令和7年6月定例県議会 県立美術館の役割と県美展について

本県の県立美術館の運営事業、就中山口県美術展覧会いわゆる県美展の在り方については、2つの点から、現状のままでいいのかその妥当性を検証し、見直す必要があるのではないかと思っています。その第一点は、優れた美術創作の才能を持った人材を見出し育てる観点からです。第二点は、広く県民の美的表現力の向上に資するという観点からです。

県美展は、山口県立美術館が開館した昭和54年には出品数が1730あったのが、令和6年度は296と6分の1に減少しています。県美展は従来、日本画・洋画・彫刻・工芸・デザイン等7部門制で公募し、審査を行っていましたが、平成6年から、その部門別公募を完全に廃止し、作者の出自も作品のジャンルも問わず全部門作品を一括して審査する方式に改められました。そのことがどう影響したのかわかりませんが、平成9年度頃からはおおむね県美展への出品数は400代で推移し、コロナの影響があった令和4年度には246まで減少しました。その後少し回復傾向にあり令和6年度は300近い出品数になっています。

出品数が多いかどうかが、県美展の評価を定めるものではないと思いますが、県立美術館による県美展である限り、多くの県民から出品があることが望ましいことは言うまでもありません。

そこで、私なりに県立美術館開館当時の県美展と比べて、現在出品数が大きく減少しているのは、どうしてだろうかと考えて至った思いがあります。

それは、今日の時代における先端的な美の表現を実現しているとみなされる作品が評価され、絵画・書道・陶芸等それぞれのジャンルにおいて時代を超えて追求されてきた理想型若しくは完成型と目される美の表現を志向する作品は評価されないのではないか、例えば日本画でいえば、東山魁夷の作品みたいなものは評価されないのではないか、また書道でいえば、書聖と称された王羲之(おうぎし)の書体に迫ろうとする書は評価されないのではないか、そういう県美展になっているのではないかということです。

第75回2022年の県美展において審査員を務められた千宗屋氏は、審査講評において「萩焼など工芸にもゆかりの深い土地柄、そのジャンルの出品が少ないことが意外で、今後より積極的な参加を期待したい。」と述べておられます。山口県を代表する芸術文化である萩焼、陶芸からの作品出品が少ないというのも、その作家の方々が、私と同様の見方を県美展に対してしているからではないでしょうか。

ジャンルをなくしての県美展審査は、今日の日本におけるある意味代表的な美術作家、美術批評家、美術館運営経験者等から3人を選任して、その審査員のよる公開審査として行われ、いろいろなしがらみなしに、表現されている美それ自体の価値を評価する審査方式ということで、そうしたやり方もありと思います。ただ問題は、3人の審査員がいかに優れた美に対する鑑識眼をもっているにせよ、すべての分野に通ずることは困難と思われることです。

私は、現在の県美展の審査方式は、それはそれで継続されていいと思いますが、併せて、それぞれのジャンルにおいて時代を超えて追求されてきた美の表現の方向性に沿った作品も評価される県美展にしていくことが必要と考えます。

数学者でありエッセイストでもある藤原正彦氏は、その著書「国家の品格」で、天才の出る風土の条件として、美が存在する土地であることを挙げています。山口県は、これまで歴史上多くの偉大な人材を輩出してきましたが、今後もそうであり続けるためには、県民の美意識が豊かになり高められていくことも大事と思われ、そのことにおいて県立美術館が果たす役割に期待するものです。

そこで、三点お尋ねいたします。第一点は、県立美術館が県政において果たす役割をどう考えておられるのかお伺いいたします。第二点は、県立美術館は、今後どういう方針のもとの運営事業を行っていくお考えなのかお伺いいたします。第三点は、県美展は、この質問の冒頭に申しましたように現在の在り方の妥当性を検証し、見直す必要があると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

→(答弁