平成30年2月定例県議会【3.教育力が発揮される環境の整備】

次に質問の第3、教育力が発揮される環境の整備についてであります。
先ず、今回の質問を行うにあたって教育現場の先生方から寄せられた声を、いくつか紹介したいと思います。

「どちらとも教員の増員が必須である。近年、特別な配慮が必要な児童が増えている。授業中にそのような児童に対しても個別指導をしていると、他の児童の学習は中断してしまう。ただ、補助員でもいいので、誰かがついてもらえるとその児童にとっても、他の児童にとっても学習が保証されることになり、基礎学力の向上につながるのではないか。それが環境の整備であるともいえる。」
「働き方改革が叫ばれる中で、時間の管理のみに目が向けられているように感じる。抜本的に教科指導に関係しない業務の削減が必要である。」
「全国学力・学習状況調査の結果が、基礎学力の向上に生かされているようには感じない。しかも、山口県では5月の忙しい時期に学校で採点、入力したデータを県に送っている。県は、学校で早めに分析して手立てを講じれば学力の向上に役立つと言っているが、手間がかかるだけでそうとは思えない。このことは、業務改善という観点から考えてもおかしいと思う。それよりも、日頃の授業で行う単元テストや定期テストの結果をしっかり分析して、その後の授業に生かすことを続けていくことで、十分に学力の向上につながると思う。」
「英語の導入の仕方について各学校で検討している。本校では、朝の朝学習の時間をモジュール的な形で英語に当てる方向である。以前その時間には国語や算数の練習をしてきた。その時間があることで学力が低位の児童の底上げをしていた面が大きい。道徳の評価、アクティブ・ラーニング、プログラミング学習等様々なものが現場におりてくる。県教委は何に重きを置いているのか分からない。きちんと方向性を示してもらいたい。今のままでは、多くを求めすぎて結果として何一つものにできなくなるように思う。」

以上、教員の増員、業務の改善、学力テストや英語教育の導入等に関しての声を紹介しました。教育への熱い「理想と情熱」をもって教育現場で様々な課題と格闘しながら頑張っている先生方の率直な思いがそこに語られているように思います。
こうした先生方の思いを念頭において、以下教育力が発揮される環境の整備についてということでご所見をお伺いいたします。

(1) 取り組みの現状と今後の方針について
その1は、取り組みの現状と今後の方針についてであります。私は、教育は、教育力がすべてであり、よりよい教育を実現するためには、二つの大きな柱があると思っています。一つの柱は言うまでもありませんが、よりよい教師を確保することであります。そして、もう一つの柱は、その先生方の教育力が発揮される環境の整備であります。
県教委は、よりよい教師の確保については、よく考慮された選考基準に基づく教員の採用ということでその役割を果たしています。従って、次に問われるのは採用された先生方が教育力をしっかり発揮できる環境の整備であります。
そこでお尋ねです。県教委は、本県の学校教育に携わっている先生方が、その教育力を最大限発揮できるよう教育環境の整備にどう取り組んでいるのか、その取り組みの現状と今後の方針についてお伺いいたします。

(2)教職員定数について
その2は、教職員定数についてであります。今回、教育現場の先生方の声を聞くことで明らかになった共通の声は、「先生の数を増やしてくれ。」ということでした。現在、学校教育の現場に立つ先生方の多くは、朝早くから夜遅くまで勤務しても対応しきれない多くの課題を抱えながら、教職の使命を果たすべく奮闘しています。しかし、学校教育がマスの教育から、生徒一人一人に対応する個の教育へと大きく転換しようとしている今日、教師に求められる教育内容は密度を増しており、現行の学級編制や授業構成の中で、子どもたちに対して今求められている水準の教育を行うことは、困難になりつつあります。こうした趨勢の中、文部科学省は教職員定数の増加を図るべく取り組んでいますが、国の財政事情もあり中々進展していません。
公立の小学校、中学校、高校の教職員数は、教職員定数の標準に関する法律、通称標準法によって定められていまして、学級数等に応じて算定される基礎定数に政策目的や各学校が個々に抱える課題等を踏まえて配分される加配定数を加えた人数であります。その範囲内の教職員の給与は、そのうち小・中学校については3分の1は国庫補助があり、残りの3分の2は交付税措置されます。教職員定数を超える人数の先生を雇用することが禁止されているわけではありませんが、それを超えた先生方の給与は、公立学校の設置者である県または市町の負担となります。従って、小中高の公立学校の教職員は、ほとんどが教職員定数内での配置になっております。こうしたことから、公立学校の教職員数を増やそうと思えば、先ずは国において教職員定数算定の基準を緩和して増員を図り、それに相当する給与分を予算措置することが求められます。しかし、教職員定数増員に向けた標準法改定の見通しは不透明のようであります。
そこで、ことに新学習指導要領が全面実施になった場合に懸念されることは、現状ですら教員が足りないという学校現場の状況が改善されないまま、新学習指導要領に基づく新たな教育の実施を求められるようになると、先生が対応しきれない事態が一層増加するのではないかということであります。
私は、新学習指導要領が、各教科の目標及び内容を、①知識・技能の習得、②思考力・判断力・表現力等の育成、③学びに向かう力、人間性等の涵養の三つの柱で再整理し、「主体的・対話的で深い学び」を実現していこうとしている方向性は、妥当なものであると思っております。ただ、そうしたアクティブ・ラーニングの視点からの学びの推進や、小学校教育における英語教育強化の方向は、それに見合う教員の確保が図られなければ、学校教育の現場の苦悩は一層増すのではないかと懸念する次第であります。
そこで、教職員定数に関して3点お尋ねいたします。
本県の平成29年度の教職員定数は、基礎定数に加配分を加え、非常勤への振替なしということで算定いたしますと、義務教育課程の小中学校は、8366人、高校は、2676人でありますが、この教職員定数に沿った教職員数で、本県の学校教育の振興を図るべく、どういう考え方、方針に基づき教職員の配置を行っているのか、先ずお伺いいたします。
次に、新学習指導要領に基づく教育が、小学校は、平成32年度から、中学校は平成33年度から全面実施、高校では、平成34年度から年次進行で実施の予定ですが、このことに伴う必要な教職員の確保にどう取り組もうとしておられるのか、ご所見をお伺いいたします。
3点目は、本県の教職員定数では、本県が望む学校教育の実現が難しいと思われる場合は、県または市町の費用負担による必要な教職員の確保が検討されていいと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

(3)業務の改善について
次に、業務の改善についてであります。何かに取り組もうとするとき、そのことに伴う事務が、しっかりしていることは不可欠であります。従って、学校教育においても、教育それ自体が適切に行われるために必要な事務的業務を、省いたりすることはできません。よって、学校教育における業務の改善は、子どもたちへの教育と関係性が薄い事務的業務をいかに減らすかということと、どうしても必要な業務に関しては、ICT等の活用により効率化を図っていくこと及び教師がやらなくても済む事務的業務を担う人員を確保する等のことが考えられます。そうしたことも含め、先生方の教育力がより発揮されるよう、学校教育における業務の改善にどう取り組まれていくのか、ご所見をお伺いいたします。

(4) 教師の働き方改革と部活動について
最後に、教師の働き方改革と部活動についてお伺いいたします。私は、このことに関しては、文部科学省の提示を待つというのではなく、ある意味全国のモデルとなるような山口県方式の確立に取り組んでほしいと思っています。
私が、未だに不可解なのは、学習指導要領において部活動は、生徒の自主的、自発的な参加により行われるもので、教育課程外の学校教育活動と位置付けられ、一般論的な意義についての言及はあるものの、それ以上何も具体的な記述がないことであります。
因みに、生徒たちの部活動加入状況を調べますと、本県では中学生は、72.5%が運動部に、18.8%が文化部に加入しております。高校生は、51.9%が運動部に、37.2%が文化部に加入しております。運動部と文化部を併せれば、中高ともに約90%の生徒が部活動しています。また、ほとんどの先生方は、どこかの部の顧問等になっておられるようです。
こうしたことから明らかなのは、部活動が、中学・高校の学校教育において大きなウェートを占めているという事実であります。
この部活動で特に運動部について、本年2月に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」の案が示され、週当たり2日以上の休養日を設ける、1日の活動時間は、長くても平日では2時間程度とする等の内容となっております。こうした動きは、安倍政権が最重要課題として取り組んでいる働き方改革と関連するものと思われます。確かに先生方の働き方改革への取り組みは、大事ですが、部活動の学校教育における位置づけを、単に生徒たちの自主的、自発的参加に応えるものとしただけで、その在り方についての考えを明確にしないまま、先生方の働き方改革の観点から部活動に時間的制限を設けようとすることに対しては、疑問を持つものであります。
そこでお尋ねです。私は、本県が、部活動の在り方についての考えを明確にした上で、教師の働き方改革と部活動を両立させる山口県方式の確立に取り組むことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。