平成27年12月定例県議会【中小企業の経営支援について】(3)損失補償について

(3)損失補償について

県の制度融資は、融資のため原資となる資金を金融機関に預託するだけのものと、それに加えて県が損失補償をするものと二通りあります。制度融資は、多くの場合、信用保証協会の保証を利用しますので、制度融資を受けた事業者が返済できなくなった場合には、信用保証協会が関係の金融機関に対して代位弁済を行うことになります。その代位弁済のうち70%は保険で払われますが、残りの30%は保証協会の負担となります。県が行なう損失補償は、代位弁済におけるその信用保証協会負担分の7割を県が支出するものであります。ちなみに、平成26年度の県の決算においては、2億1千万円程が、その損失補償のために支出されています。
信用保証協会による保証は、金融機関が融資した資金が返済されない事態になることのリスクを回避することで、金融機関から事業者への資金の供給が、円滑に行われることを促すものでありますが、県による損失補償は、その信用保証協会が、代位弁済する場合の負担を大幅に軽減することで、資金融資への保証を後押しするものであります。
平成27年度の県の制度融資の資金は、21ありますが、その中で県が損失補償を設定しているのは経営安定資金、経営支援特別資金、経営力強化支援資金、事業再生支援資金の4つであります。今年度新規の制度融資として創設された創業応援資金も、女性活躍応援資金も、海外ビジネス展開支援資金も、損失補償の設定はされていません。
察するに、制度融資は、産業・経済の政策推進の観点から、重要と思われる事業への資金供給が円滑に行なわれるよう資金を確保して金融機関に提供することが基本かつ一般的な役割であり、損失補償は、企業の存続に係わる緊急性、必要性が高いと思われる融資資金に対して特別に許容される措置である、そう県は考えているように思われます。
私は、これまで制度融資に係わる損失補償を、県がそういう考え方で慎重に行なって来たことは、妥当であったと思うものです。ただ、これからは企業経営の破綻を回避するというマイナスを生じさせないための損失補償だけではなく、創業、新事業展開などのプラスを生みだすための前向きの損失補償があってもいいのではないかと考えます。具体的には、今年度に新規に設けられた創業応援資金や海外ビジネス展開支援資金等の制度融資も、損失補償が行なわれるようにしていいのではないかということであります。
これまで県が創設した制度融資の資金の中で、唯一前向きの損失補償の例としては、「ベンチャー企業成長支援資金」に対するものがあります。この制度融資資金は、平成18年度に創設されたもので、当初は10億円の融資枠を確保しておりましたが、平成21年度以降はそれが5億円となり、平成26年度までの9年間で60億円の融資枠が確保されたものの、融資実績は8件で、9800万円にとどまりました。また、この資金融資に伴う損失補償の支出は、9年間通してゼロであり、平成27年度からは、この資金への損失補償はなくなりました。
私は、ベンチャー企業成長支援資金が、損失補償まで行なうことにしていたにもかかわらず、その利活用が僅かであったことの分析は行なう必要があると考えますが、ベンチャー企業の育成支援に県が力を入れていることを示す意味において、この資金への損失補償は続けた方がよかったのではないかと思っています。
そこでお尋ねです。県の制度融資の資金の中で、創業、新事業展開、海外ビジネス展開など将来に向けてプラス効果を生みだす事業を支援するための資金も、県が産業経済の政策として重視する事業の推進に資するものには損失補償があっていいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

質問は以上ですが、今回の質問は、すべて信用保証協会の在り方と関連していますので、信用保証協会のことについて思っていることを、以下述べさせていただきます。
先日、12月4日の朝日新聞に、「地方金融機関 企業の育成が本分だ」との見出しの社説が掲載されました。先ず、その社説の核心部分と思われるところの記事を紹介致します。

不良債権問題を収束した今、(金融政策の)焦点は銀行経営そのものから、融資先企業や地域経済の再生に移ってきた。地元の工場や商店が事業の手をいっそう広げ新しいビジネスに挑み、より多くの雇用を地元で生まなければ、地域再生は実現しない。それには新しい投資資金が必要となり、金融機関に前向きな融資を奨励する行政が必要となる。

朝日の記事には批判的な私も、この社説には全く同感であります。この社説で指摘している、「金融機関に前向きな融資を奨励する行政」が、まさに制度融資でありますが、この融資は多くの場合、信用保証協会の保証を必要としていますので前向きな融資を実現していくためには、信用保証協会の保証の仕方も、前向きなものになっていくことが求められます。
先に、質問の第一のところで、育てる目的の制度融資、伸ばす目的の制度融資が、しっかり利活用されるためには、積極的な対応を促す意味で、銀行等の金融機関や信用保証協会との連携を緊密にする必要があると申し上げたのも、この社説と同趣旨であります。
繰り返しになりますが、事業者への制度融資の窓口となり、事業者の事情に見合った制度融資の資金を紹介し、事業者に資金融資を行うのは銀行等の金融機関です。ただ、その融資が行なわれることになるかどうかは、信用保証協会が保証を付けるかどうかにかかっています。その際、信用保証協会は、融資を求めている事業者の返済能力等を審査して保証するかどうか判断しますので、その審査の基準、方針、姿勢、考え方が、制度融資の利活用に大きく影響します。
私は、無原則に審査の基準を緩くしろと申すのではありませんが、その審査の基準や考え方が、あまり形式的、画一的にならないように、また慎重、几帳面過ぎないように望むものであります。
云わば、信用保証協会の保証業務は、基本的には安全運転よりも、積極運転が望ましく、ある程度のリスクは覚悟しながらも大胆に保証していく姿勢があっていいと思うものです。
信用保証協会の運営も、保証料等の収入で成り立っていることから、一定額の保証料収入が確保される必要があります。その保証料を、前向きの姿勢で審査し確保していく、山口県の信用保証協会は、そうあってほしいと願っています。
県は、制度融資の運用において、代位弁済の非保険分への損失補償において、保証料率低減のための補助において、そして役員理事は県知事が任命し、会長はその理事のうちから互選されますので人事において県信用保証協会の在り方に深くかかわっています。
こうしたことから、信用保証協会は、当然に県の意向を重視するものと思われます。つきましては、信用保証協会が、県下の中小企業を育て、支え、伸ばす方向で、これまで以上に前向きに、大胆に信用保証業務を遂行していくよう、県が指導性を発揮されることを要望して、今回の一般質問を終わります。

【回答】◎商工労働部長(阿野徹生君)

中小企業の経営支援についての二点のお尋ねにお答えします。
損失補償についてです。
損失補償は、制度融資が民間金融機関等の補完的役割を担うという観点から特に必要とされる資金で、信用リスクが高いものについて、信用保証協会が負担する代位弁済額の一部を補填することにより、信用保証協会に積極的な保証対応を促し、中小企業の金融の円滑化を図ることを目的としております。
こうした目的に沿って、政策性や信用リスクを考慮し、現在、経営安定資金を初めとする四つの資金に損失補償を設定しているところです。
損失補償の拡充につきましては、融資実行の円滑化を図る上では効果的であるものの、一方、当該資金が代位弁済となった場合には、損失の一部を県費で補填することになります。
したがいまして、お尋ねの創業応援資金や海外ビジネス展開資金等への損失補償の設定については、このような考え方のもと、金融情勢や中小企業を取り巻く環境の変化、企業ニーズに応じて、制度の見直しを行っていく中で、今後慎重に検討したいと考えております。