平成27年9月定例県議会【防災力の強化】(1)避難力の向上

【質問】防災力の強化

「観測史上初めて」、「記録的な」「経験したことのない」、こういった言葉で形容される大雨災害が、近年頻発しております。確かに、近年の雨の降り方は明らかに変化していて、時間雨量50mm以上の短時間強雨の発生件数が、30年前の1.4倍に増加し、日降水量100mm以上の日数も増加しております。
今年も、先般9月9日から11日にかけて関東、東北一帯に降った大雨は、48時間雨量が11カ所で観測史上最多を更新しており、鬼怒川の堤防決壊により甚大な水害に見舞われた常総市をはじめ各地において浸水被害が発生し、8人の方が犠牲となられました。謹んで犠牲となられた方々に哀悼の意を表し、被災された皆様にお見舞い申し上げます。
気象庁異常気象分析検討会会長の木本昌秀・東京大学教授は、こうした事象について、「今後温暖化が進むと、海面水温が上がって大気への水蒸気の供給量が増え、豪雨の頻度が増加するだろう。災害が起きたことがない場所でも発生する可能性が高まり、誰もが十分な対策を求められる。」と述べています。
また、日本自然災害学会会長や災害情報学会会長を歴任する一方、内閣府や全国の都道府県、市町村の防災・減災に関する委員等を200以上歴任するなど、我が国における災害分野の研究者として著名であり、防災・減災対策の権威として評価が高い河田恵昭(よしあき)関西大学社会安全学部教授は、近年発生する自然災害が、これまでとステージが変わっている、いろいろなところで新しいステージに入っていると指摘し、そうした認識の上で、それに見合った防災対応を新たに考えていかなければならないと訴えています。
国土交通省が、今年1月に公表した「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」は、正しくそのような認識を踏まえてのものでありまして、そこに示されている新たな防災・減災についての考え方や施策の方向、取り組むべき課題等は、今後、都道府県や各市町村の防災対策に反映されていくべき内容のものであると思われます。
そこで今回は、新しいステージの自然災害に対する防災力の強化という観点から、国土交通省が新たな防災・減災の政策文書としてまとめた公表文書の内容を私なりに整理し、その考えを踏まえて、本県における防災力強化に向けての取り組みについて、数点お伺いいたします。尚、以降は「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」の文書を、略称で「新ステージ」と述べることに致します。

【質問】(1)避難力の向上
ではその1、避難力の向上について、先ずお伺いいたします。避難力は言う
までもなく住民の避難力のことであります。
「新ステージ」は、新たなステージの自然災害に対応する対策の基本的な枠組みと目標を、明確に示しています。その要旨は、
第一、「比較的発生頻度の高い降雨等」に対しては、施設によって防御することを基本とする。
第二、それを超えるような最大クラスの降雨等に対しては、住民、企業をはじめとする社会の各主体が、「施設では守りきれない」との危機感を共有し、それぞれに備え、また協働して災害に立ち向かう社会を構築していく。
第三、その際には、ある程度の被害が発生しても、「少なくとも命を守り、社会経済に対して壊滅的な被害が発生しない」ことを目標とする。
ということであります。
滅多に来ることはないが、しかし、いつでも、どこでも起こり得る最大クラスの自然災害への対応方針としては、妥当な方向であると思われます。
「新ステージ」は、そのような基本的な防災・減災対策の枠組みを示したう
えで、最大クラスの自然災害から「命を守る」という目標を達成するためには、
住民の避難力の向上が不可欠であることを強調しています。
新しいステージの自然災害から住民の命を守るためには、今後も避難勧告等の
発令が適切に行われるよう対策を講じていくことは大事なことですが、これからは避難勧告等では対応できない場合も視野に入れ、住民一人一人が自然災害に対する「心構え」と「知識」を備え、いざという時には、避難勧告等だけではなく降雨量や河川水位等の状況情報を基に、自ら考え適切に避難行動ができるようにする、そういう意味で住民の避難力の向上が重要と思われるからです。
そこでお尋ねです。新たなステージの自然災害から住民の命を守る防災・減災
の対策においては、住民の避難力の向上が不可欠であり、そのために、(1)住民への防災知識の普及、(2)幼少期からの防災教育の充実、(3)住民の主体的な避難行動に資する適切な災害情報の提供、等の施策を一層充実し推進する必要があると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(村岡嗣政君)

合志議員の御質問のうち、私からは、避難力の向上に関する住民への防災知識の普及と、適切な災害情報の提供についてのお尋ねにお答えします。
平成二十五年七月二十八日に、本県北部に甚大な被害をもたらした大雨は、気象庁がこれまでに経験したことのないような大雨と形容し、その後も同様の大雨等による大規模な災害が、全国各地で相次いで発生しています。
私は、こうした災害は、いつでもどこでも起こり得るとの認識のもと、チャレンジプランに災害に強い県づくりを掲げ、災害対応力や地域防災力の充実強化など、ハード・ソフト両面から、防災・減災対策に取り組んでいるところです。
お示しの新しいステージの災害から被害を最小限に抑えるためには、行政による公助や、地域で助け合う共助に加え、防災の基本となる自助による取り組みを、一層高めていくことが必要であると考えています。
とりわけ、実際の災害発生時には、住民一人一人が命を守ることを基本として、みずからの判断で主体的な避難行動をとることが重要でありまして、そのためには、防災知識の普及と防災情報の適切な提供が重要であると考えています。
まず、防災知識の普及に当たっては、災害時の心構えや具体的な行動を理解いただくため、防災ガイドブックの作成・配布や、住民参加型の防災訓練等を実施しているところです。
また、自宅周辺など身近な地域における災害リスク等の理解を促進するため、土砂災害特別警戒区域の指定完了を一年前倒しをするとともに、今年度、過去に発生した災害や、その教訓を取りまとめた事例集を作成をして、さまざまな機会を通じて、広く県民に周知することとしています。
次に、防災情報の提供に当たりましては、市町と一体となって、防災行政無線や緊急速報メール等、多様な伝達手段の確保に努めているところでありますが、より迅速かつ的確に防災情報を提供できるよう、平成二十八年度中の運用開始を目指しまして、テレビ、ラジオ等の多様なメディアを通じて一斉配信するLアラートの導入を進めてまいります。
私は、今後、起こり得る大規模災害から県民の命を守るため、市町や関係機関と緊密に連携しながら、安全な避難に向けた対策のさらなる充実強化に、全力で取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

2015年9月30日