令和4年11月定例県議会 (3)コミュニティ交通への支援

1.公共交通政策

(3)コミュニティ交通への支援

山口市は、歴史もあり、文化もあり、豊かな自然もありの適度に都会、適度に田舎のいい街で、転勤族で山口に住まわれた方で定年退職後、山口市に住もうという方も多いようです。ただ、山口市の難点は、車が運転できなくなると一気に不便な街になることで、これへの対策が山口市にとっては大きな課題です。

山口市における基幹の公共交通は、市内を走るJRの各線と路線バスでして、コミュニティバスやコミュニティタクシー等がこれを補完して、交通空白地の解消を図ろうとしています。県下の市町でも、ほぼ同様の取り組みがなされていると思われますので、山口市の公共交通への取組を取り上げて、交通空白地解消の一環としてのコミュニティ交通への支援につきお伺いいたします。

山口市の令和4年度予算における公共交通に関する事業費は、幹線バス運行維持事業2億1500万円、2ルートのコミュニティバス実証運行事業6600万円、徳地・阿東地区の生活バス運行事業6200万円、市内8地区でのコミュニティタクシー運行関連事業6000万円等です。これらの事業のうち幹線バス運行事業に対して県から約3000万円余の補助がありますが、それ以外は市の一般財源です。これらの事業費の80%は、特別交付税措置の対象になるとは云え、市としては財政規律を維持する観点から公共交通への支出も一定の大枠の範囲内となります。

このため、コミュニティタクシーにおいては、運行経費の7割が市の補助の限度で残りの3割は運賃収入と運行地区の企業等の協賛金そして地元負担金を充当する仕組みとなっております。ある地区では、この地元負担金が年間約100万円にもなる見通しということで、それをどう確保するか苦慮しています。

こうした交通空白地域解消に向けた取組の実情を知るにつれ、交通政策基本法において「全ての国民の交通に対する需要の充足を重視する方針」が示されているものの、そのことを実効あらしめる仕組みの構築と財源の確保は、今日においても大きな課題としてあることを感じます。

路線バスやコミュニティバス等の基幹交通が近くを運行していない交通空白地域の人たちにとって、車が運転できなくて身近に車に乗せてくれる人もいない場合は、移動手段はタクシーになると思われます。地域をきめ細かくカバーし、地域の中心地や基幹交通に接続する移動手段をコミュニティ交通と言いますが、その役割を主に担っているのはタクシーであります。しかし、通常の料金でタクシーを頻繁に利用することは過重負担になるため、公的補助によりバス運賃並みでバスの代わりにタクシーを運行するコミュニティタクシーやタクシー利用への割引券の交付などによりタクシー利用の負担軽減を図ることが、コミュニティ交通では必要となり、そのための財源確保が課題であります。

そこでお尋ねです。その1は、コミュニティ交通への県の支援についてです。コミュニティ交通を必要としている地域の多くは過疎地域であり、運賃収入は、どうしてもわずかで運行経費の大部分は公的補助になります。この公的補助に関しては、現在本県では県の補助は行われておらず、関係市町が一般財源から充当しています。この市町の補助金に対しては最大で80%が特別交付税措置の対象になりますが、県がコミュニティ交通支援のため補助した場合も、同様の措置がなされることを確認しました。ついては、県も一定の方針を定めてコミュニティ交通への支援を行い、コミュニティ交通の拡充を推進すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

その2は、ICカードの導入についての支援です。県は、ICカードの導入について、バスへの支援は行っていますが、タクシーに対しては支援がないようです。

コミュニティ交通を担うタクシーにおいても、ICカードの導入が進むことが望まれます。ついては、バス同様タクシーに対してもICカード導入への支援を行うべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

その3は、国への要望についてです。コミュニティ交通への国の補助は、既に運行しているところに対してはなく、新たに運行を始めるところに対して措置される制度となっています。このことに関し市町の関係者からは、既に運行しているコミュニティ交通に対しても国の補助があるよう、県から要望してほしい旨の声があります。ついては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

→(部長答弁

 

 

 

 

令和4年11月定例県議会 (4)コロナ禍の公共交通事業への影響と対策

1.公共交通政策

(4)コロナ禍の公共交通事業への影響と対策

先に紹介しました小嶋氏が代表を務める地域公共交通総合研究所は、コロナ禍における地域公共交通の現状を知るために、全国のバス・鉄軌道・旅客船事業者約500社に対してアンケート調査を実施し、その調査結果を今年の8月に発表しています。それによりますと、1.輸送人員の減少は、3割以上の落ち込みがある事業者が3割を占める。2.公的補助・支援がないと1割の事業者が半年以内に経営の限界、2年以内に8割が経営の限界が来ると予想。3.コロナ禍に追い打ちして燃料高と乗務員不足が経営を大きく圧迫。4.コロナ禍対応に5割が路線廃止と減便で対応しており、将来の路線維持・経営維持への不安が高まっている。6.今後もリモートや社会生活の変化で、コロナ禍以前の利用客数には、1~2割は戻らないと懸念される。等々、新型コロナが地方公共交通の危機を加速させた状況が明らかになっています。

同研究所は、こうした地方公共交通の苦境を救う緊急対策として、1.人流制限緩和の継続と両立するコロナ化対策の実施。2.コロナ禍の累積損失に対する補助・支援。3.雇用調整助成金やコロナ禍対策の政府や自治体の支援継続。4.長期かつ無利子の金融支援の拡充。5.燃料費補助の緊急支援。6.乗務員不足に対する対策を、提言しています。公共交通を守るためには、公共交通の事業経営が持続可能であることが必須であります。そういう意味において以上の提言は、コロナ禍で危機に瀕する地方公共交通を守るため国や地方自治体が、直ちに実施すべき必要不可欠の事項であると思われます。尚、この調査対象にはタクシーは含まれていませんが、コロナ禍のタクシーへの影響も深刻でダメージはもっと大きいと見られています。

そこで、タクシーも含めての公共交通事業についてのお尋ねです。先ず、本県におけるコロナ禍の公共交通事業への影響をどう認識しているのかお伺いいたします。次に、コロナ禍による深刻な影響を克服して本県の公共交通事業者が、事業継続を図っていくためには、先の提言に示されているような支援が必要と考えます。ついては、こうした支援の実現に、県は、どう取り組んでいくのかご所見をお伺いいたします。

→(部長答弁

 

 

 

 

令和4年11月定例県議会 (5)公共交通政策における大学との連携

1.公共交通政策

(5)公共交通政策における大学との連携

私は、先の6月県議会において、大学が今日、地域との連携・貢献を自らの役割として位置づけ、地域課題の解決に、大学が有する知見や機能を役立て生かしていこうとしていることを指摘して、大学との連携を一層進め、県政の地域課題解決の総合力を強化すべき旨、質問いたしました。

この質問に対し村岡知事より、「新たな未来の県づくりを、より高いレベルへと押し上げていけるよう、今後とも、県政各分野で展開する様々な施策において、大学との連携・協働を積極的に推進する。」旨の答弁がありました。この答弁にあります「県政各分野の様々な施策」において大きな柱の一つとなるのが、公共交通政策であると考えます。先に、未来維新プランにおいて公共交通政策の方針を示すべきだと申し上げて、所見を伺ったのはそういう考えからです。

この公共交通政策は、バス・鉄道・タクシー等の公共交通事業が、多種多様なニーズに応えるとともに、事業として成り立ち持続可能性が担保される方向で施策の展開を図るものでなければなりません。そのためには、多種多様な需要動向把握の方法の確立し、需要動向に関するビッグデータを解析して持続可能な事業モデルを確立する。LRTやBRTに関する調査検討。自動運転等の移動手段の進化及び実用化の将来予測。公共交通におけるウーバー的手法活用の検討。デジタル技術・ICTを活用した最先端の交通システムの確立に向けた取り組み等々、素人の私が思いつくだけでも、極めて幅広く優れた知見が求められるのが公共交通政策であり、大学と連携して取り組むにふさわしい課題と思う次第です。具体的な連携のあり方は、県と大学関係者とで協議すればいいと思いますが、県には、調査研究・先進地視察・シンポジウムの開催等に大学が主体的に取り組めるよう十分にして必要な予算措置を講ずることが望まれます。

そこで、お尋ねです。新たな未来の県づくりに向けて重要な政策の柱の一つとなる公共交通政策の確立と推進において、大学との連携を一層進めるべきと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

→(部長答弁

 

 

 

 

答弁 (1) 基本方針について

1 県政と大学の連携について

 (1) 基本方針について【知事答弁】

合志議員の御質問のうち、私からは、県政と大学の連携に関する基本方針についてのお尋ねにお答えします。

今、県政は、直面するコロナの危機の克服や原油価格・物価高騰への対応に加え、予測を上回るスピードで進行している人口減少・少子高齢化、脱炭素化に向けて求められる産業構造の転換、頻発化・激甚化する自然災害への備えなど、様々な分野にわたって、困難な課題を抱えています。

こうした諸課題を克服し、将来にわたって「安心で希望と活力に満ちた山口県」を築いていくためには、市町や企業、団体、そして大学など、様々な分野で主体的に活動を行っておられる皆様と思いを共有し、連携・協働しながら、県づくりの取組を進めていくことが重要です。

とりわけ、大学は幅広い分野にわたって豊富な専門的知見を有していることから、県では、県内の各大学と連携し、若者の県内定着や産業振興、人材育成などの取組を進めているところです。

また、多くの大学では、地域貢献を重要な役割として掲げ、研究シーズと企業の技術的課題等とのマッチングや、企業等の具体的な課題をテーマとする教育プログラムの実施などの取組を進めており、県は、こうした取組への支援を行っています。

お示しのありました「Society 5.0」の実現に向けては、今後、情報通信分野における技術革新をあらゆる産業や社会生活に取り入れていくことが必要であり、大学には、そうした取組を担う人材の育成が強く求められています。

このため、県では、山口大学と連携し、ビッグデータを活用して新たな商品やサービス等を生み出す取組の中核を担うデータサイエンティストを養成しているところであり、先の政府要望においても、複数の大学と地域が連携・協力して行う人材育成の取組の採択を、国に強く働きかけたところです。

今後は、さらに、我が国の経済成長を牽引する新たなイノベーションの創出や、世界共通の課題である脱炭素化への対応等に向け、産学公が英知を結集していくことが求められ、大学との連携・協働は、これまでにも増して重要になっていきます。

私は、新たな未来に向けた県づくりを、より高いレベルへと押し上げていけるよう、今後とも、県政各分野で展開する様々な施策において、大学との連携・協働を積極的に推進してまいります。

その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

答弁 (2) 山口大学との連携について

1 県政と大学の連携について

 (2) 山口大学との連携について【部長答弁】

山口大学との連携についてのお尋ねにお答えします。

人口減少・少子高齢化が急速に進む中、地域の活力を創出し、本県の確かな未来を切り拓いていくためには、県政の各分野にわたる専門的知見を有する、本県唯一の総合大学である山口大学との連携は大変重要であると考えています。

このため、毎年度、本県の県づくりの取組について審議を行う「山口県活力創出推進会議」に、山口大学からも委員として参画をいただき、御意見等を伺い、その後の施策展開に反映しているところです。

また、個別の施策の実施にあたっても、「地方創生に係る包括連携協定」等に基づき、県と山口大学が、それぞれの持つ知見やノウハウを結集し、より大きな成果につなげていけるよう、検討を始める段階から緊密に連携・協働を行っています。

具体的には、産業に関する分野においては、山口大学が持つシーズを基にした、医療、環境・エネルギー、バイオ関連のイノベーション創出をはじめ、県内の製造業・情報サービス産業を支える人材育成などに、連携して取り組んでいます。

生活に関する分野では、災害発生時に、山口大学が衛星データを解析し、その結果を関係機関で共有して、迅速な対応につなげる仕組みを構築したほか、高齢者の介護予防や認知機能等の低下の予防をテーマとする研究、本県の医療を支える人材の育成などの取組で、連携を行っているところです。

こうした中、県政を取り巻く環境は、デジタル化や脱炭素化をはじめ、様々な分野で大きく、そして急速に変化しており、これらの変化にしっかり対応していけるよう、山口大学が持つ知見の活用をさらに進める必要があると考えています。

県としては、引き続き、山口大学と緊密に連携しながら、現在進めている「やまぐち未来維新プラン」の策定をはじめ、県政各分野にわたる政策の形成と、その円滑な推進に努めてまいります。

答弁 (3)「大学リーグやまぐち」と研究支援について

1 県政と大学の連携について

(3)「大学リーグやまぐち」と研究支援について【部長答弁】

県政と大学の連携に関する御質問のうち、「大学リーグやまぐち」と研究支援についてのお尋ねにお答えします。

大学リーグやまぐちは、お示しのとおり、平成28年10月、県内全ての大学・短期大学が相互に連携し、県と協働しながら、その魅力や地域貢献力の向上、若者の県内定着の促進を図る目的で設立されました。

その後、令和2年8月に、多様な実行主体による連携・協働を図るため、全ての高等専門学校、山口労働局、経済団体、支援機関、私学団体の参画を得て、地域連携プラットフォームとして再構築し、現在、36機関・団体を会員として構成しています。

お示しのような、地域課題の解決に向けた研究への財政支援については、高等教育行政を所管する国の役割であり、国立大学運営費交付金や私立大学に対する助成の拡充等を図るよう、国に対して要望しているところです。

一方で、大学等の研究を支援するため、本年度、大学リーグやまぐちの地域貢献部会の取組として、県内大学等が有する研究シーズ集を作成・公開し、経済団体等を通じて広く発信することで、共同研究等を通じた地域・企業との連携強化を図ることとしています。

県としては、今後とも、大学リーグやまぐちを中心に、高等教育機関をはじめとする多様な実行主体と連携・協働を図ることで、地域課題の解決に取り組んでまいります。

 

答弁 (4)デジタル化の推進について

1 県政と大学の連携について

(4)デジタル化の推進について【部長答弁】

次に、デジタル化の推進についてのお尋ねにお答えします。

本県のDX推進に向けては、知事をトップとする「デジタル推進本部」において、デジタル改革で目指す姿やそれに向けた取組内容等を決定し、全庁を挙げて、デジタルによる県全体の改革への取組を進めています。

このデジタル改革では、何よりも現場での取組を重視しており、様々な課題に直面する現場に、新たなデジタル技術を積極的に導入・実装し、それを実践する中で更なる改善を図っていく、そうしたループを回し、DXを実現していくとの考えのもと取り組んでいます。

このため、やまぐちDX推進拠点「Y-BASE」においても、高いスキルを有する専門スタッフが、各現場のデジタルによる変革を見据えながら、最適なソリューションの導入等の支援を行っており、そうした取組を着実に積み重ね、さらに、そこで生まれた優良事例の横展開も図り、全県的なDXに繋げていきたいと考えています。

そうした取組を進める上では、デジタルへの高い知見、そして、優れた技術を持つパートナーとの連携が不可欠であり、現在、スタートアップも含め、先端企業などとの連携を図っていますが、お示しの大学についても、そうした形での連携が図れることを期待しています。

また、県内では、官民を問わずデジタル化の取組を担う人材の不足が大きな課題となっており、その解決に向けては、特に大学との連携が重要だと考えています。

このため、これまでも、山口大学と連携し、データサイエンティストの育成に取り組んでいますが、この度、県内3大学が国の事業に応募し、地域課題の解決に貢献する文系DX人材の育成に取り組むこととされました。

県も、これを後押しするための政府要望を行ったところであり、こうした取組を通じて、大学が実践的な人材を早期に育成し、その人材を県内の様々な現場に送り込んでいただくことを期待しています。

また、デジタル化の推進に向けては、官民協働フォーラムのような自由な組織の交流の中から、新たなソリューション等が生まれていることから、大学には「シビックテック」に挑戦するような、新しい価値観を持つ人材も育成していただきたいと考えています。

こうしたことに加え、大学との連携に関して、大学側から「Y-BASE」に、デジタルによる大学運営の変革に係る相談が寄せられています。

「Y-BASE」では、デジタルによる変革の第一歩となる業務のデジタル化等の支援をはじめ、AIとデータを活用した新たな価値を生み出す取組への支援など、様々なレベルの支援が可能であることから、大学への支援もしっかりと行い、大学のDXにも貢献していきたいと考えています。

県としては、引き続き、大学をはじめ多様な主体と緊密に連携しながら、本県のDXの実現に向けて取り組んでまいります。

令和4年6月定例県議会 (1)基本方針について

1.県政と大学の連携について

(1)基本方針について

県政における政策の形成と推進において、大学との連携を一層進めるべきとの観点から一般質問を行います。
先ず、県政と大学の連携を一層進めるべきと考える理由について、私なりの所見を二つ申し上げたいと思います。
その1は、時代の方向です。これから時代は、どういう方向に向かって進んでいくのか。この問いに対し我が国の科学技術政策は、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会未来像としてSociety5.0を提示しています。Society5.0は、平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。人間社会が、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、そして情報社会(Society4.0)と推移してきたとの時代認識に立ち、今日の情報社会(Society4.0)に続く新たな社会として想定されているのが、Society5.0であります。
第5期科学技術基本計画は、Society5.0について次のように記しています。

ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させる取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に進化させつつ「Society5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。

ここに記されているサイバー空間とフィジカル空間(現実世界)の融合とは、もののインターネットといわれるIoTを通してサイバー空間に蓄積された現実世界の膨大な情報ビッグデータが、AIによって解析され現実世界の課題解決の最適解が見出されてサイバー空間からフィジカル空間(現実世界)にフィードバックされ現実世界の課題解決が図られていくという等の関係が深まっていくことを意味していると思われます。

Society5.0において実現される超スマート社会については、次のように記されています。

必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会

こうした超スマート社会の実現に向かうSociety5.0は、情報社会の次なる新たな社会との位置づけですが、Society5.0を支える基盤技術がデジタル技術であることからすれば、Society5.0も広い意味での情報社会に包含される社会と見做すのが、私には正確な認識だと思われます。情報社会の出現は、世の中のあらゆる情報を0と1に数値化してデジタル情報に転換することを可能にした情報の理論の確立と、そうしたデジタル情報はコンピューター処理が可能でその技術が発達し、情報通信がアナログからデジタルへと転換が図られたことにより招来されたものでありまして、その情報社会が高度に進化したのがSociety5.0であると見做すのが、私は妥当な認識であると考えます。
そうした認識は、情報社会についての理解を深めれば当然共有されるものであるにもかかわらず、我が国の科学技術政策においてSociety5.0が、情報社会に続く新たな社会として掲げられたのは、AIやIoT等の活用により人間中心の視点からより高度にシステム化された情報社会、即ち超スマート社会が展望されることになったことから、その実現に向けて国の力を結集する国づくりの目標として、第二期情報社会というより新たな望ましい社会の到来をイメージさせるSociety5.0という表現になったものと推察しております。
令和3年3月に閣議決定された第6期科学技術・イノベーション基本計画も、Society5.0の実現を計画の主軸に位置付け、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会、一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」として提示しています。
こうしたSociety5.0に向かう国づくりの方向は、当然に地域づくりの方向でもありまして、これからの地域政策は、その方向に向かって人間中心の視点から高度な情報社会の在り方を構想し、具体化する知的総合力が求められます。このことが、県政と大学の連携を一層進めるべきだと考える理由その1であります。
次に、理由その2は、大学の役割です。平成17年に中央教育審議会は、「我が国の高等教育の将来像」について答申し、「大学は教育と研究を本来の使命としているが、社会貢献(地域社会・経済社会・国際社会等、広い意味での社会全体の発展への寄与)の役割を、言わば大学の『第三の使命』としてとらえていくべき時代になっている。」との見解を示しました。この答申を踏まえ、翌平成18年の教育基本法の改正において「社会貢献」が大学の使命であることが明文化されました。以来、教育や研究それ自体が長期的に見れば社会貢献活動であると言えますが、より直接的な社会貢献の役割を大学は求められるようになりました。更に、平成24年に文部科学省は、「大学改革実行プラン」を策定し、地域再生の核となる大学、生涯学習の拠点となる大学、社会の知的基盤としての役割を果たす大学のCOC(Center of Community)機能の強化を大学改革の方向性の一つとして示し、地域における大学の役割を明確にしました。
全国の大学は、こうした時代の要請に応えて地域貢献を、大学の在り方の主要な柱の一つに位置付けることになります。本県の国立大学法人山口大学は、大学創基200周年を迎えた2015年に「明日の山口大学ビジョン」を策定し、「地域連携」をそのビジョンの柱の一つに掲げました。そして、実際その役割を担うところとして「地域未来創生センター」を、創設しました。
山口県立大学は、教育基本理念の一つに「地域社会との共生」を掲げ、その理念を実現するための施設として地域共生センターを設置しています。また、今年の春公立大学として新たにスタートした周南公立大学は、「地域に根差し、地域の問題を地域とともに解決し、地域に愛され、地域に信頼され、『地域に輝く大学』となる。」ことを、大学が目指す姿ビジョンとして示し、「地域振興への貢献」の窓口として地域共創センターを開設しています。
このように今日、大学は地域との連携・貢献を自らの役割として位置づけ、地域課題の解決に、大学が有する知見や機能を役立て生かしていこうとしています。こうした大学の姿勢を、県政はしっかり受けとめるべきだと考えます。
そして、執行力を持つ県と知見を有する大学が連携を一層進めることにより、県政における地域課題解決の総合力を、高め強化していくことを図っていくべきではないでしょうか。そうすることにより、将来に向けてよりよい県づくりが進んでいくことを、県民は県と大学に期待していると思っています。
以上、県政と大学の連携について思うところを申し上げましたが、このことにつき、先ず県のお考えと基本方針を、お伺いいたします。

(知事答弁)

 

 

 

 

令和4年6月定例県議会 (2)山口大学との連携について

1.県政と大学の連携について

(2)山口大学との連携について

次は、山口大学との連携についてです。山口県において大学との連携を進める上においては、先ず本県の基幹総合大学である山口大学との連携をしっかりしたものにすることが肝要と考えます。山口大学は、先ほど紹介しましたが、大学が持つ人材や知的資源を有効に活用し、地域社会との多様な連携と地域課題の解決に寄与する拠点施設として「地域未来創生センター」を平成27年に設置しています。また、令和4年度から9年度までの6年間を計画期間とする山口大学第4期中期目標においては、最初の項目に「地域との共創」を掲げ、「地域の抱える社会課題を共有し、地域の企業や教育機関、行政機関と協働し、産・学・公連携の知の拠点として、シンクタンク機能を果たし、優秀な人材を提供し、課題の解決に寄与することにより、地域に頼られ、地域から必要とされる魅力ある大学をめざします。」と明記して、地域連携・地域貢献の姿勢を強く打ち出しています。そして実際、大学の先生方は、県内自治体の各種審議会や委員会等の委員になるなどの地域貢献活動に数多く係わっていて、平成29年から令和元年度までの間の実績が、大学のホームページに公表されているのを見ますと、県関係が294件、県内の市関係が282件と、実に広範多岐にわたり数多く県及び市の施策に山口大学が係わっていることが伺われます。また、炭鉱とセメントの町として知られた宇部市は、戦後の産業の発展とともに、ばいじんによる大気汚染が深刻化し、「灰の降るまち」といわれていましたが、地域の産・官・学・民の4者が協力して取り組む「宇部方式」により、現在の「緑と花と彫刻のまち」というキャッチフレーズ通りの美しい景観をもつまちに生まれ変わりました。その「宇部方式」と言われる取組には山口大学の医学部、工学部の先生方の尽力指導があったことは広く知られていまして、山口大学の歴史における地域課題解決、地域貢献の輝かしい事例です。
こうした山口大学の地域貢献活動が、個別的な地域課題の解決のみならず県全体の重要課題の解決も志向するようになるのは当然の成り行きで、山口大学の関係者は、県の総合計画の策定や重要政策の形成に最初の段階から係ることにより、更によりよい県政の実現に寄与できるとの思いがあるようです。
そこでお尋ねです。県政における政策の形成と推進において山口大学との連携を一層進めるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)

 

 

 

 

令和4年6月定例県議会 (3)「大学リーグやまぐち」と研究支援について

1.県政と大学の連携について

(3)「大学リーグやまぐち」と研究支援について

次に、「大学リーグやまぐち」と研究支援についてであります。
中央教育審議会大学分科会は、令和3年12月に「これからの時代の地域における大学の在り方について」審議のまとめを公表しました。「地方の活性化と地域の中核となる大学の実現」をサブタイトルとするこのまとめは、「大学が地域の中核的な拠点となっていくに当たっては、地域のために大学が貢献するとともに、地域も大学と一緒になって取組を進めていく、そのような大学と地域の関係の構築が重要である。」と指摘し、「地域の大学やその他の高等教育機関のみならず、地方公共団体、産業界、金融機関等の様々な関係機関が一体となった恒常的な議論の場として地域連携プラットフォームを構築・活用していくことが求められている。」と、述べています。
本県におけるその地域連携プラットフォームに相当するのが「大学リーグやまぐち」でして、平成28年10月に設立されています。設立当初は、県内大学・短期大学を中心とした体制でしたが、令和2年8月に組織の拡充が行われ、県内全ての大学・短期大学17校に加えて高等専門学校全3校、経営者協会等の県内経済5団体、やまぐち産業振興財団などの3支援機関、私学3団体、山口労働局や山口県、市長会等の5行政機関が会員となり、「大学リーグやまぐち」は、36機関・団体を構成メンバーとする地域連携プラットフォームとして体制を整え機能強化が図られました。
このように陣容を整えた「大学リーグやまぐち」が、会の設立以来取り組んできた主要課題は、若者の地元定着であります。この会には、実行組織として「県内進学・魅力向上」部会、「県内就職」部会、「地域貢献」部会の3部会が設けられていますが、若者の地元定着を共通の目標として役割を分担したものと考えられます。「県内進学・魅力向上」部会は、本県高校生の県内大学への進学を促進しようとする部会です。「県内就職」部会は、本県の大学で学ぶ若者が、県内企業への就職に向くよう課題に取り組む部会です。「地域貢献」部会は、県内企業が必要とする人材育成の教育プログラムの実施等、地域・企業の課題解決のため、大学シーズと地域・企業ニーズのマッチング等に取り組んでいます。
私は、そうした若者地元定着への取組と併せ、本県の地域課題解決に向けた研究への支援を、この「大学リーグやまぐち」の事業の柱の一つにすることを提案します。どういう仕組みにするかは、それこそ大学リーグに専門部会を設けて検討すればいいと思いますが、参考になるのは我が国の科研費と呼ばれている科学研究費助成事業です。
科研費は、全国の大学や研究機関で行われている様々な研究活動に対して必要な資金を研究者に助成する仕組みの一つです。科研費制度では、研究者から応募された研究計画に対してピアレビューといって、それぞれの分野に精通した審査員による厳正な審査を経て採択が決定され、研究費が助成されることになります。この科研費に対しては、令和元年度以降毎年2370億円余の予算措置がなされていまして、令和2年度は、約10万4千件の応募があり、約2万9千件が採択されています。こうした採択状況をどう評価するかは見解が分かれるところでしょうが、大学が、直接学内研究者に配分することができる研究費が大幅に減少している昨今、この科研費が、我が国の科学研究を支える上で大きな役割を果たしていることは確かです。
そこでお尋ねです。本県の地域課題の解決に向けた研究支援を、「大学リーグやまぐち」の主要事業の一つに位置付け、取組を推進すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)