平成27年9月定例県議会【防災力の強化】(2) 河川観測体制の強化

【質問】(2) 河川観測体制の強化
次に、河川観測体制の強化について、2点お伺いいたします。
第一点は、水位局の新たな設置についてであります。
先般の関東・東北大雨災害では、河川の氾濫による浸水被害が広範囲に及びました。なかでも宮城県では、県の管理分で11河川23カ所において決壊がありましたが、全ては規模の小さい支流で、氾濫注意水位が設定されていたのは、1河川だけでした。
山口県では、平成25年7月の大雨災害で、田万川の支流である原中川が氾濫して特別養護老人ホーム阿北苑が、床上浸水被害に見舞われたことは、今なお記憶に新しいところでありますが、この原中川には、その時点では河川を観測・監視する水位局は設置されていませんでした。原中川には、その後水位局が設置されましたが、宮城県の例でも明らかなように、なかなか河川の支流にまでは、氾濫監視のための水位局の設置が行き届いていないと云うのが本県を含めての現状ではないでしょうか。
しかし、河川の支流といえども周辺に住宅が密集していたり、事業所や様々な施設等があり、河川氾濫の場合は、相当な被害が生ずるおそれがあるところがあります。例えば、山口市では、吉敷川がそうです。吉敷川は椹野川の支流ですが、河床が高く、護岸に近接して住宅等が立地している土地は、低地になっているところが多くあり、護岸の越水、決壊等が起った場合は、広範囲に浸水被害が生ずることが予想されます。しかし、現時点では吉敷川に水位局の設置はありません。こうした例は、県下全域において見られることだと思います。
そこでお尋ねです。新しいステージの大雨災害への対応として、県管理河川への水位局の設置が、現状でいいのかを点検する必要があると考えます。そして、その上で河川水系の本流、支流を問わず必要性が認められるところには、新たな水位局の設置を行なうべきだと考えますがご所見をお伺いいたします。
第二点は、河川の危険個所の情報開示についてであります。
ご案内のように、水位局は、河川が水防団等の出動の目安となる氾濫注意水位、市町長の避難勧告の発令判断の目安となる氾濫危険水位等の基準水位に到達しているかどうかを計測します。そうした水位局による水位計測の情報は、関係市町の防災担当部局が大雨災害に対応するためのベースとなる状況情報であると同時に、パソコン等で関係住民も見ることができるよう公表されますので、住民が自主的に避難行動を取るための状況情報ともなるものであります。
ただそこで問題なのは、ひとつの水位局が監視する河川の担当流域は、その区間が5キロ程のところもあれば10数キロのところもあり、水位局の観測に基づきその流域が例えば氾濫危険水位に達したと公表されたとしても、その流域の何処の地点が氾濫危険箇所なのかということは明らかにされないことであります。
私も、最近になって知ったのですが、水位局が設置されている場所は、河川の水位の観測がしやすい場所であって、氾濫危険個所ではないのであります。ある水位局が監視を担当する流域区間内において、氾濫の危険性が高いと見做される箇所は、複数個所にわたって別途調査されています。そして、その中で増水した場合、一番氾濫の危険性が高いと見做される個所を危険個所として、そこの水位がどの基準水位に達しているかを、水位局があるところの水位により推測すると云う仕組みになっているのであります。
そこでお尋ねです。新しいステージの災害対応の重要なポイントの一つは、住民が自主的に適切な避難行動を取ることができるよう必要な情報を的確に提供することであります。新しいステージの災害から住民の命を守ると云う目標を達成するためには、行政機関の災害対応だけでは限界があるからです。従って、これからは災害に関する情報は、行政機関に対しても住民に対しても、基本的に同等に開示され提供されるべきものと考えます。私はそういう観点から、水位局が監視する河川の危険個所は、これまで行政機関の防災担当者に知らされてきましたが、その情報を住民にも開示するようにすべきだと考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。
尚、その際は、危険個所という呼称を、例えば「警報基準箇所」とか、近隣住民の方々に余り不安感を抱かせないような表現にする等のことも、併せ検討されたらいいと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎土木建築部長(前田陽一君)

河川観測体制の強化についてのお尋ねのうち、まず、新たな水位局の設置についてです。
本県では、洪水により相当な被害が生ずるおそれがある河川について、水防警報河川の指定を行った上で水位局を設置し、市町や住民等に河川の水位情報をリアルタイムに提供しているところです。
こうした中、平成二十五年七月の豪雨により、水位局が設置されていない田万川の支川、原中川において、甚大な被害が発生したことから、支川などの中小河川についても、河川の監視体制の強化を図ることとし、県内全市町を対象に水防警報河川の追加指定に関する調査を実施しました。
この調査結果に基づき関係市と協議を行い、近年の浸水実績や背後の土地利用等を踏まえ、当時指定していた六十一河川に加えて、新たに原中川や吉敷川などの八河川を水防警報河川に指定し、水位局を設置することとしました。
このうち、原中川と阿武川支川、玉江川については、既に水防警報河川の指定と水位局の設置が終わっており、残りの六河川についても計画的に水防警報河川の指定等を進めてまいります。
次に、河川の危険箇所の情報開示についてです。
本年八月、国において公表された、水災害分野における気候変動適応策のあり方によると、自然災害から命を守るためには、住民一人一人が自然災害に対する心構えと知識を備え、情報をもとに、みずから考え適切に行動できるようにする取り組みを推進すべきであるとされています。
県としましても、お示しのように、新しいステージの災害に対応するためには、住民が自主的に適切な避難行動をとることができるよう、必要な情報を的確に提供することが重要であると考えています。
お尋ねの河川の危険箇所の情報開示等については、情報開示により、付近の住民が、河川水位をよりみずからにかかわる情報として認識し、迅速に避難することが可能となりますが、一方で、お示しのように、危険箇所という呼称が住民に過度な不安を与えたり、逆に、危険箇所から離れた地域の住民が、危険性がないという固定観念を持ち、避難がおくれたりするおそれがあることから、今後、国や市町と協議しながら慎重に検討してまいります。

2015年9月30日