平成24年6月定例県議会【地域活性化への取り組みについて】(2)地方分権の推進

(2)地方分権の推進

地域活性化への取り組みについての質問の第二は、地方分権の推進についてであります。
私は、この度中心商店街のことに取り組んでみて見えて来たことがあります。それは、国がお金も権限も持ったまま、国が準備したメニューに沿ってやるところは支援しますよという、国による一元的管理の地域活性化のやり方は駄目だということです。そして、地域活性化は国より県が、市町村と連携して色々取り組めるようにした方がいいのではないかということであります。
平成18年に見直された中心市街地活性化法は、市町村が基本計画を策定して内閣総理大臣が認定する仕組みになっております。見直し以前は、国による基本計画の認定はありませんでした。それが一気に、内閣総理大臣による認定が制度化されたところに国が最大限力を入れて取り組みますよという意図が感じられます。確かに、総理認定となった計画は、国が集中的かつ効率的に支援を行うこととされています。しかし、果たしてそれでうまくいくのか疑問であります。
本県では、山口市及び下関市がこの基本計画の総理認定を受けております。このうち山口市は5年間の事業計画期間が今年度で終了しますので、再認定に向けての動きがあり、岩国市及び周南市においては計画申請の動きがあるようです。
山口市が総理認定を受けてやった計画事業を評価できるのは、まだ先のことになりますが、私が思っているのは、このような計画の策定とそれへの支援は、国が持っているお金と権限を県が持っていて、県と市町の関係でやっていった方が、ずっとうまくいくのではないかということです。県が国より市町に近いところにいて、市町の事情が分かっているからであります。
また全国各地、それぞれの地域に独自の歴史があり、事情があり、特性があって、その全てに通用する地域活性化のメニューを国が考えることは無理と思われるからです。
国は、以前の中心市街地活性化法では、基本計画が粗製乱造になったことを反省したようです。そして見直し後は、全国の市町村に対し国の基準に則って計画を策定し総理認定を得ることができれば、しっかり国が支援しますと宣言しました。そこには、ダメな地方を国が指導するという趣があります。しかし、それでは地域は活性化しません。地域の課題は、国ではなく地域で解決する。そのための自立的な仕組みを整えること、地域の地力を涵養すること、今日国が地域活性化のためになすべきことは、そういうことであります
現在の仕組みでは、本県の市町が基本計画を策定して総理認定を得ようとすれば、経済産業省の出先機関で広島市に在る中国経済産業局を通して国に申請することになります。このことで県を経由することはなく、また県が関与することもありません。
最近、国が打ち出してくる地域活性化の施策は、だいたい同様で、国と市町村、国と地方業界団体等との直接的な関係で実施する仕組みになっていて、国の出先機関が窓口・相談業務を担うということで、県の役割が希薄になっています。
平成20年6月県議会で、私は将来の分権型国家の在り方として道州制の他に30万ないし50万人規模の基礎的自治体としての都市と中央政府という2層構造の国の在り方が選択肢として考えられることを示して、2層構造の分権型国家についての知事の考えをお伺いしました。
その時二井知事は、「基礎的自治体としての都市で処理できない広域的なことを直ちに国がやるという2層構造では、国の権限が強すぎることになって、名ばかりの分権型国家になるのではないかと危惧する。やはり、道州制という方向が適切ではないかと考える。」と答弁をしておられます。
二井知事は、2層構造は、国の権限が強くなり名ばかりの分権型国家になるとの危惧を述べておられますが、今日の国による地域活性化の取り組みがうまく機能してない理由も、その仕組みが先ほど述べたように県抜きの2層構造でやろうとしているからではないかと私は見ております。
今日進行している地方分権は、本来地域のことは地域で解決する仕組みを整えて、地域の活性化につながるものであるはずべきなのに、必ずしもそうなっていない感があります。それは、行政事務の分権化は進んでいるものの、地方が政策面の自由度を増す自立に向けた分権化が進んでいないことと併せ、基礎的自治体として市を重視する一方、県の役割が希薄化して、結果的に2層構造となり国の直接関与が強くなっている面があることが原因しているのではないかと思われます。
現在国が進めている地方分権は、将来都道府県を廃して道州制に移行することを既定路線と見做し、都道府県の役割を減らし基礎的自治体と位置付ける市を重視して、そこに極力権限を移譲するという考えに立っているように思われます。
こうした考えに対し、私は一気に道州制への移行を目指して県の役割を少なくするのではなく、むしろ現在国が地域のことに関し持っている財源と権限を可能な限り県に移譲し、地域のことに関する県の役割を強くして、県と市町村でいろいろな地域の政策課題を解決できるようにすることが、地域活性化を大いに進める分権化の方向であると考えております。
それは、決して基礎的自治体として市を重視する地方分権の流れに逆行することではありません。そのことは当然の方向として尊重し、しっかり踏まえた上で、長い歴史があり国民になじんでいる都道府県制度が現にある限りにおいては、国の出先機関よりも、特に県域においては県が市町村と連携し、また県が市町村を補完して地域の課題に取り組む力を強めていった方がいいと考える次第であります。
以上、地域活性化と地方分権の推進について私の考えを申し述べましたが、そこでお尋ねです。地方分権が進むなか、地域活性化のために県の役割は、どうあるべきとお考えなのかご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(二井関成君)
私からは、地方分権が進む中での地域活性化のための県の役割についてのお尋ねにお答えをいたします。
私は、住民に身近な行政は、より身近な自治体にゆだねることが、住民サービスの向上や地域の活性化につながると考えまして、知事就任以来、市町村重視の基本姿勢で県政運営に取り組んでまいりました。
特に、地方分権が本格化する中にありまして、基礎自治体である市町村が、分権の受け皿としてその力をつけることが重要と考えまして、その最も有効な手段である自主的・主体的な市町村合併の取り組みを支援をしてまいりました。また、市町の自主性・自立性を高めるため、まちづくりや農林関連など百九パッケージに及ぶ権限移譲も積極的に行い、加速化プランに掲げる数値目標を一年前倒しで達成したところであり、こうした取り組みの結果、市町の行財政基盤が強化をされ、政策・行政能力は確実に高まってきているものと考えております。
このように、市町が分権の受け皿としての力を着実に蓄えてきております中で、広域自治体である県といたしましては、どこまでも近接と補完の原理に沿って、市町村に対する補完・支援という基本的な役割を果たしつつ、今後は、近隣県との連携も強めながら、高度・広域的なインフラ整備や、産業活性化、防災、観光などの広域的な行政課題へも対応し、また、自立的で活力のある地域の実現に向けて、より広域的な視点に立った、地域活性化の取り組みを進めるという役割を強化していく必要があると考えております。
こうした中、地方分権の現状は、国と県との関係で見てみますと、さまざまな分野での二重行政や、お示しがありましたように、国から県を経由せず市町に交付される補助金の存在、義務づけ・枠づけ等の国の関与、遅々として進まない国の出先機関の事務移譲など、県の役割の発揮を妨げる多くの課題がありまして、私も合志議員と同様の問題意識を持っております。
したがいまして、私としては、このような県としての役割を果たす上で支障となっている多くの課題の解決に向けて、全国知事会等を通じて、国に対し、引き続き強く求めていかなければならないと考えております。そして、そのことにより、地域のことは地域で決めるという地方分権の本旨に沿って、県が、広域自治体としての役割をしっかりと果たし、市町とともに地域の活性化に取り組んでいくことが重要であると考えております。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答えいたします。

2012年6月30日