答弁【1.国づくりにおける県の役割について】

「1.国づくりにおける県の役割について」【知事答弁】

合志議員の御質問のうち、私からは、国づくりにおける県の役割についてのお尋ねにお答えします。

人口減少や少子高齢化が進行し、地域の活力低下が懸念をされている一方で、Society5.0や人生100年時代の到来など、我が国を取り巻く環境は大きく変化をしております。

私は、こうした中で、我が国が持続的に発展していくためには、県は国の政策と連携をしながら、また広域自治体として市町との役割分担のもと、県全体の経済成長を図るための産業基盤の整備や、市町を超えた広域的な防災対策の推進など、県としての役割をしっかりと果たしていく必要があると考えています。

また、県がその役割に基づく取組を進めるにあたっては、県の置かれている状況や、抱えている課題を的確に捉えた上で、県が有する強みや特色を活かし、市町との連携を図りながら、それを伸ばしていくことが重要です。

私は、こうした考えに基づき、「やまぐち維新プラン」を策定し、現在、「産業維新」「大交流維新」「生活維新」の「3つの維新」に挑戦をすることにより、活力みなぎる山口県の実現に取り組んでいます。

まず、県の発展の原動力となる産業においては、瀬戸内の産業や技術の集積等の強みを活かした次世代産業の育成、幹線道路・港湾などの産業基盤の整備、また、県民の雇用の場となる企業誘致などを進め、県全体の産業振興と競争力の強化を図っています。

交流面では、県下に数多くある観光資源や県産品など、本県の多彩な魅力を国内外でアピールし、県下全域への誘客の拡大や新たな市場の開拓など、人やモノの流れを拡大しています。
生活面では、近年頻発する大規模自然災害への防災・減災対策の強化など、県民誰もが安心して暮らせる生活基盤の構築を図っています。

私は、地方創生をはじめ、国が進める政策に呼応し、市町との連携をしっかりと図りながら、「やまぐち維新プラン」に掲げる取組を着実に進めることにより、活力みなぎる山口県を実現し、そのことによって、新たな「令和」の時代における我が国の発展にも貢献してまいります。

その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

答弁【2.国の政策に対する検証と発言について】

「2.国の政策に対する検証と発言について」【部長答弁】

国の政策に対する検証と発言についてのお尋ねにお答えします。

国の政策の実行に当たり、地域や暮らしに直接影響のあるものについては、その効果を高めるためにも、地域の実情を踏まえて実施されることが必要であることから、県では、様々な機会を通じて状況を把握し、必要に応じて、国に対し、政策や制度の改善等を求めているところです。

具体的には、県の職員が政策を実施する現場で、関係する企業や団体、市町等の担当者から話を伺い、地域の状況の把握に努めています。

また、市町からの要望や知事と市町長との懇談会等により、市長、町長から、直接、意見をお聞きするとともに、「元気創出!どこでもトーク」等を通じて、県民の皆様からも意見や提案などをいただいているところです。

こうして把握した状況を踏まえ、国には、政策や制度の改善等を求めていく必要があるものについては、政府要望の機会等に、各省庁に対して提言・要望を行い、また、少子化対策など、全国共通の課題については、全国知事会等を通じて、国に要望を行っています。
加えて、国に対して「事務・権限の移譲」や規制緩和を提案する、いわゆる「提案募集方式」も活用し、全国知事会等とも連携しながら、国の制度が地域の実情に即したものとなるよう求めているところです。

県としては、引き続き、市町とも連携を図りながら、国の政策が地域の実情を踏まえて実施されるよう取り組んでまいります。

答弁【3.山口発政策モデルの形成について】

「3.山口発政策モデルの形成について」【部長答弁】

山口発政策モデルの形成についてのお尋ねにお答えします。

乳幼児の定期予防接種は、乳幼児の感染症の発症や重症化予防に加えて、社会全体への流行を防止する効果もあることから、県としましては、これまでも医師会等関係団体と協力しながら、接種の機会の確保に努めてきたところです。

こうした中、お示しのように、里帰り出産などで住所地のかかりつけ医療機関での接種ができない場合には、各市町村は、里帰り先の医療機関と委託契約を結ぶ方法か償還払いによる方法により対応することとなっています。

また、予防接種に係る事務手続きや標準的な料金設定なども、医師会等関係機関とそれぞれ調整されていることから、市町村により様々な状況となっています。

このため、全国統一の仕組みづくりについては、ご家族の負担軽減や利便性の向上が期待されるものの、多くの課題があることから、今後、県や市町の担当者会議等を通じて意見を聞いてまいります。

答弁【4.国づくりの方向と県の施策について】

「4.国づくりの方向と県の施策について」【部長答弁】

次に、国づくりの方向と県の施策についてのお尋ねにお答えします。

国民年金と生活保護制度とを比較してのご指摘ですが、老齢基礎年金は、資産や収入に関係なく、保険料納付実績に基づいた額が基本となる一方、生活保護制度は、最後のセーフティーネットとして、資産や収入の活用を要件とし、最低生活の維持のために必要な金額が基準となっています。

国民年金が他制度に比べ不利ではないかとの声があることは承知しておりますが、このように、それぞれの制度の目的や適用要件、算定方法等に違いがあることから、一概に比較できないものと考えています。

県としては、年金制度は社会保障制度の根幹であり、今後とも、全国一律の制度運用が図られる必要があることから、国の責任において、十分な議論のもと制度設計がなされるべきものと考えており、実情調査や、それに基づく政策提言は考えておりません。

令和元年11月定例県議会【令和の国づくりと県の役割】

「令和の国づくりと県の役割」

平成から令和への御代替わりが完了しました。10月22日の即位礼正殿(せいでん)の儀は、日本国民のみならず世界の多くの国々の祝福の中で執り行われ、天皇陛下は御即位を国内外に宣明されました。天皇の御位につかれるうえで不可欠の御一代一度の重儀とされる大嘗祭は、11月14日夕方から15日未明にかけて古式に則り恙なく御親祭されました。この重儀を経て皇位の継承は、名実ともに整い完結しました。誠にめでたく慶祝この上ない次第であります。

11月9日夜、皇居前広場で開催された御即位をお祝いする国民祭典も、翌日10日の御即位祝賀パレードも感動的で、ことに雅子皇后さまが涙されるご様子には、私も心打たれ暫し涙があふれ出るのを禁じえませんでした。

御代替わりという国家の一大重儀のときにおける政権が安倍政権で安定していたことは、我が国の幸いでした。かくて令和の時代は、幸先(さいさき)よく歩みを開始しました。これからは、この令和の時代が平和で将来に希望がもてる、そして恵みと喜びに満ちた時代になるよう、国民一人ひとりが、そのおかれたところにおいて力を尽くしていかなければなりません。そういう思いで、県議としての責務を力の限り果たしていくことを誓い、通告に従い一般質問を行います。

令和元年11月定例県議会【1.国づくりにおける県の役割】

「1.国づくりにおける県の役割」

「地域づくりは国づくり」、これが一貫した私の政治信念であります。国と地域とは一体不可分であり、国がよくなることは、地域がよくなることであり、地域がよくなることは、国がよくなることであります。当たり前と言えば、当たり前のこの事実に立ち、私たち県政に携わる者は、本県の諸課題を解決することを通して新しい時代、令和の国づくりに貢献していかなければなりません。

我が国の統治構造は、おおむね国・都道府県・市町村の三層構造で戦前、戦後と一貫して推移し今日に至っておりますが、将来を展望した場合、都道府県なしの統治構造が、国家改革の方向として想定されています。その方向は、二つありまして、一つは、ご案内のように道州制でして、都道府県を廃し、州を置く方向です。国・州・市町村という三層構造は変わりませんが、州には、国の権限を大幅に委譲して事実上我が国を連邦国家にしようとするものです。もう一つは、基礎自治体としての市を強化して、国と市の二層構造にしていくという方向です。

かくて、未だ漠然としたものではありますが、都道府県は将来いずれ無くなるであろうとの見方が一般的のようですが、私は、そのようにはならないと見ています。それは、我が国においては都道府県というものが歴史的にしっかり根付いており、そのことによって醸成されている都道府県民の意識というものは強固なものがあって、国家統治の単位として都道府県は、将来に渡って認めざるを得ないと思うからです。

現行の地方自治法の定める「国と地方の役割分担」では、国は、国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体に委ねるとしていまして、基本的には住民に直接行政サービスを提供する市町村が、基礎的な地方公共団体として地域の事務を処理する主な担い手に位置づけられています。そして、都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、①広域にわたるもの、②市町村に関する連絡調整に関するもの、③その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当ではないと認められる事務を処理することとされています。

そこでお尋ねです。知事は、国づくりにおける県の役割をどう認識し、令和の国づくりにどう貢献していくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

令和元年11月定例県議会【2.国の政策に対する検証と発言】

「国の政策に対する検証と発言」

長年、地方政治に携わってきてつくづく思うことは、「日本は、中央集権が強い国だな。」ということであります。私たちの地域や暮らしにかかわることも、その根幹には国の政策、法律、制度があり、具体的な実施の細則や基準も国が示します。医療・福祉・子育て・教育・農林漁業・商工業・公共事業、防災等々地域と暮らしにかかわる全ての面においてそうであります。そして、そうした政策の形成は、霞が関と永田町、正確に言えば、国の省庁と国会によって行われます。しかし、政策を企画立案する霞が関の役人も、立法措置を行う国会議員も、常日頃は地方の現場にいません。

そこで、我々地方政治に携わる者は、国の政策を地方の現場にあって検証し、それが地方の実情に適合したものになるよう発言し働きかけていくという役割を果たしていかなければなりません。特に、こうした役割は、国と市町村との間に位置する県政において大きいのではないでしょうか。そういう意味において、県議は、県と我がまちのパイプ役であると同時に、国とのパイプ役になって私たちの地域と暮らしの課題に取り組んでいかなければならないと思っています。

そして又、県行政を担う県職員も同様の意識を持つべきではないでしょうか。どうしても行政職の場合は、定められた法令等に基づいて職務を執行するということで手一杯で、それをよりよい方向に改めるというところまでは、なかなか思いが及ばないかもしれません。しかし、本県の職員は、山口県から国の政策をよりよいものにしていくとの気概と姿勢を持ってほしいと思います。

そこでお尋ねです。県は、地域と暮らしにかかわる国の政策に関しては、ただ国の定めに沿って事務事業を行うだけではなく、それが実情に適合したよりよい政策になるよう検証し、国に対して発言していくべきだと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和元年11月定例県議会【3.山口発政策モデルの形成】

「山口発政策モデルの形成」

次に、令和の国づくりへの貢献ということで、本県が、国もしくは全国の都道府県に働きかけて全国規模で実現してほしいと思う政策、即ち山口発の地域と暮らしにかかわる政策モデルの形成について、一般論ではなく具体的なテーマを取り上げてお伺いいたします。

先般、私は山口市である母親の訴えを聴きました。「娘は、広島市に住んでいて主人と二人の核家族なので、里帰り出産ということで山口の実家に帰り、防府の県総合医療センターで出産した。生まれた子供の首が座るころまでということで、出産後3か月ほどは、家におらせたいと思っていたが、生後2か月から始まる予防接種を受けるためには、その前に広島に帰した方がいいのだろうか悩んでいる。山口市で予防接種を受けることもできるが、住所が県外ということで手続きが面倒だし、一旦は接種料金を現金払いしなければならない。県外での里帰り出産は、よくあること。少子化対策で、子どもが多く生まれるようにというのであれば、県外でも、乳幼児の予防接種を簡単に受けることができるよう、こういうことから改善してほしい。」。おおよそ、そういった内容の訴えでした。

私は、「もっともだ。」と思い、先ずは現在、予防接種がどう行われているのか知ろうと県や市の担当を訪ね、説明を受けました。そして、次のようなことがわかりました。

その1、予防接種は、市町の事務であり、住所がある市町のルールに従って行われる。

その2、予防接種は、予防であり、病気の治療ではないので医療保険の適用はない。

その3、予防接種の料金は、市町と医療機関との委託契約によって決まり、全国統一の料金は、設定されていない。従って、予防接種の料金は、基本的に各市町別々で異なる。

その4、山口県は平成15年に県下の市町が県医師会と委託契約を締結し、予防接種の広域化を実現した。以降、県内住所の乳幼児であれば、県内どこの市町であっても委託されている医療機関で、母子健康手帳と予診票を持っていけば、県内統一の標準料金で予防接種を受けることができる。

その5、予防接種には、定期予防接種と任意予防接種の二通りがあり、乳幼児の定期予防接種は県内の市町では無料化されている。従って、県内住所の乳幼児が、県内の医療機関で定期予防接種を受ける場合は、窓口負担はない。但し、住所が県外の乳幼児について、いったん窓口で接種料金を払う場合は、それが後日償還されることになっている。

その6、他の都道府県でも予防接種の広域化は図られているようであるが、標準料金の設定は、それぞれ別で統一されていない。

その7、県外に住所がある者が、山口県内の医療機関で予防接種を受けるためには、住所地の市町が発行した医療機関への依頼書が必要な場合もある。その依頼書の発行は、交付申請を受けて行われるので、その手続きをしなければならない。

その8、乳幼児の場合は、感染症にかかると重篤になる可能性が高いので、予防接種が可能な時期になったら、早めの接種が望ましい。定期予防接種が始まる標準時期は、生後2か月からである。

以上、私なりの把握を列記しましたが、要は、県内住所の乳幼児の定期予防接種は、委託された医療機関であれば、県内どこの市町であっても簡単に窓口負担なしで受けることができるのに、里帰り出産などで乳幼児が県外住所の場合、定期予防接種を本県の医療機関で受けようとすれば、依頼書の申請・発行の手続きが必要な場合もあり、接種の際は、後で償還されるものの、一旦は、接種料金を窓口で支払わなければならないこともあり、それには医療保険の適用はないということであります。

ご案内のように。安倍政権は、平成28年6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」の中で、少子高齢化という日本の構造的問題に、内閣一丸となって真正面から立ち向かうと宣言し、あらゆる政策手段を尽くすとの決意を表明しています。そして、希望出生率1.8の目標実現に向けて10か年計画を策定し、12項目について課題と対応の方向や施策を示しています。その中で、「子育て中の親の孤立感・負担感が大きいことが妊娠・出産・子育ての制約になっている。」ことへの対応として、「家族において世代間で助け合いながら子や孫を育てることができ、子育てしやすい環境づくりとして、三世代の同居・近居を推進する。」としていますが、私は、加えて、里帰り出産や出産後安定するまでの一定期間、親のもとで子育てしやすい環境を整えることも必要と考えます。そして、そのための具体的な施策として、乳幼児の定期予防接種は、その広域化を日本全国に広げ、県外であろうと住所地の市町と同様に乳幼児の定期予防接種が出来るよう、全国統一の仕組みにするのが望ましいと思います。

そこで、令和の国づくりに貢献する山口発政策モデル形成への取り組みということでお尋ねいたします。乳幼児の定期予防接種は、県外であろうと日本全国どこの医療機関であっても、住所地の市町と同様に母子健康手帳と予診票があれば、窓口負担なしに受けることが出来るよう全国統一の仕組みづくりに向けて、国への働きかけや都道府県の合意形成に、本県が主導して取り組むことを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

令和元年11月定例県議会【4.国づくりの方向と県の施策】

「国づくりの方向と県の施策」

令和へ御代替わりして半年余、「日本は、これからどういう方向に向かって国づくりを進めていくべきなのだろうか。」ということに、ずっと関心を向けてきました。そして、私なりに一つの結論に達しました。それは、「誠実に働き、国民としての義務を果たしていけば、老後を含めてよりよい人生が保障される国」を目指して、国づくりは進めていくべきだということです。

我が国の現状は、誠実に働き、納税や医療保険・年金等の義務をしっかり果たしても報われない社会になっています。「これを改めなければ、日本の将来はない。」、そういう思いが湧いてきて日本の現状に危機感を覚えます。

誠実に働き、国民としての義務を果たしてきても報われず不遇な生活をしている人たちが多いのは、国民年金で老後を暮している人たちです。ご案内のように我が国の年金制度は、国民年金と厚生年金の二つの枠組みで成り立っていますが、問題なのは給付される年金の格差が大きいことです。国民年金の保険料は所得の多少にかかわらず定額で、毎年見直しが行われますが今年度は16410円です。一方、厚生年金の保険料は、平均給与月額が相当する標準報酬月額に18.3%の保険料率を掛けた額です。ただ、厚生年金の場合は、保険料の半分は雇用主が負担します。従って、国民年金の定額に相当する額を厚生年金加入者が負担して納付した場合、実際はその倍額が納付されることになります。負担する保険料は、ほぼ同額なのに、実際納付される額には倍の差があり、年金給付の際に大きな格差が生じます。

このことを、具体的に見てみましょう。向こう40年間、現在の経済状況も現行の年金制度の仕組みや定めも変わらないとの前提で年金関係の方に試算していただきました。その結果、A氏が、国民年金加入が義務付けられている20歳から60歳になるまでの満期40年間、一度も欠けることなく国民年金の定額の保険料16410円を毎月納付した場合、65歳から受け取る老齢基礎年金は、月額で約65000円です。一方、B氏は厚生年金に20歳から加入し60歳になるまでの40年間の月額給与が180000円だったとしますと、本人負担の月額保険料は16470円で、国民年金の定額とほとんど変わりませんので、A氏とほぼ同額の年金保険料を負担し納付することになります。ところが、B氏が65歳から受け取る年金月額は、老齢基礎年金65000円に老齢厚生年金51300円を合算した116300円です。納付した保険料は、国民年金のA氏とほぼ同額であっても給付される老齢年金は月額で51000円余多くなります。更に、夫婦の場合、国民年金であれば、夫婦はそれぞれが定額16410円を毎月納付することで、夫婦それぞれが老齢基礎年金の給付を受けることができます。一方、厚生年金の場合は、例えば夫が厚生年金の保険料を納付しておれば、そのことで被扶養配偶者である妻は国民年金の第3号被保険者となりまして、保険料を納付しなくても65歳から月額65000円の老齢基礎年金を受給できます。このことを敷衍しますと、B氏が負担する年金保険料が、A氏夫婦が納付する定額の国民年金保険料の合算額32820円に相当する場合、B氏夫婦は、A氏夫婦に比べて月額で102000円余多くの年金を受給できる計算になります。遺族年金でも、国民年金と厚生年金とでは歴然とした差がありますが、そのことは割愛します。

満期の40年間、同様に保険料を負担納付した場合、厚生年金の方は、どうにかそれなりの生活が維持できる年金の給付水準が確保されていますが、国民年金の方は、給付される年金額が生活維持すら困難と思われる水準に抑制されている現状をまず指摘しておきたいと思います。

次に、「真面目に国民年金を払ってきた人たちよりも、生活保護を受けている人たちのほうが、よほど恵まれている。」との声をよく耳にしますので、実際どうなのかを見てみたいと思います。

自営業で国民年金の保険料を20歳から60歳まで満期の40年間欠かさず納付した方が、65歳になって受け取ることができる年金月額は65000円です。では、同じく65歳で単身の生活保護基準額は、どうなっているのでしょうか。

山口市居住の場合、生活に必要な食費や光熱水費などの費用として生活扶助費は、月額約73000円です。家賃、地代などの費用に充てられる住宅扶助費は、月額31000円です。それから、教育費、介護費、医療費は、それぞれ扶助があって負担はありません。

国民年金の満額の年金月額65000円は、生活保護の生活扶助基準月額より少ないのですが、その国民年金で暮らしている人は、収入がそれだけであったとしても、健康保険料、介護保険料が年金支給額から天引きされ、病院で診療を受けた時や介護サービスを受けた時は、費用の一部を負担しなければなりません。私が知っているある国民年金の収入で暮らしている人は、大工だった方で、朝早くから夜遅くまで土日の休みなしで働いてきて年金給付が月額55000円ほど。それから医療や介護の保険料等を控除されて手取りが31000円ほどでした。この方は、奥様の国民年金での給付が保険料等控除後で月額55000円ほどあり、その他駐車場での収入があるので何とか生活できているが、旅行に行ったりする余裕はないとのことでした。夫婦とも80歳を過ぎているので近くにある特別養護老人ホームに入ることも考えようかということで介護保険のケアマネに相談したら、「あなたたちの収入では入れませんよ。」と言われたと笑いながら語っておられました。

一方、生活保護の方の場合、特養のような介護保険施設利用の必要が生じた場合、利用料は介護扶助ということで公費で充当されるため支払い能力を心配する必要がありません。介護保険施設や介護サービスの利用は、主にケアマネジャー等が作成するケアプランに基づくものですが、そのケアプランを作成する際、生活保護の方の場合は支払い能力を心配する必要はありませんが、国民年金で暮らしている方の場合は、そのことを考慮してケアプランを立てなければなりません。結果として、介護保険料を月々払っている国民年金の方は、収入で支払える範囲という制約を受けるため、その負担もない生活保護の方よりも、介護保険施設の利用や介護サービスを受けることが困難になっています。同様なことは、医療の場合も、あるいはアパートを借りたりする場合もあります。

こうしたことを知るにつれて、「真面目に国民年金を払ってきた人たちよりも、生活保護を受けている人たちのほうが、よほど恵まれている。」との声は、あながち否定できない我が国の現実であることを確認しました。

国民年金の方は、主に自営業であり、その他民間労働者であっても厚生年金適用の要件を満たさない非正規労働者等の人たちです。厚生年金の方々は、正規雇用の民間労働者や公務員で、基本的には労務管理がしっかりしている企業や公共団体で働いていて、労働時間も定まっており土日祭日の休日も取れる職場環境での仕事です。一方、国民年金の方は、その多くが先ほど紹介した大工さんのように朝早くから夜遅くまで土日休日なしの仕事に明け暮れています。その上、税金や医療・介護保険などの支払い義務もしっかり果たしてきたとしても、老齢になったら受け取る年金は、厚生年金の方と大きな格差があり、その年金収入だけでの生活になれば、生活保護を受けている人たちの水準にも満たないというのは、あまりにも不合理であります。だからといって私は、生活保護の水準を下げるべきだとの考えには組みしません。ただ、国民年金の生活者が置かれている制度環境の現状は、改めなければならないと強く思う次第です。

日本国憲法は、第25条で「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と宣言していますが、我が国の現状においてその権利を保証すべきは、先ず誠実に働き、国民としての義務を果たしてきた国民年金の生活者に対してではないでしょうか。そのための施策に、国は直ちに取り組むべきだと考えます。

ついては、その施策実現への貢献ということで、本県において国民年金で生活している人たちの正確な実情調査を実施し、そのことに基づいて国に対して政策提案を行い、以てよりよい令和の国づくりに向けた現状改革の先鞭をつけてほしいと期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたします。