平成24年11月定例県議会【産業政策】(2)中小企業対策について

(2)中小企業対策について

総務省が、平成21年に行いました経済センサス―基礎調査によれば、本県の中小企業数は46,307で、県内企業の99.9%は中小企業であります。事業所数でみれば66,948箇所の事業所が中小企業で割合は98.9%、従業者数で見れば491,197人が中小企業で働いており、その割合は80.7%であります。
このように、本県においても産業経済活動を担う企業のほとんどは中小企業であります。
よって産業力の強化は、イクオール中小企業の企業力の強化であるといっても過言ではありません。しかし、本県も含め我が国の中小企業は、特に平成初頭のバブル経済崩壊後、失われた20年とも称される経済の停滞状況が続く中で苦闘の経営を強いられております。そうした経済情勢は今日も変わっておらず、明るい展望が持てない景況にあります。
今年の7月から9月間の県内中小企業景況調査によれば、この前期と比べて、業況判断、売上、経常利益及び資金繰りの全ての指標において、マイナス幅が拡大しております。
企業経営が黒字か赤字かという点で、県の商工会議所連合会が県内中小企業の景況調査を行っておりますが、これによりますと同様今年の7月から9月までの間で黒字と答えたところが15.4%、トントンと答えたところが50.2%、赤字と答えたところが34.4%となっております。
この企業経営が黒字か赤字かということに関し、地元の金融機関がどう見ているかを聞きますと、その見方は一層厳しく中小企業の7割から8割は赤字と見ています。
こうした中小企業の厳しい経営状況は今後改善される見通しはなく、むしろ中小企業を取り巻く経営環境は、一層厳しさを増す方向にあります。
金融機関に貸し付け条件の変更などを制度として促し、企業が資金繰りに行き詰まらないよう措置した金融円滑化法は、来年3月で終了いたします。
中小企業への緊急雇用安定助成金は、今年の10月に支給を抑制縮小する方向で支給の要件が変更されました。
今年の8月に成立した社会保障制度改革推進法は、短時間労働者に対する厚生年金や健康保険の適用を拡大する内容になっており、このことに伴い企業負担は増大することが予想されます。
加えて、消費税の増税が予定通り実施された場合、中小企業の企業経営にどう影響するのか懸念されるところであります。
そこでお尋ねです。こうした厳しい状況だからこそ政策の真価が問われることになります。私は、産業力の強化に総力を挙げて取り組もうとしておられる山本知事が、大胆な中小企業対策を打ち出されることを期待するものですが、本県の中小企業が明るい展望を持てるようにするためにどう取り組もうとしておられるのかご所見をお伺いいたします。

次に、中小企業対策ということで広報活動や研究・技術開発への支援についてお伺いいたします。
私は、中小企業対策としては、「育てる」という視点が重要だと考えるものです。産業力強化の可能性を持った企業の芽を育てるには、県がしっかりした広報戦略や研究・技術開発支援の方針を持つことが求められます。
具体的な事例を紹介しようと思いますが、山口市にK製作所と言って戦前から主に葉たばこ乾燥機の開発・製造・販売を社業としてきた会社があります。
近年葉たばこの生産が減少して来たことから新たな事業展開を模索する中で、長年培ってきた乾燥技術を生かして、野菜や果物の乾物を作る機械の開発に成功しました。
乾物と言えば水産物が一般的で、野菜や果物では干し大根とか干しブドウとか乾物に出来るものは限られていたのが、K社が開発した機械は、どんな野菜や果物でも、元の風味を損なわないで乾燥し乾物に出来るという点が、特筆さるべき性能であります。
この機械で作られたスイカとか梨とかの乾物が道の駅で販売されて好評を博しているということがローカルニュースで報道されたこともありますので、見られた方もあるかもしれません。
生鮮食品としては捨てられていたものも、乾物にすれば生かせるし、賞味期間、保存期間も長くなり、乾燥したものは粉にしやすくパウダーとしての用途は大きく広がり、輸出食品に育てていくことも夢ではありません。また、農業の6次産業化という方向にも沿うものであり、中山間地域の活性化にも活用が期待されており、テレビ産業、自動車産業といった意味での乾物産業形成の可能性も展望されるところであります。
山口市は、そういったことに着目してK社と共同企画で「山口から“Kanbutsu”を発信」プロジェクトを立ち上げたところ、これが総務省認定事業として採択され、併せて6次産業化支援の実績により「ニッポン新事業創出大賞」の受賞となりました。
山口市が、このプロジェクトでやったことの一つは、フェイスブックに山口市役所乾物部を登録したことです。現に乾物部が山口市役所にあるわけではありませんが、乾物事業の情報発信拠点として活用すべくフェイスブックにそういう名称で登録したという次第です。
自治体が、一民間企業と組んでそこまでやるということに対しては、公平性の観点から批判があるかもしれませんが、私はこういうことは大いにやるべき、「山口市はよくやった。」と評価するものであります。
山口市がやったことは、広報面からK社の技術や製品を育てる支援ということができると思うわけですが、私は、広域自治体である県も、同様に広報活動を通して県内企業を支援する取り組みがあっていいと考えます。
企業は、どんなにいい製品を創り出しても、最終的にはそれを売ることによって経営が成り立つものであることから、市場、販路を開拓するマーケッティング活動が重要であります。県や市町の広報面からの支援というのは、そうした企業のマーケッティング活動を後押しし、強化する支援であるとも言えます。
勿論そこには、企業が開発した技術や製品が持つ可能性、本県の産業や地域経済への波及効果、県が推進しようとする政策との整合性等の観点から選択があるのは当然のことで、産業力強化に向けて県内中小企業を育てる選択的広報戦略の確立と推進が必要と考えます。
そこでお尋ねです。県内中小企業を広報面から支援する施策が、産業力強化の一つの柱として重要と考えますが、このことにどう取り組まれるのかご所見をお伺いいたします。

次に、研究・技術開発支援についてお伺いいたします。
このことで私が申しあげたいことは、県内の一民間企業が持つ製品や技術であっても、それを育てることが一企業の利益にとどまらず地域経済を豊かにし、産業振興につながると思われるものは、県の施策として しっかり研究・技術開発支援が行なわれていいということであります。
先ほど紹介しましたK社が開発した機械でつくられた野菜・果物の乾物は、乾燥した場合の栄養価の変化に関する分析が明らかになれば、学校給食や病院食にも取り入れられる可能性が出てきますし、さらにパウダーにした場合の分析があれば用途は一層多方面に広がり、先ほど述べましたように農業の6次産業化にも大きく寄与するのみならず、乾物を通しての産業形成も展望できるところであります。
唯そうした栄養分析を、産業化を展望したレベルで本格的に行うことは、一民間企業の研究委託では限界があるようで、県が産業振興に係る研究事業として取り組むことが検討されていいケースだと考えます。
今年、日本国民を勇気づけた最も明るいニュースの一つは、山中伸弥教授のノーベル賞受賞でした。ご案内のように山中教授は、iPS細胞の研究開発で受賞したのですが、この研究に対し科学技術振興機構が、2003年から5年間にわたって3億円の研究費支援を行ったこともノーベル賞受賞につながる研究成果を上げる上で大きかったと思われます。
そこでお尋ねです。科学技術振興機構の支援が、山中教授の研究を大きく育てノーベル賞という大輪の花を咲かせることになったわけですが、私は、県内の中小企業が取り組んでいる研究・技術開発のなかで産業力強化という観点から有望と思われるものは、これを県の施策として支援し育てるという取り組みがあっていいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎商工労働部長(半田健二君)
中小企業対策についてのお尋ねのうち、まず、中小企業の企業力の強化についてお答えします。
本県経済を支える中小企業が、その機動性や創造性を生かした事業活動を展開するとともに、経済環境の変化に対応して、経営体質を改善・強化し、経営の安定化を図ることは本県産業力の強化の面からも極めて重要であります。
こうした中、御指摘のように、中小企業金融円滑化法が今年度末に期限を迎えるなど、中小企業を取り巻く経営環境は、一層厳しさを増しているところであります。
このため、本年十月、山口県中小企業支援ネットワークを構築し、信用保証協会、金融機関等が一体となって、中小企業の早期経営改善や事業再生を促進することとしたところであります。
また、中小企業制度融資において、セーフティネット資金である経営安定資金と経営支援特別資金の融資枠をあわせて五十億円拡大するとともに、国の経営力強化保証制度を活用した経営力強化支援資金を創設するなど、金融の円滑化に万全を期すこととしております。
一方、新事業展開等に意欲的に取り組む中小企業に対しては、やまぐち産業振興財団等と連携し、中小企業の成長の各段階に応じ、商品開発からその事業化・販路開拓に至るまでの経営・技術支援や金融支援等の施策を体系化し、総合的な支援に取り組んでいるところであります。
県としては、こうした取り組みをさらに進め、産業力の源泉である中小企業が、環境の変化に的確に対応し、意欲的な事業展開ができるよう積極的に支援してまいります。
次に、中小企業の広報活動や研究・技術開発への支援についてであります。
お尋ねの、行政による広報面からの支援については、販路開拓や企業のPR活動にもつながることから、意欲ある県内企業の取り組みを掲載しました「山口県企業ガイドブック」などの広報誌や、インターネットを活用し、魅力ある新商品・新技術を紹介する「やまぐちものづくりネット」などにより、県内外に向けた情報発信に取り組んでいるところであります。
今後、県内市町が行う地域ブランド製品等の情報発信とも連携しながら、効果的な広報活動に努めてまいります。
また、研究開発支援についてですが、企業の成長には、技術力・研究開発力が不可欠でありますことから、本県の中核的技術支援機関である産業技術センターにおいて、技術相談や共同研究の実施など、企業のニーズを踏まえた技術支援を行っているところであります。
こうした取り組みに加え、より強い本県の産業を創出するため、産業技術センターの機能を強化し、今後大きな成長が期待できる環境や医療関連分野への県内企業の参入が図られるよう、研究・技術開発への支援に努めてまいります。

2012年11月30日