1. 食品の収去検査について
平成15年、食品安全行政にリスク分析の考えを導入した食品安全基本法が成立し、新しい食の安全への仕組みが構築されました。この「リスク分析」という考え方を基本とした仕組みは、リスク評価の役割を担う機関と、リスク管理の役割を担う機関とで構成されます。リスク評価の役割を担う機関は内閣府に設置された食品安全委員会で、どのくらいなら食べても安全かを評価します。その評価の基準となるのがADI(一日摂取許容量)で、人が毎日一生涯食べ続けても、健康に悪影響が出ないと考えられる残留農薬や添加物等の量を科学的知見に基づいて示します。そのリスク評価を踏まえてリスク管理機関の役割を担うのが、厚生労働省、農林水産省、消費者庁、環境省等で、食べても安全なようにルールを決め、監視を行います。
国内で生産され流通している農産物の食品としての安全性は、どのようにして確保されているかを見ますと、農林水産省は、農産物の残留農薬がADIの許容量を超えることが無いよう農薬取締法で農薬使用を規制し、農産物の生産プロセスにおけるリスク管理を行います。一方、消費者庁は食品衛生法に基づき、食品として流通している農産物において残留農薬の安全基準を策定し、厚生労働省それが守られているかを監視するリスク管理を行います。このように、食の安全に関するリスク評価を踏まえた生産、流通双方のリスク管理により我が国の農産物の食品としての安全は確保されているとみなされています。
こうした食の安全を守る仕組みの中において、県が担っている役割が、食品の収去検査です。厚生労働省がリスク管理機関として担っている食品を監視する役割は、輸入食品以外は、この県の収去検査に委ねられています。
収去検査は、県内で生産、製造、加工される食品及び県内で流通する食品について、食品衛生法に基づき、各保健所が計画的に収去し、保健所又は環境保健センターが検査を実施するとともに、結果及び措置などをホームページなどで公表しています。この収去検査の確実な実施は、安全基準を逸脱した食品の流通を阻止するだけではなく、食品の生産・流通に関係する人たちを自ずと安全基準順守へと向かわせる力となります。
食の安全を守る仕組みの中において、県が実施する収去検査は、県民の食の安全を守るという観点からも大事な業務であり、収去検査が行われていること自体が、県民の食の安全を担保していると考えられることから、収去検査は、将来的にも一定の業務水準が維持されるべきだと考えます。こう申し上げるのは、近年、本県の収去検査の年間検体数が減少してきているからです。
どれほどの年間検体数であれば、収去検査の目的を果たしていると言えるかについて、正解はないと思います。ただ、サンプル調査による統計が有意性を持つためには、サンプル数は1000以上あることが望ましいといわれています。私は、そうしたことにも鑑み、本県における食品の収去検査の年間検体数は、1000の水準は維持していくべきだと考えています。
本県の収去検査の年間検体数は、平成29年度までは3000以上であったのが、令和6年度には1165と3分の1まで減少し、さらに令和7年度の収去検査は677まで減少する計画となっています。
そこでお尋ねです。先ず、本県の食品の収去検査は、どういう方針に基づいて計画しているのかお伺いいたします。次に、収去検査の年間検体数は、1000以上の水準は維持すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
→(答弁)