令和5年6月定例県議会 20代・30代の若い世代の所得向上について

1. 20代・30代の若い世代の所得向上について

我が国の出生率の急速な低下の背景には、「晩婚化」の進行があります。「晩婚化」は、二つの面で出生率の低下をもたらしています。一つは、結婚が遅れるという「晩婚化」が、結婚しないという「非婚化」に結びつき、生涯未婚率(50歳の時点で一度も結婚したことがない人の割合)の大幅な増加につながっているという面からです。生涯未婚率は、男性の場合、1990年は5.6%であったのが、2020年には28.3%と5倍も上昇しており、女性は1990年4.3%であったのが2020年には17.8%と4倍になっていまして、こうした非婚化の動きが、出生率に重大な影響を与えています。

もう一つは、「晩婚化」は、必然的に「晩産化」となり、「晩産化」は「少産化・非産化」に向かうという面からです。母親の第1子出生時の平均年齢の推移をみますと、1975年は25.7歳だったのが、2021年は30.9歳と5歳も高齢化しており、1970年代半ば以降我が国では晩婚化が急速に進行していることがわかります。ことに、30代後半以降になると、女性の妊娠確率の低下と高齢出産を忌避する傾向によって少産化・非産化の可能性が高まります。この結果、我が国では1990年代から、第2子や第3子を持たない「少産化」や、子どもを持たない「非産化」が進み、出生率が低下していきました。

こうしたことから明らかになってくるのは、出生率の向上のためには20代・30代の若い世代が、結婚や出産を選択する社会にしていかなければならないということであります。そして、そのためには若い世代の所得の向上と経済的安定を図るとともに、結婚・出産への支援を充実して、若い世代が結婚・出産のライフプランを描けるようにしていかなければなりません。

では、国はそのことに向けてどういう政策課題に取り組むべきなのでしょうか。ハッキリしていることは、非正規雇用の若年労働者の所得向上と収入安定を図っていくことが重要であるということです。

我が国において、晩婚化・非婚化が増加していることの社会的背景として指摘されているのは、1990年代後半以降、不安定雇用の若者が増えたことであります。なぜそうなったのかと言えば、1985年に制定された労働者派遣法が、1999年の改正で原則自由化され派遣の対象業務の制限をなくしたことが大きく影響していることは明らかです。このことにより、若い世代においても非正規雇用の労働者が増加していきました。

総務省の「平成29年就業構造基本調査」を基に作成された資料によれば、30歳から34歳の間の男性で結婚している割合は、正規雇用の場合は59%ですが非正規雇用の場合は22%となっていまして、正規と非正規を比べて結婚に関してもその格差の大きいことに愕然とします。我が国では、非正規雇用の若年労働者の多くは、結婚・出産のライフプランが描けない経済的状況の中におかれているわけで、この状況を改めることなくして出生率の向上は望むべくもありません。

そこでお尋ねです。我が国の出生率を上げていくためには、非正規雇用で働いている20代・30代の若者たちの所得向上と収入安定を図り、彼らが結婚・出産のライフプランを描けるようにしていくことが重要です。ついては、そのことに向けて労働政策に取り組むよう国に対して求めるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)