平成23年6月定例県議会 (3)上関原発と新エネルギー政策について

(3)上関原発と新エネルギー政策について

さて、私は、上関原発建設計画がどうなるかは、今後の我が国のエネルギー政策の動向を示すものとして、重要な意味を持つと見ております。
上関原発の中止は、エネルギー政策が、原発推進から原発依存を減らす方向へ、そういう意味での脱原発へ転換したことを示すものとなります。
一方、上関原発が計画どおり建設されることになれば、福島原発事故を受けていろいろ議論はあったけれど、結局のところ、原発推進の現行路線は変更されなかったことになります。
そういうことで、上関原発については、建設か中止かの議論が、今後、全国レベルで展開されることも予想されますが、私は、より安全な地域社会をつくる、後世に地球環境汚染を残さないという原則的立場から、脱原発への転換となる上関原発の中止が、将来に向けての正しい選択と考えます。
こういうことを申し上げますと、「だったら、必要電力の確保はどうするのか。太陽光や風力の発電では、発電量が小さく、とても原子力発電の代替はできない」との反論の声が返ってきそうですので、このことを上関原発に即して考えてみたいと思います。
この問題は、上関原発建設計画では営業運転開始予定が平成三十年三月になっておりますので、上関原発を中止した場合、その予定年月以降の中国電力管内の必要電力の確保は可能かということになります。
私は、電力供給体制をこれまでの大規模集中効率型から小規模分散自立型に転換していくことを進める、あわせて、火力発電能力の向上強化を図ることで、上関原発を中止しても、必要電力は十分確保されるものと見ております。
電力供給体制を小規模分散自立型に転換していくというのは、太陽光・風力・小水力等の自然エネルギーによる発電と蓄電技術と、賢い送電網と訳されていますが、電力需給の最適化を自律的に図るデジタルネットワークであるスマートグリッド等の組み合わせにより、家庭や地域における電力自給率を高め、電力消費の平準化を進めていくことであります。
電力会社の発電設備は、電力の最大需要にこたえることができるよう整備されていますので、家庭や地域において電力の自給率が高まり、最大需要電力であるピーク電力を押し下げることになる電力消費の平準化が進めば、電力会社は供給余力が増加し、電力不足は生じなくなると思われます。
一方、火力発電能力の向上強化は、そうしたソフト的な取り組みの効果を見きわめつつ、万が一にも電力の需給ギャップを生じないよう電力供給能力を整えておくためと火力発電のクリーン度を高めるために、石炭火力を天然ガス火力に切りかえていく方向で進めていくことが望ましいと思われます。
天然ガス火力は、石炭火力に比べてCO2排出の面でも格段にクリーンであり、熱効率も高く、天然ガス自体は埋蔵量も豊富で、二百年以上は大丈夫と見られています。
そういうことで、私は、上関原発の営業運転開始が予定されている平成三十年までの時間に、それらの取り組みをしっかりやれば、上関原発を中止しても、電力不足は生じないと見ている次第であります。
そして、脱原発に向けた新エネルギー政策においては、この小規模分散自立型の電力供給が重要な柱の一つになると推察しています。
私は、この小規模分散自立型の電力供給地域モデルをつくることは、二十一世紀の新しい地域社会の可能性を示すものとして、極めて意義深い取り組みになるものと思っています。
世の中の動きも、これまでは「大きく集中して効率的に」でしたが、これからは「小さく分散して自立的に」という方向に転換していくように思われます。
そして、その方向転換が、東京一極集中、地方疲弊から脱して、地方復活、元気な日本の実現につながっていくのではないでしょうか。
そこでお尋ねであります。新エネルギー政策の重要な柱となり、二十一世紀の新しい地域社会の可能性を示す小規模分散自立型の電力供給地域モデル構築に向けて、本県が産学官共同で取り組むことを提案したいと思いますが、このことにつき知事の御所見をお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。(拍手)
【回答】◎商工労働部長(森敏明君)
新エネルギー政策についてのお尋ねにお答えをいたします。
エネルギー政策は、本来、国において、エネルギーの安定供給の確保や環境への適合、経済効率性等に留意しながら、総合的、計画的に推進することが求められております。
しかしながら、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーは、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上に資するとともに、環境産業等地域経済への波及効果も期待できますことから、これまでも、「やまぐち環境創造プラン」等に基づきまして、太陽光発電システム等の導入促進や森林バイオマスの活用などに積極的に取り組んできたところでございます。
こうした中、今年度新たにスタートいたしました「新エネルギー利活用プロジェクト」におきまして、地域における水素の持続的な利活用や地産エネルギーを効果的に活用した、いわゆるスマートファクトリーの導入等に関する調査を、大学や水素供給事業者、太陽光やIT関連の企業等と連携して行うことといたしております。
特に、スマートファクトリーの導入に関する調査につきましては、中小企業の工場において、例えば、副生水素を活用した燃料電池による発電や、お示しのありました太陽光・風力・小水力等による発電と蓄電技術及び省エネルギー技術を融合させることにより、安定的かつ最適に電力を供給するハイブリッド型の低炭素工場モデルの構築を目指すものであります。
したがいまして、将来的には、中小都市が点在する本県の地域特性も生かしながら、御提案の、小規模分散自立型の電力供給地域モデル構築を視野に入れまして、密接な産学公連携のもと、「新エネルギー利活用プロジェクト」を積極的に推進してまいります。

2011年6月30日