平成21年11月定例県議会 (1)フードバレーについて

(1)フードバレーについて

さきの総選挙で圧倒的な勝利を得た民主党を中心とした連立政権、鳩山政権が誕生いたしました。私が見たところ、鳩山政権、最も輝いておりましたのは、鳩山首相の所信表明演説までで、後は、やはり現実の課題と格闘、苦闘しているなと、それなりの支持は保っているけれども、評価する声と批判する声と相半ばしてきているなという感を持っているところであります。
さて、民主党が掲げております看板は、国民の生活が第一であります。ただ、今民主党が問われているのは、国民の生活が第一の政党なのか、それとも、選挙が第一の政党なのか、それが、まさしく今問われているのではないかなという感がいたします。
真に国民生活が第一の政党というのであれば、少なくとも、二十一世紀前半の一億数千万の国民生活と日本の国の命運がかかっている、そしてまた、同様に、二十一世紀前半のアジア太平洋地域の平和の基礎となる日米同盟が、揺るぎないものになるよう責任ある対応をすべきだと考えているところであります。
さて、今我が国は、格差の問題、雇用の問題、景気の問題、財政の問題と、さまざまな困難な問題に直面しております。私は、こういう困難な問題を解決する根本的な策は、グローバル経済の中で、第一次産業をいかにして成長産業にしていくのかというところにあると見ております。そういう観点から、このたびも、一般質問をさせていただきます。
それでは、早速一般質問に入ります。

日本は瑞穂の国であり、日本農業は我が国の基幹産業として世界市場で成長していく、私には、そういう確信があります。そして、そのことを実現していくことが、我が国の農業政策、すなわち、農政の目的でなければならないと考えます。
ところで、世界市場で成長していく日本農業と申しますと、「それは、とても無理」という声が返ってきそうであります。今日、日本農業弱小観が、しっかり定着しているからであります。しかし、この日本農業弱小観は、本当にそうなのでしょうか。
最近、農業問題について、鋭い的確な指摘と発言で注目されている本県山口市小郡出身の農業ジャーナリスト浅川芳裕氏は、日本農業弱小観は根拠がなく、我が国が世界の農業大国であることを、国際連合食糧農業機関(FAO)の具体的なデータに基づいて明らかにしております。
彼は、我が国農業の弱さを裏づけ、国民の不安を増幅させる大前提としてある、日本は、世界最大の食糧輸入国で、食糧の海外依存が際立った国であるとの認識は、間違っていると主張します。
二○○四年の先進五カ国の農産物輸入額を比べた場合、一位が米国の五百九十九億ドル、次いでドイツの五百八億ドル、日本はイギリスと三位同列の四百十五億ドルで、フランスの三百四十六億ドルという順になること。
実際の依存度をあらわすと見られる国民一人当たりの年間農産物輸入額を試算すると、一位イギリス六百九十ドル、続いてドイツ六百十七ドル、フランス五百五十七ドル、日本はそれらのほぼ半分の三百二十四ドルで、むしろ、一番少ない米国二百十四ドルのほうに近いこと。
さらに、対GDP農産物輸入比率を見ても、全く同順で、イギリス一・九%、ドイツ一・八%、フランス一・七%、日本○・九%、米国○・五%となっており、日本の国力に占める輸入食糧負担は決して多くないと言えること等が、彼の主張を裏づけています。
そして、農産物を生産額で見ると、日本の七百九十三億ドルは、フランス、ドイツ、イギリスを初めとするEU諸国のどこよりも多く、農業大国と言われるロシア二百十一億ドル、オーストラリア二百三億ドルの三倍超で、世界の中で日本は、農民人口が大多数を占める一位、二位の中国、インド、三位の米国、四位の農業立国ブラジルに次ぐ世界五位の農業大国であるのです。
生産量から見ても世界トップレベルの個別の品目は少なくなく、ホウレンソウ世界三位、イチゴ六位、キュウリ七位などトップテン入りするものもあれば、果物の王様リンゴで十四位、欧州メジャー作物ジャガイモでさえ十九位と健闘しており、四割減反の米は世界十位であります。生産額、生産量いずれにおいても日本が農業大国であることを示す、浅川氏の以上の指摘は説得力があります。
私たちは、日本農業弱小観は払拭して、日本農業の底力に着目し、その大きな可能性に自信を持ち、世界市場においてこれを成長させていく方向を目指すべきなのではないでしょうか。
さて、農業の原点は、言うまでもなく、健康な体をつくる命の源としての食糧を生産し供給することであります。この原点をしっかり踏まえた上で、これからの農業は、単に農産物を生産する第一次産業としての農業にとどまらず、第二次産業としての加工、第三次産業としての流通を包含し、食にかかわるさまざまな分野を広いすそ野として持つ、総合産業としての農業に進化していかなければなりません。
そうした認識に立って、事業経営体としての農業を確立し、生産技術と事業経営の両面において、その高度化を絶えず図っていく農業が、二十一世紀の日本農業を担い、成長させていくことになると考えます。
農業の原点を踏まえ、総合産業としての農業の高度化を、技術と経営の両面から絶えず図り成長していく農業、そういう意味での成長産業としての農業を確立し、本県農業が基幹産業として県勢振興の役割を果たすようになることを期待し、以下御所見をお伺いいたします。
まず第一は、米輸出への取り組みについてであります。
日本の主要作物である米の需要拡大が、我が国農業活性化の最大の課題であります。米の需要は長期的に減少してきましたが、直近では減少に歯どめがかかり、二○○七年七月から二○○八年六月の一年間で八百五十五万トンと、前年に比べて十七万トン(二○%)増加し、米の国民一人当たり年間消費量もピーク時の半分近くまで減少してきていたのが、二○○七年度は、○・四キログラムの増加となりました。
これは、小麦製品を含めた食料品全般の価格が上昇する中で、比較的価格が安定している米に需要がシフトしたためと見られておりますが、我が国が人口減少社会に移行したことを考えますと、将来を展望しての抜本的な需要拡大策は、米の用途を主食以外にも多方面に広げていくこととあわせ、海外に販路を開拓し需要をつくり出していくことであります。
国は、現在農林水産物・食品の輸出促進に力を入れており、平成二十五年度までに一兆円規模の輸出を目指すとしておりますが、その中で、二○○八年における米の輸出数量は千二百九十四トンで、ここ三年間でほぼ倍になっています。
これを国別に見ますと、輸出総量では台湾が四百五十三トンと最大の輸出先となっており、以下、香港三百四十一トン、シンガポール百七十三トン、中国九十トンと続いております。
本県も、平成十九年十一月から、JAあぶらんど萩産のコシヒカリを「維新伝心米」という商品名で台湾に輸出し、以来本年八月末までの二年弱で輸出総量は三十トンに上っております。
私は、台湾への米輸出を実現した関係者の努力を高く評価し、今後これが一層増大していくことを期待するものですが、台湾へは多数の産地から輸出されており、日本産米対象の市場は飽和状態にあると見られていまして、新たな海外の販路として中国への米輸出の期待が高まります。
しかし、膨大な人口を擁し、目覚ましい経済成長で富裕層も増大している中国には、日本産米の需要は相当にあると思われるものの、二○○八年の中国への米輸出量は九十トンで、台湾の五分の一の微々たるものであります。
これは、昨年九月県議会で、東アジア地域への米輸出について質問した際、松永部長が答弁されましたように、中国に向けた米輸出については、検疫条件が厳しく、関税割り当ての制限等、制度的に高い障壁が存在することによるものと思われます。
よって、中国への米輸出を増大していくためには、日中政府間交渉によって、その障壁解消が図られていくことが基本ですが、本県は、中国山東省と三十年近く友好交流の歴史を積み重ねてきており、培ってきた信頼関係がありますことから、これを生かして、県産米の山東省への輸出を実現していく有効策があるのではないかと思う次第であります。
これまで、本県と山東省は、経済交流ということでは、毎年交互に商談会を開催するなどして、それなりの実績を上げてきております。私は、この経済交流をさらに進一歩させ、双方の経済発展につながる交流として本格的に拡大していくために、具体的に双方が相手方に輸出したい重要品目を定め、その実現に向けて課題を共有し、課題解決に共同して当たる協議機関を、山口県、山東省双方の産学官の適任者を構成メンバーとして設置することを提案するものであります。
そして、本県としては、その機関で協議する重要品目に県産米を指定したらいいと考えます。
そこでお尋ねいたします。台湾に続いて、中国に向けて本県の米輸出が実現することを期待し、まずは、長い友好交流の歴史を積み重ねてきている中国山東省との間で、お互いが望む重要品目の相手方への輸出を実現するための協議機関を設置することを提案いたしますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
第二に、農商工等連携事業への支援についてお尋ねいたします。
このことにつきましては、昨日、塩満議員のほうから、農商工連携の全体像、意義等を踏まえての質問がありましたが、私なりの課題把握に基づいて質問をさせていただきます。
地域における農商工のさまざまな資源のよきマッチング、もしくは融合を促し、新たな事業を創出して地域内経済の好循環を実現し、活性化しようとする農商工連携促進の取り組みは、今日の地域政策の重要な柱でありますが、これは同時に、農業に代表される第一次産業を、第二次産業、第三次産業を包含した総合産業として成長発展させ、地域経済を豊かにしていく取り組みであるとも言えます。
国は、昨年五月に農商工等連携促進法を制定し、これを推進する仕組みを整えました。以来、国が定めた高い基準を達成して、全国で二百八十六事業が、農商工等連携事業の認定を受けております。
しかし、高いハードルを乗り越えて国の認定を受けた事業も、適宜支援策が講じられないと、事業計画の目標達成、そして、そのことによる地域経済へのプラス効果の波及が困難になります。
本県では、これまで三事業が、この認定を受けておりますが、その第一号は、有限会社クレアツーワン、屋号は、山口ごま本舗でありますが、このクレアツーワンと農事組合法人「あさグリーン優とぴあ」との連携事業で、山口県産黒ごまを原料として、昔ながらの製法で製造したこだわりの「国産黒ごま油」及び「国産黒ごま関連商品」の開発・製造・販路拡大の事業でした。
この認定事業で期待された地域経済への効果の一つは、黒ゴマ栽培農家を育成拡大し、本県を黒ゴマの一大産地とすることでした。
しかし、このことが計画どおり進んでいません。黒ゴマ生産を担当するはずだった農事組合法人「あさグリーン優とぴあ」が、初年度生産できた黒ゴマはごくわずかで、その後、生産撤退に等しい状況にあります。この農事組合法人は、建設会社が農業方面に進出したものでしたが、生産技術の蓄積と農業経営のノウハウがないと、農業への参入も、そうみやすくないことがうかがえます。
また、この事業の発足当初には、五十名もの方から黒ゴマ生産に取り組みたいとの申し出があったそうですが、続いている人は一人もいないそうです。
クレアツーワンは、これまで国産のゴマということで、鹿児島、熊本からゴマを購入してゴマ油を製造販売してきた実績があることから、本県にゴマの産地が形成されれば、生産されたゴマをすべて買い取ることは可能であります。
ところが、ゴマの生産をやろうという方々が求めたのは、生産されたゴマの買い取りだけではなく、計画どおり生産できなかった場合の補償でした。それがなければゴマ生産に取り組めないと言われても、そこまでは一企業として対応はできません。
幸いなことに、JAあぶらんど萩が五百キロ、JA山口中央が百キロの黒ゴマ生産に取り組んでいただいたことにより、それを使っての山口県産黒ゴマ油の製造販売はできましたけれども、この連携事業五カ年計画の目標達成に必要な年間九トンの県産黒ゴマの生産、それに向けた産地形成の見通しは全く立っていません。
私は、この連携事業が直面している黒ゴマの産地形成という課題は、県が農業政策上の課題として、農協等と一緒になって取り組むべきことであり、そうしてこそ解決できる案件であると考えます。
農商工連携での農は、農林漁業を代表しての農であり、そういう意味での農商工連携は、地方再生のかぎである第一次産業を、成長産業にしていく取り組みであるとも言えることから、これを県政上の重要政策として位置づけ、この連携事業が軌道に乗るよう支援していくことが大事と考えます。
そこで、農商工連携の視点から農業を成長産業にするための取り組みついて、三点お伺いいたします。
その一は、農商工等連携事業が果たす役割を、どう認識しておられるのか、その二は、農商工等連携事業への支援の具体的方針について、その三は、本県における黒ゴマの産地形成について、御所見をお伺いいたします。
第三に、フードバレーの形成についてお尋ねいたします。
私は、本県において新たな産業集積を実現していくために、フードバレーの形成に取り組むことを提言いたしたいと思います。
農と食のシリコンバレー版ともいうべき「フードバレー」の名称は、アメリカのコンピューター産業の集積地シリコンバレーに由来したもので、「食の集積地」という意味で使われております。
この言葉の最も的確な定義は、オランダ経済省企業誘致局の「フードバレーは、文字どおり食品・農業・健康をテーマとした専門知識の集積地である」との説明であります。
この説明は、平成十六年に、伊藤忠商事が、オランダのフードバレーの中核大学ワーヘニンゲン大学と、食料バイオ分野で提携することになったことを紹介した記事にあるもので、御参考までに、この記事の紹介をもう少しさせていただきます。
伊藤忠が先端技術戦略の提携パートナーをオランダから選んだ理由の一つは、ヨーロッパにおける新農業技術の開発や、食品健康分野における斬新な製品の開発にオランダが大きな役割を果たしてきたことが挙げられる。
オランダは、食品研究に向ける研究開発投資の面では世界有数の国で、食品産業総売り上げの二%以上を年間研究開発費に投じている。
ワーヘニンゲン大学は、これまで何十年にわたり農業技術や食品安全など、食品や健康にかかわるあらゆる分野での幅広い科学研究で知られている。
世界の食品研究において確固たる評価を築いてきた結果、ワーヘニンゲン大学の周辺には、食品関連の企業や各種機関が集まっている。
フードバレーで注目すべきは、企業・行政・研究機関の三者が緊密な協力関係にあることである。
フードバレーには、イノベーション力ある企業が多数集まっている。また、ワーヘニンゲン大学の周辺には、バイオテクノロジー関連の新規ベンチャー企業もふえてきている。
フードバレーのもう一つの大きな特徴は、「科学とビジネスの出会い」というコンセプトを実践して発展を続けていることだ。
以上のことから、フードバレーとは、どういうものかということは、おおよそ察していただけると思いますが、これらのことを要約して、私は、フードバレーは、農と食と健康への思いを形にする、知とわざの集積地であると申し上げたいと思います。
そうしたフードバレーが本県に形成されるとすれば、すばらしいことだなと、そう思うのは、私だけでしょうか。
フードバレーへの取り組みを全国的に見ますと、最も力を入れて取り組んでいるのが静岡県の富士宮市で、ここは平成十六年から「フードバレー構想」を掲げ、市役所にフードバレー推進室を設けて、市民と生産者・NPO・企業・大学が連携して、市を挙げて食のまちづくりに取り組んでいます。
また、大阪府を中心とする近畿地域は、平成十九年から産学官連携で食関連クラスター形成を目指して、オランダ・フードバレーと食品産業交流を進めています。
九州では、若い経済人の団体である青年会議所九州地区協議会が、九州産業活性化ビジョンをまとめ、その中で、フードバレーを九州経済圏として形成すべきだと訴えています。
私は、フードバレーの形成は、日本各地いずこでも可能で、条件の有利、不利、環境の適、不適の差は、そう大きくないと見ております。大事なのは、農と食と健康に関連する知とわざのネットワークを形成する意思で、その意思が明確で強いところにフードバレーは形成されると考えます。
しかし、そうとはいえ、条件が有利で環境が整っているところが、強い明確な意思でフードバレーの形成に取り組むことが望ましいことは言うまでもありません。
そして、山口県は、まさしくそういうところであると思います。農業、漁業ともに盛んで豊かな食材に恵まれ、食品製造業も多く、大学や官民の研究施設等のすぐれた研究機関が幾つもあり、交通の利便性も高い本県は、日本のフードバレーを形成し得る有力地の一つであると言っても過言ではないと思います。
私は、フードバレーの形成は、山口らしさを生かし伸ばす新たな産業集積の道であり、山口の農業を知識産業化して、付加価値の高い成長産業にする道であると考えます。
そこで、フードバレーの形成に向けて、三点お伺いいたします。
その一は、山口農業を成長産業にし、農と食を中心にした新しい産業集積を実現していくために、フードバレーの形成を、これからの県勢振興の重要政策と位置づけて取り組むべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
その二は、本県農業の加工分野の強化ということについてであります。
御案内のように、これからの農業経営においては、食品加工の分野がウエートを高め、食品加工を含めた農業経営、もしくは、食品加工分野と連携した農業経営が、これまで以上に推進されるべきと思われます。そして、それは同時に、フードバレーの土壌形成につながるものであります。
つきましては、本県農業の加工分野の強化が重要と考えますが、制度面、技術面からどう支援していかれるのか、御所見をお伺いします。
その三は、食品産業の集積についてであります。
本県は、製造業の中で食品製造業の事業所数が約二五%を占め、食品製造業の集積比率が全国的に見ても高い県であります。このことを、フードバレー形成に向けての本県の強みとして、食品産業の集積を戦略的に進めていくべきと考えますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の一般質問を終わります。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、フードバレーに関するお尋ねのうち、その位置づけについてお答えをいたします。
お示しのフードバレーは、食品・農業・健康に関する専門知識の集積地であり、食関連の産学公が連携する仕組みを構築し、食を中心とした産業集積を図るための取り組みであろうかと理解をいたしております。
本県では、豊かな自然と風土に恵まれた、特色ある農水産物が各地域で数多く生産されており、古くからこれらの素材を生かし、例えば、下関地域では、全国有数の水産加工業の集積地となるなど、食に関する産業の形成が図られております。
私は、こうした食品産業が将来に向けて発展をしていくためには、お示しのように産学公が知恵や技術を持ち寄り、本県のポテンシャルを生かした魅力ある産業の形成を図っていくこと、いわゆるフードバレー的発想が重要であり、私も、そのことが農林水産業の成長にもつながるものと考えております。
このために、私は、産学公の連携を県政の重要課題に掲げ、これまで、山口大学農学部との共同研究に関する包括協定の締結や、水産大学校や県立大学とも緊密に連携を図りますとともに、産学公の各機関の参加のもとに、食品の加工開発や知的財産の活用を推進する「山口県食品開発推進協議会」を設立するなど、その体制の整備を図ってきたところであります。
また、このような体制のもとに、食品産業と研究とのマッチングを進め、県産農水産物の特性を生かした食品の商品化にも取り組んでまいりました。
その結果、少し細かい話になりますが、「はなっこりー」や県産カボチャ「くりまさる」を材料として使用したオリジナル外郎や、フグや鯨を活用したしょうゆの開発、食品加工向けに大きな需要が期待されるウイルス病に強い自然薯の開発、さらには、本県オリジナルの酒米「西都の雫」を使った清酒の開発など、着実にその成果を上げているところであります。
また、地産地消を進め、ふるさと産業の振興を図る観点から、農商工連携制度を活用した新たな商品の開発や食品加工製造業者と農業者との情報交換会の開催など、本県農水産業の特性や魅力を食品産業に多様に活用する施策の展開も進めております。
私は、今後とも産学公の連携を一層進め、本県農水産業の振興と食品産業の育成に向けた取り組みを加速化してまいりたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。
【回答】◎農林水産部長(松永正実君)
数点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、中国への米輸出の取り組みに関する協議機関の設置についてであります。
御案内のように、世界的な日本食ブームや東アジア諸国の著しい経済発展によりまして、こうした地域をターゲットとした輸出の取り組みは、県産農水産物等の需要拡大を図る観点から、大きな意義があるというふうに考えております。
しかしながら、中国への米の輸出につきましては、検疫条件が非常に厳しいため、現在のところ、指定された精米工場が神奈川県の一カ所に限定をされていること、また、関税割り当ての制限等、制度的に高い障壁が存在することから、お示しのとおり、我が国から中国への輸出量も、低水準にとどまっており、現状では、本県独自での取り組みは極めて困難な状況にあると考えております。
このため、ことし六月には、国に対して輸出相手国における検疫等の障壁を軽減するための働きかけの強化を要望したところあります。
こうした状況を踏まえ、山東省との協議機関の設置に関する御提案がございましたが、まずは、米の輸出の可能性について、山東省と協議してまいりたいと考えております。
次に、農商工等連携事業への支援について三点のお尋ねであります。
まず、農商工等連携事業が果たすべき役割の認識についてでありますが、農商工連携は、県産農水産物の付加価値の向上や、新たな需要の掘り起こし等が促進され、県産農水産物の需給拡大や農家・漁家所得の向上につながりますことから、一次産業の振興を図る上で、その果たすべき役割は非常に大きいと認識をしております。
次に、農商工等連携事業への支援の具体的方針についてであります。
県では、農商工連携に取り組む農業者・漁業者や商工業者のマーケティングや経営面を支援をすることとして、中小企業制度融資や、やまぐち産業振興財団の中小企業育成基金を活用した助成、農業者・漁業者や商工業者のシーズやニーズを収集するアンケート調査などに、生産者団体、商工会、商工会議所等の関係機関と連携をして取り組んでおりますほか、産学公が連携した「山口県食品開発推進協議会」によりまして、県産品を活用した新商品開発、販路拡大を支援をしております。
また、生産者団体、流通・食品・外食関係者等で組織をいたしました「やまぐちの農水産物需要拡大協議会」での地産地消の取り組みの中におきましても、農商工連携の取り組みを推進をしているところでございます。
具体的には、農林水産業者と食品小売業者・飲食業者とが連携をいたしました販売協力店や、やまぐち食彩店を設置をいたしておりまして、しゅんの農水産物を対象とした販売促進キャンペーンや地産地消料理の提供に取り組んでおります。
また、農林水産業者と食品加工業者との連携によりまして、本県の豊富な水産物とその加工技術を組み合わせをした「山口海物語」の製品開発、あるいは、県産農水産物を使用した「やまぐち地産・地消弁当」、長門ゆずきちを使用したポン酢、ドレッシング等の商品開発、販路開拓に向けた商談会の開催等の取り組みも進めております。
今後とも、こうした取り組みを総合的に進め、市町、関係団体等と緊密に連携をいたしまして、農商工連携の促進に向けた、幅広くきめ細かな支援を行ってまいります。
次に、農商工等連携事業に係る黒ゴマの産地形成についてであります。
県としては、商工業者の需要にこたえられるよう、これまで、萩市や山口市での生産体制の整備に向け、JA等と連携して、生産者への栽培誘導や技術指導、産地確立交付金を活用した産地づくり等に取り組んでまいりました。
しかしながら、黒ゴマは、新たな品目でありますために、生産者の技術不足や、乾燥調製に多くの労力を要しますこと、さらには加工原料用であることから、安定的かつ低コストでの生産が求められることなど多くの課題がございまして、取り組み初年度の平成二十年産の出荷量は約六百キロにとどまっております。
このため、今後、商工業者が求める量を安定的に確保できるよう、栽培講習会の開催や巡回指導等による生産技術向上に向けた支援を行いますとともに、農業生産法人等を核に、地域の生産者が一体となった規模拡大の取り組みを促進するなど、商工業者、市町・JAと緊密に連携しながら産地形成に努めてまいります。
次に、農業経営における食品加工分野への支援についてのお尋ねでございます。
農産加工の取り組みにつきましては、これまで、県下各地で農山漁村女性グループを中心に、地域資源を活用したさまざまな加工品の開発に取り組まれておりまして、県では、そのノウハウを活用し、女性みずからが起業家を目指す、いわゆるルーラルビジネスの育成を積極的に支援をし、統一ブランド「やまみちゃん」として、現在百七十九の品目が認定をされるなど、多様な商品開発が進んできております。
また、これらの取り組みに加えまして、最近では、内発的な六次産業化に向けまして、経営の多角化を図るため、農産加工に取り組もうとする集落営農法人に対しまして、商品開発やマーケティングなどに関する研修の場を提供いたしまして、専門家を派遣して加工技術を指導するなどの各般の支援を強化した結果、これまで十近くの法人が、新たに豆腐やもちなどの農産加工を開始をしております。
また、大手食品企業が、サラダ等の材料に使用いたしますタマネギを、法人が安定的に供給できる仕組みの構築や、地産地消をコンセプトに、商品開発を目指すコンビニエンスストアに、生産者とのマッチングの場を提供するなど、法人と食品企業との結びつきについても、積極的な支援を行っているところであります。
さらに、技術面では、平成十九年度に農林総合技術センターに食品加工研究室を設置し、機能性の高い加工食品の開発に向けて、主要な県産農産物の成分分析などの研究を進めますとともに、農山漁村女性の行う漬物や調味料の改良から、商工関係者が希望する地域特産品の開発まで、きめ細かな支援を行っているところであります。
県としては、意欲ある農業経営者が食品加工に積極的に取り組んでいけるよう、今後とも制度面、技術面から一層の支援に努めてまいります。
【回答】◎商工労働部長(佐本敏朗君)
食品産業の集積についてお答えします。
本県の食品製造業は、お示しのように、県内事業所数に占める割合が高く、県内農林水産資源を有効に活用する上でも、新技術や新商品の開発及び販路拡大を通じた競争力の強化が重要であることから、これまでも、産業技術センターによる技術相談や共同研究、やまぐち産業振興財団の助成事業や商談会事業等の活用による支援を行ってきたところです。
この結果、粉末化技術による「やさいファインパウダー」や「はなっこりーの青汁」、お茶を素材にした石けんなど県内資源を素材とした生産技術の確立や商品化が図られたところです。
さらに、本年度新たに、大学や試験研究機関、企業等の連携により、新たな商品開発へつなげる取り組みも進めております。
また、食品製造業は、比較的景気の影響に左右されず、安定的な成長が期待できる分野であることから、これまでも、企業立地促進補助金等の優遇制度を活用し、食品加工企業の誘致にも努めてきたところです。
県といたしましては、引き続き、食品産業の県内への誘致に取り組むとともに、新技術等で新事業展開を図ろうとする企業に対し、成長過程に応じ、やまぐち産業振興財団など支援機関のネットワークを活用して支援することにより、集積を推進していくこととしております。

2009年11月30日