平成25年6月定例県議会(1)産業政策について

(1)産業政策について

政治は、理想と現実をつなぐ総合的な営みであります。理想なき現実論も現実を無視した理想論も共に政治たり得ません。理想と現実をつなぐ格闘こそ政治の本質であります。
私は、山本知事が官僚から政治家に身を転じられ、山口県知事として理想とするモデル地域の実現に向けて懸命に格闘しておられるお姿に、政治家としての苦悩と輝きの両方を見るものですが、目指しておられる方向は正しいと思っております。 どうか山本知事におかれては、御身を大事にしつつ所信を成し遂げられますよう心からエールを送ります。
私は前回の県議会の時、山本知事の政治家としての思いを簡潔にまとめた「皆さん、どうか力を貸して下さい」というタイトルの冊子のことに触れましたが、 今回は、その内容を少し紹介しようと思います。山本知事が理想として掲げ、その実現を目指しておられる方向を、議員同士お互いに知っておくことも意義あることかと思うからです。では、以下冊子からの引用です。

世界中どこの国でも、経済成長のけん引力となった2次産業、3次産業と農林漁業とのバランスをとって進まなければ、国民の暮らしが成り立たなくなる時代がやってきます。

江戸時代が、世界に類例のない高度農業社会だったという事実を学んだのは旧建設省で国土政策を担当するようになってからです。

当時としては、世界最大級の人口規模を誇る江戸の清潔さも彼ら(幕末に日本に来た西欧列強の軍人や外交官たち)にとって驚きでした。 玉川上水などの水供給施設と井戸などの取水施設を組み合わせた高度な上水システム。近隣の田園地帯からの生鮮食料品の供給と排泄物や生ごみなどの都市廃棄物の処理(肥料としての活用)を、 舟運を中心に一体的かつ合理的に取り扱う供給処理システム、これらの高度な都市システムは、暮らしの中で花や植物を愛する江戸市民の生活態度と相まって、 この時代の西ヨーロッパの都市の水準からは飛びぬけて美しく清潔な百万都市江戸の姿を西洋人に印象付けたのです。

私たちはもはや工業化以前の暮らしに戻ることはできません。経済の発展を目指して歩み続けなければなりません。問題となるのはその発展の中身です。環境問題の解決のために目指すべき方向は、自然と人との営みの調和です。 農林漁業と工業、商業のバランスです。田園と都市の共存です。この方向を目指すとき、江戸時代に我が国が実現した高度農業社会の在り方が大きな手がかりになると思うのです。

現在の世代だけでなく、子や孫の世代さらには末代までの幸せな暮らしを考えて今の生活を営む、持続可能性を正面に掲げた社会。
四季を通じて、自然の力を最大限活かして生産し、生産したものを大切に使うだけではなく、再利用、循環利用することで活かしきる社会。
商工業を営む都市と、農林漁業を営む田園がお互い補い合い支えあって共生する社会。

持続、循環、共生。この三つを大切にする社会を目指して進んでいくほかには、道はないと思うのです。

以上、紹介いたしましたことから、私たちは山本知事の念頭に常にある思いを推察することが出来ます。それは、将来の世代のために、よりよい地球環境を持続していくということと、 経済成長を続けて生活の向上を図っていくということが両立する地域社会モデルを、江戸時代の日本が実現した高度農業社会の在り方を手がかりに、 山口県において実現していこうということであります。そして、その地域社会モデルが目指す方向は、次の三つに要約されます。

1.自然と人の営みが調和している低炭素社会
2.自然、天然の力と生産物を最大限活用し生かす循環社会
3.農林漁業と工業、商業がバランスよく発展し共生する社会

こうした地域社会を本県において実現していこうという方向と、山本知事が最も力を入れておられる本県産業力強化の政策を、 どう繋げていくのかということが第一の質問の趣旨で、二点お伺いいたします。
今議会初日に、「やまぐち産業戦略推進計画」の中間案をお示しいただきました。これを見まして、私は、県内経済の成長を図っていく通常の産業政策としてはよく出来ていると評価いたしますが、 山本県政が推進する産業政策は、その域に留まるものであってはなりません。
そこで第一点のお尋ねです。山本知事が目指すモデル地域としての山口県を実現するという観点からの産業政策についてどうお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

第二点は、食品産業の基幹産業化についてであります。
先日、今月の11日ですが、フランス料理の世界的巨匠で「厨房のピカソ」と呼ばれるピエール・ガニェール氏が山口県庁を訪れ、 山本知事より「美食王国やまぐち親善大使」の委嘱状を受け取りました。ガニェールさんは、フレンチシェフとして三つ星を獲得、 日頃から山口県産アマダイを使うなど、山口の食材に関心を示していたため、県が美食親善大使就任を打診していました。
ガニェールさんは委嘱式で、「山口県の食材にはたくさんすばらしいものがある」と県産の魚や牛肉、ウニ、野菜などを高く評価。 山本知事は「世界的水準にある山口県の食材を、彼の目で評価し紹介して頂ける点を心強く思っている」と話した、と新聞は報じております。
ガニェールさんは、来年3月に県産食材と萩焼を融合させた創作料理を発表する予定だそうです。こうした企画により、食の面で山口県のイメージが高まり観光力のアップに繋がることが期待されますが、 それ以上に私が注目するのは、ガニェール氏の美食親善大使就任と、本県食材への評価は、山口県の食品産業が世界市場をマーケットとする基幹産業になり得る可能性を示唆するものではないかということであります。
私は、ガニェール氏の「美食王国やまぐち親善大使」就任を着想し実現した関係職員の努力を高く評価するものでありますが、この企画実現を一過性に終わらせることなく、 将来を見据えて本県の食品産業を基幹産業に育てる可能性を切り拓くことにつなげていってほしいと思う次第です。
三方海に開かれ、海幸、山幸の食材豊かな山口県は、食と健康と知が集積したフードバレーを形成するにふさわしい県であるということを、 私は、これまで議会で度々提唱して来ましたが、そのことは食品産業を基幹産業に育てていくという取り組みの中で、自ずと形成されるものであり、 その方向は、山本知事が目指す地域モデルである農林漁業と工業、商業がバランスよく発展し共生する社会の実現に繋がるものであります。
「やまぐち産業戦略推進計画(中間案)」は、重点戦略の柱の一つに、「地域が輝く『農林水産業活力向上戦略』」を掲げ、県産農林水産物のブランド化による魅力の向上や、 アジアへの輸出拡大に取り組むこととしておりますが、こうした戦略目標は、県の食品産業を基幹産業に育てていくという政策目標を明確にして推進することによって達成されるものと考えます。
県の基幹産業は、県域を越えた市場をマーケットとする産業ということですが、グローバル経済の今日、それは当然に世界市場をマーケットとする産業であり、従って輸出産業であります。
私は、本県の食品産業はそういう意味での基幹産業として世界市場をマーケットとする輸出産業を目指すべきであり、そう成り得る可能性を有していると見ている次第でありまして、 この度の産業戦略中間案が、プロジェクト事業としてアジアに向けた県産農林水産物の輸出拡大に取り組もうとしていることを支持するものであります。
ただ農産物の輸出ということでは、私は、数年前この議会で県産米の台湾輸出が実現したことを高く評価し、さらに中国へのコメ輸出に取り組むことを提案したことがあります。 しかし、現在はその考えが変わりました。それは、食料の輸出で主力とすべきは、農産物そのもの、海産物そのものではなく、それを加工した食品であるということに思いが至ったからであります。
農産物、海産物そのものの輸出は、どうしても高価、高品質のものに限られ、供給対象も主に富裕層で、需要、供給いずれの側にも裾野の広がりが期待できません。
一方、加工食品は、どういう付加価値をつけるかであらゆる階層が供給対象となり、需要、供給いずれにおいても裾野の広がりには限りがありません。
そこでお尋ねです。私は、以上申し上げましたことから、本県の食品産業を世界市場をマーケットとする基幹産業に育てていくべきだと考えますが、 このことにつきご所見をお伺いいたします。また、そのことを推進するため、食品加工研究体制の充実が必要と考えますが、このことにつき併せお伺いいたします。

【回答】◎知事(山本繁太郎君)
合志議員の御質問のうち、私からは、モデル地域の実現と産業政策についてのお尋ねにお答えいたします。
議員から御紹介もありましたが、私が目指す地域社会モデルとは、「子や孫、末代まで持続可能な社会」、「自然の力を活かして、生産物を再利用、循環利用できる社会」、そして「都市と田園が相互に補完し合え、支え合い、共生する社会」、この持続、循環、共生の三つを大切にする社会であります。
私は、その実現には、一つには、我が国の歴史において、豊かな社会の土台となってきた農林漁業の活性化と、それによる地域コミュニティの振興が大きな鍵になると考えております。
特に、本県では、瀬戸内沿岸の産業集積が、背後の中山間地域における農林業やコミュニティの維持に寄与してきたところでありまして、今後の産業政策においては、一次産業と第二次、第三次産業をバランスよく発展させることにより、こうした共生する社会を、将来にわたって支えていくという観点が重要だと考えております。
さらに、本県は、大量かつ高純度の水素の生成を初め、リチウムイオン電池の主要部材や太陽光パネルを製造する企業が集積するなど、循環型社会を構築するための産業力を有しております。これらの地域資源を見直し、生かしていくことによって、成長しながら、持続、循環、共生する地域社会をつくることができるものと考えております。
このたび発表いたしましたやまぐち産業戦略推進計画(中間案)では、こうした考え方のもと、産業政策の面から取り組むべき施策として、「瀬戸内産業再生戦略」や「水素等環境関連産業育成・集積戦略」「農林水産業活力向上戦略」を打ち出しているものであります。
私は、ふるさと山口が、我が国における地方再生のモデルとなりますよう、私が理想とする地域社会、輝く、夢あふれる山口県の実現に向け、最優先課題に掲げる産業力の再生・強化に取り組んでまいる考えです。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

【回答】◎農林水産部長(北野常盤君)
産業政策についてのお尋ねのうち、食品産業の基幹産業化について、二点のお尋ねにお答えします。
まず、お示しのように、食品産業を基幹産業に育てていくことは、県産農林水産物の需要を拡大する上で重要であると考えています。
このため、県では、平成五年に食品製造業約五百社で構成する山口県食品産業協議会、さらには、平成十九年に大学、研究機関、食品産業団体等で構成する山口県食品開発推進協議会を設立し、新商品開発、販路の拡大などを通じて、食品産業の活性化や県産農林水産物の需要拡大などに積極的に取り組んでいるところです。
その結果、県産原料一○○%のパンや豆腐などの加工品が商品化され、さらに、県産農林水産物を素材にした外郎、ジェル状の食酢加工品など、特色ある商品が開発されているところであり、これらのうち、かまぼこや清酒などは台湾に輸出されるなど、多くの成果が上がっています。
今後は、こうした取り組みに加えて、県産原料一○○%の加工品をやまぐちブランドとして積極的に育成し、物産展や商談会などを通じ、アジアを中心とした輸出拡大にも取り組むなど、食品産業が基幹産業として発展するよう努めてまいります。
次に、食品加工研究体制については、平成十九年に、県農林総合技術センターに食品加工研究室を設置し、県産原料一○○%の学校給食用パンや、周年供給が可能な、はなっこりー、エソの冷凍技術など、食品産業と一体となった研究開発に取り組んでいるところです。
県としましては、引き続き、食品産業関係者の要望に応えることができるよう、関係機関と連携しながら、食品加工研究体制を充実強化してまいります。
次に、上関町の産業力・観光力強化支援についてのお尋ねのうち、漁業の六次産業化への支援についてお答えします。
六次産業化の取り組みは、農山漁村を活性化し、農林漁業者の所得の向上や雇用を確保する上で重要であると考えています。
このため、県では、平成二十三年度に六次産業化サポートセンターを設置し、専門知識を持つプランナーの派遣や、新商品開発セミナーの開催、販路開拓に向けた異業種交流会の開催など、農林漁業者の要望に沿ったさまざまな支援をしているところです。
さらに、今年度からは、よりきめ細やかな支援ができるよう、県内八地域に生産者と地元の加工・流通・観光業者などが連携する地域組織を新たに設置するなど、六次産業化を支援する体制を強化することとしています。
県としましては、こうした体制のもと、上関町の意向や実情を踏まえ、意欲ある漁業者の六次産業化に向けた取り組みが事業化され、地域の活性化につながるよう積極的に支援してまいります。

2013年6月30日