平成25年2月定例県議会(1)子育て支援について

(1)子育て支援について

「子育ては、楽しい。」、そう子育て中のお母さん方が思える環境を整えていくことが、子育て支援の施策の大事な柱であると考えます。
子育て支援は、少子化対策でもなければ、雇用対策でもありません。子育て支援は、子育てのより良い環境を整えていくことそのこと自体が目的であり、その目的に沿った施策が自ずと少子化対策ともなり、雇用環境の改善にもなるものと考えます。
昨年2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」において、社会保障改革の第一の柱に、未来への投資ということで(子ども・子育て支援)の強化が位置づけられたことは、画期的でした。社会保障と言えば、これまで医療・介護・年金のことでありましたが、新たに「子ども・子育て支援」が、財源的裏付けを持って推進すべき最優先の国の社会保障政策の柱として加えられたからです。
そうした関連の中で子育て三法が成立し、子ども・子育て支援が国の社会保障政策の一環として、より拡充される方向で取り組まれることになったことは歓迎すべきことであり、評価するものであります。

子育て三法の主なポイントは三つあります。

その第一は、認定こども園制度の改善です。
幼稚園の機能と保育園の機能とを併せ持つ認定こども園は、認可や指導監督等の所管が、幼稚園機能は文科省、保育園機能は厚労省と二元管理になっていたのを、内閣府が統一的に所管し、文科省や厚労省は必要な連携、総合調整を通して関与するという仕組みに改善されました。また、学校及び児童福祉施設としての法的位置付けが明確にされました。

第二は、認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設です。
このことにより、認定こども園・幼稚園・保育所の各事業者への運営費補助は、原則内閣府から給付されることになりました。また、現在認可を受けていない小規模な保育施設に対しても、市町村が地域型保育の必要性を判断したうえで、新たに市町村が定める認可基準を満たしている場合は、運営費補助が行なわれることになりました。

第三は、地域の子ども・子育て支援の充実です。
子育て中のお母さん方が、親子ともども自由に集い交流でき、また子育ての相談などもできる場所を、地域地域に開設していく地域子育て支援拠点事業等が、市町村が行なう地域子ども・子育て支援事業として明記されました。
こうした子育て支援の施策には、二つの方向があると思われます。いずれも、子どもを産み育てやすい地域社会の形成を目指すという点では共通ですが、一つは、地域社会自体が提供する保育の量と、幼児期の学校教育や保育の質の向上といった保育機能を拡充する方向です。もう一つは、お母さんの子育てを支える地域環境を整えていく方向です。
先程の、子育て三法のポイント第一と第二は、前者であり、第三は、後者であると言えますが、私が、ここで強調したいことは、地域社会自体の保育提供体制の拡充も、お母さんの子育てを支える地域環境を整えていくことも、同等に大事であるということであります。
そういう観点から、今回はお母さんの子育てを支える地域環境を整えていくことにつき質問を行うものであります。
尚、お母さんの子育てと申しますと、子どもを育てるのはお母さんだけではない、父子家庭もあるぞとの指摘を受けるかもしれませんが、ここではお母さんという言葉は、お母さんの役割を果たす人という意味で使っているというようにご理解いただきたいと思います。
さて、ご案内のように我が国では、子供たちは3歳になるとほとんどが保育園か幼稚園に入園いたしますが、0歳から3歳未満の子供たちの場合、保育園等にお世話になるのは2~3割で、7~8割の子供たちは家庭で主に母親が育てています。
私は先程、お母さんの子育てを支える地域環境を整えることの大事さを強調しましたが、それは、ことに7~8割と見られている3歳未満の未就園児のお母さん方の子育てを支える環境を整えることの大事さであると言えます。
昔は、そういうお母さんの子育てを、家族や隣近所のつながりのなかで支える環境が普通に存在していたように思われます。それが、今日の時代、核家族化が進行し地域における人と人とのつながりも希薄化の傾向にあることから、子育て中のお母さん方を支える地域環境を意識的に創り出し整えていく取り組みが求められています。
こうした要請に応える事業として今日推進されているのが、「地域子育て支援拠点事業」であります。
未就園児を持つ家庭への支援として、先ず始められたのは平成7年からスタートした保育所の機能を活用し子育てに関する専門的な相談や交流を図る「地域子育て支援センター事業」でした。次いで、平成14年から空き施設や空き店舗等を活用し身近な場所で気軽に集える環境整備を目的とした「つどいの広場事業」が始まり併せ展開されることになりました。この両事業が、平成19年に再編統合されて「地域子育て支援拠点事業」として推進されることになり、今日に至っております。平成21年には児童福祉法が改正されて、この事業の法律上の位置づけが明確にされました。そして、平成22年に策定された「子ども・子育てビジョン」では、平成26年までに全国1万カ所の子育て支援拠点を整備する目標が示されているところであります。
では、山口県における「地域子育て支援拠点事業」の取組み状況は如何でしょうか。平成25年1月現在、本県では139カ所の地域子育て支援拠点があります。平成26年度目標数が150カ所でありますので、ほぼ目標達成が視野に入っており、高い水準で本県の子育て支援拠点の設置が進んでいることが分かります。ただ、この設置状況を仔細に見ていきますと、より優れた子育て支援の環境整備に向けて、課題も明らかになってまいります。山本知事は、昨年10月に発刊された山口県の「平成24年度子育て文化創造白書」において、「子育て環境日本一の県づくりの実現を目指す」旨、表明されています。
つきましては、知事表明の「子育て環境日本一の県づくり」に向けて、子育て支援の地域環境が、より一層豊かに整い充実していくことを願い、以下数点お伺いいたします。
お尋ねの第一は、子育て支援の施策推進の基本方針についてであります。
子育て支援が社会保障政策の中に位置づけられ、子育て三法が成立して、国・都道府県・市町村の役割も明確にされ、云わば国を挙げて子育て支援の政策がこれから推進されようとしています。そうした中、本県は今後どういう基本方針のもと、この子育て支援の施策を推進し役割を果たしていくお考えなのか、先ずお伺いいたします。

お尋ねの第二は、子育て支援拠点の設置推進についてであります。
先ず第一点目として、先程子育て支援の施策として、地域社会自体の保育提供体制を拡充していく取り組みも、お母さんの子育てを支える地域環境を整えていく取り組みも、同等に大事である旨申し上げましたが、こうした子育て支援の施策についての基本認識につきましてご所見をお伺いいたします。
次に第二点目として、「つどいの広場型」子育て支援拠点の設置推進についてであります。
「同世代のお母さん方と、話ができることでストレスも解消する。」
「主人は、仕事でほとんど家にいない。子どもと二人きりの生活でストレスがたまっていた。ストレスがピークの頃、ここを知った。ここでは、スタッフが子どもを見てくれて、少し離れて見ることができ、ゆっくりできる。」
「何で、こんな思いをしなくてはならない、と一人でかかえこまなくてすむ。自分だけではない、とお母さん同士共有し合えて、気持ちが楽になる。」
「いろいろと先輩ママの話が聞けて育児の参考になる。」
「二人子どもがいるが、三人でいけるところが少ない。ここに来たら安心。家で三人で居るより、ここに来た方が楽しめる。」
「我が家はアパート住まいで狭い。ここは、自分の家のような感じで過ごせる。子どもは子ども同士で遊べる。お互い息抜きができ、くつろげる。」
「ここがなかったら、どうやって過ごしているだろうか、と思う。」
以上は、山口市内にある「つどいの広場型」子育て支援拠点数カ所を訪ねて、そこに集うお母さん方から聞いた声の一端です。
「つどいの広場型」子育て支援拠点は、空き施設や空き店舗、空き家等を利用して子育て中のお母さんが親子ともども、自由に集い交流できる場所でして、子育て支援を目的とする地域組織やNPO法人等が運営主体となり、スタッフには、母子保健推進員や子育て経験豊かなお母さんのお母さん世代、また先輩ママ等がいることから、子育て相談にも応ずることができる、そういうところであります。
私は、そこに集うお母さん方の声を直接聞いて、こうした「つどいの広場型」子育て支援拠点の開設が、全県的にもっと推進されるべきではないかとの思いに至った次第であります。
地域子育て支援拠点は、支援センター型、つどいの広場型、児童館型の3タイプありまして、最も多いのが「支援センター型」で主に保育園に併設されています。先に本県の子育て支援拠点の総数は139と申しましたが、そのうちの121カ所は、この「支援センター型」で、「つどいの広場型」は、グッと減りまして現在17カ所であります。而も、その17カ所のうち9カ所は山口市であります。尚、児童館型は、全県で1カ所です。
私は先程、本県の子育て支援の拠点整備の水準は高いものの、子細に見た場合課題があると申し上げましたが、その一つが、この「つどいの広場型」子育て支援拠点の増設です。
「支援センター型」拠点は、ほとんどが保育園併設で保育士が配置されます。よって、専門的な見地から子育て支援ができる点に特徴があります。一方、「つどいの広場型」拠点は、集いやすく地域や人との親しいつながりができる点に良さがあると思われます。
この二つのタイプの子育て支援拠点施設が、全県の地域地域に両方あってこそ、
山本知事が目指す「子育て環境日本一の山口県」が実現するのではないでしょうか。
そこでお尋ねです。本県は、地域子育て支援拠点事業における設置目標は、ほぼ達成の水準にありますが、その9割近くは「支援センター型」であることから、「つどいの広場型」子育て支援拠点の増設に、目標を定めて取り組むべきだと考えます。そして、「支援センター型」と「つどいの広場型」の両方の子育て支援拠点がある地域子育て環境を全県的に実現すべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
次に第三点目は、地域子育て支援拠点事業への県負担についてであります。
子育て三法のひとつ「子ども・子育て支援法」は、その第65条から68条までの条文で、子育て支援事業の実施主体である市町村が、費用を支弁すべき事業と、その費用の国及び都道府県の負担について規定しています。
それによりますと、保育施設に係る施設型給付及び地域型保育給付については、国が2分の1、都道府県が4分の1の負担となっています。これは、従来の認可保育園への運営費補助の在り方を、小規模な保育を 提供する施設にまで拡大して明文化した規定と言えます。
一方、地域子ども・子育て支援事業に係る費用の、国及び都道府県の負担については、「予算の範囲内で交付金を交付することができる。」と記されていて、どういう割合で国及び都道府県が負担するかが制度として担保されていません。
これでは、国の子育て支援の政策は、保育の提供体制の整備も子育て支援の環境整備も同等に大事であるとの基本認識を欠いているのではないかと言わざるを得ません。そうとは云え都道府県の裁量に委ねられたからには、本県においては同法第59条に列挙されている地域子ども・子育て支援事業のうち、特に第9号の地域子育て支援拠点事業については、子育て支援の地域環境整備を、保育提供体制の整備と同様に重要視する政策判断に基づき、費用の2分の1は国が負担すると見做し、4分の1を県負担とすることが望ましいと考えます。
「支援センター型」ないし「つどいの広場型」等の子育て支援拠点を運営する事業が、この地域子育て支援拠点事業でありまして、これまで事業費用の概ね半分相当が国からの交付金でまかなわれてきています。よって、この事業の費用を、国が2分の1負担することは事実上行なわれていて、後の半分は、実施主体の市町村が負担し、県負担はありませんでした。そこに、国の2分の1負担に加え、県の4分の1負担が行なわれるようになれば、県下の市町は、地域子育て支援拠点事業へ一層取り組みやすくなり、課題である「つどいの広場型」の子育て支援拠点の設置も全県的に進むのではないかと期待するものです。
そこでお尋ねです。子ども・子育て支援法で、都道府県は「予算の範囲内で交付金を交付することができる。」と規定されている地域子ども・子育て支援事業のうち、地域子育て支援拠点事業については、本県では費用の4分の1を負担するようにするのが望ましいと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

次に第四点目は、元気子育て支援センター推進事業についてであります。
元気子育て支援センター推進事業は、平成17年に創設された単県事業であります。
国が推進する地域子育て支援拠点事業は、市町村が保育園等の事業者に支給する事業費の半分相当が、子育て支援交付金で補助されることになっています。ただ、そのためには保育園等の事業者は、週に3日ないし5日以上開設すること、一日の開設時間が5時間以上であること、保育士等を1名ないし2名配置すること等の運営水準を満たすことが求められます。
こうした国が求める水準に応ずることが難しい過疎地域等の子育てニーズに対応するため、補助要件を緩和して子育て支援の拠点事業をやりやすくしたのが元気子育て支援センター推進事業でありまして、国の制度が行き届かない過疎地域等を、県事業でカバーしようとするものです。尚、県の事業費補助は2分の1であります。
実は、本県の支援センター型の地域子育て拠点数は、121カ所と申してきましたが、より正確に申しますと、その内40カ所は、この元気子育て支援センターでして、国の子育て支援交付金交付の対象になっている支援センターは81カ所であります。
この現在40カ所の元気子育て支援センターへの事業費補助は、平成17年度から21年度までは単県で、平成22年度と23年度は、国から交付されて県において造成した「山口県安心子ども基金」を活用して行なわれて来ました。
それが、今年度すなわち平成24年度から、この事業への補助がなされていません。当該事業にかかる国の「安心子ども基金」の予算措置がないようになったからです。
元々、この元気子育て支援センター推進事業は、県からの運営費補助を3年間と定めており、その補助期間で事業が軌道に乗り市町で継続されることを期待したものでありました。しかし、この事業への補助がなくなったことにより、事業実施が困難となり過疎地域等での子育て支援環境が後退することがあってはなりません。むしろ、過疎地域等だからこそ、子育て支援の環境をより充実していく取り組みが必要であることは言うまでもありません。
そこでお尋ねです。元気子育て支援センター推進事業への補助が今年度からなくなったことの影響をどう見ておられるのか、先ずお伺いいたします。
次に、子ども・子育て支援法では、保育提供の拡充ということで、地域の実情に応じてこれまで認可を受けていなかった小規模の保育園等も、保育ニーズ調査により必要性が認められれば、地域型保育ということで運営費補助をするようになりました。同様に、地域子育て支援拠点事業はバリエーションを増やして適用対象の事業を拡大し、本県が実施してきたような過疎地域等をカバーする元気子育て支援センター推進事業も包含できるものに改めるよう国に要望すべきであると考えます。ついては、このことにつきご所見をお伺いいたします。
また、そうした要望に国が応える措置をするまでの間、元気子育て支援センター推進事業への単県補助の再開を検討すべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(山本繁太郎君)
合志議員の御質問にお答えします。
まず、子育て支援の施策推進の基本方針等についてであります。
私は、子育て環境日本一の県づくりを進めるためには、子供を安心して生み、育てることができる環境づくりを推進することが重要であると考えております。
こうした環境づくりを進めていく上では、国、県、市町の役割分担をより明確化した上で、基礎的自治体である市町が前面に立って、保育所の機能強化や子育て中の親子が気軽に集える地域子育て支援拠点の設置などに主体的に取り組めるよう、広域的行政体である県は、市町をしっかりと支えていく必要があると考えております。
お示しの子ども・子育て関連三法においても、同様に、子供の健やかな成長のため、保育等の実施主体である市町、国や県が重層的に支えていくこととされております。
お尋ねの子育て支援については、県づくりの基本的方向としてお示ししている「五つの全力」のうち、「人財力の育成」を進める上で、極めて重要な施策の柱であります。
このため、私は、こうした県が市町を支えていくという考え方をもとに、県民の皆様に、「山口県で子供を生み、育てて本当によかった」と心から実感していただけるような県づくりを進めることを基本方針として、市町が主体的に進める子育て環境づくりを支援するなど、県としての役割をしっかりと果たしていく考えであります。

【回答】◎健康福祉部長(渡邉修二君)
地域子育て支援拠点の設置等についての数点のお尋ねでございます。
まず、子育て支援の施策についての基本的認識についてお答えいたします。
県としては、保育等の実施主体である市町村を国・都道府県が重層的に支えるという子ども・子育て関連三法における役割分担を踏まえ、地域のニーズに応じて、お示しの保育提供体制の拡充と、子育てを支える地域環境の整備を適切に組み合わせながら、子育て支援の施策を総合的に推進していくことが重要と考えております。
次に、「つどいの広場型」子育て支援拠点の設置についてです。
地域子育て支援拠点については、住民に身近な市町が地域におけるニーズ等を把握した上で、開設場所や開設日数等の事業計画を定め、当該地域に適した子育て支援拠点を設置すべきものと考えております。
次に、地域子育て支援拠点事業への県の負担についてです。
地域子育て支援拠点事業における費用負担については、現在、その内容が明らかになっておりませんが、今後、国の「子ども・子育て会議」において、国・県・市町村の役割分担を踏まえた検討がなされ、交付金の枠組み等が定められることとされており、県としては国の動向を注視してまいります。
次に、元気子育て支援センター推進事業の廃止の影響についてですが、本事業は、このセンターの立ち上がり支援を目的として実施したものであり、廃止後もおおむね運営が継続されていることから、大きな影響はなかったものと考えております。
次に、地域子育て支援拠点事業に関する国への要望についてです。
地域子育て支援拠点事業の適用対象事業の拡大については、地方の実情に応じた柔軟な対応が可能となるよう、昨年十一月に国に対し要望を行ったところであり、今後とも必要に応じて要望してまいりたいと考えております。
次に、元気子育て支援センター推進事業への単県補助の再開についてです。
県としては、単県補助制度や基金事業により、元気子育て支援センターの立ち上がり支援を行ってきたところでありますが、設置促進が図られていること、それと、基金事業の終了にあわせ、当初の予定どおり補助事業を廃止したところでありまして、単県補助の再開については考えていないところであります。

2013年2月28日