答弁 (2)県の電力行政について

1 電力対策について

 (2) 県の電力行政について【理事答弁】

県の電力行政についてのお尋ねにお答えいたします。

火力発電については、国の第6次エネルギー基本計画において、排出される二酸化炭素の回収・貯留等による脱炭素化や、お示しの石炭ガス化複合発電などの技術開発等を推進していくとされています。

一方で、原子力発電についても、運転時に温室効果ガスの排出がないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与するベースロード電源として、必要な規模を持続的に活用していくとされています。

このように次世代の高効率石炭火力発電や原子力発電は、国のエネルギー政策において、その役割や重要性がしっかりと位置付けられています。

こうした中、上関原発については、重要電源開発地点指定は引き続き有効であり、解除する考えはないとの見解が国から示されており、国のエネルギー政策上の位置付けは現在も変わっていないと認識しています。
また、原発立地によるまちづくりを進めたいという地元上関町の政策選択は、現在も変わりありません。

上関原発建設計画については、このように事情の変化がない中で、御提案のあった計画変更について県が役割を果たすことは考えておらず、県としては、これまで同様、地元上関町の政策選択や国のエネルギー政策を尊重するという立場で対応してまいります。

令和5年2月定例県議会 電力対策について(電気料金高騰の影響と対策)

1. 電力対策について

(1) 電気料金高騰の影響と対策

電気料金の高騰が、県民生活と県内企業の経営を直撃しています。平成28年に電力小売が全面的に自由化されまして7年が経過しようとしていますが、中国エリアにおける令和4年10月の販売電力量において新電力の占める割合は1割前後にとどまり、中国電力が一般家庭向けの低圧電力においては87%、企業等向けの高圧・特別高圧電力においては91%を占めています。従いまして、中国電力のデータに基づいて電気料金高騰の実情を先ず明らかにしたいと思います。

先ず、1月当たり260kWh使用の一般家庭(4人家族で非オール電化の家庭想定)をモデルケースとした場合、販売電力量の68%を占めている自由料金で見ますと、令和4年1月は、月額7542円であったのが1年後の本年1月は11058円となり47%値上がりしています。一方、燃料費調整による上限が設けられているため電気料金の値上げに制限がある規制料金の場合は、同様モデルケースの一般家庭で令和4年1月は7589円であったのが、本年の1月は8029円で値上率は6%程に留まっています。

中国電力は、本年4月からの新料金では一般家庭向けの低圧電力の料金は、自由化料金も規制料金もほぼ同一水準にする方向で料金設定を行っているため、自由化料金はわずかですが値下げとなり、規制料金は30%程の値上げとなる見通しです。このため、モデルケースの一般家庭の本年4月の電気料金は、いずれも10400円前後となり昨年1月から3000円程値上がりしたことになりますが、同ケースで令和3年1月の料金は6406円ですのでそれと比すれば4000円強の値上がりです。ただ、昨年10月に閣議決定された「電気・ガス価格激変緩和対策」により、令和5年1月から9月までの使用分において低圧の電気料金は、1kWh7円、9月分は3.5円差し引かれることになりますので、モデルケースの一般家庭においては1820円の値引きとなるものの、年金生活者や子育て世代で家計のやりくりに苦慮している家庭等にとっては、生活が苦しくなる厳しい電気料金の値上げであることに変わりはありません。

次に、企業等の産業用高圧電力使用の場合、6KV高圧電力で契約電力1000kW、月間電力量280千kWhのモデルケースでは、令和4年1月は電気料金が516万円であったのが、本年4月からの新料金では976万円となる予定です。ただ、高圧電力の場合も本年1月から9月までの使用分の料金については、国の価格激変緩和対策により1kWh当たり3.5円、9月分は1.8円差し引かれますので、そのことを考慮しましても878万円となり、令和4年1月に比して70%の値上げであります。こうした電気料金の高騰は、企業の経営努力の範囲を超えていて事業継続の見通しが立たなくなると、企業経営者から悲鳴に近い訴えの声を聴いています。

電気料金高騰の要因は、燃料価格の上昇と高止まりで、その背景の一つにはロシアのウクライナ侵略を受けて、世界で液化天然ガス(LNG)や石炭といった資源を確保する動きが活発化していることがあるようです。その収束の見通しは不透明でありますが、そうした状況の中において、県民生活と企業経営を、どう守っていくのか政治の責任が問われています。

そこでお尋ねです。先ず、県は、電気料金高騰の県民生活や企業経営への影響をどう見ているのかお伺いいたします。次に、県民の生活を守り企業の事業継続を図っていくために電気料金高騰への対策が求められていますが、このことにどう取り組むのかご所見をお伺いいたします。

→(知事答弁

 

 

 

 

令和5年2月定例県議会 電力対策について(県の電力行政)

1.電力対策について

(2)県の電力行政

私は、主たる役割が上関原発建設計画に係ることである県の電力行政の現状を終わらせる決断の時を、本県は迎えていると考えています。

これまで何度も議会において指摘してきたところでありますが、将来にわたって上関原発が建設されることはあり得ません。民主党の菅政権の時に閣議決定された「エネルギー基本計画」は、2020年までに我が国の総発電の50%以上をゼロ・エミッション電源にするため原子力の新増設を少なくとも14基以上とする内容で、その計画において建設が位置付けられていたのが上関原発でした。その後、東日本大震災が発生し福島第一原発が津波に襲われて陥った過酷事故は、偶然の結果が良い方向に向いたため東日本壊滅という最悪事態は回避することができましたが、国の存立自体を脅かすリスクを原発が内包していることが明らかとなりました。このため、原発新増設の計画は改められ、その後のエネルギー基本計画においては「原発への依存度は可能な限り低減していく」方針が明記されてきました。こうした国のエネルギー政策の延長線上に上関原発の建設はあり得ないことは明白です。

私は、昨年の2月県議会で、今後の我が国のエネルギー政策において原発が担う役割は補完的なものとの見方を示しました。現岸田政権は、原発推進に転じたかのように報じられていますが、その中身は既設原発の再稼働と運転期間の延長が主であって原発の補完的役割をやや強化して延長しようというものであります。従って、上関原発の建設は、岸田政権による原発推進の視野には入っていないと見て間違いないと思われます。

資源エネルギー庁の原子力国際戦略検討小委員会の委員を務めた経歴を持つ評論家市川真一氏は、原子力産業新聞に昨年11月、「原子力利用に一歩踏み出した岸田政権」と題して寄稿し、「政府、電力業界にとって残された課題は、福島第一原子力発電所の事故前に既に建設の初期段階にあった東京電力・東通1号機、建設準備中だった日本原電・敦賀3・4号機、東北電力・東通2号機、中国電力・上関1・2号機、九州電力・川内3号機、計7基について結論を出すことだろう。」と指摘しています。そして、「上関原発1・2号機、東通原発1・2号機の4基は、炉型が沸騰水型軽水炉(ABWR)で、福島第一とベースは同一の沸騰水型であることも論点になる可能性は否定できない。」と述べ、上関原発建設計画が国民の理解を得ることの困難さを示唆しています。

その上で、岸田総理が原子力の活用継続に一歩踏み込んだことを評価し、次のように結んでいます。「再生可能エネルギーと原子力、水素(アンモニア)を組み合わせ、且つ使用を避けられない化石燃料については、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)などの技術を活用してカーボンニュートラルを達成する・・・これが次世代の日本のエネルギー戦略の基本になる道筋がようやく見えてきたと言えるだろう。」と。

中国5県のエリアでこの道筋を展望した場合、上関に建設されるべきは原発ではなく将来アンモニア発電への移行も可能なCO2回収型の石炭ガス化複合発電(IGCC)もしくは同様CO2回収型の石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)であると考えます。中国電力は、広島県大崎上島町の瀬戸内海の島でこのIGCC、IGFCの実用化に向けて実証実験を行っており、その成果を同じ瀬戸内海に面する上関で生かすことが望ましいと考えます。

中国エリアにおける原子力発電は、島根2号機の再稼働が認められ、既に建設が完成している島根3号機の営業運転が開始されれば充分で、あえて世論の強い反発を押し切ってまで上関原発を建設する選択は、もはやあり得ないと見ています。

上関にCO2回収型カーボンフリーのIGCC若しくはIGFCを建設した場合、将来的には水素のエネルギーキャリアであるアンモニアの混焼、更にはアンモニア専焼の発電への移行も想定されます。燃やしてもCO2を出さないことから脱炭素の切り札としての期待が高まっているアンモニア発電が、上関において実現すれば中国エリアにおける電力供給は、主に再生可能エネルギーと原子力そしてカーボンフリーの火力により行われることになり、カーボンニュートラルの達成に大きく近づくことになります。

本県は、瀬戸内コンビナートにおいて全国の1割の水素を生成する水素先進県であり、そのことを本県産業の強みとして活用する施策の推進を図っていますが、水素のエネルギーキャリアであるアンモニアによる発電への活用も検討されていいテーマであると考えます。

以上申し上げたことを踏まえ、お尋ねいたします。本県の電力行政は、上関原発建設計画を、CO2回収型の石炭ガス化複合発電(IGCC)若しくは石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)に変更する方向でリーダーシップを発揮し役割を果たすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

→(理事答弁

 

 

 

 

答弁 (1) 県の役割について

1 公共交通政策について

 (1) 県の役割について【知事答弁】

合志議員の御質問のうち、私からは、公共交通政策に関する県の役割についての3点のお尋ねにまとめてお答えします。

バスや鉄道などの地域公共交通は、通勤や通学、通院など県民の日常生活はもとより、地域活性化や観光振興などの面からも大変重要な役割を果たしています。

しかしながら、人口減少や少子高齢化の進展等に加え、長引くコロナ禍の影響により、本県においては、公共交通機関の利用者が減少し、バス路線の廃止や減便が進行するなど、地域公共交通を取り巻く環境は極めて厳しい状況にあります。

私は、「安心で希望と活力に満ちた山口県」を築いていくためには、その基盤をなす地域公共交通の維持・活性化が、大変重要な政策課題であると認識しています。
この政策の推進に当たっては、県が、地域の実情を最も把握し、まちづくりの主体でもある市町に対する適切な指導・助言を行うとともに、広域的な公共交通の維持・確保や利便性向上に向けた取組を一層促進する役割をしっかりと果たす必要があると考えています。

こうした考えの下、私は、「やまぐち未来維新プラン」において、「交流を活発化する交通ネットワークの機能強化」や「快適で住みやすい生活環境づくりの推進」を重点施策に掲げ、交流の拡大と生活交通の維持・活性化の両面から、総合的な交通政策を積極的に推進していくこととしています。

具体的には、交流の拡大に向けた一層の利便性の向上を図るため、バス等における交通系ICカードの導入をはじめ、デジタル技術を活用した新たなモビリティサービスの導入や公共交通情報のデジタル化・オープンデータ化などの取組を推進してまいります。

また、生活交通の維持・活性化を図るため、地域住民の日常生活に必要な生活バス路線や離島航路の確保対策に取り組むとともに、地方ローカル線の活性化に向けた利用促進などの取組を推進していくこととしています。

私は、今後とも、国や市町、交通事業者等と連携し、地域公共交通の維持・活性化に向け、積極的に取り組んでまいります。

その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

答弁 (2) 山口県地域公共交通計画の策定について

1 公共交通政策について

 (2) 山口県地域公共交通計画の策定について【部長答弁】

公共交通政策に関する数点のお尋ねのうち、まず、山口県地域公共交通計画の策定についてお答えします。

令和2年に改正された地域公共交通活性化再生法では、持続可能な運送サービスの提供を確保するため、地方公共団体が交通事業者等と連携して、最新技術等も活用しつつ、既存の公共交通サービスの改善・充実を徹底することが必要とされています。

このため県では、昨年3月に、法の趣旨に沿った法定計画の役割を担うものとして学識経験者、国や市町、交通事業者の連携のもと、多様化する地域公共交通の課題解決に向けた指針となる「新たな地域交通モデル形成に関する取組方針」を策定したところです。

この取組方針には、法定計画に定めるべき地域公共交通の活性化及び再生に関する基本的な方針としての内容を盛り込んでおり、県内市町とその内容を共有しながら、持続可能で利便性の高い地域公共交通の実現に向けて取り組んでいるところです。

県としては、地域公共交通を取り巻く環境変化に的確に対応しながら、引き続きこの取組方針が法の趣旨に沿った法定計画としての機能を十分に果たしていくことを基本に、今後とも必要な改訂や検討を行ってまいります。

答弁 (3) コミュニティ交通への支援について

1 公共交通政策について

 (3) コミュニティ交通への支援について【部長答弁】

コミュニティ交通への支援についての3点のお尋ねにお答えします。

まず、コミュニティ交通への県の支援についてです。
地域住民の日常生活を支える身近な移動手段として、コミュニティ交通の導入は有効な取組であり、各市町において、その運行への支援が行われているところです。

県としては、国制度に準じ、市町が新たにコミュニティ交通の運行を開始する場合に、その運行経費の一部を支援しているところであり、今後とも、県内でコミュニティ交通の導入が一層進むよう、市町の取組を支援してまいります。

次に、タクシーに対するICカードの導入支援についてです。
タクシーにおけるICカードやQRコード等によるキャッシュレス決済の導入については、これまでも国による補助制度などにより進められているところです。

県としても、感染防止対策の観点から、タクシー事業者がキャッシュレス決済を導入する経費に対して支援を行ってきたところであり、こうした取組により、現在、県内タクシー車両の約8割がキャッシュレス決済に対応しています。

次に、既に運行しているコミュニティ交通に対する補助に関する国への要望についてです。
県では、全国知事会等を通じて、国に対し、コミュニティ交通への補助も含め、地域の生活交通を維持する取組に対する必要な財政支援を行うよう要望しているところであり、今後とも、補助対象の拡大等に向け、国への働きかけを行ってまいります。

 

 

答弁 (4) コロナ禍の公共交通事業への影響と対策について

1 公共交通政策について

 (4) コロナ禍の公共交通事業への影響と対策について【部長答弁】

コロナ禍の公共交通事業への影響と対策についての2点のお尋ねにお答えします。

まず、本県におけるコロナ禍の公共交通事業への影響についてです。
コロナ禍の長期化に伴い、本県においても、バスやタクシーをはじめ地域公共交通の利用者が著しく減少し、交通事業者に甚大な影響を与えています。

今年度に入り、利用状況はバス・タクシー・フェリー・地域鉄道ともに一定の回復傾向にはあるものの、コロナ禍前の令和元年度と比べると、6割から7割程度の回復にとどまっている状況です。

こうした状況に加え、燃料価格高騰等による影響が事業者の経営を大きく圧迫しており、地域公共交通は依然として厳しい状況が続いているものと認識しています。
次に、公共交通事業者が事業継続を図っていくための支援についてです。

県では、厳しい経営環境に置かれている公共交通事業者の事業継続を図るため、これまで、事業者が実施する感染症対策の取組に対する支援や、原油価格高騰等の影響により大きな負担となっている燃料費や車両等の維持経費への支援を行っているところです。

また、資金繰り支援としては、県制度融資の経営安定資金に係る融資枠確保や、原油価格の高騰により売上や利益が減少している中小企業の経営の安定を図るための資金を創設するなど、金融支援の充実を図っています。

さらに、バスやタクシー事業者の運転手不足の解消を図るため、山口労働局や交通事業者等と連携して就職相談会を開催するなど、地域公共交通の担い手確保に取り組んでいます。

こうした取組に加え、全国知事会等を通じ、これまでも国に対して消費喚起策や資金繰り支援、さらに雇用維持・確保対策などの実施について要望をしているところです。

県としては、今後とも、国や市町と連携し、コロナ禍により深刻な影響を受けている公共交通事業者の事業継続が図られるよう、必要な支援に取り組んでまいります。

 

 

答弁 (5) 公共交通政策における大学との連携について

1 公共交通政策について

 (5) 公共交通政策における大学との連携について【部長答弁】

公共交通政策における大学との連携についてのお尋ねにお答えします。
地域の実情に応じ、将来にわたって持続可能な公共交通を実現するには、急速に進展するデジタル技術の活用や、新たなモビリティサービスの導入等、様々な取組を効果的に推進していく必要があり、そのためには、専門的知見を有する大学等との連携が重要です。

このため、県では、多様化する地域公共交通の課題解決を図るための検討委員会に、学識経験者として山口大学大学院教授に参画していただき、専門的な立場からの指導・助言を受けているところです。

また、県と交通事業者の連携によるバスロケーションシステムの実証事業に山口東京理科大学が参画するとともに、路線バス検索システムの構築に向けて、宇部市交通局と宇部高専との共同研究が行われるなど、大学等と連携した取組が進んでいます。

県としては、今後とも、公共交通政策の効果的な推進を図るため、専門的知見を有する大学等との連携・協働による取組を積極的に推進してまいります。

 

 

令和4年11月定例県議会 (1)公共交通政策(県の役割)

1.公共交通政策

(1)県の役割

マイカーの普及が進んでいる今日の時代においても、バス・電車・鉄道・タクシー等の公共交通は、地域社会にとって必要不可欠であります。18歳未満の青少年は自動車の免許を持てませんし、高齢者で75才以上になりますと自動車の免許を持たない人の割合は本県では64%でして、県の総人口において自動車の免許を持たない人の割合は32.4%です。こういう人たちにとって生活上必要な移動手段としての公共交通を適切に確保していくことは、自動車による移動のために道路を整備していくのと同様に、政治行政が果たしていくべき責務であります。

 

我が国では国鉄の民営化もあり、どちらかというと交通に関する事業は、公営ではなく民営で行うのが妥当と考えられ、公営だった地方バスもそのほとんどが民営化されるか民間事業者に移譲されてきました。一方、車の保有も一軒に1台から一人に1台へと増加が続く中、公共交通の利用は減少が続き、公共交通を守っていくためには公的関与が求められるようになり、そのための法的フレームとして国は、平成19年に地域公共交通活性化再生法を、平成25年には交通政策基本法を制定しました。

この交通政策基本法は、第2条において「交通に関する施策の推進は、国民その他の者の交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要であるという基本的認識の下に行われなければならない。」と明記し、すべての国民の交通に対する需要の充足を重視する方向で交通に関する施策を推進することを基本理念の一つとして位置づけ、国や地方公共団体の責務を定めています。

地方公共団体とは都道府県及び市町村のことですが、平成の時代におけるこうした交通に関する法の制定においては、公共交通に関する地方公共団体の施策は、主に住民に密着している市町村が担うものとの想定されていたように思われます。それが令和の時代となり令和2年に改正された地域公共交通活性化再生法においては、市町村と共に都道府県の役割を重視する方向での法改正が図られました。このことは、公共交通はネットワークとして個別最適ではなく広域的に全体最適の在り方が追求されるべきと考えられることから、妥当な方向での法改正だと見ています。こうした法改正を受けて、県も県下の市町と共同の当事者として、望ましい公共交通の確立に向けて、どう関与し役割を果たしていくのか明確にしていかなければなりません。

そこで、3点お尋ねいたします。先ず、公共交通政策の県政における位置づけについてであります。すべての県民に、交通に対する基本的需要の充足が図られるよう公共交通を確保整備していくことは、道路整備と同様に県政における重要な政策課題であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。次に、県民にとって望ましい公共交通の確立に向けて、県は、どのように関与し役割を果たしていくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

第3点は、やまぐち未来維新プランにおいて本県の公共交通政策の方針を示すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(知事答弁)

 

 

 

 

令和4年11月定例県議会 (2)山口県地域公共交通計画の策定

1.公共交通政策

(2)山口県地域公共交通計画の策定

次に、先の質問と関連することでありますが県として地域公共交通計画、即ち山口県地域公共交通計画の策定に取り組むべきとの趣旨で質問を行います。

私は、令和元年9月県議会で「交通政策について」ということで一般質問を行い、「交通はネットワークとして機能するものであり、全体最適が図られるべきことに留意すれば、先ず、県全体の大綱的な交通計画があって、それと整合する形で各市町の個別的交通計画が作成されるというのが、望ましい。」ということで、山口県総合交通計画の策定に取り組むことを提案いたしました。これに対し、「(県下の)各市における計画は、隣接市町との交通ネットワークについても考慮し、策定されていることから、全県的な交通ネットワークの形成を目的に、山口県総合交通計画を策定することは考えていない。」旨の答弁がありました。

この質問当時は、令和2年の地域公共交通活性化再生法の改正以前でありましたので、国は、市町村に対しては地域公共交通網形成計画の策定を求めていましたが、都道府県に対してはそのことを求めていませんでした。従って、そのことを踏まえての答弁であったと理解したところです。それが、令和2年の改正で、地域公共交通網形成計画は、地域公共交通計画と名称も改められ、より実効性ある計画として策定することが、全ての地方公共団体に努力義務化されました。地方公共団体は、都道府県と市町村のことでありますので、山口県も県としての地域公共交通計画の策定に取り組むことが努力義務としてあることになりました。このことを受けて山口県地域公共交通計画の策定に取り組むかどうか村岡知事の判断が問われることになりますが、私は、是非取り組むべきだと考えます。以下、その理由を申し上げます。

その1は、国の公共交通に関する施策が、都道府県にも公共交通計画策定の努力義務を課し、そうすることが望ましいとの考えに立って推進されるようになってきていることであります。このことは、令和2年の活性化再生法の改正に伴い、国交省が今年の3月に示した「地域公共交通と乗合バスの補助制度の連動化に関する解説」においても明らかであります。この解説は、「今後、(乗合バスの運行費等に対する)補助事業の活用のためには、補助系統の地域の公共交通における位置付けや補助事業の必要性等について、原則補助系統が跨がるすべての市町村の地域公共交通計画又は都道府県の地域公共交通計画に記載が必要であり、〈中略〉特に、幹線系統については都道府県の計画への位置付けも想定しており、今後は都道府県による計画作成も重要となります。」と述べています。

その2は、県づくりと県の公共交通計画は密接不可分と思われるからです。
私は、先般11月10日、岡山市に両備グループ代表の小嶋光信氏を訪ねました。両備グループは、「交通・物流部門」「ICT部門」「まちづくり部門」等々44社1組合から成る岡山県を代表する企業グループです。そのグループ代表の小嶋氏は、自らバス・路面電車・タクシー等の公共交通の事業経営の当たるとともに、地方交通再生の請負人と言われるほどに、全国各地の危機に瀕したローカル鉄道や地方バス等の再生を成し遂げる一方、国における交通政策基本法や地域公共交通活性化再生法の制定・改正にも大きな影響を与え貢献しています。また、公共交通に関する優れた研究者、有識者、実務者を構成メンバーとする地域公共交通総合研究所を設立して自ら代表となり,公共に関する調査・分析・コンサルティング等を行うとともに、同研究会のメンバーは、国における交通政策の検討会等の委員になり寄与しています。

私は、親しくしている方が小嶋氏と慶應義塾大学の同窓で友人であることから小嶋代表を知り、訪ねまして、両備グループ本部の応接室で話を伺いました。そこで、小嶋代表が強調されたことの一つは、公共交通は、単に生活上必要な移動を確保するための手段の域にとどまるのではなく、住民の生活の質を高める地域づくり、まちづくりに資するものでなければならないということでした。そして、欧州連合(EU)が策定した都市交通計画の指針が、「脱炭素」「国民の健康」「都市の交通安全」を政策目標に掲げ、生活の質(QoL)に焦点をあてた人に優しい計画になっていることを紹介され、日本もこれに学び、その上で日本型の望ましい公共交通の確立を目指すべき旨、語っておられました。

平成19年に制定され、平成26年及び令和2年に改正された「地域公共交通活性化再生法」は、まちづくり・地域づくりと公共交通の連携を実効あるものにするために制度環境を整えてきています。そこで、欧州での取り組みや日本各地の先進事例等も参考にして、本県がある意味全国のモデルとなる地域公共交通計画の策定に取り組むことを期待するものです。

理由その3は、県の公共交通計画において本県のローカル鉄道を明確に位置付けることが、そのローカル鉄道を守り活用することに繋がると思われることです。

ご案内のようにJR西日本は、今年の4月に輸送密度2千人未満の線区においては、地域と輸送サービスの確保に関する議論や検討を行う方針を公表しました。また、7月には国の有識者検討会が、輸送密度が千人未満のローカル線は、利便性及び持続可能性が損なわれている危機的な状況の線区であるとして、国の主体的な関与により、都道府県を含む沿線自治体、鉄道事業者等の関係者からなる協議会を設置し、「廃止ありき」「存続ありき」といった前提を置かずに協議する枠組みを創設することが適当である旨、提言いたしました。

本県では、輸送密度が千人未満の線区は、山陰線の益田~長門市区間と長門市~小串・仙崎区間、山口線の宮野~津和野区間、小野田線の小野田~居能区間、美祢線の厚狭~長門市区間の4路線5区間ありまして、提言に沿って法整備が図られますと、これらの線区については、存廃も含め今後の在り方に関して議論を深め方針を見出すための公的な協議会が設けられることが予想されます。

こうした事態を受けて、沿線自治体及び山口県市長会は、県に対してJRローカル線の維持・確保に向けた支援を要望し、県のリーダーシップへの期待を表明しています。また、有識者検討会は提言の中で、国・地方自治体・鉄道事業者の責務について触れ、「特に、都道府県については、各市町村の区域を超えた広域的な見地から、一層、大きな役割を果たすべきである。」と指摘しております。

このような期待や要請に応え役割を果たすには、県は、公共交通に関して調整の域に甘んずるのではなく、全体的な構想、ヴィジョン、計画を持つ必要があるのではないでしょうか。

以上申し上げました理由から、山口県地域公共交通計画の策定に取り組むべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

→(部長答弁