平成24年9月定例県議会(1)岩国基地問題について

(1)岩国基地問題について

岩国基地が県民の理解と支持のもと、我が国の安全とアジア地域の平和のために、必要な機能を確保し安定的に運用されるようにしていくことは、山口県政が果たすべき大事な役割であります。
そのためには基地問題への県の対応が、根拠のないイメージ的な不安に基づく世論に同調するものであってはならないと考えます。
そうした観点から、この度は「岩国基地問題について」ということで、このことに関し政策判断する上で考慮すべき数点につき、私の考えを申し上げ、県の所見をお伺いいたします。

(1)日米同盟について
日本とアメリカは、国の基本的な在り様が対照的な国です。日本は国の成り立ちが神話にまでさかのぼる自然国家ですが、アメリカは、1776年7月4日、独立宣言の日が建国の日とされる人造国家であります。
文化、文明の面では、アメリカは西洋・欧米圏に属し、江戸期までの日本は東洋・アジア圏に属していました。
国旗も、日本は日の丸で朝昇る太陽を表し、アメリカは星条旗で夜の星になっているのも対照的です。
この対照的な二つの国が真正面から衝突したのが先の大戦でした。昭和天皇は、訪米された時の御挨拶で「私の深く悲しみとするあの不幸な戦争」と申されましたが、まさしく日本民族にとって悲劇の戦いでした。
しかし戦後、日本とアメリカは一転、お互いに戦った悲劇の歴史を乗り越えて、良好な同盟関係を築き上げてきました。そこに、私は21世紀の地球社会の希望を見るものであります。
いろいろな意味で対照的な国であり、且つ世界の大国である日本とアメリカが、相提携し補完し合って同盟国としての関係を深めていくことが、世界の平和の基礎になると思うからです。
違いが多いアメリカではなく、同じアジア同士である中国との関係を強めてアメリカに対抗していこうという方向は、新たにアジアと欧米の対立の構図を生みだすのみで、世界の平和に資することにはならないと考えます。
以上申し上げましたことから訴えたいことは、日米双方共に政治に携わる者は、国政のみならず地方政治家も含め、日米同盟関係をより良いものにしていくために努力していくことが、重要な責務として求められているということであります。
そこで第一のお尋ねです。知事は、日米同盟の意義をどう認識しておられるのか、ご所見をお伺いいたします。

(2)日中関係について
次は、日中関係についてであります。アジアの隣国であり、歴史的にも文化的にもつながりの深い中国との善隣友好関係を大事にしていくことは当然のことであります。ただ、「備えあれば憂いなし」を期して、中国とは付き合っていくことが肝要であると考えます。
中国共産党政権によるチベット併合は百万人を超える人々が犠牲になったと見られており、第二次世界大戦後の世界で起きた最大の悲劇のひとつです。その悲劇の経緯を事実に即してたどっていくとき、そういう事態を招いた要因が、チベット自身にもあることが分かってまいります。
チベットにおいてチベット仏教の法王と世俗的な国王を兼ねる地位がダライ・ラマであります。現在のダライ・ラマは14世ですが、その前のダライ・ラマ13世の時代1920年代に、チベットは軍隊の近代化に取り組み軍事力の強化を図ろうとしました。ところが、この動きに仏教界は、「世俗の軍隊を強化するとはとんでもない。非暴力を旨とする仏教の原理とは相いれない。」と主張して猛然と反対します。こうした仏教界の反対は、その実、新軍隊の維持費のために仏教僧院にも課税されることを嫌ったためだと見られておりますが、ダライ・ラマ13世は、度重なる僧院の反対圧力に嫌気がさしてしまい、それまで進めてきた軍の近代化を断念してしまいます。
この結果、中共軍のチベットへの侵入が始まった1949年当時のチベットの軍隊の兵力は、兵員は将校と兵士合わせて8500名、各種大砲50門、曲射砲250門、機関銃200挺といった状態で、中国の武力併合を阻止する力は無きに等しい有様でした。
中共軍の侵略がはじまった当初、チベット政府は、イギリス・アメリカ・インド等に、中国に対しチベットへの侵略の中止を勧告するよう要請しますが断られてしまいます。また、国連に訴えますが、国連総会はチベット問題を審議に取り上げませんでした。
その時の心境をダライ・ラマ14世は、自叙伝「チベットわが祖国」に、次のように記しています。
「私たちに対する悲しむべき打撃は、国連総会がチベット問題を考慮、審議しないという決定をしたニュースであった。この知らせは私たちを仰天させた。私たちは、正義の根源として国際連合を信頼していた。」
「今や、私たちの友人たちは、正義のための嘆願提出に、私たちを助けようとさえしなかった。中国軍の大軍の中に、私たちは見捨てられたと感じた。」
平和憲法と称される我が国の現憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」との文言がありますが、そのような決意に国の運命を託することができないことは、チベットがたどった悲劇が如実に物語っています。
将来、アメリカの力が相対的に弱まり、日米同盟が脆弱化して力の空白が生じた場合、海軍も含め強大化された中国の軍事力の鉾先が、「日本解放」の名のもと日本に向けられ、チベットの悲劇が我が国で繰り返されないとも限りません。
そういう事態を招かないためには、力の空白を生じさせない不断の備えが大事であり、日米同盟はその基盤となるものであります。
徒に、中国を敵視、危険視することはあってはなりませんが、建設的な日中関係も日米同盟がしっかりしていて力の空白を生じさせない備えの上に成り立つものであることを強調しておきたいと思います。
以上、日中関係については通告していましたが、私の考えを述べるにとどめまして、

(3)在日米軍基地について
私たちは、我が国に外国の軍隊米軍がいる、そのための米軍基地があるということをどう受け止めるべきなのでしょうか。
在日米軍基地の存在そのものを問題視して撤退を求める主張があります。
一つは、在日米軍を占領軍の延長と見る見方から。
もう一つは、米軍基地を、アメリカの帝国主義的世界侵略の軍事拠点とみなす見方から。
私は、こうした見方はいずれも現実に即していないと見ております。
在日米軍基地は、ご案内のように安保条約第6条「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」との規定に基づく施設でありますが、同条約はさらに第10条の後段において「この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。」と規定しております。
現在の安保条約は、昭和35年に改定されたものでありますので、それから十年を経過した昭和45年以降は、日本がアメリカに安保条約の終了を通告すれば、一年以内に在日米軍は撤退しなければならない定めになっているのです。
しかし、それから40年以上経過しておりますが、その間一度も「安保条約の終了を通告しよう。」との声は、我が国で挙がったことはありません。
日本国民の大多数は、安保条約が我が国の安全のために必要と認めている訳でして、そのことに基づいて駐留する在日米軍を占領軍の延長の如く見る見方は、妥当でないと思う次第です。
また在日米軍基地を、アメリカ帝国主義の侵略拠点とする見方は、反米の立場からのひとつのイデオロギー的な解釈であって、私はこれに同調することはできません。
今日、世界の国々の中で卓絶した経済力と軍事力をもつアメリカは、アメリカ自身及びアメリカを中心とする世界的秩序への脅威に対して、世界の何処であろうとも即応対処できる能力を軍事的に維持するとの方針のもと、世界的規模で米軍再編を進めており、その中で在日米軍基地は、一層その重要度を増す方向にあります。
このことを、アメリカの侵略意思とみなすか、平和への意思とみなすかは観点の違いであります。ただ、平和的秩序を最終的に担保する軍事力が、国連の下に置かれるようになるまでの間は、世界各地に在外基地をもち全世界規模で対応能力をもつ米軍の軍事力を世界の平和をあらしめる力として行く方向が、現実的な次善の策であると考えます。
岩国基地を含む在日米軍基地は、そういう方向の中において、特に我が国を含むアジア・太平洋地域の平和と安全のために重要な位置を占めております。
そこでお尋ねです。知事は、岩国基地を含む在日米軍基地の存在をどのようにお考えなのかお伺いいたします。

(4)基地機能の強化について
岩国基地が沖合移設されるにあたって、県は岩国市とともに国に対して「基地機能の拡大強化にならないようにされたい。」と要請されています。
この要請内容が、文字通り適用されるとしたら、おかしなことになります。我が国を取り巻く軍事環境の変化に応じて、岩国基地の基地機能の強化を図ることができないからです。
北朝鮮の核開発や弾道ミサイルの増強は、我が国の安全への深刻な脅威になっています。また、中国では、国防費が速いペースで増大しており、公表されている分だけでも過去5年間で2倍に、過去24年間では30倍の規模になっていて、軍事力の増強、兵備の高性能化が、国の重要課題として強力に推進されています。
こうした事態に対応して、抑止力としての軍事機能の強化を図ることは当然考慮されるべきことであって、その一環としての岩国基地機能の強化は、この要請によって排除されてはならないと私は考えます。
このことに関して本県がとってきた対応は、まことに賢明でした。防衛は国の専管事項であるとして基地の軍事機能の領域には直接コミットせず、「基地機能の強化」については、基地機能の変化により航空機騒音や安全性等の面で、基地周辺住民の生活環境が現状より悪化する状態が生ずるかどうかを判断基準にしてきました。
要約すれば、「基地周辺住民の生活環境を、現状より悪化させる基地機能の強化は、容認できない。」ということで、これが本県の岩国基地問題に対する基本的な対応方針でした。
私は、この対応方針については理解し、支持するものであります。
そこでお尋ねです。「基地機能の強化」についての判断基準は、これまでの考え方を踏襲するのか、ご所見をお伺いいたします。

(5)オスプレイについてであります。
オスプレイは、アメリカ国防省が25年もの長い歳月と莫大な経費を投じて開発したヘリと固定翼機を兼ねる輸送用軍用機であります。海兵隊用のMV-22,空軍特殊作戦用のCV-22、海軍向けのHV-22の三種類があり、沖縄普天間基地に配備されようとしているのは、海兵隊用MV-22オスプレイであります。
MV-22オスプレイは、普天間基地に現在配備されている輸送用ヘリCH-46の後継機として配備される予定ですが、これと比較して最大速度は2倍、搭載能力は3倍、行動半径は4倍となります。こうしたオスプレイの優れた機能は、緊急時における海兵隊の機動展開・即応力を大幅に向上させるもので、在日米軍の抑止力の強化に資すると見られています。
ただ、このオスプレイの配備には、試作機段階から事故が相次いだことがあり、関係自治体ではこれを危険視して強く反対する声があります。しかし、我が国は、このオスプレイの配備を拒否することはできません。オスプレイの配備は、安保条約に基づく在日米軍基地の部隊装備に関する機種変更であり、日本政府の了解を必要とする事項ではないからです。
運用上の安全確保については日米合同委員会で協議されましたが、ここでの合意事項を米軍が順守する限りにおいては、訓練飛行も含めその運用を我が国は受け入れざるを得ません。
配備が予定されているのは沖縄の普天間基地ですが、その本格配備前に準備飛行目的で岩国基地に、7月23日、オスプレイ12機が陸揚げされました。
山口県議会は、6月定例議会で、モロッコでの墜落事故の原因究明や安全性の再確認、配備先関係自治体の理解などの条件整備を行う前の先行搬入は認められないとする意見書を決議しましたが、効を奏しませんでした。
日本政府は、岩国基地に搬入されても安全性が確認されるまでは訓練飛行も含め一切我が国でのオスプレイの飛行はないとしていましたが、9月19日、墜落事故は、「人的要因が大きく、機体自体に問題はない。」とした防衛省の事故原因調査報告書と日米合同委員会での運用上の安全確保についての合意を受けて、「オスプレイについて、国内運用の安全性が十分確認された。」として運用開始を認める方針を表明しました。
オスプレイが先行搬入され、本格配備前の準備飛行の基地となった岩国基地がある山口県としては、こうした事態にどう対応していくべきなのでしょうか。
私は、オスプレイのことに関しても、これまでの本県の岩国基地問題に対しての基本スタンスである「基地周辺住民の生活環境を、現状より悪化させることは容認できない。」とする方針に基づいて対応するのが望ましいと考えます。
ただ、これまでのオスプレイに関しての本県の対応は、厚木基地艦載機移駐受け入れ判断の場合に比して、量を測って数値化するという定量的な分析がないまま、どちらかというとマスコミ報道で喚起された不安感がベースにある世論に影響された対応になっているように思われます。
航空機の安全性を示す指標として一般的なのは事故率であります。事故率とは、10万飛行時間において損害の大きい機体破損や乗員の死亡等「クラスA飛行事故」が起きた数を指します。これで見ますと、普天間配備予定のMV-22オスプレイの事故率は1.93でして、米海兵隊が保有するヘリを含む航空機の平均事故率2.45よりも低い数値になっています。
この1.93という事故率には、今年の4月に起きたモロッコでの事故も含まれています。尚、今年の6月に、南部フロリダ州で起きた事故は海軍用CV-22が起こしたもので、MV-22の事故率には含まれていません。
因みに、岩国基地に配備されているハリアーの事故率は、6.76であります。定量的に見れば、MV-22オスプレイの安全性は、従前の海兵隊保有航空機に比して向上していると言えます。
オスプレイに関する政治・行政上の対応は、こうしたことも踏まえた上のものであることが求められます。
そこでお尋ねです。MV-22オスプレイの岩国基地への駐機及び岩国基地をベースとした準備飛行は、日米合同委員会での合意が順守されたとしても、県として容認できるかどうかの判断基準である「基地周辺住民の生活環境の悪化」が生ずるとみておられるのかどうか、ご所見をお伺いいたします。
また、もし「生活環境の悪化が生ずる」と見做されるのであれば、そのことに関する定量的な説明を併せお伺いいたします。

(6)沖縄の負担軽減についてであります。
日米同盟は、日本の平和と安全の基軸となるものであり、将来にわたって堅持されていくべきものですが、そのための最大の懸案は、在日米軍基地が面積にして7割以上集中している沖縄の負担を軽減することであります。
岩国基地が、厚木基地の空母艦載機部隊と沖縄普天間基地の空中給油機KC-130を受け入れることになったのは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)合意や米軍再編に係る日米合意の結果でありまして、米軍再編の機会をとらえて厚木航空基地を中心とする「米軍機の騒音問題」と「沖縄の負担軽減」の解決を図ろうとする日本政府の狙いを、岩国基地は沖合移設に伴い双方とも引き受けようとしています。
厚木基地の艦載機部隊の岩国基地への移駐は、米軍再編に関する日米協議の大きな成果とされていますが、このことも沖縄の負担軽減につながることがなければ、単に厚木の騒音を岩国に移すだけのことに終わります。それでは、本県や岩国市が反対の声が未だ根強くある中で、艦載機受け入れを容認し協力することの意味は失われてしまいます。
そういうことからして私は、県や岩国市が、艦載機部隊の受け入れと普天間基地の返還はパッケージであり、普天間基地返還の見通しが立たないまま、艦載機部隊の移駐を先行して受け入れることは認められないとしていることは、理解でき、そうした方針を支持するものであります。
ただ、これからはこれまでの経緯や実情を無視した暴論と言われるかもしれませんが、私の考えを申し上げたいと思います。
私は、岩国基地への厚木基地空母艦載機の移駐は中止を求めていいと考えております。
米軍再編の中での空母艦載機の岩国移駐に関する日米合意は、米軍機による騒音訴訟の解決を迫られていた日本政府の要請を米側が受け入れたものでした。
米側にとっては、第七艦隊の空母の母港がある横須賀に近い厚木基地に艦載機が駐機できる方が望ましいとの判断は、現在も変わっていないと思われます。
岩国基地のことに関心をもって色々調べていくうちに見えて来たことは、空母艦載機の岩国移駐は、米軍の要請によるものではなく日本政府の強い意思により推し進められてきたということです。
日本政府には、多額の国の予算を投入して基地の沖合移設を実現するのだから、そして沖合に移設すれば米軍機の騒音は軽減するのだから、空母艦載機を岩国には受け入れてもらおうとの強い思いがあったのではないでしょうか。
米軍機の騒音問題は、夜間も含めた艦載機の離発着訓練の場所を確保できれば解決することで、それが実現すれば米軍側には、敢えて艦載機を厚木から岩国に移駐しなければならない理由はありません。
これまでは日米同盟を大事に思う立場から、米軍再編に関する日米合意事項である艦載機の岩国移駐には本県も協力すべきものと考えていました。しかし、現在考えが変わりまして、それは日米同盟の強化とは関係ないことで日本政府のこだわりにすぎず、むしろ岩国基地は、沖縄の負担軽減につながる方向で必要な基地機能を引き受けることにした方がいいと思うに至りました。
その方向で考えられることの一つは、空中給油機KC-130に加えて普天間基地に配備が予定されているMV-22オスプレイ数機の配備を、岩国基地が受け入れることです。そのことは、国に対し空母艦載機の岩国移駐を中止するよう求めることと引き換えであっていいと考えます。
オスプレイに関する日米合意では、負担軽減の観点から沖縄以外での運用も検討するとされたところです。
MV-22オスプレイの配備がスムーズに進捗することは、安保条約に基づく日米同盟関係が揺るぎないものとなり、我が国の防衛力を強化する上からも大事なことであります。そのため、その負担を岩国基地が沖縄普天間基地と分かち合うことは意義ある国の安全への貢献であると考えます。
繰り返しになりますが、厚木基地の騒音問題は、空母艦載機の離発着訓練場を別途確保することが出来れば解決します。そうなれば、空母艦載機を岩国へ移駐する理由はなくなります。
日本政府が、基地の沖合移設と引き換えに岩国基地を艦載機の離発着訓練の場所とすることを考えているとすれば、撤回を求めるべきです。
基地の沖合移設は、米軍機が市街地上空を飛行することによる危険を回避し、騒音等を軽減することにより、岩国基地が基地周辺住民を始めとする県民の理解と支持を得て、将来にわたり安定的に運用されるようになることを目的としたものであり、そのことが我が国を含むアジア・太平洋地域の平和と安全のために重 要との判断のもと取り組まれた国策事業であると考えます。
岩国の米軍基地は、元来沖縄に駐留する米軍海兵隊の航空基地であります。その基地機能が、将来にわたり安定的に確保されるようになったことで、沖合移設の目的は充分達せられているのです。
そこでお尋ねです。以上申し上げましたことから、沖合移設された岩国基地が受け入れるべきは、厚木基地の空母艦載機ではなく、沖縄の負担軽減につながる方向で必要な基地機能であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(山本繁太郎君)
合志議員の御質問のうち、私からは、日米同盟と在日米軍基地に関するお尋ねにまとめてお答えいたします。
国が、安全保障の基本方針等を示すものとして、平成二十二年に閣議決定いたしました防衛計画の大綱によりますと、我が国の平和と安全を確保するためには、今後とも日米同盟は必要不可欠であり、多国間の安全保障協力やグローバルな安全保障課題への対応を我が国が効果的に進める上でも重要であるとされているところであり、県といたしましては、国のこのような外交・防衛政策については、これを尊重し、協力すべきであると考えております。
また、岩国基地を含む在日米軍基地は、日米同盟が我が国の防衛やアジア太平洋地域の平和と安全に寄与する抑止力として十分に機能するために、我が国とその周辺において米軍が迅速かつ機動的に対応できる態勢が平時からとられている必要があると国が判断し、米軍の駐留のために提供しているものであります。
いずれにしても、日米同盟や基地の存在、米軍の駐留そのものについては、地方公共団体の長である私としては、その是非を論ずる立場にはないものと考えております。
その一方、騒音問題や航空機事故の危険性、米軍人などによる事件・事故など、基地の存在に起因するさまざまな問題については、県民の安全で平穏な生活を確保する立場から、国に対し、言うべきことは明確に言うという姿勢で対処してまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

【回答】◎総務部理事(小松一彦君)
岩国基地問題についてのお尋ねのうち、まず、基地機能の強化の判断基準についてお答えします。
県としては、岩国基地への部隊配備等の問題に対し、「今以上の基地機能の強化は認められない」「NLPの実施は認められない」「地元の意向を尊重する」という三つの基本姿勢で対処しているところであります。
このうち、基地機能の強化については、県として、基地の軍事的な機能を判断する立場にないことから、引き続き、基地機能の変更によって、騒音や安全性の面で基地周辺住民の生活環境が悪化する状態が生じるかどうかを判断基準とすることとしております。
次に、オスプレイについてのお尋ねです。
本県では、岩国基地の今以上の機能強化は認められないということを基地問題に対する基本姿勢の一つとしており、基地機能の変更による周辺住民の生活環境への影響をその判断基準としているところです。
このたびのオスプレイの陸揚げ、機体整備、準備飛行等の実施はもとより、沖縄への配備後に一カ月に二、三日間行われるとされている岩国基地への短期展開についても、航空機や部隊が岩国基地に恒常的に配備されるものではないことから、一時的な運用の範囲内であると整理しております。
したがって、これらの一時的な運用は、基地機能の変更に該当しないため、基地周辺住民の生活環境に係る定量的な検討は行っておりません。
しかしながら、本年四月及び六月にオスプレイの墜落事故が続けて発生していることから、県民の安全で平穏な生活を確保する立場にある県としては、真に安全性が確保されない限り、オスプレイの陸揚げや飛行に反対であると国に伝えてきたところであり、オスプレイの飛行運用を開始させるとした先般の政府決定においても、事故の再発防止策に具体性がないなど、内容が不十分であることから、いまだ県民の懸念が払拭されていないと考えております。
次に、沖縄の負担軽減についてのお尋ねです。
沖縄の負担軽減については、本県としては、本土の地方自治体において、沖縄の負担をできるだけ受け入れていく姿勢が必要と考えており、全国知事会においても「沖縄県に米軍基地が過度に集中しており、負担の軽減が必要であることを理解する」との声明が取りまとめられているところであります。
こうした認識のもと、本県ではこれまで、平成八年のSACO合意に基づき、沖縄の負担軽減の観点から、全国に先駆けて、普天間基地のKC130空中給油機十二機の岩国基地への受け入れを容認しております。
一方、厚木基地からの空母艦載機の移駐については、当初、騒音の単なるたらい回しであるとして反対しておりましたが、国から、米軍再編の目的は抑止力の維持と、沖縄を中心とする地元負担の軽減であり、個別の再編案は、全体として統一的なパッケージであると説明を受けてきたことから、これに協力する姿勢で対応しているところであります。
いずれにしても、沖縄の負担軽減については、どこまでも外交・防衛政策を所管する国が、その責任において、安全保障上の必要性を踏まえ、日米間で協議の上、進められるべき問題であると考えております。

(再質問)
県民が不安に思うから、県民の不安は払しょくされていないと言うだけでは、県としての役割を果たしているとは言えないと思います。
県民の不安解消の責任は、国とともに県も共有していると考えるからです。
平成11年に成立した地方分権一括法による地方自治法の大改正は、国と自治体は「対等」の原則を定め、機関委任事務の廃止等、我が国の地方自治法制を一新しました。
地方分権が進展し、国と自治体との関係が対等とされたことは歓迎すべきことであると考えますが、そのことに応じて自治体も、特に国の存立に係る防衛について、国と共に責任と課題を共有する姿勢が求められると考えます。
そういう姿勢が伴わないまま、地方分権だけが進んでいって、果たして国の将来は大丈夫なのか、危惧の念が生じます。
防衛は国の専管事項であるとしても、地方自治体の協力は不可欠です。役割の違いはあれ、防衛も国と地方との共同作業で成り立つものだからです。
国の存立があって地方がある、地方栄えて国栄える、政治・行政の面でも国と地方とは役割の違いはあっても不可分一体であることは、国の官僚として一身を捧げ、古い言い方かもしれませんが「お国のために奉公」してこられた山本繁太郎知事が、最も身を持って感じておられることであると思います。
また地方分権の意義を、最もよく理解しておられるのも山本新知事であると考えます。
その山本知事が、防衛のことに関して国と共に責任と課題を共有するとの姿勢を、全国に先駆けて明確にされることを期待します。
在日米軍基地が在ることによって生じている問題も、全国の自治体の首長が、そういう姿勢で協力しなければ解決しないと思うからです。
厚木基地の騒音問題を解決するために、空母艦載機の離発着訓練場所として、現在、鹿児島県種子島の西方12kmの海上にある無人島馬毛島が有力な候補地になっているようですが、このことが我が国の防衛上 重要であることを踏まえ、鹿児島県知事には是非その実現にご尽力いただきたいと願っています。
そうなれば、山口県は岩国市の理解を得て、岩国基地に艦載機ではなく、オスプレイのことも含め沖縄の負担軽減という方向で必要な基地機能の受け入れに協力するという展開があってもいいと考えます。
要は地方分権が進行する中、国の防衛には広域自治体であると都道府県を含む地方自治体も、責任と課題を国とともに共有して協力すべきであると考えますが、このことにつき知事のご所見をお伺いいたします。

【回答】◎総務部理事(小松一彦君)
再質問にお答えいたします。
地方分権が進行する中で、国の防衛には地方自治体も責任と課題を国とともに共有して協力すべきだという御質問でございます。
安全保障政策は、我が国の独立と平和を守るための国家存立の基盤でありまして、どこまでも国の専管事項であると考えております。
その一方で、国と県との間では、それぞれの立場を尊重し、その信頼関係の上に立って、国は国民の安全、そして、地方は、地域住民の安心・安全を両立させるために協力して取り組んでいく必要があると認識しております。

(再々質問)
オスプレイの安全性に関し、再々質問をいたします。
私は、MV-22オスプレイは安全だと見ております。それは、絶対安全だという意味ではなく、運用される上において求められる安全上の水準を確保しているという意味においてであります。
私たちが日常生活で使っているものも、絶対安全のものはありません。如何なるものも、いくらかのリスク、危険性を包含しております。ただ、そのリスク、危険性が確率上、無視してもかまわない程度のものが、安全と見做されて使われているというのが実情であります。
私が、MV-22オスプレイを安全と見做すのは、一つは、先ほど触れましたように事故率が1.93と低く、定量的に見れば安全水準は確保されており、すでに運用されている海兵隊の航空機に比して安全性は向上していると見られること、もう一つは、オスプレイの安全に最も真剣なのは米軍それ自体であって、安全上の問題があれば運用されるはずがないと思われるからです。
オスプレイは、イラク戦、アフガン作戦には実戦配備されて運用されており、また、議会や政府の要人を運ぶ輸送手段としても活用されています。
要は、安全かどうかの問題は、安全と見做し得る安全上の水準を確保しているかどうかということであります。
オスプレイは、福田岩国市長が懸念したように、試作機段階の事故の映像を繰り返し放映して不安をあおるようなマスコミ報道によって、危険のイメージ、世論が作り上げられてしまった感があります。
しかし防衛に関する政治・行政上の判断は、こうしたイメージ、世論に影響されるものであってはならず、合理的な根拠に基づくものでなければなりません。
そこでお尋ねです。知事が、MV-22オスプレイは安全性が確保されていないと見做されるのは、如何なることに基づいてなのか、また、どういうことが明らかになれば安全と見做し得るとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

◎総務部理事(小松一彦君)
再々質問にお答えいたします。
オスプレイの安全性が確保されていないとみなし得るのはどのようなことに基づいておるのかということ。さらには、どういうことが明らかになれば安全とみなし得るのかという御質問でございます。
本年四月にはモロッコで、また六月にはフロリダで墜落事故という重大な事故が続けて二件発生したことにより、オスプレイの安全性に対して大きな懸念が生じております。
それに対して政府が日米合同委員会で確認した事故の再発防止策は、人為的ミスが起きた原因が不明のまま、指揮監督や訓練を徹底することが中心となっており、具体性がないこと。また、オスプレイの運用にかかわる日米合同委員会合意も過去の合意内容を再確認したにすぎないものも含まれるなど、その内容が不十分であることから、県としては、県民の懸念が十分に払拭されるには至っていないと考えているものであります。
県としては、五項目の要請の中で、地元自治体等が納得できる説明を求めており、ただいま申し上げましたような点について、国から納得できる説明がなされる必要があると考えております。

補足 (導入)
新政クラブの合志です。
先ず、山本知事、知事選ご当選、そして知事ご就任おめでとうございます。
山本知事誕生を強力に推進された方が、「山本繁太郎さんは、日本一の知事になる人だ。」と強調されていました。私もそう思います。
21世紀の日本の地域モデルを山口から創っていく。そして、山口から日本をよくする。
そういう方向での山本繁太郎新知事の、これからのご奮闘に期待し、通告に従い一般質問を行います。
尚、通告しておりました日中関係についての質問は、私の意見の開陳にとどめることにしましたので、あらかじめお断りしておきます。

2012年9月30日