平成26年6月定例県議会【産業戦略】(3)食品産業の育成支援について

(3)食品産業の育成支援について

本県の農業や漁業の振興を将来に向けて展望する時、産業戦略上、重要な政策課題の一つは、県産の農産物や水産物を主原料として使用する食品産業を伸ばし、輸出産業にしていくことであると考えます。そこで、食品産業の育成支援ということで、そうした方向での政策課題の解決に向けて取り組むべき施策についてお伺いいたします。
その1は、「やまぐちブランド」についてであります。「やまぐちブランド」は、味や品質に優れる県産の農林水産物及び主な原料が県産100%の加工品を、独自の基準で厳選したもので、現在56の商品が「やまぐちブランド」として登録されています。
この「やまぐちブランド」の登録商品は、いわば県内産品の代表選手ともいうべきもので、それが県内はもとより全国の消費者に認知され、評価されるようになり、ブランド登録商品だけではなく、山口県の産品すべてのイメージアップにつながることを期待するものであります。
そこで、この「やまぐちブランド」というブランド戦略は、数的拡大と併せ質的向上の両面で展開されることが望まれます。「やまぐちブランド」の数的拡大ということでは、平成28年度までに登録商品数を100にするという目標が示されています。私は、このことと併せ、「やまぐちブランド」の質的向上ということで、「やまぐちブランド」登録商品を、「日本ブランド」の商品にしていくという方向での取り組みを期待するものです。
現在、「やまぐちブランド」として登録されている商品56のうち、20は加工食品でして、農産加工品が13商品、水産加工品が7商品であります。これら登録の加工食品が、「日本ブランド」の商品として認知、評価されるようになっていくことが、本県の食品産業の育成支援に大きなプラス効果をもたらします。
そこでお尋ねです。昨年スタートした「やまぐちブランド」は、県産農水産物を主原料とする食品産業を育成支援する上からも有効な施策であると見ておりますが、登録商品については、数的拡大と併せ、質的向上を図っていく必要があると考えます。ついては、このブランド戦略を、今後どう展開していくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
次にその2,六次産業化の支援についてであります。農業や水産業の六次産業化を進め、これを発展させていく取り組みは、地元県産の農水産物を主原料とする食品産業の発展を包含しております。
このような農水産業の六次産業化を進めていく上で重要なのは、食品加工部門の質的向上であって、そのためには技術的支援が適切に行われることが必要であります。本県では、食品企業に対する研究開発や生産技術の支援ということでの仕組みや体制は、充実したものになって来ているように思われますが、同様に本県の農水産業の六次産業化を本格的に進展させていくために、特にその食品加工部門への技術支援が、適切に充分行われるよう体制強化を図る必要があると考えます。つきましてはこのことにつき、ご所見をお伺いいたします。
次にその3は、輸出への取り組みについてであります。先ず、国の取り組みですが、農林水産省は、農林水産物・食品の輸出額を、現在の約4500億円から、2020年までに1兆円規模に拡大する方針を打ち出し、その目標達成に向けての国別・品目別輸出戦略を、昨年8月に策定して推進しております。その輸出戦略によりますと、最も大きなウェイトを占めるのは加工食品で、現在の輸出額1300億円を、5000億円まで拡大する内容となっております。
この国の農林水産物・食品輸出促進戦略の一翼を、当然に本県も担うべきであると考え、以下3点お伺いいたします。
第1点は、本県の農水産物・食品の輸出の現状と課題、そして今後の取り組み方針についてであります。輸出の現状については、農産物、水産物、そして加工食品の内訳もお示しください。
第2点は、「やまぐちブランド」の輸出についてであります。先に、「やまぐちブランド」を「日本ブランド」へ、ということを申上げましたが、それは当然に輸出を想定してのことです。この場合、主力となるのは農水産物の加工食品であると思われます。「やまぐちブランド」の加工食品が、輸出商品として成長していくことは、その主原料となる農水産物を供給する県内の農家、農業法人、漁業者等に安定的収入をもたらすことになり、当然に目指すべき方向です。
また、県内の食品産業が、これから大きく成長していくためには海外にマーケットを求めていかなければなりません。「やまぐちブランド」の加工食品には、そのために輸出を通して海外に市場を獲得していくリーディング・プレイヤーとしての役割を果たしていくことが期待されます。
そこでお尋ねです。「やまぐちブランド」加工食品を、輸出商品に育てていくことが重要と考えますが、このことに今後どう取り組まれていくのか、ご所見をお伺いいたします。
第3点は、ミラノ博についてであります。来年5月から10月まで、イタリアのミラノ市で開催される「ミラノ国際博覧会」の日本館に、本県は5月の24日から27日までの4日間、出展することになりました。この博覧会は、「食」が中心テーマとしてあるようですので、この博覧会への出展は、本県の農水産物や食品を、全世界へ発信し輸出に繋げていく絶好の機会であります。
ついては、このミラノ博覧会の出展にどう取り組まれる方針なのか、ご所見をお伺いいたします。

【回答】◎知事(村岡嗣政君)
合志議員の御質問のうち、私からは食品産業の育成に関する数点のお尋ねのうち、やまぐちブランドについてお答えします。
本県の農林水産業を成長させていくためには、県産農林水産物の需要拡大が不可欠であり、その牽引役として、味や品質にすぐれ、全国に誇れるやまぐちブランドの取り組みを推進しているところです。
お示しのとおり、現在、二十の加工食品を含め五十六商品が登録され、流通加工関係者からも高い評価を得ていることから、「やまぐち産業戦略推進計画」におけるやまぐちブランド等の販路拡大プロジェクトを拡充し、今後、その取り組みをさらに強化することとしています。
具体的には、まず、農協や漁協などの関係団体等と協働して、登録商品をさらにふやしていくとともに、大都市圏での山口フェアや食材提案会の開催、取扱店の開拓など、全国的な認知度の向上と販路拡大に努めてまいります。
また、今後はさらなる需要拡大に向けて、海外展開にも積極的に取り組むこととし、台湾を初めとしたアジアに向けた県産農林水産物の加工品の輸出拡大を進め、さらにはミラノ博覧会において、本県の「食」の魅力を発信してまいります。
さらに、近年、六次産業化・農商工連携が注目され、農林漁業者や中小企業者からの相談がふえていることを踏まえ、このたびやまぐちブランドの育成にもつながる六次産業化と農商工連携を一体的に取り組むこととしました。
具体的には、総合的に支援する窓口を一元化し、魅力ある新商品開発への単県補助制度を創設するなど、全国に先駆け、相談から商品開発、販路拡大までを切れ目なく支援する体制を構築してまいります。
私は、こうした取り組みを通じ、やまぐちブランドを初め、本県のすぐれた農林水産物を活用した食品産業の育成を支援し、農林水産業の活力向上に取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

【回答】◎農林水産部長(野村雅史君)
食品産業の育成支援についてのお尋ねのうち、六次産業化の支援と輸出への取り組みについてお答えをいたします。
まず、六次産業化に関して、食品加工部門への技術支援についてのお尋ねです。
魅力ある新商品の開発を行う六次産業化を進めるためには、お示しの技術支援が必要と考えております。
このため、加工食品の開発等の研究を行う県農林総合技術センターや、食品の製造・保存等の技術を支援する県産業技術センター、さらには産学公で構成する新商品開発などのアドバイスを行う山口県食品開発協議会などがしっかり連携しながら、魅力ある新商品の開発に向けた技術支援に努めてまいります。
次に、輸出への取り組みについてであります。
まず、お尋ねの本県の農水産物・食品の輸出額については、生産地別の統計はありませんが、財務省の貿易統計によれば、県内の港からの平成二十五年の輸出額は約七十一億円で、そのうち農産物は約二億円、水産物は約三十五億円、加工品は約三十四億円となっております。
また、課題と今後の取り組み方針については、国ごとの規制や食文化の違いなどさまざまな課題があることから、国に対する検疫などの規制緩和の要望を実施するとともに、関係機関と緊密に連携しながら、アジア等に向けた輸出拡大にも取り組んでまいります。
次に、やまぐちブランドの加工食品を輸出商品にどう育てていくかとのお尋ねです。
やまぐちブランドの加工食品を輸出商品とするためには、商品の魅力向上を図るとともに、販路開拓が重要であると考えております。
このため、国の輸出戦略の動向等を注視しながら、ジェトロ山口などと連携し、台湾での日本酒と県産食材を組み合わせたフェアや、アジア各国からのバイヤーを招聘しての商談会を実施するなど、新たな海外の販路開拓にも取り組んでまいります。
最後に、ミラノ国際博覧会への出展については、本県の農水産物や食品のすばらしい魅力を世界に向けて発信することとしています。
このため、先般、農林水産や商工、観光など、庁内関係部局で構成するプロジェクトチームを設置したところであり、今後、関係団体等の協力も得ながら、具体的な出展内容の検討を進めてまいります。
次に、酒米の産地拡大についての数点のお尋ねにお答えをいたします。
まず、やまぐち農林水産業再生・強化行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加えるべきとのお尋ねであります。
米の消費量が減少する中で、本県の水田農業を振興するためには、需要と結びついた品目の生産拡大を図ることが重要であります。
このため、需要が急増している酒米の行動計画への位置づけについては、新たな県政運営の指針となる未来開拓チャレンジプランの策定状況を踏まえ、検討してまいります。
次に、酒米の作付面積の拡大目標については、当面、酒造組合からの要望量を目標とし、種子の緊急確保を図るとともに、栽培適地を確認しながら、集落営農法人を中心とする新たな産地育成に取り組むなど、可能な限り作付面積の拡大に努めてまいります。
次に、栽培技術の指導についてです。
酒米栽培には高度な技術を要することから、新たに県内十一カ所に栽培実証圃を設置し、収量や品質向上のための技術確認を行うとともに、栽培経験の豊富な農家や指導者による現地研修会の開催など、指導体制の強化に緊急的に取り組んでまいります。
次に、農業機械や施設の整備についてですが、まずは国の事業の導入が可能となるよう、農地の集積による一定規模以上の産地育成に取り組んでまいります。
次に、技術を習得するまでの一定期間収入を保証する等のリスク軽減対策についてです。
一般的には、良質の酒米は食用米よりも高値で取引されており、当面、初年度から一定の収量や品質が確保できるよう技術指導を徹底することで、経営の安定化を図っていく考えです。
最後に、西都の雫の産地拡大についてです。
西都の雫は、農林総合技術センターと産業技術センターが協力して育成した県オリジナル品種であり、その品質は高い評価を受け、需要が急増していることから、奨励品種化も検討しながら、主産地である下関市において増産を図るとともに、気象災害等のリスク分散のため、岩国市を初め蔵元に近い地域で新たな産地を育成してまいります。
県としましては、生産者団体や酒造組合と緊密な連携を図り、急増する県産酒米の需要に的確に応えられますよう、産地拡大に全力で取り組んでまいります。

2014年6月30日