平成23年2月定例県議会 (2)森林づくりについて

(2)森林づくりについて

山口県では、「やまぐち森林づくりビジョン」が平成十六年に策定され、森林・林業の抱える課題に確実に取り組まれてきています。
この「やまぐち森林づくりビジョン」は、将来を見通して、本県の森林づくりについての基本的な考え方を明確にし、目指す方向を具体的に示したもので、森林政策の指針となる、まことに立派なビジョンであります。
このビジョンは、「未来へ引き継ぐ、みんなで育む豊かな森林」を基本理念として、百年先を見据えた山口の森林づくりに取り組んでいくことを提唱しております。
ビジョンが策定され、はや七年が経過しようとしており、やまぐち森林づくり県民税を活用した森林整備事業も積極的に推進されてきているところであります。
また、近年、県民の森林に対する関心、認識も非常に高まってきておりまして、ビジョンの基本理念にある「みんなで育む」の精神に呼応するかのごとく、県下各地で、森林ボランティア、竹林ボランティア等のグループが森林・環境問題をテーマに活動しています。
そうした中、平成二十二年度より森林づくり活動支援事業として、森林ボランティアの団体、NPO等に活動費の助成がされるようになったことは、大変評価できるものであります。
そこで、まず第一に、この森林づくり活動支援事業についてお聞きいたします。
森林ボランティア団体等の多くは、会員が会費を払いながら活動しているのが実態の任意団体でして、活動のための資材費等の捻出にも苦労していますことから、県や市からの助成は、活動の充実を図る上で大いに役立っています。
ただ、このような活動は、長期間活動を継続することによって成果があらわれてくるものでありますことから、森林づくり活動支援事業については、単年度一回限りとせず、複数年の助成も検討されていいと考えますが、御所見をお伺いいたします。
第二としまして、モデル森林づくりについてお尋ねいたします。
森林づくり県民税を使って、間伐による公益森林整備事業や竹繁茂防止対策事業が県下各地で実施されていますが、これらの整備事業は、マイナス状態を解消する事業であります。私は、一方でプラス状態をつくり出すモデル森林づくりへの取り組みがあっていいと考えます。
そこで、これまで推進してこられた「やまぐち森林づくりビジョン」が目指す百年先を見据えた森林づくりを、具体的に体感、実感できるモデル森林づくりへの取り組みを提案したいと考えます。
現在、森林づくり県民税を使って間伐を行う公益森林整備事業や竹繁茂防止対策事業をやったら、こうなりますよという意味でのモデル林は県内各所にありますが、これが百年先を見据えた森林づくりのモデルですよというのは見当たりません。
百年先を見据えたモデル森林といっても、森林がある地域の地理的条件、地質、気候、植生等の自然環境や、その森林にどういう役割を期待するのか等々のことにより、さまざまなモデル森林図があろうと思います。
例えば、現在山口市徳地では、森林セラピー基地としての整備に力を入れており、多くの方が訪れています。自然の状態の森林ではあるが、単なる公園や森林公園では味わえない空間。林内に入って、見て、触って、いやしを感じられ、抽象的ではありますが、心が豊かになる、夢を持てるような、そのような森林づくりを目指すことも、百年先を見据えたやまぐちの森林づくりの一つではないでしょうか。
そうした例も含め、「やまぐち森林づくりビジョン」が目指すモデル森林の具体像を実現した森林づくりに取り組むことは、目に見える形で森林づくりの指標、模範を示すことになり、その意義は大きいと考えます。
ついては、以上申し上げましたモデル森林づくりに、県内に適地を求め取り組むべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
第三に、広葉樹林対策についてお尋ねいたします。
これまで、森林づくり県民税を使っての森林整備は、スギ、ヒノキの人工林を主体に施業が実施されてきていますが、山口県の人工林率は四四%と全国平均でありまして、まだまだ広葉樹林が広く残っています。
先日、近隣の広葉樹林を視察いたしました。六十年ないし七十年生の広葉樹林だったと思いますが、幹の径は三十センチないし四十センチで、樹高二十メートル以上もあるような常緑樹、落葉樹が茂っていました。
地表を見ると落ち葉も少なく、草木は何も生えていません。以前、スギ、ヒノキの間伐手おくれの森林を見たときと全く同じ状況でした。案内をしてくれた方の話を聞きますと、「スギ、ヒノキの針葉樹の人工林の荒廃も問題であるが、広葉樹林、特に常緑の広葉樹林の高齢林化した森林も、放置された針葉樹の人工林の場合と同様に地表の植生は全く見られず問題だ。一雨降れば一気に雨水が流出する状況だ」とのことでした。視察した現地でも表土が流出し、根が洗い出されているところがありました。
以前は、パルプ用材、薪、木炭等の燃料としてこのような広葉樹は多く利用されていましたが、現在は古紙のウエートが高くなり、また、輸入材のウエートも七○%と高く、国産パルプ用材の需要が激減しておりまして、国内の広葉樹林は高齢林化していく一方であります。
現在、全国的に問題となっているナラガレ病――カシノナガキクイムシの被害も古くなったコナラが原因だとも言われています。隣の島根県でも、かなりの被害が出ているようで、本県への影響も懸念されます。
そこでお尋ねであります。森林づくりビジョンが目指す、百年先を見据えた森林づくりを進めていく上においては、このような高齢林化した広葉樹林の再生も含めた森林整備が必要ではないかと考えますが、このことにつき御所見をお伺いいたします。
【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、森林づくりに関するお尋ねのうち、百年先を見据えたモデル森林づくりについてお答えいたします。
県土の七割を占める森林は、木材の生産や水源の涵養、県土の保全、保健休養などの機能とともに、近年、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収源としての役割など、県民の暮らしや産業を支える多面的な機能を果たしております。
一方で、木材価格の長期低迷や農山村の過疎化、担い手の減少や高齢化など、森林・林業を取り巻く厳しい経営環境を背景に、間伐などの手入れが行き届かず、スギやヒノキの人工林の中には荒廃するものが増加をし、また、全国有数の面積を有する竹林の繁茂により、森林の持つ多面的な機能の発揮が懸念される状況になっております。
このために、お示しがありましたように、平成十六年三月に、百年先を見据えた健全で豊かな森林を県民の皆様と協働ではぐくみ、県民共有の貴重な財産として次世代に引き継ぐための指針である「やまぐち森林づくりビジョン」を公表し、そのビジョンの中で、「水と緑を育む森林」や「循環利用される森林」など四つの態様に区分をし、その保全や整備の方向性をお示しをしたところであります。
また、このビジョンをもとに、平成十七年度から全国に先駆けて森林づくり県民税を導入し、荒廃した人工林の再生等に取り組みますとともに、木材の利用を通じた森林の整備を促進するために、平成十七年十二月から実証実験を開始した森林バイオマスエネルギー利用システムの具現化や、翌十八年度から、県産木材利用促進制度の導入を行うなど、本県の豊かな森林づくりを進めるための具体的な取り組みを進めてまいりました。
この結果、県民税関連事業の公益森林整備事業の施行地では、間伐等の手入れがされず荒廃していた人工林が、今では下草が生え、広葉樹が回復しつつあるなど、年々豊かな森林環境に変わってきている様相を、県民の皆様にも見ていただくことができるようになっておりますし、木材利用の面では、バイオマス利用で年間三万トンの利用体制が構築をされますとともに、住宅分野での利用も促進をされ、本県の森林の再生と森林整備につながる仕組みづくりを進めることができたと考えております。
したがいまして、私は、この取り組みを着実に進めることで、百年先の豊かな森林づくりが確かなものとなると考えておりますので、県内市町や森林組合など関係団体とも連携をしながら、県内の森林すべてを、いわばモデル森林としてとらえて、その特性にあわせた保全や整備を適切に進めていきたいと考えております。
そのほかの御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

【回答】◎農林水産部長(藤部秀則君)
森林づくりについての数点のお尋ねのうち、まず、森林づくり活動支援事業についてのお尋ねにお答えします。
本事業は、森林ボランティア団体やNPO法人、自治会等を対象に、身近な竹林の整備など森林の整備に必要な資機材などを助成する事業として、平成二十二年度から実施しているものでありまして、今年度は十九団体から応募があり、森林づくり推進協議会の意見もお聞きして審査した結果、いずれも基準を満たしていたことから、この十九団体に助成しているところであります。
本事業は、貴重な財源である森林づくり県民税を活用して、県民の皆様の森林づくり活動への参加を広く促すものであり、限られた財源の中、できるだけ多くの団体に取り組んでいただくために、基本的には、助成は五十万円を上限として一団体一回としているところであります。
しかしながら、森林ボランティア団体は、規模や活動内容がさまざまであることから、各団体の実情に応じた取り組みができるよう、助成限度額五十万円の範囲内で複数年にわたった取り組みについても柔軟な対応を図っているところであり、今後とも活動団体の実情等も踏まえながら、効果的な運用方法について検討してまいりたいと考えております。
次に、広葉樹林対策についてであります。
本県森林面積の約四割を占める広葉樹のほとんどは、自然の力によって成立した天然林であるため、おのずから地域に適した多様な樹種から構成され、気候・地形・地質・土壌といった、現地の自然環境への適応力が高い森林となります。
このため、県としては、このような自然の力にゆだねられて成立した広葉樹天然林については、基本的には、人の手による人工的な整備ではなく、その植生を自然に推移させる、いわゆる天然更新による管理が適切と考えております。
なお、お示しのあった現地のように、荒廃し、土砂流出など災害発生のおそれのある広葉樹林のケースは、余り多い例ではないと考えられますが、そのような事例があれば、地権者の同意を得ながら保安林の指定を行い、保安林整備事業などを実施することにより、適切な整備や保全に努めてまいります。

2011年3月1日