平成24年11月定例県議会【産業政策】(3)林業再生への取り組みについて

(3)林業再生への取り組みについて

産業政策についての質問の第三は、林業再生への取り組みについてであります。
先月11月13日、NHKクローズアップ現代で放送された「眠れる日本の宝の山―林業再生への挑戦」は、大変示唆の富む内容の番組でした。
見られた方もあると思いますが、私なりに我が国の林業を考える上において大事なポイントと感じたところを、先ず紹介したいと思います。

政府肝いりの林業再生プランが施行されたが、この国を挙げた取り組みが逆にせっかく切り出した木材の価格暴落を引き起こした。消費者側のニーズを把握しないまま、供給側の事情で生産を拡大した故の悲劇だった。
戦後の一斉植林が収穫期を迎え、産業として自立できるかの正念場を迎えている日本林業。潜在市場規模は数十兆円とも言われながら、外材に後れをとってきた。
今回明らかになった課題は、川上から川下まで情報を繋ぐ「コネクター」不足と体制の不備。
林業を基幹産業に生まれ変わらせんことに成功したヨーロッパ。
ITで新たな需要を掘り起こし、自動車産業に匹敵する雇用の創出を実現しています。
国の再生プランがモデルの1つに掲げたのがドイツの林業です。
森林面積は日本の半分ながら木材生産量は3倍。
この10年で林業を経済をけん引する先端産業に生まれ変わらせてきました。
そのキーマンともいえる存在が森林官と呼ばれる専門家です。
政府の認定を受け、一定面積の森ごとに全国に配置されています。
(森林官が)手に持つのはIT端末
木材1本1本の長さや太さ品質など、すべての情報をその場で打ち込んでいきます。
このデーターをもとにインターネットで各地の製材業者らと随時、入札などを行うなど、木材取り引き全般を大幅にスピードアップしました。
森林官 ゲオルグ・シューマンさん
「木材の需要を把握し、それに応じた伐採、生産を進めるのが私たち森林官の仕事です。」
木材は生産地の近くにある製材所に最短経路で運び込まれます。製材加工の現場は徹底的な自動化と規格化を進めています。
これで品質の向上とコストの低減を同時に達成。
分刻みのスケジュールで木材が到着するラインは先端工業並みの精密さです。
ドイツでは、木材の伐採から製材所などの第1次加工、さらにそれを利用するハウスメーカーや家具メーカー、バイオマス企業など木材に関わるあるゆる事業者が地域の中に複合しています。

国産材生産の現場では技術や設備への投資が後手に回り、輸入される外材に比べて、乾燥や加工の精度にばらつきがあります。

梶山恵司(富士通総研 上席主任研究員)コメント
(ドイツの林業のように)システムがきちんとできて、マーケティングができるということは、その前提として、要するに木材を伐採して出す林業用の道が整備されているということが大事です。
地産地消、林業はおのずからできるはずなんです。
丸太というのは重くてかさばるわけですから、できるだけ地域で加工するというのが鉄則です。
ヨーロッパの場合ですと、大体半径50キロ圏内が製材工場の立地となります。

岡山県西粟倉村 森の学校 代表取締役 牧大介
総面積の95%を森林が占める山あいの村
牧さんが目指したのは生産から1次加工、2次加工そして販売まで一貫して村で手がける総合的な木材産業でした。
牧さんは、最大の問題は村の木材生産が買い手の望む品質レベルを実現できていないことだと考えました。
牧さんは水分を抜く乾燥機や精度の高い工作機械を国の再生プランにもとづく助成などを利用し、はじめて村に導入しました。
さらに重要なのはニーズの把握です。
牧さんたちは市場を知るため販路の開拓をみずから行なうようにしました。
牧さんから伝えられた市場ニーズをもとに適切な木を計画的に伐採。
無駄な切り捨てや売れ残りを出すこともなくなり今年、生産量3割のアップを実現しました。

梶山研究員コメント
今、日本全国でこういう取り組みが始まっておりまして、具体的な事例も出てきているんですが、まだ点なんです。
これを面レベルにしていかなければなりませんし、できれば県単位でこういうふうにして行きたいというのが、今の基本的な構想です。
戦後、苦労して植えた木が、今ようやく本格的に利用できる段階になっています。でも、今手をつけなければ、これは将来的にはごみになってしまいます。
宝の山にするか、それともむだにしてしまうか、今、その瀬戸際です。
これをきちんと将来につなげることができれば、本当に地域は再生していくことができるということです。
今、その瀬戸際にいるということを、われわれは認識しなければならないです。

以上、少し長くなりましたが番組内容を紹介致しましたのは、山本知事に是非、山口県の林業を基幹産業にする取り組みに挑戦していただきたいとの思いからでして、この番組がその可能性や取り組むべき方向、課題を明確に示していると見たからです。
山本知事は本県産業の再生と強化に取り組もうとしておられるわけですが、産業再生のターゲットとすべきは林業ではないでしょうか。
そして、このことにはしっかり腰を据えて取り組んでいただきたいと考えます。先ほど、私は産業戦略本部の役割は、先ず実践だと申し上げましたが、林業再生への取り組みについては県域全体としてのシステム改革、構造改革が必要と思われますことから、産学公連携のプロジェクトチームを設けて、数年かかってもいいからドイツ等国内外の林業先進地視察等も行い、国の政策との整合性も図りながら本県の実情も踏まえて議論と検討を行い、本県林業を基幹産業にするためのしっかりしたプラン作成に取り組むことを提案するものです。
先ほど紹介したことですが、ドイツは10年かけて林業を経済をけん引する先端産業に生まれ変わらせました。
林業再生には、それくらいの時間はいるものと思われます。よって、本県の林業再生プランも、それくらいのスパンで構想されていいと考えます。
林業を基幹産業、先端産業に生まれ変わらせる取り組みは、日本全国の各地域に希望と光明を与えるものであり、かって内閣官房で地域活性化統合事務局長をしておられた山本知事に、是非このテーマに取り組んでいただきたいと期待するものであります。
つきましては、産業政策として林業再生にはどう取り組まれるお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎農林水産部長(北野常盤君)
林業再生についてのお尋ねにお答えします。
県土の七割を占める森林は、本県の豊かで貴重な財産であり、お示しのように、これらを有効に活用するためには、林業の再生が重要であると考えています。
このため、九月定例会において、味な都・やまぐちを核とする農林水産業再生に向けた検討方向をお示しし、幅広く意見をお聞きした上で、「産業戦略本部」において、その内容を明らかにすることとしたところです。
林業再生の方向としましては、まず、優良県産木材や加工品をやまぐちブランドとして育成するとともに、民間分野や公共分野での県産木材の利用拡大など、市町、工務店、素材生産業者などと協働して、安定した需要を確保してまいります。
また、需要に即した県産木材の生産拡大を図るため、専門的な技能者を有し、新規就業者の受け皿ともなる森林組合など林業認定事業体を育成するとともに、林内路網の整備、高性能林業機械の導入などによる搬出間伐の推進や、再生可能エネルギーとしても重要な森林バイオマスの利用拡大に努めてまいります。
県としましては、こうした木材の生産から、加工、利用までの連携した施策を一層強化し、市町、関係団体などと一体となって、産業政策として重要な本県林業の再生に取り組んでまいります。

2012年11月30日