平成25年2月定例県議会(2)エネルギー政策と上関原発建設計画について

(2)エネルギー政策と上関原発建設計画について

エネルギー政策と上関原発建設計画について端的にお伺いいたします。

第一は、山本知事は、我が国の今後のエネルギー政策は、どうあるべきとお考えなのかについてです。
知事選挙の時、山本知事は「3.11を体験した日本人にとって、脱原発依存はあたりまえの話です。」と、明言されました。
この考えは、今も変わっていないのかお伺いいたします。

第二は、原発依存を減らすという方向と上関原発についてです。
平成22年6月に策定された国のエネルギー基本計画は、54期ある原発を、さらに14基新設・増設して我が国の総発電量において原発が占める割合を、3割から5割に増やすというものでした。その新設・増設14基の原発の中に、上関原発2基が計画されていました。
このエネルギー計画は、3.11福島原発事故後、白紙に戻して見直すことになりましたが、これに取り組んだ民主党政権は、2030年代の原発ゼロの方針は示したもののエネルギー基本計画そのものの見直しまでには至りませんでした。
そして、昨年末の総選挙で自民党が勝利し第二次安倍政権が誕生しました。安倍総理は、「前政権が掲げた2030年代に原発稼働をゼロにするとの方針は、ゼロベースで見直す。」と国会で答弁しております。
ただ、自民党が総選挙の時、エネルギー政策については「原発依存は減らしていく。」という方針を公約しており、この方針は、安倍総理も言明しているところです。
そこで、私が指摘したいことがあります。それは、原発依存を減らしていく方向に、上関原発の建設はない、ということであります。
原発依存を減らすと言いながら、上関原発の建設を容認する政治家がいるとすれば、彼は真剣に、本気に原発依存を減らすことを考えていない、ただポーズとしてそう言っているだけで、有権者をごまかしていると言わざるを得ません。
新設・増設の計画がある14基の原発のうち、既に原子炉設置許可が下り、工事計画が認可され着工しているのが3基あります。それ以外の11基の中には、福島第一原発で増設予定だった7号基、8号基や、福島県浪江町・小高町に新設予定の1号基もあって、これらの建設はないと見れば、新設・増設の計画があるが未着工の原発は8基ということになります。この8基の中で、純然たる新設は上関原発の2基で、ほかの6基は全て増設であります。増設は、言うまでもなく既に原発が建設されているところに、新たに建設されることです。
このことから、私が申し上げたいことは、上関原発建設計画が、実施になれば、それは、我が国のエネルギー政策が、福島原発事故以前に戻ったに等しい、ということであります。私は、そういうことは断じてあってはならないと考えております。それは、多くの人達が犠牲になり、過酷な運命に追いやられ、我が国が存亡の淵に立たされた、3.11の大震災そして福島原発事故から、何の教訓も学んでいないに等しいと思われるからです。
私は、3.11の大震災とそれに伴う福島原発事故は、ある意味、我が国への天の警告であり、原発拡大路線からの転換を促すものであった、と受け止めております。
3.11大震災で2万名近くの人々が犠牲になりました。そして、福島原発事故では、東日本壊滅の一歩手前という戦後最大の危機的事態に直面しました。
そのような多大の犠牲を払い、深刻な危機に直面した体験から教訓を学び取り、よりよい日本を創っていくことが、今この国に生きている私たちの責務なのではないでしょうか。
上関原発の計画は、それが建設になるか中止になるかが、我が国のエネルギー政策が、原発依存を減らす方向に行くのかどうかの分岐点になるものと思われます。
福島原発事故を経験したことにより、将来原発をゼロにするかどうかはともかく、原発依存を減らす方向に進むことは、ほぼ日本国民の総意、コンセンサスになっていると見ております。

そこで、山本知事にお伺いいたします。
私は、国のエネルギー政策において原発依存を減らしていくことが、国民の総意であり、その方向に上関原発の建設はないと見ておりますが、このことにつき知事のご所見をお伺いいたします。

第三は、公有水面埋立免許の延長申請についてであります。
山本知事は、今議会で上関原発建設に係る公有水面埋立免許の延長申請についての判断は、1年間先送りする考えを表明されました。
要は、「国のエネルギー政策における上関原発の位置づけが不透明だから許可できない。」との考えから、「国のエネルギー政策における上関原発の位置づけが不透明だから判断できない。」との考えに変わり、「今後1年間の間に国のエネルギー政策における上関原発の位置づけも明確になるであろう。」との見通しで、判断の1年間先送りの表明となったものと見ております。
1年間判断先送りの理由は、そのような理解でいいのか、お伺いいたします。
また、そのことは、経済産業省が国の「エネルギー基本計画」の諮問機関として新たに総合資源エネルギー調査会総合部会15人の委員を決め、年内の基本計画策定を目指して、議論を再開することにしたことと関連があるのか、併せお伺いいたします。

第四は、県の基本的な考えについてであります。
県は、これまで上関原発建設計画に対しては、「国のエネルギー政策に協力する。」「地元上関町の政策選択を尊重する。」との考えに立って対応して来られました。そして、その考えは山本知事も同じであり、踏襲しておられます。
しかし、私達は3.11の原発事故から、原発建設問題は立地自治体だけの問題ではなく、広範な周辺自治体も含めた広域的問題であることを学びました。
ご案内のように、広域行政は県の役割であります。
そこでお尋ねです。上関原発建設計画については、「地元上関町の政策選択を尊重する。」との考えを踏まえた上で、「山口県全体の民意を代表する。」との立場に立って国に対して対応すべきであると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(山本繁太郎君)
次に、エネルギー政策と上関原発建設計画のうち、我が国の今後のエネルギー政策についてのお尋ねにお答えいたします。
三・一一の原子力発電所の事故を経験した国民にとりまして、脱原発依存は当然のことであり、この国を将来に向けて、できるだけ原子力に依存しないエネルギー構造に持っていきたいという思いは、国民の願いであると私は受けとめており、その考えは、現在でも変わっておりません。
その余の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

【回答】◎商工労働部長(半田健二君)
エネルギー政策と上関原発建設計画のうちの二点にお答え申し上げます。
まず、原発依存を減らすという方向と上関原発についてでございます。
エネルギーは、国民生活の安定向上並びに国民経済の維持・発展に欠くことのできないものであり、エネルギー政策は国家運営の基本です。
したがって、国において、国民の期待に応えられる新たなエネルギー基本計画をできるだけ早期に策定し、その中で、原子力発電所の新増設計画をどうするのか、国の責任において明確に示していただきたいと考えております。
次に、県の基本的な考えについてです。
上関原子力発電所計画については、周辺自治体や県民の間にさまざまな意見があることは承知しておりますが、県としては、これまで一貫して国のエネルギー政策に協力し、地元上関町の政策選択を尊重するという立場で対応してきており、今後ともこうした立場を堅持してまいります。
こうした中、原子力発電については、国及び事業者の明確な責任において、安全性、信頼性の確保を大前提に進められるべきものであり、県としては、これまでも、上関原子力発電所計画に関して、広く県民の安心・安全を守るという観点から、国に対して言うべきことはしっかり言うという姿勢で対応しており、今後とも同様に対応してまいります。

【回答】◎土木建築部長(小口浩君)
公有水面埋立免許の延長についてのお尋ねです。
上関原発に係る埋立免許の延長について、前知事が示された「申請があった場合には公有水面埋立法に基づき適正に審査する」こと及び「埋め立ての前提となる土地利用計画が不透明であれば、公有水面埋立法上の要件である正当な事由がなく、埋立免許の延長を認めることはできない」ことという法的整理を知事は引き継いでおり、こうした考え方は、現時点に至るまで全く変わっておりません。
したがいまして、県としては、このたびの申請が適法なものであることから、その内容の的確な把握に努め、公有水面埋立法に基づく適正な審査を予断を持つことなく、公正な立場で行っているところです。
その結果、代表質問で答弁があったとおり、審査の過程で事業者が変更はないと主張する上関原発の重要電源開発地点の指定についても審査を尽くさなければ、法律上の要件である「正当な事由」の有無を判断し処分することはできないとの認識に至ったことから、審査を継続し、さらに補足説明を求めるとしたところです。
その際、事業者がみずからの主張に対する立証を行うには、重要電源開発地点の指定に関する将来の見通しなどについて相当の情報の調査・収集が必要と考えられ、一年程度の期限を設けることとしております。
また、したがいまして、お尋ねの今回の補足説明を求めることと、国のエネルギー基本計画の年内策定を目指した議論が再開されたこととは、関連はありません。

2013年2月28日