
再質問で、国の制度を補完するということでの知事見解を求めましたが、特に県として補完しなければならない政策ではないとの答弁でした。そこで、再々質問で、鳥取県が医療的ケアを必要とする重度障害児(者)のショートステイを、郡部地域において老健施設が受け入れた場合、福祉施設との差額分を助成する制度を創設した事例を紹介し、県の前向きの対応への期待を込め、要望で質問を締めくくりました。
難病患者のショートステイを一般質問で二回目取り上げたのは、昨年の十二月県議会でした。このときは、前回の質問時における、報酬単価は、国において検討されるべきものであり、県独自の助成は考えていないとの部長答弁を踏まえ、県は国に対し制度改正を要請すべしとの趣旨で質問いたしました。
制度改正の内容は、障害者療護施設が、看護体制の強化により医療ケアを伴う難病患者のショートステイを受け入れるケースを、ショートステイ事業の中に正式に位置づけ、それが可能な報酬単価の設定を求めるものでした。
この質問に対する部長答弁は、自立支援制度においては、人工呼吸器を使用されているなど医療の必要性の高い場合は、医療機関のショートステイで対応することとされていることから、お示しのようなサービスの位置づけや報酬の改定について、改めて国に要請することは考えていないというものでありました。
この答弁には、残念な思いがいたしました。財政事情が厳しい中、県独自の助成は困難としても、現状認識や課題解決に向けての思いは共有しており、当然に国に対する働きかけには賛同してくれるものと期待していたからであります。
私は、県政の重要な役割は、県民の暮らしや地域づくりの根幹にある国の政策の現場検証であり、そのことを通して実情に合わないところは改めるよう国に働きかけ、国ができないことは補完して、県民の暮らしと地域づくりがよくなるようにしていくことであると考えております。
このような県政の役割は、地方分権が大きく進行している現在、一層高まっており、地方の現場の視点から国の政策形成に積極的にかかわり、参画していくことが、今日の県政には求められているのではないでしょうか。
そこで、このたびは、そうした観点から本県の医療福祉行政が、難病患者のショートステイ制度の改善に向けて役割を果たしていくことを期待し、私なりの現場検証に基づき、難病患者ショートステイの現状認識や課題等について御所見をお伺いいたします。
その第一は、医療ケアを必要とする難病患者のショートステイを受け入れる医療機関がないという現状認識についてであります。
自立支援法では、医療ケアを必要とする短期入所――ショートステイのことでありますが、医療ケアを必要とする短期入所は医療機関でということになっており、医療型短期入所事業所の指定を受けた医療機関が、受け入れることになっています。本県で、この事業所指定を受けているのは、山口宇部医療センター――旧山陽病院であります。この山口宇部医療センターと、重症心身障害児施設である鼓ケ浦整肢学園の二つでありますが、鼓ケ浦整肢学園は受け入れを休止しており、山口宇部医療センターも難病患者の一般のショートステイは受け入れていません。
県の医療福祉行政上は、医療型短期入所事業所の指定で、難病の方々のショートステイ受け入れの環境を整えたということになっているのでしょうが、実際はそれが機能していなくて、なきに等しいというのが実情であります。こうした現状についての認識があるのか、まずお伺いいたします。
第二は、在宅療養をしている難病患者のショートステイ先を、医療機関に限定する必要はないということであります。
難病の症状が重くなって、在宅療養では対応できなくなれば、当然に医療機関への入院となります。ショートステイは、基本的に在宅療養の代替であることから、難病の場合も、家での療養と同等の医療ケアを提供できるところであれば、必ずしも医療機関でなくても、受け入れは可能と考えます。このことにつき御所見をお伺いいたします。
第三は、ショートステイには、スポット的なものと定期的なものと二通りありますが、定期的な難病患者のショートステイ受け入れの必要性についてであります。
法事がある、結婚式がある等のスポット的な事情や緊急事態に対応して医療機関が、緊急入院という名目で難病の方を短期に受け入れることはあるようです。
そこで、難病患者のショートステイも、スポット的な面はどうにかクリアできていると思われますが、未解決の切実な課題として、定期的なショートステイ受け入れ先の確保があります。
さきに、医療ケアを必要とする難病患者のショートステイを受け入れる医療機関がないと申し上げましたが、実態を踏まえて正確に言えば、難病患者を定期的にショートステイで受け入れる医療機関がないということであります。
まことに、難病患者のショートステイ問題の核心は、実にこの一点にありまして、最初に紹介しましたSさんも、一月ないし二月に一度、定期的に受け入れてくれる施設があったから、難病の御主人を在宅で見続けることができたのであります。
そこで、お伺いいたします。県は、難病患者の定期的なショートステイ受け入れ先の確保が必要であり、そのことが政策課題としてあることを認識しておられるのか、御所見をお伺いいたします。
第四は、身体障害者療護施設は、看護機能を強化すれば、難病患者の定期的なショートステイ受け入れ先になり得るということであります。
医療ケアが必要な難病患者の定期的なショートステイを、医療機関が受け入れない現状にあって、医療機関にかわる受け入れ先として向いていると思われるのは、身体障害者療護施設であります。なぜなら、難病の方は身体に障害を生じて身体障害者療護施設にお世話になっているケースが多いからであります。
このような身体障害者療護施設は、ショートステイ時に医療ケアのための看護体制を常時とれるよう、看護師の配置を行うことができれば、十分難病患者のショートステイ受け入れは可能であり、定期的な受け入れ先になり得ると思われますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
第五は、身体障害者療護施設の中で、特に難病障害者受け入れの整備をした施設についてであります。
国は、平成十年度から身体障害者療護施設が、ALSによる難病障害者を受け入れることができるよう、体制整備を進めてきております。
身体障害者療護施設は、入所者が五十人規模の場合は、非常勤の嘱託医師が一名、常勤の看護師が三名いて、常時医療ケアを行っているわけではありませんが、必要が生じたときは、医療ケアができる体制になっていまして、入所者の健康管理と介護・生活支援を行っています。
国は、この施設にALS等の障害者のための人工呼吸器や喀痰吸引器――痰の吸引器でございますね、喀痰吸引器等の特殊な設備を備えた専用居室の整備を図ることとしたもので、本県では、国のこの方針を受けて整備された施設が二施設ありますが、実はSさんの御主人を受け入れたN園はその一つであります。
私は、こうした施設が、医療ケアを必要とする難病障害者を受け入れるケースを、自立支援法の短期入所(ショートステイ)の報酬単価区分の中に正式に位置づけて、通常の施設運営より看護師配置を強化した分を評価した報酬設定を行うことが、難病患者の定期的なショートステイ確保対策として、最も現実的で望ましい施策であると考えますが、御所見をお伺いいたします。
第六は、障害者福祉サービス報酬改定における医療連携体制加算についてであります。
国は、障害者自立支援制度の見直しに当たり、平成二十一年度の障害者福祉サービス報酬の改定においては、「医療連携体制加算」を新たに設けました。
これは、児童デイサービス、短期入所(ショートステイ)であります、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援等において、医療的なケアを要する者に対し、医療機関との契約に基づく連携により、当該医療機関から看護職員の訪問を受けて提供される看護について評価を行うこととしたもので、利用者一人の場合、日に五千円の加算が認められることになったものであります。
東京都台東区に、「たいとう寮」という障害者の共同生活援助・共同生活介護のためのケアホームがあります。台東つばさ福祉会という社会福祉法人の施設ですが、ここでは、医療ケアを必要とする重度障害者や難病の方々のショートステイを予約制で受け入れています。その場合は、もちろん看護師がついているわけですが、その看護師の人件費を区が、台東区が見ていました。
こうしたケースが、医療連携加算では評価されることになったわけであります。
このことは、一歩前進ということで喜んでいいのですが、残念なのは、医療連携体制加算が認められるのは、ケアホーム「たいとう寮」のように、指定基準上、看護職員の配置を要しない施設ということになっていて、Sさんの御主人を受け入れたN園のような身体障害者療護施設は、対象になっていないことであります。
先ほど述べましたように、身体障害者療護施設は、必要に応じて医療ケアができるように看護職員の配置基準が定められています。こうした施設は、医療連携体制加算の対象になっていないのであります。この施設が難病の方をショートステイで受け入れるには、看護職員の配置を、必要に応じての医療ケアから常時の医療ケアへと、通常の場合よりも強化しなければなりません。
私は、このように、看護職員を配置している施設が、正当な事由から通常管理の場合に、より看護職員の配置を強化した場合も、医療連携体制加算の対象にすべきと考えますが、県の御所見をお伺いいたします。
第七は、以上の現状認識と課題把握に基づく、国への働きかけと県の補完施策についてであります。
県の要望として、国に働きかけていただきたいことは、これまでのお尋ねの中で述べていることですが、次の二点であります。
一つは、医療連携体制加算についてでありまして、看護職員を配置している施設が、正当な事由により看護職員の配置を強化した場合も、この加算の対象にするよう要望するということであります。
二つ目は、国の方針を受けてALS等の難病障害者を受け入れることができるよう施設整備した身体障害者療護施設が、難病障害者をショートステイで受け入れた場合は、短期入所の報酬単価区分の中に準医療型として正式に位置づけるか、医療型短期入所に含めるかして、評価するように求めることであります。
県が、補完施策として行うべきと考えますのは、これらの要望が自立支援制度の報酬見直しで実現するまで、関係市町と連携して、障害者療護施設が難病障害者をショートステイで受け入れた場合、医療ケアに伴う経費増分を助成することであります。
このたびの質問で、幾らかくどいと思われるほど、種々お尋ねしているのも、要は、今申し上げました国への要望と、県の補完施策の実現を求めて、実情を踏まえて言葉を尽くしている次第でありまして、このことにつき御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、難病患者のショートステイの現状認識についてお答えをいたします。
難病は、原因不明で治療法がいまだ確立をされておらず、長期にわたる療養を要しますことから、患者本人のみならず、その家族にとりましても、介護や精神的な面において負担は大きいものであると認識をいたしております。
このため、県といたしましては、難病患者やその家族の不安を和らげ、安定した療養生活が確保できるよう、健康福祉センターを中心に、関係機関からなるネットワーク会議を開催しながら、家庭訪問による相談援助や患者・家族交流会の開催などに取り組んでおりまして、また、経済的な負担軽減を図るための医療費助成を行うなど、支援の充実に努めております。
こうした中、難病患者のショートステイは、在宅療養を支える上で重要なサービスであると考えております。お示しの障害者自立支援法のみならず、介護保険法に基づくサービスなど、多様な制度を活用し、それぞれの患者の状態に応じて総合的に対応しているとこであります。
私は、難病対策につきましては、国において全国的な制度として実施されるべきものであると考えております。これまでも、保健・医療及び福祉関連サービスの充実などについて、全国知事会等を通じて要望しているところであります。
今後とも、難病対策につきましては、福祉分野や医療分野での制度的な見直しが必要であると考えております。難病患者やその家族の生活の質の向上が図られるよう、国に必要な働きかけを行いますとともに、市町や関係機関等と連携をして、対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
【回答】◎健康福祉部長(今村孝子さん)
難病患者のショートステイ先の確保について、数点のお尋ねにお答えいたします。
まず、ショートステイの受け入れ先についてですが、難病には多くの疾患があり、多様な病態がある中で、医療の必要性には個人差が多く、個々の状況に応じた対応が求められております。
こうしたことから、難病患者のうち医療の必要性の低い方は、通常、社会福祉施設等のショートステイを利用されていますが、医療の必要性の高い方については、緊急時に直ちに医師が対応でき、また医療機器が十分そろっているなどの理由から、医療機関において対応されることが必要であると考えております。
次に、定期的なショートステイについてですが、県といたしましては、患者さんや家族の状況に応じて、福祉施設や医療機関のショートステイが適切に利用できることは重要と考えております。障害者自立支援制度や介護保険制度等を活用しながら、受け入れ先の確保に現在努めているところです。
次に、身体障害者療護施設における定期的なショートステイについてです。
この施設は、原則として、常時の介護を要するが医療の必要性は低い障害者を対象とする福祉施設でありますことから、看護体制について一定の強化を図ったとしても、多様な病態がある難病患者の受け入れには、おのずから限界があるものと考えております。
次に、お示しのALS等の専用居室を持つ身体障害者療護施設におけるショートステイについてです。
昨年実施したALS患者の調査では、何らかの医療措置を受けている方は、すべて医療機関のショートステイを希望しておられること、また、介護保険制度等により医療機関が利用できる仕組みとなっていますことから、現時点では、お示しの、自立支援制度における報酬上の評価まで行う必要は低いものと考えております。
次に、医療連携体制加算についてですが、この加算は、看護職員の配置を要しない事業所でも、日常生活における医療ケアに、ある程度対応できるよう設けられたものであり、既に看護師が配置されている施設の看護体制をさらに強化するものとは、趣旨を異にしているものと受けとめております。
最後に、国への働きかけと県の補完施策についてですが、自立支援制度における報酬上の措置等については、本来、制度設計者である国において、施設のあり方を踏まえて検討されるべきものであると考えております。県といたしましては、難病患者やその家族の生活の質の向上が図られるよう、必要な措置については、国に対し要望してまいります。
また、難病患者のショートステイについては、医療や福祉を取り巻く環境の急速な変化の中、医療と福祉の役割分担のあり方、福祉施設における受け入れ機能の強化、人材の確保などの課題がありますことから、県といたしましては、今後、こうした課題を踏まえ、必要な措置について検討してまいりたいと考えております。
二回目の質問を行います。
もう三回目で、随分くどくこのことを取り上げてきていますけれども、現状認識できちっと答えていただきたいのは、自立支援法で医療型短期入所事業指定所に指定された二つの医療機関、受け入れていないという、この事実認識ですね、その認識があるのかを確認いたします。
本来国において、こういう医療福祉制度は制度設計されるものであるという、そこは私もそうだと思うんですが、それが実情に合ったものになるように、現場の実情を把握して、そして、いろいろと意見を述べていく、働きかけをしていくということは、当然、県が果たすべき重要な役割である、そう考えるんですね。
県民の暮らしや、あるいは地域づくりにかかわりの深い国の政策を現場検証して、そして、それが適正なものになるように働きかけをしていく、あるいは補完をしていくのは、県政の役割であるという、その認識に立って、この難病患者のショートステイのあり方についての私なりの現状認識に基づく考えを述べているわけでありますが、そういう一つの国の政策を現場検証して、そして改めるべきところは改めるように、県民の暮らしと地域の立場に立って働きかけを国に対してやっていく、それが県政の大事な役割だという、この認識についての知事の考えも改めてお伺いしたいと思います。
それから、身体障害者療護施設の中で、ALS等の難病障害者を受け入れるための施設整備をしたところは、まさしく医療機関はなかなか受け入れるところが少ない、あるいは老健施設を考えているということを言われましたけれども、そういったところよりも、より医療ケアもある程度対応できる難病患者の定期的なショートステイの受け入れ先としては、非常に認めていい適切な施設だと思うわけでありますね。そして、そういう施設が現に役割を果たしてきている。
しかし、一方、特に自立支援法になりまして、報酬の単価の算定が厳しくなりまして、施設運営がある意味では厳しくなってきている中にあって、そういうことについて、やはり県あるいは市町も理解を示してほしいというのは、当然の声でありまして、そういう声にこたえていく姿勢は当然あってしかるべきだと考えますけれども、その点について、改めてお伺いいたします。
以上で、二回目の質問といたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
再質問にお答えいたします。
先ほど具体的な御質問をいろいろいただきました。これについては、今村部長のほうから答弁をさせていただいたとおりでありますが、先ほどの御質問がありました点について、やはり国がどういうふうに考えているのか、先ほど難病対策は国の責任でやってもらいたいということを申し上げましたので、その辺の意見交換を国としながら、どういう課題があるのか、その辺を詰めていく必要もあると思います。単なる財政的な問題で対応できないのか、あるいは福祉と医療とのはざまにある問題として実現ができないのか、いろいろ課題もあると思いますから、そういうことも含めて、先ほど部長も答弁をしましたように、いろんな課題の解決が図られるのか図られないのか、その辺を踏まえながら課題を整理をした上で検討して、どういう対応が必要なのか、検討していきたいと思います。
【回答】◎健康福祉部長(今村孝子さん)
再質問のうち、まず医療型短期入所事業所、自立支援法での、それについてどういう認識をしているかということですが、まず二つございますが、一つは、先ほど御質問でございましたように、休止しております、ただいま。そして、もう一つの旧山陽病院、山口宇部医療センターは、受け入れていないというふうには聞いておりません。
そして、ただ、もう一つつけ加えますと、医療ケアを必要とする難病患者の最近の状況について、各保健センターに確認いたしましたところ、ショートステイを希望した患者さんについては、医療機関ですべて対応されている状況が現在ございます。
それから、三番目の質問ですが、これは、多少、知事の御答弁と重複すると思いますが、私の担当といたしましては、おっしゃることは全くそのとおりだと思いますので、健康福祉センターとか、そういう市町に近い、患者さんや家族に近い状況の中でいろんなことをお聞きして、交流会とか相談会などで患者さんや家族の方は何を御希望されているか、そしてまた、施設側はどういうことを希望されているか等をしっかり聞きながら、先ほど申し上げましたように、家族の生活の質及び患者さんの質の向上に向けて、しっかり検討していきたいと思っております。
三回目の質問というよりも、要望を兼ねての発言をさせていただきたいと思います。
この難病患者らのショートステイのことで、私は、厚生労働省の担当の職員の方にもお会いして、いろいろ御意見も聞き、また、この議会の質問のときに申し上げているようなことも述べさせていただいたところであります。
平成二十一年度の見直しで、医療連携体制加算が設けられました。その際には、私が申し上げております身体障害者療護施設等が看護体制を強化して難病の方のショートステイを受け入れる、そういう場合も加えるかどうかということも、検討課題、議論になったということを聞いております。私は、昨年の十二月県議会で、そういうことについての要望を国に対して上げるように、質問の中で申し上げたわけでありますが、具体的な一つの山口県における事例としてそれが伝わり、そしてまた、制度改正の要望がなされておれば、あるいは、このたびの報酬改定において、医療連携体制加算に看護職員を強化した場合も加えた可能性もあるなと私は見ているところであります。
いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、県政は地方の現場にあって、そして、福祉行政は実施主体が市町になる場合が多いわけでありますが、その市町の現場のありようを、国よりももっと身近なところで把握できるわけでありまして、そういう立場から、やはり国の制度がよりよきものになるように、常に現場の県民の立場に立って声を上げていく、働きかけをしていく。そして、国ができないことは県において補完していく。そして、県民の暮らしと地域がよくなるように役割を果たしていく。そのことが県政の大事な役割である。そういう観点から、この難病の患者のショートステイの定期的な受け入れ体制の整備につきましても、しっかり取り組んでいただきますよう強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。
(1)福祉医療制度の見直しについて
質問に先立ち、今議会に提案されております平成二十一年度県予算をどう見ているか、まず申し上げます。
来年度予算は、これまで八年間続いたマイナス予算を改め、対前年比○・六%とはいえ、プラスの積極予算を組まれたことを高く評価します。
アメリカ発金融危機で世界同時不況となり、経済活動が、あらゆる面、あらゆる地域で収縮に向かい、それがまた景気の後退を招くという悪循環に陥っている今日、県のプラス予算は、それを断ち切り、経済成長、景気回復に向かうよう、本県経済を後押しする役割を果たし、心理的な面からもプラス効果があるものと評価しております。
福祉医療制度に一部負担を導入した予算になっている点は、支持できませんが、予算全体としては、緊急事態に対応し、なすべきことをなしていくという意思が貫かれていると見ております。
それでは、通告に従い質問を行います。
最初は、福祉医療制度の見直しについてでございます。
私は、福祉医療制度の見直しに取り組むことに、反対するものではありません。しかし、財源不足を主たる理由に、当事者、関係者の了解、納得を欠いたまま一方的にこの制度を見直して、一部負担金を導入実施しようとすることには反対であります。
福祉医療制度は、重度心身障害者と乳幼児を対象にした医療費助成が、昭和四十八年から、母子家庭を対象にした医療費助成が、昭和五十三年からスタートし、今日に至っております。三十余年続いてきているこの制度は、対象者になっている人たちにとっては、生活設計の前提になっているものであり、一部負担が図られることは、実質的な増税であります。負担が生じたからと言って、医療をやめることはできないからであります。
この福祉医療制度の対象者が最も多いのは、重度心身障害者で約四万二千百人ですが、この方々が、制度見直しにより負担することになる医療費は、年間で平均約一万二千円と推計されます。
このことをどう受けとめるかは、さまざまあろうと思いますが、本県が平成十七年から県民一人当たり年間五百円の森林税を導入した際、入念に県民の理解を得るための努力を行い、そのために必要と思われる手順、手続を慎重に踏んだことと比べると、余りにも違い過ぎます。
公共性についての考察で著名な現代思想家ハーバマスは、公開された討論を通して形成された公論――公の論ということでありますが、公開をされた討論を通して形成された公論が、市民的公共性を獲得すると述べておりますが、このたびの福祉医療制度の見直しは、そういった意味での公論形成の議論のプロセスが欠けているため、県の公共政策としての正当性をいまだ獲得し得ていないと断ぜざるを得ません。
私は、健常者も障害者も、同じ人として分け隔てなく等しく生きていくノーマライゼーションの考え方からして、障害者も可能な応分の負担をしていくことに反対するものではありません。また、自治体が、財政規律を保持するために一定の負担を求めようとすることも理解できます。
ただ、該当者の医療費を無料にしてきた福祉医療制度を、本人一部負担の制度に見直すことは、公共政策としての本制度のあり方の重要な変更になることから、十分な政策論議と、当事者、関係者の了解、納得を得る努力のプロセスを経る必要があるのではないかと申し上げているのであります。
県は、福祉医療制度を、一部本人負担の制度に見直すことについて、まず、県下の市町の担当者と昨年の十月以降、数回協議を行っております。そして、本人負担の限度を、通院の場合は月千円、入院の場合は月二千円とし、支払い方式は、病院の窓口で、一たんは医療費を、医療保険の自己負担分を払ってもらい、後で限度額を超えた分を助成する償還払い方式に見直す原案を固めました。その方針が、該当者の関係団体に伝えられたのは、その後でして、昨年十二月になってからのことです。
この原案は、県予算編成の最終段階において、重度心身障害者の場合は、通院の月限度額を千円から五百円に減額し、三歳未満児の医療費の無料化は継続する。そして、支払い方式は、償還払い方式を撤回して、すべて現行の現物給付方式を維持するという内容に修正されました。
その背景には、障害者団体、腎友会、母子寡婦福祉連合会等関係団体の強い要望活動があり、県議会各会派、各党からも、福祉医療制度の見直しには、慎重を期すべき旨の意向が伝えられていたことをそんたくしての知事判断があったものと思われます。
ただ問題なのは、弱い立場にある県民の命と暮らしを守る重要施策としての福祉医療制度が、今回のようなプロセスで簡単に変えられていいのかということであります。私は、有識者と関係者による諮問委員会を設けて、福祉医療制度の見直しを諮問し、そこでの徹底した政策論議と関係者へのヒアリングを経た上での答申を受けて、県が最終判断すべきであったと考えます。
私が聞く声は、このたび、一たん一部負担を受け入れてしまったら、後はまた、県は、財政事情を理由に、負担額を随時引き上げていくのではないかという不安の声であります。こういう不安を持たれるのも、福祉医療制度を一部本人負担の制度に変更するに当たって、今後、この制度をどういう原則的な考え方に立って維持していくのかが明確になっていないからであります。
また、複数の病院、診療科へ通院する場合、一月に支払う医療費一部負担金の総額に上限設定を望む声があります。通院は、重度心身障害者は月五百円、ひとり親家庭と三歳以上の幼児は月千円の負担ということですが、それは、受診する病院や診療科ごとでして、それが複数になれば医療費負担額は、その数を掛けた額になるからであります。私は、このたびの見直しで、制度対象者の医療費負担額は実際どうなるのか、実情を把握した上で、こうした声にもこたえる対応策を検討すべきであると考えます。
県は、県下の市町が独自に実施する制度の拡充措置等は妨げないとして、市町が無料の福祉医療制度を継続したければどうぞというスタンスでありますが、県と市町が一体となって実現し、守り育ててきた福祉医療制度において、県と市町の足並みがそろわないようになることは決して望ましいことではありません。
県は、大幅な財源不足が見込まれる中、福祉医療制度も聖域視しないで見直し、一部負担を導入しようと取り組んだわけでありますが、先ほども述べましたように、その見直しは、いまだ公共政策としての正当性を獲得するに足る公論を形成するに至っておりません。しかし、それは、もう少しの努力で可能なところまで来ているように思われます。今、必要なことは、見直しの実施を急ぐことではなく、見直しの公論形成に向けて議論を尽くすことであります。
そこで、お伺いいたします。福祉医療制度を見直して、一部本人負担の制度に変更することは、当面凍結し、市町、有識者、関係者含めての合意形成に向けて議論を尽くすべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
合志議員の御質問にお答えいたします。
まず、福祉医療制度の見直しについてであります。
既に多くの都道府県で一部負担金が導入をされております中、本県でも、市町との検討協議会を設置をし、数年前から一部負担金の導入等について検討を重ねてまいりましたが、子育て支援や低所得者対策の観点から、厳しい財政状況にもかかわらず、今日まで、県民の皆さんからいただいている県税収入や赤字地方債等を投入をして、無料化や現物給付方式を続け、何とか踏みとどまってまいりました。
しかしながら、これまでも御答弁申し上げておりますように、今後も大幅な財源不足が予想される一方、高齢化の進行等により、福祉医療制度の財政負担の増大が見込まれます中、さきの十二月議会におきまして、私としては、この制度について、一部負担金の導入や償還払い方式への移行などについて検討していることを表明をさせていただきました。
その後も、会議等を通じて、実施主体である市町の意見をお聞きをするとともに、私自身、県身体障害者団体連合会など当事者団体の代表の方々ともお会いをし、また、県議会の各会派や市議会、医療・福祉関係団体などから多くの御意見や御要望をいただきました。
私としては、これらの御意見や御要望を重く受けとめ、三歳未満児の受診実態や重度障害者の通院状況等について、さらに検討を加え、熟慮を重ねた結果、一定の配慮をすることとし、一部負担金については中国地方の中でも最も低い負担にとどめ、現物給付方式も継続することにいたしました。
私は、かつてない厳しい財政状況にあり、今後も悪化が懸念される中、この制度を持続可能な形で引き継いでいくためには、先送りすべきではなく、今、この制度を見直さなければならない、そのように考えまして、改めて、給付と負担のあり方についても検討し、医療費が無料となっている生活保護世帯あるいは原則三割となっている世帯とのバランス等も総合的にしんしゃくをし、一部負担金の導入に踏み切らざるを得ないと決断をしたところであり、また、そうしておくことが私の責務であると考えております。
私は、この福祉医療制度につきましては、多くの関係団体からの御要望等をお聞きした上で、苦渋の決断として、見直すことといたしたものであります。お示しのように、したがいまして、改めて関係者の御意見をお伺いすることは考えておりませんので、御理解をいただくようにお願いいたします。
次に、山口県振興財団についてであります。
振興財団が保有している中国電力株式につきましては、お示しがありましたように、本県の長い歴史の中で積み上げられてきた県民の貴重な財産であります。これまで、財団による適切な運用や保全管理のもと、配当金を活用した県への資金的協力が行われてきたところであります。
また、この資金は、県財政にとりまして、極めて安定的な歳入であるとともに、これまで、県庁舎の建設や山口きらら博の開催など、その時々の全県的な大規模事業の財源として、積極的な活用も図ってきたところであり、明年度におきましても、国体・全国障害者スポーツ大会関連事業の所要一般財源に充当することにいたしております。
そこで、今後の振興財団資金の活用についてでありますが、これにつきましても、その歴史的な経緯や県民の貴重な財産であるということは、当然、考えていかなければなりません。その上に立って、これから、また「住み良さ日本一の元気県づくり」を推進をしていくわけですから、その県づくりが確実に推進できるよう、それに資するような形にさらになるように、さらなる有効活用方法についても、検討はしなければならないというふうに考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
(2)情報通信政策について
やまぐち情報スーパーネットワーク、いわゆるYSNの活用の目玉として構築され、平成十七年より全県的に稼働してきた山口県医療情報ネットワークシステムは、もともとあった広域災害・救急医療情報システムは残すものの、それ以外の三つのシステム、すなわち、医療連携情報システム、へき地医療情報システム、それに地域リハビリテーション情報システムは、本年末をもって廃止されることになりました。
以下、この質問で行う医療情報ネットワークシステムは、YSNを活用してのシステムとして構築された、この三システムであることを申し上げておきます。
平成十三年、きらら博開催時に、YSNは、情報先進県山口の幕開けを告げるものとして華々しくスタートしました。双方向で、文書、画像、音声等マルチメディアの送受信を可能にする全県的な高速・大容量の情報通信基幹網であるYSNは、さまざまな利活用が図られてきましたが、その中で情報化の恩恵を幅広く県民にもたらすものとして、県が特に力を入れて取り組んできた一つが、全県的な医療情報ネットワークシステムの構築でありました。
まずは、平成十一年から山口大学医学部附属病院を中心にして、実験的な医療ネットワークモデル事業へ取り組み、その成果を踏まえて、平成十五年に山口県医療情報ネットワーク構想を策定しました。その際、平成九年から既に運用していた、広域災害・救急医療情報システムをこの構想に組み込むこととなりました。そして、平成十五年からネットワーク構築に着手し、平成十七年に全県の医療情報ネットワークシステムを完成しました。
画像診断等の医療情報を送受信、検索できるこのシステムは、遠隔医療や医療連携を可能にし、医療の地域間格差をなくし、いつでも、どこでも、等しく、よりよい医療を県民すべてが受けることができる医療供給体制を確立することを目指して運用されてきましたが、開始五年目で廃止ということになりました。なぜ、そういうことになったのか、そのことを問うことを通して、本県の情報通信政策についてお伺いいたします。
まず最初に、医療情報ネットワークシステムの廃止について、素朴に疑問に思うこと三点をお伺いいたします。
第一点は、平成十八年に策定された県の保健医療計画の第二章「医療におけるITの活用」において、推進すべき施策の柱として位置づけられており、県の「中山間地域づくりビジョン」においては、へき地医療推進対策プロジェクトを構成するシステムとしての役割を担っており、これまで、二井県政が、「住み良さ日本一の県づくり」に向けて、主要施策の一つとして推進してきた山口県医療情報ネットワークシステムが、なぜ廃止されることになったのか、その理由であります。
第二点は、この情報ネットワークの廃止は、単に医療事業という観点からだけではなく、情報化推進の全体的観点からの議論があったのか、あったとすれば、どういう議論がなされたのかということであります。
第三点は、医療連携情報システム、へき地医療情報システム、地域リハビリテーション情報システムが廃止されることにより、これまで提供されていたサービスは、今後、どうなるのかということであります。
以上三点は、医療情報ネットワークシステム廃止の方針を県民が聞いた場合、当然に抱くであろう疑問を、県民にかわって問うものであります。県民に対して、説明責任を果たすということでの御答弁をお願いいたします。
次に、YSNの役割とあり方についてお伺いいたします。
これまで申し上げましたように、医療情報ネットワークは、廃止になりますが、そのネットワークでやろうとした医療画像の伝送による遠隔読影診断――読影診断というのは、CTやMRI等の画像を読んで病状を判別する、画像診断と見てもいいでしょう。遠隔読影診断は、山口大学の産学連携のベンチャービジネス会社である医療福祉工学研究所を母体とした、山口医療画像研究センターと契約した県内外の二十を超す医療機関との間で実現しております。この医療情報システムは、ビジネスとして成り立っており、会社発足して五年を経過した今日、月二千件以上の読影診断を行っております。
県が確立した医療情報ネットワークでは、これを利用しての画像所見依頼は、萩市民病院が山大附属病院に対して依頼したと思われるものが、平成十九年度、八十三件であります。県の医療情報ネットワークが、実現しようとした遠隔医療の核に画像診断がありましたが、利用する医療機関が広まらず、利用数もわずかにとどまったと言えましょう。
そういう現況を踏まえて、せっかく県が力を入れて確立した医療情報ネットワークではありますが、民間でできることは、民間にゆだねるということで、廃止する決断をしたのであれば、それはそれとしてうなずけるところであります。
なぜ、県の医療情報ネットワークが、うまく機能するに至らなかったのかを調べていきますと、医療上必要とされる情報は、具体的、個別的、直接的なものであり、しかも、タイムリーでなければなりませんが、それにこたえ得る医療情報提供システムを構築することは、行政がなし得る範囲、能力を超えるものであったことが明らかになってまいります。
一方、医療画像研究センターは、医療画像の読影ということに絞って、医療上のニーズに的確にこたえる医療情報提供システムを、民間事業として確立することに成功しました。
ところで、このシステムは、YSNを使っていません。医療画像センターを立ち上げた方に、その理由をお聞きしましたところ、NTT等が、ブロードバンドサービスを提供しているエリア内においては、あえてYSNを使用しなくても、情報システムを構築できるということでありました。
さて、私は、昨年六月県議会で情報通信基盤の整備ということで一般質問をした際に、二井知事が、やまぐち情報スーパーネットワーク、すなわち、YSNの整備を取り組まれたことを高く評価しました。そのことは、今も変わりありません。
ただ、医療情報ネットワークのことを通して明らかになってくることは、具体的な個々の情報サービスは、民間事業者に任せたほうがいいということでありまして、YSNは、その民間事業者による情報サービスの提供が、全県的にくまなく等しく行われるよう、情報通信基盤の整備に役立てるべきということであります。
そこで、お伺いいたします。家庭、事業所、企業等が直接光ファイバー網でつながる超高速ブロードバンド社会への移行が進捗している今日、県が情報通信の基幹網として整備したYSNの役割とあり方は、今後、どうあるべきとお考えなのか、将来を見据えての御所見をお伺いいたします。
次に、山口県振興財団についてお伺いいたします。
平成十九年十一月、中川秀直元自民党幹事長が、国の特別会計の積立・剰余金を指して、「国民に還元すべき埋蔵金がある」と発言。これを、当時の自民党財政改革研究会の会長でありました与謝野馨氏、現在は金融経済担当大臣で財務大臣も兼務しておられますが、その与謝野さんが、「そんなものは存在しない」と真っ向から否定いたしまして、いわゆる霞が関埋蔵金論争が勃発しました。この論争は、しばらくして決着、大方の特別会計で超過積立金があり、その総額は五十兆円に上っていたことが明らかになりまして、平成二十年度の予算編成では十兆円が取り崩されました。
その後は、国の財政再建に向けて、消費税を上げるべきだ派とその前に埋蔵金を使うべきだ派の論争が続いておりますが、その論争は、国の政治をあずかる方々に任せるとして、我々県政に責任を持つ者は、山口県版埋蔵金に着目し、その利活用を図っていかなければなりません。
山口県には、そこからいつも小出しに使われている埋蔵金があります。正確に言えば、巨額の金融資産でありまして、本県が有する中国電力株のことであります。山口県は、御案内のように、中国電力株式を約五千万株持っておりまして、持ち株比率は一三・三%で筆頭株主であります。
全国の電力会社は、大株主を上位十番まで公表しておりますが、そこに名前が出ている都道府県は、持ち株比率が高い順に、山口県、富山県、東京都、高知県、沖縄県の五つであります。富山県は、持ち株比率が本県に次いでいますが、それは五・一二%で、本県とは差があります。東京都は、東京電力の株を約四千三百万株持っておりますが、本県には及びません。
これらのことから、山口県が都道府県の中で、電力株の保有という点において際立っていることがわかります。
山口県が、中国電力の株式を取得するに至った経緯は、大正十三年に県営電気事業を開始したことにさかのぼりますが、直接には、戦後昭和二十六年、現中国電力株式会社が発足したとき、同社に出資し、約二十万株の株式が割り当てられたのが始まりであります。
その後、増資に対応して本県の保有株式をふやしてきましたが、昭和四十九年、増資に対応するための県の借り入れが、国の政策変更により、できなくなったことから、財団を設立の上、中国電力株式会社の増資に対応するとともに、株式の管理・運用を行うことを決定しました。その財団が、山口県振興財団であります。
よって、本県が有する中電株は、この振興財団の財産として管理・運用されていますが、平成二十年三月三十一日現在の財産目録において、本財団の正味財産は、基本財産である中国電力株の時価総額約一千百億円から、長期借入金等の負債総額約百二十億円を引いた、九百八十億円であります。
本財団の設立目的は、財団寄附行為第三条において、「この法人は、山口県の財政運営に対する協力活動を推進することにより、山口県の振興を図り、もって県民福祉の増進と県勢の発展に寄与することを目的とする」としておりまして、設立以来、県財政に資金協力を行ってきております。
どういう事業に資金協力を行っているかを、平成二十年度事業計画で見ますと、県が行う重要な公益的事業に対する資金的協力ということで、一が、大規模な建設事業等に対する資金的協力、十七億円であります。これは大体、平成になってから、ほぼ十七億円が投入されておりますね。二が、国民体育大会及び全国障害者スポーツ大会の開催事業に対する資金的協力、十億円でありまして、計二十七億円の資金的協力となっております。
平成二十一年度の県財政への資金的協力は、財源不足に対応して三十七億円ということでありますが、きらら博開催事業への協力ということで、平成十二年、十三年は、四十数億円拠出されていることからすれば、五十億円ぐらいあってもいいような気もいたすところであります。
ただ、この中電株財産の運用による資金協力は、基本財産である株には手をつけず、配当金で行っていくということで今日まで来ておりまして、その配当金は、ここ二十年間、ほぼ二十四億円で推移しております。
私は、これまでは、その方針でよかったと思いますが、道州制への移行が予想されている今日、これからは、この貴重な財産を、将来に向けた本県の基盤整備にしっかり使うことも考慮されていいのではないかと思われます。
特に、情報通信政策についての質問の中で述べました超高速ブロードバンドサービスが、中山間地域、僻地、離島を含めて、全県どこでも一○○%提供できる情報通信基盤整備のために使うことは、最も望ましく、二井県政が、YSNの整備で推進した情報化の総仕上げは、そこにあると考えます。
財団寄附行為第七条は、基本財産の処分の制限を定め、基本財産は、これを処分し、または担保に供することはできないとしておりますが、さらに、ただし書きにおいて、やむを得ない理由があるときは、理事会において、理事の三分の二以上の同意を得、かつ、主務官庁の承認を受けて、その一部に限り処分し、または担保に供することができるとしておりまして、理事会判断で、主務官庁の承認は要りますが、思い切った本財産の利活用は可能であります。
県振興財団の理事長は知事で、理事は知事が指名することになっておりますので、本財団の県財政への資金的協力をどうしていくかは、まさに知事がどう考えるかにかかっております。
そこで、お伺いいたします。知事は、山口県振興財団の県財政への資金的協力を、今後、どういう方針のもと行っていく考えなのか、御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問とさせていただきます。(拍手)
【回答】◎健康福祉部長(今村孝子さん)
情報通信政策のうち、山口県医療情報ネットワークシステムに関する二点のお尋ねにお答えいたします。
これまで、山口県医療情報ネットワークシステムは、医療の地域間格差の是正や医療機関の連携強化を図ることを目的として、高速・大容量のデータ通信を可能とするYSNの特徴を生かしながら、医療機関を相互に結びつけ、遠隔画像診断や紹介状の送受信、空きベッド情報データベース化が行われるなど、システム導入時においては、医療情報のネットワーク化に向け、大きな成果が見られたところです。
しかしながら、近年、医療機関から、現行システムの物理的処理能力や技術的制約を超える静止画像、動画、音声など多様なデータの送受信が求められており、経費的な問題も含め、これに応じた継続的かつ迅速なシステム改修が、困難な状況となっています。
また、インターネットを活用した遠隔画像診断に民間企業が参入するなど、民間によるサービスが進み、これに伴いシステムの利用件数は、毎年度減少しているところです。
県といたしましては、こうした状況を踏まえ、医療関係者の意見も聞きながら、費用対効果を勘案して、広域災害・救急医療情報システムも含むシステム全体のあり方の検討を行い、機能の整理統合を行った上で、必要な機能については、より充実を図るとともに、医療連携情報システムなどお示しの機能は、廃止し、来年一月を目途に、システム全体の再構築を行うこととしております。
次に、これまで提供していたサービスについてのお尋ねでございますが、このサービスは、民間の情報基盤を活用して提供されることとなりますが、県民が医療機関を選択する際に役立つ情報の提供など、県の関与が望まれるサービス内容につきましては、再構築後のシステムで、引き続き提供することとしており、今後とも、医療分野における情報化の推進に努めてまいります。
【回答】◎地域振興部長(小田由紀雄君)
情報通信政策についての二点のお尋ねのうち、まず医療情報ネットワークシステムの見直しにつきまして、情報化推進の観点からお答えをいたします。
県では、やまぐち情報スーパーネットワーク、今からYSNと言わさせていただきますけれども、これを活用して、医療、環境、土木など、さまざまな分野において、多様なサービスを広く県民に提供していますが、こうした公共アプリケーションにつきましては、より効果的なサービスを提供していくため、情報通信技術の進展や利用者のニーズの変化などを踏まえて、随時そのあり方を検討し、必要に応じて見直していくべきものというふうに考えております。
今回の医療情報ネットワークシステムの見直しにつきましては、当該システムを取り巻く状況変化を踏まえまして、医療関係者の意見も聞きながら、費用対効果を勘案した上で、システム全体のあり方を検討して機能の整理統合を図るものであり、県民にとって役立つ情報提供システムに改修されるものと、こういうふうに考えております。
次に、YSNの役割とあり方についてです。
御案内のとおり、県では、県民が等しく情報通信技術の恩恵を受けることができるように、全県的な高度情報通信基盤としてYSNを構築し、さまざまな分野におきまして積極的な利活用を図ってまいりました。
特に、YSNが供用開始されました平成十三年当時は、民間による情報通信網の整備が進んでいなかったことから、光ファイバーを活用した高速・大容量の情報通信ネットワークであるYSNを開放することにより、民間による各種情報サービスの提供やブロードバンド環境の整備に先導的な役割を果たすことを期待しておりました。
その後、民間事業者によるブロードバンドサービスは急速に進み、本県におけるブロードバンド世帯カバー率は九八・六%になり、また、民間で提供されるサービスの高度化・多様化も進むなど、一定の成果を挙げてきたところであります。
一方、採算性の面から、民間による情報通信網の整備が進みにくい中山間地域や離島などの条件不利地域におきましては、YSNの無料開放というメリットが、民間投資の促進に寄与しており、携帯電話の不感地域の解消や、CATVの中継線としてYSNが活用されるなど、いわゆるデジタル・ディバイドの解消に貢献しているところであります。
このような本県の状況を踏まえますと、YSNにつきましては、当面は、公的情報通信基盤として、情報の地域間格差を是正するという役割を果たしていく必要があると考えておりますが、将来につきましては、お示しのありました、超高速ブロードバンド社会への移行に対応した民間事業者のサービスの動向を注視しながら、そのあり方を含め、検討していきたいと、こういうふうに考えております。
福祉医療制度のことにつきまして再度お伺いいたします。
私は、三カ月に一回ほど開かれています、障害福祉の仕事に携わっている方々の勉強会に参加しておりまして、それが先般開催されましたときに、やはり福祉医療制度の見直しのことが主たる話題になりました。そのときに、払えと言っても払えない人たちがおると、むしろ旗立てて座り込んでも反対するという発言もあれば、障害者といえども、できる負担はしていかなければならないと思うという発言もありました。これぐらいだったらできる負担というので、通院の場合、ワンコイン、五百円ということでありまして、この点は御利益かなと思っているわけでありますね。
ただ、そういう方も、また、県が財政事情でまた引き上げるということになると、それは非常に苦しくなると。重度心身障害者の場合に、年金が月八万三千円でございます。これがまた上げられるようなことになれば、幾らか負担増を耐えることができるだろうけれど、そういうことがないままに負担が上げられるようなことは、もうそれはしないでほしいと。
それから、もう一つは、やはり病院、診療科が複数になった場合に、限度は三千円以内なんだと、四千円、五千円になれば、とてもやはりそれはもうできなくなってくるということであります。
そういうようなことにつきまして、不安を解消するような、一つの福祉医療制度のこれからのあり方についての原則的な基準、ルール、そういうものをやはり市町、それから有識者、関係者を含めて、合意の形成を、私はやっぱり、図る取り組みをすべきだと、それは、今、少しの努力をすれば可能なんだと思っておるところであります。
その合意形成まで、凍結すべきということを申し上げました。見直しの実施は、自治体は七月以降になりますから、凍結によりまして福祉医療費の支出がふえましても、六月議会で補正いたしますれば、現予算は修正しなくて済みます。
そういうことで、改めて、このことにつきまして、関係者を含めて協議されるよう、要望いたしておきます。
さて、福祉医療制度につきましては、知事の考えはほぼ出尽くしました。後は議会にボールが投げられました。これからは議会の取り組みが問われます。関係者の不安を残したままの制度の実施を認めてしまったら、議会の存在意義が問われてしまいます。そうならないための、これからの議会での議論が行われることへの期待を表明いたしまして、私の質問を終わります。