平成22年6月定例県議会 (2)教育問題について

(2)教育問題について

その一は、教育目標についてであります。
山口大学の学長も務められた広中平祐先生は、本県由宇町の生まれで、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞された日本を代表する数学者であります。その広中先生が、山大の学長をやめられた後も、学長をしておられた市民大学の講座で講演されたのを聞いたことがあります。その講演で、先生は数学の定義について語られ、「数学とは、無限なるものの有限化である」と話されました。そして、「有限化とは、コンピューター処理できるようにすることである」と補足されました。
私は、講演が終わった後、広中先生に尋ねました、「存在するものすべてを百とした場合、コンピューター処理できるものの割合はどれほどですか」と。この問いに対して広中先生は、「五十です。心の世界はコンピューター化できません」と答えられました。
この先生の答えは、教育を考える上で大事な視点を提供していると思います。コンピューター処理できるようにするということは、いわゆる数値化するということであります。今日の時代、教育も含めあらゆる面で、その数値化が進行し、そのことに基づいて物事を評価し、対応していくということが一般化しています。しかし、そのとき、私たちは、数値化できるのは、存在するもののすべてではない、半分にすぎないということを見失ってはならないのであります。
私は、このことは、特に教育において大事なことで、教育の基本は、数値化できない心の教育も含めた全人的なものでなければならないと考えます。
本県では、そうした全人的教育を推進する上において、目指す教育の基本目標を示して取り組んできております。
これまで、どういう基本目標を掲げて本県の教育が推進されてきたかを振り返ってみますと、昭和五十年代の井上教育長時代は、「たくましい防長っ子の育成」でありました。その後の高山教育長時代は、「心の教育・情の教育の推進」で、これは高浜教育長、小河教育長と引き継がれます。
そして、平成八年に就任した上野教育長は、「夢と知恵を育む教育の推進」を本県教育の基本目標とすることを定めました。これは、以降ことしの春まで牛見教育長、藤井教育長と継承されてきました。
そこで、まず新しく本県の教育長に就任された田邉教育長にお伺いいたします。田邉教育長、あなたはこれから、どういう子供たちを育てることを教育目標にして、本県の教育行政を推進していくお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
第二は、情操教育についてであります。
さて、先日私は、小中学校で音楽を教えておられる先生方とお話しする機会がありました。その先生方は、最近、音楽の専科の教師がいない小学校がふえていることを憂えていました。
「子供たちの現状を見ると、集中力の低下、感情のコントロールができない、人とかかわるのが苦手、個人主義といった子供たちがふえている。小学校時代から、子供たちの心を育てる情操教育として、音楽教育がしっかり行われる必要があるのに」。音楽教育に携わる者としての使命感に発するそうした声には、切実な響きがありました。
小学校でも、中規模、大規模校では専門性を必要とする教科は、専科教員が配置されることになっています。
音楽はもちろん、専門性を必要とする教科で、以前は中規模、大規模の小学校には、必ず音楽専科の先生がいましたが、近年は理科や算数等に配置される専科教員が多くなり、音楽専科をなくす学校がふえています。
山口市で見ますと、生徒数六百五十名の白石小学校も、生徒数六百七十八名の湯田小学校も、音楽専科の先生がいません。白石小は、算数専科が一人、理科専科が二人、湯田小は、理科専科が二人配置されております。
学級担任教諭とは別に配置される専科教員は、その学校の学級数に応じて加算されますが、この加算配置された専科教員に、何の教科を担当してもらうかは学校長判断であります。
その判断が、理数系重視、数値による評価という大きな流れに沿わざるを得ないため、その教育成果が、数値によって評価されがたい音楽教育を、学校教育全体の中で隅のほうへ追いやってしまうことになっているとしたら残念なことであります。
そうした現状を憂えて、音楽を学ぶことの大事さを訴えた声を紹介いたします。
仲間と心を通わせ、他人を思いやる気持ちや心を合わせる喜びを味わう。心を開き、自分の声を聞いてもらったり、相手の声に寄り添ったりしながら気持ちを合わせて音楽を楽しむ中で、子供たちはよりよいものを求め合ったり、お互いに助け合ったりすることを学んでいる。音楽という教科は、国語の要素、体育の要素、道徳の要素をかけ持った総合的な学習なのである。個人で楽しむものではなく、学校教育の中で集団で学ぶ意味、幼児期から思春期まで、味わうだけでなく学ばせなくてはならぬ教科なのである。
あるスクールカウンセラーが「歌がしっかり歌える学校に問題はない」と言っていた。心の成長に欠かせない音楽という教科。数字には出ないが、県として力を入れてもらえないだろうか。
これは、私に寄せられた声ですが、そのことを通して県政に携わる者すべてに知ってほしいとの思いで寄せられた声であると思います。
金子みすゞの詩に、「見えないけれど、あるんだよ」という一節がありますが、情操教育としての音楽教育は、「数字には出ないけど、大事なんだよ」ということなのではないでしょうか。
心の教育、情操教育は、決して理数教育と相反するものではありません。心が育てば、心の働きである知・情・意が育ち、理数教育の基礎がしっかりすることにつながると思われます。
やはり、日本が生んだ天才的数学者であった岡潔先生は、数学史上の巨人ポアンカレの「数学の本体は調和の精神である」との言葉を引用して、数学は、情緒、情操であると明言しておられます。
その情緒、情操をはぐくむ音楽教育が、小学校教育において、なおざりにされることがあってはならないとの趣旨で、この質問を行っている次第であります。
音楽教育をしっかりするということは、音楽教育の先生を適切に配置するということであります。その第一として、中規模以上の小学校には、音楽専科の教諭が、必ず配置される必要があると考えます。第二に、それ以外の数多くある小規模の小学校にも、音楽教育が行き届く教員配置のあり方が工夫されなければならないと考えます。
十五学級以上ある小学校を、中規模以上の小学校とみなした場合、本県では七十一校ありますが、音楽専科の教員数は五十七人ですので、これらの学校すべてに音楽専科の教諭を配置しようとすれば、その絶対数がまず足りていません。
県下の市で見ますと、岩国市は十六人の音楽専科の先生がおられて際立っていますが、それ以外の市は、すべて中規模以上の学校数より、音楽の専科教員が少ないという現状であります。下松市は、中規模以上の小学校が三校ありますが、専科教員は、理数が主で音楽専科の教諭はいません。また、美祢市は、小学校が二十二校ありますが、十五学級以上の小学校はなく、音楽専科の先生がいません。また、五十七人の音楽専科の先生の中には、ほかの専科を受け持っている先生もおられるものと思われます。
こうした現状を踏まえまして、県教育委員会が、義務教育課程の小中学校人事も一元的に管理しておりますことから、田邉教育長に、二点お伺いいたします。
第一点は、中規模以上の小学校には、純粋専科の音楽担当の教諭を必ず配置する方向を目指すべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
第二点は、二百五十校にも上る数多くの小規模の小学校にも音楽教育が行き届くよう、教員配置の工夫をすべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
最後に、部活動を理由とする就学校の変更についてお伺いいたします。
平成二十一年度の中学校全国柔道大会に、山口県の女子代表選手として個人戦に出場したIさんは、柔道だけではなく学業にもしっかり取り組む中学生で、同年開催された中学生の中国地区英語弁論大会では優秀賞を獲得しました。
彼女の場合、幼稚園のときから続けてきた柔道を、中学に進んでも部活でやることができる環境で中学生活を送ることができたことが、学業への励みにもなっていたように思われます。
ただ、彼女が現在小学六年生であったとしたら、来年中学に進学するとき、同様の中学生活が送れる中学校に進学することは不可能になりそうであります。
山口市教育委員会が、今年度から中学校に進学するとき、部活動が理由で校区外の中学校に入学することは認めない方針を、厳格に適用しようとしているからであります。
御案内のように、我が国の教育制度においては、公立の小学校、中学校、高校には、校区の定めがあり、それに基づき、義務教育課程である小中学生が公立学校において学ぶ場合は、市町村の教育委員会が、学びにつく学校、すなわち就学校の指定を行うことになっております。
この就学校の指定は、入学する生徒が住んでいる校区に基づいて行われますが、相当と認められる特別の事情がある場合は、保護者からの申し立てにより、就学校の変更が可能となっております。
このことにつき、文部科学省は、就学校の変更が認められていい事由として、いじめへの対応、通学の利便性など地理的理由、部活動等学校独自の活動等を示してはいるものの、最終的には各市町村の教育委員会が判断するものとしております。
この最終的判断をゆだねられている各市町村教育委員会は、いじめへの対応としては就学校の変更をおおむね認め、地理的要件による変更は緩和の方向にあるように思われます。
そこで、この就学校の変更につき、最も問題になるのが、小学校から中学校に進学するとき、部活動による校区外の中学校への進学を認めるかどうかということでありまして、本県の市町においても、このことには慎重な教育委員会が多く、十九市町のうち、これを認めているのは、柳井市、光市、長門市、下関市の四市だけであります。
冒頭に紹介しましたIさんの家がある山口市も、これを認めていません。そこで、彼女は中学への進学時、住所を移して、他の校区の中学校に入学しました。そうまでしたのは、彼女が実際住んでいる校区の中学校には柔道部がなく、その他校区の中学校に入学すれば、部活動で柔道ができたからであります。
ありのまま事実を語らなければ、課題の認識、問題の解決に至りませんので申し上げますが、Iさんは、住民票上の住所は移しましたが、実際は家から通学しました。そこにはとにかく、住民票を移しさえすればいいという暗黙の了解があったようであります。
昨年の三月、こうした部活動のために住民票だけを移して、実際は家から校区外の中学校へ通学することを問題視する記事が朝日新聞の社会欄に掲載されました。
見出しは、全国中学駅伝V、光市・大和中、女子部員五人越境となっております。光市大和中の女子陸上部が、その前年、二○○八年十二月に、本県のセミナーパークで開催された第十六回全国中学校駅伝大会で初優勝したものの、その登録選手八人のうち五人は、住民票を大和中校区に移してはいるが、実際は周南市や柳井市等、校区外の自宅から通学している部員であったことを明らかにした記事で、「住民票を移していれば適正と思っていた」という学校長のコメントも紹介されており、Iさんの場合と同様、暗黙の了解があったことを示唆する報道内容になっております。
文部科学省は、先ほど述べましたように部活動等を理由とする就学校の変更については、その最終的判断を各市町村の教育委員会にゆだねておりますが、その判断の基準となる要件及び手続については、これを定め公表、周知するよう通達しております。
光市の教育委員会は、この報道があった後、就学校の変更を認める要件の一つに、部活動を理由とする場合を明記し、校区外のみならず市外からも就学を許可する方針を公表して、部活動において越境が問題にならないよう対応しました。一方、山口市の教育委員会は、たとえ住民票を移しても、そこから通学するという実態が伴わなければ、就学校の変更は認めない方針を徹底することを通して、部活動による越境問題をなくそうとしているように思われます。
暗黙の了解事項について、光市は正式にこれを認め、山口市は以降これを認めないという方針を固めたとも言えるでしょう。
光市の対応は、市教育委員会内の協議で決めたように伺っていますが、山口市は、教育委員会が昨年十二月に、市内の公立小中学校の通学区域についての審議会を設置し、部活動を理由とする就学校の変更のことも含めて諮問しております。この審議会は、二回開催されて、ことしの三月に答申しており、その議事録及び答申書は公開されております。
私は、このように政策の形成過程の議論を公開する姿勢を評価するものですが、そうした議論の公開も、それが評価、批判、検証されることを通して、よりよき政策の形成に資することになると思われます。
そこで、山口市のこの審議会における議論について、率直な批判、検証を行ってみたいと思います。
審議会の意見では、基本的に部活動を理由として就学校の変更を認めることには慎重で、その理由の第一が、これを認めた場合、小規模の中学校が消滅することになるのではないかという懸念であります。
私は、まずこの懸念は心配し過ぎであり、事実に照らしてみるとき、杞憂にすぎないことを指摘したいと思います。
実際、本県で部活動による就学校の変更を認めている市で、今年度、中学進学時にその申請がどれほどあったかを調べてみました。その結果、市内における校区外への変更ということでは、光市は一名、柳井市は九名、長門市は一名で、下関市は五ないし十名ということでした。
この調査は、それぞれの市の教育委員会を訪ねて担当者にお伺いしたもので、部活動による就学校の変更を認めたにしても、その数は、そう多いものではないことがわかります。
普通、子供たちは中学に進学するとき、友達関係が続く地元の学校へ進学するものです。そういう中、部活のために校区外への進学を望むのは、よほど強い思いがある子であって、そう多くはないということであります。
柳井市の九名が多いように思われるかもしれませんが、部活動以外の理由での変更申請が十一名で、部活動の場合よりも多いというのが実情であります。柳井市は、柳井中が生徒数五百四十四名の大規模校で、次いで柳井西中の百六十七名、大畠中の六十八名、柳井南中の五十八名の四つの中学校がありますが、以前から柳井中に統合する計画もあったりして、小規模校の校区の子供たちが、部活で大規模校に進学しようとすることに対しては、一般的に理解があり、担当者の方は、部活動を理由に就学校の変更を認めたことによるトラブルは、聞いていないと語っておられました。
私は、以上のことから、部活動を理由とする校区外就学を認めれば、小規模校が消滅するとの懸念は、このことの影響の過大視であり、事実に即していないと考えます。
第二に、学校は地域のセンターの役目があり、それを大事にすべきだという意見であります。
私は、こうした学校を地域コミュニティーの核とみなす考え方は、小学校の場合は重視されていいと思いますが、その役割を中学校に求めるのは間違っていると考えます。
中学校では、生徒の可能性を伸ばす教育環境を整えることを中心にして、学校のあり方は考えられるべきであり、そういう観点からして、中学校においては適正規模の学校が、適正配置されることが望ましく、どこの中学校に行っても部活動を含めて等しい教育環境が整っているあり方こそ、追及されるべきなのではないでしょうか。
審議会は、答申において「部活動を理由とする就学学校の変更を無制限に認めるべきではない」としておりますので、どういう制限のもとでは部活動による就学校の変更を認めるのかを、審議会での議論を通して推察しました。その一つは、小規模校が、単独で野球チーム等をつくれないとき、隣の中学校と合同チームをつくって部活動をすることや、そうした合同チームの試合への出場資格を認めるということのようであります。それから、親のかわりになる人、あるいは親戚などがいるところへ住所を変更して、そこから通うというのであれば認めてもいいということのようであります。
私から言わせれば、これらのケースは、いずれも就学校の変更と言えるものではなく、前者は、合同チームによる部活動を認めているにすぎず、後者は、現に住所を移している実態があることになるわけだから、通常の校区への就学であります。
山口市の教育委員会の現在の考えからすれば、Iさんが、今年度入学であったとしたら、進学する中学校の校区に実際下宿することを求めたであろうと思われます。その場合、Iさんが、どうしたであろうかはわかりませんが、はっきり言えることは、Iさんが、柔道と学業の両立ができたのは、家から通学できて家族の支えがあったからだということであります。
山口市は、いじめへの対応等では、校区外の学校へ自宅から通学することを認めています。私は、同様にIさんのような場合も認めるのが、教育的配慮であると考えます。
この答申は、結論として「実情に応じて、できるだけ子供自身が取り組みたい部活動が可能となる環境づくりに努めるべきである」としています。
ついては、この答申を受けて山口市が、子供たちの可能性を伸ばす観点から、どういう場合に、部活動を理由とする就学校の変更を認めるのか、県下の市町のモデルとなる基準づくりに取り組まれることを期待するものであります。
部活動を理由とする校区外就学について、私の考えを申し上げますと、Iさんの場合のように、継続的に取り組んでいるものの部が、校区の中学校にない場合は、その部がある校区外の中学校への就学を認めるということは、本県の小中学校におけるガイドライン的な考え方として共有されていいのではないかと思っています。
小学校時代はやっていない、すなわちそれまでの継続的な取り組みはないが、中学生になったらやりたいと思う部が、校区の中学校にないという場合も認めるのか。校区の中学校に部はあることはあるが、同じ部活動でも他の校区の中学校の部がすぐれているので、そちらに行きたいという場合も認めるのか等々のことについては、判断が分かれるであろうことは理解できます。
しかし、私には、継続した取り組みがあり、部活への強い思いを持った子に対して、部活ができる環境を整える責任を果たさないまま、望む部活ができる校区外の学校への就学変更を認めようとしない考え方や姿勢は理解できません。果たしてそれは教育の名に値するものなのか、私は疑問に思います。
御案内のように、中学校における部活動は、教育課程外の学校教育活動として位置づけられており、それは、生徒の自主的、自発的な参加により行われる活動とみなされております。しかし、本県では平均して八割近くの中学生が、何かの運動部の部活動に参加している現状からして、部活動が適正に行われるようにしていくことは、中学校教育における重要な課題であることは言うまでもありません。
もちろん、小中学校の教育事務を直接担当するのは、市町村の教育委員会でありますが、都道府県教育委員会は市町村に対し、市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言または援助を行う役割が求められています。
そこで、以上、るる申し述べてまいりましたことを踏まえ、教育長に、部活動を理由とする就学校の変更につき、三点ほどお伺いいたします。
その一は、部活動を理由とする就学校の変更に関する調査についてであります。地方教育行政の組織及び運営に関する法律、いわゆる地教法は、その五十三条において、都道府県教育委員会は、指導、助言及び援助等を行うため必要があるときは、市町村長または市町村教育委員会が管理し、及び執行する教育に関する事務について、必要な調査を行うことができるとしております。
私は、部活動を理由とする就学校の変更に関する判断基準の設定が、子供たちの可能性を伸ばすという観点から適正に行われているのか、指導、助言する役割を県教委が果たすことが望ましいと考えております。地元の事情や意見に影響されやすい市町の教育委員会より、県教委のほうが、このことについても第三者的に公平、かつ客観的に見ることができると思うからです。
県教育委員会は、昨年三月十七日付の文書で、県下の市町教育委員会に、「就学すべき学校の指定の変更や区域外就学については、市町教委において、地理的・身体的理由、さらには、いじめの対応などを理由とする場合のほか、児童生徒の具体的事情に即して相当と認めるときは、保護者の申し立てにより、これを認めることができる」旨、周知いたしております。
この通達文書にある、「児童生徒の具体的事情に即して相当と認めるときは」との文言が想定している主要な事由の一つが、部活動を理由とする場合であろうと思われます。
そこで、県教育委員会は、昨年周知した趣旨の実現が適正に図られているか、まず現況を把握するため、特に議論が分かれる部活動を理由とする就学校の変更について調査に取り組むべきと考えます。このことにつき、まず教育長の御所見をお伺いいたします。
その二は、情報や意見交換を行う協議会の設置についてであります。
私は、いじめへの対応というマイナス要因をなくすために校区外就学を認めるのであれば、子供の可能性を伸ばすというプラス要因での校区外就学も認められていいと考えるものであります。ただ本県では、それを認めたら大変なことになるという憶測で、慎重な市や町が多いようであります。
しかし、本県でも既に四市において、部活動を理由とする校区外就学が認められていることから、事実に基づいて望ましい基準づくりに向けての議論が可能と思われます。
そこで、部活動を理由とする就学校の変更について、情報、意見交換を行う協議会を設置して議論を深め、このことに関してのコンセンサスづくりを目指すべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
その三は、さきにお尋ねしました一及び二の取り組みを踏まえ、部活動を理由とする就学校の変更について、ガイドラインづくりに取り組むべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
以上で質問を終わります。

【回答】◎教育長(田邉恒美君)
教育問題の数点のお尋ねのうち、まず、教育目標についてお答えいたします。
県教委では、山口県教育の歴史や伝統を受け継ぎながら、社会の変化や、子供たちの状況等を踏まえ、お示しのとおり、その時々の目指す目標を掲げ、本県教育の振興を図ってまいりました。
近年、社会経済情勢が急激に変化し、教育が抱える課題が複雑・多様化する中、目的意識を持って意欲的に物事に取り組むことが、以前にも増して難しくなってきていると考えております。
このため、現在の教育ビジョンの基本目標であります「夢と知恵を育む教育」を受け継ぎ、一人一人の夢が実現できるよう全力で取り組み、将来に向かって夢や希望を抱き、さまざまな困難を乗り越えていく、知・徳・体の調和のとれた生きる力を身につけた子供たちをはぐくんでまいりたいと考えております。
次に、情操教育について、二点のお尋ねですが、まとめてお答えさせていただきます。
県教委といたしましては、音楽教育を初め、各教科や道徳、特別活動等の教育活動を通じて、豊かな情操が養われるものと考えております。
小学校におきましては、発達段階を考慮し、子供たちの状況をよく把握している学級担任が、音楽を初め、すべての教科等を受け持つことが原則となっており、こうしたことから、音楽専門の教員を採用していないところであります。
また、お示しのように、規模の比較的大きな小学校におきましては、学級担任以外の教員が、いわゆる専科教員として、音楽や理科、算数などの指導に当たっておりますが、どの教科を担当させるかにつきましては、教員の専門性も考慮しつつ、各学校の課題解決や特色ある学校づくりのために、校長が判断し、決定しているところであります。
こうしたことから、県教委といたしましては、学校の規模を問わず、お尋ねの純粋専科の音楽担当の教諭を一律に配置することは難しいと考えております。
今後、教員の指導力の向上や人事配置の工夫、小中連携の促進などにさらに取り組み、小規模校も含めた小学校における音楽教育のより一層の充実に努めてまいります。
次に、部活動を理由とする就学校の変更についての三点のお尋ねにお答えいたします。
近年、地方分権が進む中、地域に根差した教育行政を推進するため、市町教委の権限が拡大されているところであります。
こうした中、就学すべき学校の変更を認める具体的な理由につきましては、住民に最も身近な教育行政を行う市町教委が、地域・学校の実情や教育的配慮の観点から、より主体的に判断していくことが、ますます求められてきております。
県教委といたしましては、市町教委の就学に関する事務が適正に行われるよう、指導・助言しているところであります。
まず、お尋ねの調査の実施についてでありますが、部活動を理由とした就学校の変更に関する具体的な判断基準や、その設定理由等につきましては、市町教委が主体的に判断されるものと考えており、お尋ねのような調査を行うことは考えておりません。
次に、お尋ねの協議会の設置についてでありますが、県教委といたしましては、これまで各市町教委の取り組みについての情報提供に努めてきたところでありますが、市町村合併や学校統合が進む中、就学校の指定について各市町に共通する課題もありますことから、県、市、町の教育長会議において、意見や情報を交換する場を設けてまいりたいと考えております。
次に、お尋ねのガイドラインを作成することは、現時点では考えておりませんが、教育長会議において、部活動を理由とする就学校の変更等についての共通理解を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。

2010年6月30日