平成24年6月定例県議会【地域活性化への取り組みについて】(1)中心商店街活性化対策

(1)中心商店街活性化対策

この30年ぐらいで日本中から小さな商店街が消えていくのがよく分かりました。『男はつらいよ』シリーズの終盤の地方ロケでは、風景が寂しくならないように、シャッターを閉めた店に頼んで開けてもらわねばならなかったのですから。
今なら寅さんのロケは大変でしょうね。似合わないなあ、寅さんに新幹線、高速道路、巨大ショッピングセンターは。全然ね。
商店街は、地域に暮らす人と人とが触れ合う場所ですよね。それは日本の文化のかなり大事な部分を占めていた。

以上は、映画監督山田洋次さんの証言の一節で、2007年から8年にかけて朝日新聞に連星された「変転経済―証言でたどる同時代史」で語られています。
この山田監督の証言に共感する人たちは多いと思います。私もその1人で、特に町の顔とも言うべき「中心商店街の賑わいの回復」に係る政策に関心を向けて、いろいろ私なりに調べてまいりました。そのことを踏まえ、この度は「地域活性化への取り組み」ということで、先ず「中心商店街活性化対策」についてお伺いいたします。
最初に、先般県下の中心商店街を見て回って感じたことを申し上げます。
何とか現状維持で街の賑わいを保ち続けているのは、山口の中心商店街であります。
岩国、徳山の中心商店街は、いくらか空き店舗が目につきますが、賑わいの回復、商店街再活性化に向けて意欲的な取り組みがなされつつあり、それに期待したいと思います。
萩の中心商店街は、観光を取り入れた商店街づくりに活路を見出そうとしており、衰退傾向には一定の歯止めがかっているように思われます
防府、宇部、下関は、中心商店街を構成する各商店街において空き店舗が増え、シャッター通り化が進行していますが、その中で幾つか奮闘している商店街があり、その頑張りには頭が下がります。
柳井は、かって中心商店街のメインであった銀天街がなくなり、その跡はきれいに整備された道路になっていて驚きでした。
商店街の衰退は、山田監督の証言のように全国各地で起きていることですが、その背景を調べていきますと原因は明らかで二つに大別されます。その一つは都市の拡散であり、その二はモータリゼーション、車社会の進展であります。
モータリゼーションの進展は、大きな時代の変化であり社会現象であることから、その変化にどう的確に対応するかが課題でありますが、都市の拡散は、我が国の都市計画、土地利用についての政策的不備によって生じている現象であります。特に平成2年に日米構造協議の合意を受けて大店法による大型店出店規制が緩和されたこと、さらに平成10年には大店法そのものが廃止され、店舗面積等による出店規制や出店調整の制度がなくなったことは、その傾向を一層助長しました。その結果、全国各地で郊外に次々と大型商業施設が進出することとなり、既存商店街の衰退が加速化しシャッター通りが増えていったことはご案内の通りであります。
こうした事態に、地方から悲鳴にも似た声が上がり、対策を求める声が高まり、平成18年の「まちづくり三法の見直し」となります。
「まちづくり三法」は、元々平成10年に制定されたもので、中心市街地活性化法、改正都市計画法、大店立地法の三つをいいます。このうち、大店立地法は、それまで大店法がしていた店舗面積等による量的な出店規制をなくし、代わって生活環境への影響という面から規制する仕組みを定めたものです。経済的規制から環境規制へという立法措置は画期的だとの評価の声もありましたが、先ほど触れましたように結果的に大型商業施設の郊外立地を促すことになりました。
大店立地法は、謂わば大型商業施設の立地に関する規制緩和でアクセルの役割を果たすこととなりましたが、一方でブレーキの役割を期待されたのが、この時の改正都市計画法で、大型店の郊外立地を規制する必要があると市町村が判断した場合、従前の都市計画法による土地利用規制を更に強化できるようにしたものです。しかし、この改正措置は充分に機能しませんでした。
中心市街地活性化法は、市町村が中心商店街活性化に向けて「基本計画」を策定し、その計画を関係省庁・民間・地方公共団体が連携して推進する仕組みを定めたものであります。
この法の制定を受けて全国で約700の自治体が基本計画を策定しましたが、中心商店街の空洞化の進行を防ぐことはできませんでした。
このように見てきますと、「平成10年の『まちづくり三法』とは、何だったのか。」ということになります。商店街衰退の主たる原因である都市機能の拡散を助長する立法措置をしながら、商店街支援の施策を講じたとしてもうまくいくはずがありません。この「まちづくり三法」は惨憺たる結果に終わり、平成18年の見直しということになる次第であります。
平成18年の「まちづくり三法の見直し」では、これまでの都市機能の郊外化・拡散化の流れに歯止めをかけ、さらにこれを転換して、都市機能の集約を図りコンパクトなまちづくりを目指すという方向で、法・制度の整備改正が行われました。既に時期遅しなのか、どうにか間に合ったのか分かりませんが、ともかく商店街衰退の本質的原因を踏まえた対策が、法的にとられたことは評価していいと思います。
また、この見直しで、中心市街地活性化法の第三条に基本理念が新たに定められました。その前段を紹介致しますと、「中心市街地の活性化は、中心市街地が地域住民の生活と交流の場であることを踏まえつつ、地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点となるにふさわしい魅力ある市街地の形成を図ることを基本とする」と明記されており、商業機能の強化という観点だけではなく、広く地域住民の生活と交流の場として魅力的な市街地の形成を図ることが中心市街地の活性化につながるとの考えが示されております。私は、この基本理念は、中心市街地再生に向けて最も大事な考え方を明確にしたものとして評価したいと思います。
三法の見直しにより都道府県の役割が、都市計画の広域調整という面で強化されたことも留意しておきたい点です。
ところでこの度、中心商店街のことに取り組んでハッキリして来たことは、商店街のことに関し県が直接的に権限を持ち、県の施策としてやれることが、今日ほとんどないということでした。実際、商店街の関係者に聞きますと「相談や陳情のため市や国の機関の方に行くことはあっても、県の方に行くことはここ数年ないなあ。」という声が返って来ます。
しかし、そうとは云え県が心掛ける、また取り組むことによって中心商店街の活性化につながることは色々とあることも事実です。
そこで、この度は、「まちづくり三法の見直し」に沿う方向で、県に心掛けてほしいこと、取り組んでいただきたいことにつき数点私の考えを申し上げ、ご所見をお伺いいたしたいと思います。
先ず第一点は、中心市街地への都市機能の集積、所謂コンパクトなまちづくり、コンパクトシティという方向についてであります。
まちづくり三法の見直しでコンパクトシティという方向に沿って行われた都市計画法の重要な改正が二つあります。一つは床面積が1万㎡を超える大型小売店舗などの大規模集客施設の立地は、「商業」「近隣商業」「準工業」の3種の用途地域に限定し、それ以外の地域は原則不可としたことであります。
もう一つは、これまで開発許可が不要であった県や市などの公共施設や社会福祉施設、医療施設、学校等の公益施設も開発許可を要するように改正し、公共公益施設が地価の安い郊外へ安易に立地拡散しないようにしたことです。
そこでお尋ねいたします。これは山口市に限らず県下の市町すべての県公共施設等において共通して心掛けていただきたいことですが、県公共施設及び県関連施設また県が関与している公益施設等は、コンパクトなまちづくり、即ち中心市街地への都市機能の集積という方向に沿って、今後の建設や建て替えは行っていくべきであると考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

次に第二点は、良好で魅力的な中心市街地の形成についてであります。
中心商店街活性化対策ということで、中心商店街の商業機能の強化は、政治や行政の主たる政策課題ではないと考えます。それは、基本的に商業者に委ねられるべきことであります。
政策課題として取り組むべき柱のひとつは、先に述べましたように無秩序な都市の拡散を回避しコンパクトな都市構造にしていくことであります。さらに、そのことと併せ大事なもう一つの柱は、中心商店街を含む中心市街地を住みたくなる、そして行きたくなる魅力的な街並みの市街地にしていくことであります。そうした政策課題への取り組みが結果として中心商店街の賑わいの持続と将来への展望のベースになると考えます。
中心商店街の再活性化を主たる目的とする法律の題名が「中心市街地の活性化に関する法律」とされたことの含意は、そういうところにあると見ております。
中心市街地を良好な生活環境と魅力的な街並みの市街地にしていくという政策課題への取り組みにおいて、県は道路や河川等の整備事業を通して重要な役割を果たすことができます。
そこでお尋ねです。県も道路や河川等の整備事業を通して中心商店街の活性化につながる良好で魅力的な中心市街地の形成にしっかり取り組んでいくべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

第三点は、まちなか居住の推進についてであります。
平成18年に全面的に見直された中心市街地活性化法は、計画事項に「まちなか居住の推進」を新たに加えました。これは、中心市街地の活性化にはとにかく人に住んでいただくことが重要との考えからだと思われます。
この、「まちなか居住の推進」に向けて県は何が出来るかということでありますが、本年3月に県が策定した「山口県住生活基本計画」においては、「街なか居住の推進」について、次のように述べられています。

中心市街地活性化や定住人口を確保するため、民間オーナーとの連携によ  るファミリー向けや高齢者向けの賃貸住宅の供給や、民間住宅の借上げ等による市町営住宅の供給の促進など、商業のみならず居住や公共サービスのバランスがとれた市街地を形成する街なか居住を推進します。

この「街なか居住の推進」についての県の考えで不満に思われるのは、県営住宅のことに触れていないことです。
そこでお尋ねです。私は、県営住宅を新たに街なかに増設する必要はないと思いますが、既存の県営住宅を建て替えて更新する時は、「街なか居住の推進」に沿う取り組みとして中心市街地への立地が今後計画されていいと考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

第四点は、県の広域調整についてであります。
大型商業施設の商圏は、立地自治体だけではなく複数の市町に及ぶ広域なものでありますことから、市町が単独で用途地域の変更等で立地規制をしても、近隣の市町が受け入れれば、その影響は避けられません。
都市計画法では、市町村が都市計画決定を行う際は、都道府県知事と協議することが手続き上決められていて、都道府県知事が広域的観点から調整の役割を果たすことが期待されています。
よって、大型商業施設等の立地にかかわる市町村の都市計画決定に関しては、そうした広域調整が求められることになると思われますが、平成18年の都市計画法の改正では、その際「都道府県知事は必要があると認める時は、関係市町村に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」として、都道府県が広域的な視点から望ましい立地に向けて、より円滑に調整できるよう仕組みを強化しました。
そこでお尋ねです。中心商店街に大きな影響を及ぼす大型商業施設の立地にかかわる都市計画の広域調整を、本県はどのように行ってきているのかご所見をお伺いいたします。

第五点は、二井県政と中心商店街対策についてであります。
「住み良さ日本一の元気県づくり」を目指して推進されて来た二井県政において中心商店街活性化対策は、政策的にどう位置付けられ取り組まれて来たのか、そしてこれまでの取り組みを通して今後の中心商店街活性化対策はどうあるべきとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎総務部長(池内英之君)
中心商店街活性化対策に関連して、県の公共施設等については、中心市街地への都市機能の集積という方向に沿って、今後の建てかえ等を行うべきとのお尋ねです。
県の施設の整備に当たっては、行政サービスの適切な提供を基本に、施設の性格や利用者の利便性等を考慮し、適地を選定しているところです。
具体的には、多くの県民や事業者が利用する総合庁舎等については、交通事情など利用者の利便性を重視し、各地域の市街地に配置しており、一方、農林水産関係の出先機関など、現地性や地域性を踏まえて配置しているものもあります。
こうした中、お示しのとおり、平成十八年に、いわゆるまちづくり三法が改正され、コンパクトなまちづくりに向けて、中心市街地に都市機能の集約を図ることとされたところです。
県の施設は、目的や機能が多様であり、一律にすべての施設を中心市街地に配置することは困難ですが、今後、多くの県民が利用する施設の建てかえ等を行う場合には、法改正の趣旨を踏まえ、地元市町のまちづくりとの整合にも配慮しながら、適切な立地に努めていきたいと考えております。

【回答】◎土木建築部長(小口浩君)
中心商店街活性化対策のお尋ねのうち、三点についてお答えします。
まず、良好で魅力的な中心市街地の形成についてです。
中心市街地活性化の事業は、市町が策定する中心市街地活性化基本計画に沿って、空き店舗対策や道路整備などのハード・ソフト両面にわたるさまざまな事業により実施されます。
これらの事業については、市町や地域が中心となって取り組んでいくこととなり、県では、事業が円滑に進むよう、計画策定時から、国の支援措置等に関する情報提供や適切な助言を行っています。
また、お示しの県が行う道路や河川等の整備事業につきましては、まず、渋滞の解消や浸水被害の防止など、事業本来の必要性が高いことを前提とし、その上で、中心市街地の魅力の向上に大きな効果が期待できるものについて取り組んでいるところであり、こうした観点から個別に検討していくことになると考えております。
次に、街なか居住の推進についてです。
お示しの山口県住生活基本計画では、「中心市街地における定住人口の確保については、それぞれの市町において、民間賃貸住宅や市町営住宅の供給などにより対応していくもの」と位置づけておりますが、県としても協力し、推進すべき施策と認識しております。
こうした中、お尋ねの県営住宅の建てかえを敷地内で行わず別の場所とする場合においては、まずは入居者の意向を調査し、さらに立地条件や建てかえ計画戸数、費用対効果等を踏まえ、総合的に検討して、移転先を決定することとなります。
したがって、県営住宅の中心市街地への立地についても、今後建てかえ計画を進めるに当たり、これらの条件が整う団地があれば、市町と十分協議しながら検討してまいりたいと考えております。
次に、大型商業施設の立地にかかわる県の広域調整についてです。
大型商業施設の立地は、周辺の人口や交通量等を変化させ、近隣市町のまちづくりや道路などの都市基盤整備に影響を与えるおそれがあるため、お示しのように、平成十八年の都市計画法の改正により、県が広域的観点から調整を行うこととされました。
このため、県では、迅速かつ的確に広域調整を実施できるよう、判断基準や詳細な手続を定めた山口県広域調整ガイドラインを平成十九年十一月の法の施行にあわせて策定しました。このガイドラインに沿って、関係市町のまちづくりなどへの影響について意見照会や調整会議などを行い、必要に応じて、影響への対策について助言や要請を行うこととしております。
本県におけるこれまでの取り組み状況としましては、下関市、山陽小野田市の二つの案件について、意見照会や影響の評価などを適切に実施してきたところです。

【回答】◎商工労働部長(半田健二君)
中心商店街活性化対策についての二点のお尋ねにお答えします。
まず、政策的にどう位置づけて取り組んできたのかということでございます。
中心商店街は、地域コミュニティーの核であり、その活性化はにぎわいのある地域づくりに寄与することから、県においては、商業・商店街の振興を加速化プランの重点事業に位置づけ、商店街の活性化に向けた市町の取り組みを支援してきたところです。
具体的には、お示しの中心市街地活性化法に基づく基本計画の策定については、現在、岩国市と周南市が、国の認定に向けて取り組んでおり、県としては、商工会議所が中心となり設置された中心市街地活性化協議会に参画し、計画づくりに関する助言等を行っているところです。
一方、既に国の認定を受けております山口市と下関市においては、大規模小売店舗立地法の手続の省略が可能な特例区域の指定を行い、こうした要件緩和により、大規模小売店舗の中心市街地への立地を促進しているところでございます。
また、中心商店街の活性化を支援する取り組みについて、中小企業の創業や経営革新を促進するための「やまぐち地域中小企業育成基金」を活用し、やまぐち産業振興財団を通じて、空き店舗を利用したチャレンジショップ事業やテナントミックス事業への助成を行っております。
次に、今後の中心商店街活性化対策はどうあるべきかについてですが、県としては、まちづくりの主体的な役割を果たす市町が、中心市街地活性化基本計画の認定を受け、国の支援制度を活用して、まちづくりと一体となった商店街振興に取り組むべきであると考えております。
このため、今後とも、計画認定に向けて積極的に取り組む市町に対し、地域の実情等に即した情報提供や助言など適切な支援を行ってまいります。

2012年6月30日