令和5年6月定例県議会 普遍性のある育児休業制度について

2. 普遍性のある育児休業制度について

2000年代後半以降、我が国では共働き世帯が急速に増大し、2020年には全体の7割近くの1240万世帯に達し、今や我が国では、共働き世帯が主流になっています。共働きの増大は、我が国のみならず、スウェーデンなど欧米諸国において共通して見られる動きですが、こうした共働きの増大は、各国の出生率にどういう影響を及ぼしてきたのでしょうか。

私たちは、共働き世帯は経済基盤が安定するので、生む子供が増えて、出生率が向上するのではないかと期待しますが、共働き世帯に関する実証研究によると、「女性の就業によって、出産が抑制される」という分析結果がこれまで多く示されています。確かに、就業している女性にとって出産・育児は、離職期間の収入減や就業中断によるキャリアアップ機会の喪失、また出産、育児、再就職という環境変化への対応に伴う身体的・精神的負担の増大があり、そうしたマイナスを解消する支援策が講じられない限り、女性の就業の増大は、出生率を低下させる方向に働くと考えられます。

このことに関して、主要国(スウェーデン・フランス・ドイツ・イギリス・アメリカそして日本)における女性労働参加率と合計特殊出生率の推移を示した資料を見ますと、1970年頃は概ね2の近辺の水準にあった出生率(日本の1970年の出生率は、2.13)が、女性労働参加率が高まるにつれ、そのマイナス効果によるものと思われますがいったん下がっています。ただ、その後2017年時点では日本以外の各国は、1.8あたりまで合計特殊出生率が回復しています。共働きが主流のこれら主要国の中で、なぜ日本だけが出生率の回復を成し得ず今日に至っているのでしょうか。

指摘されているのは、仕事と育児の両立支援策の柱である育児休業制度(以下育休制度)において、日本の場合は普遍性がないことです。

日本の育休制度では、その対象は、雇用保険制度の対象者であって、出産時も就業が継続していることが必要であり、「自営業者」や「無職の専業主婦」はもちろんのこと、出産のため退職した「出産退職」の女性は、正規・非正規を問わず含まれていません。このため、2021年の「出生動向基本調査」によれば女性の5割程度が育休制度の対象外になっていまして、日本の育休制度は普遍性がないと言われる所以です。

これに対し、スウェーデン、フランス、ドイツなど出生率が回復している国の育休制度は、すべての親を対象にしていて、企業の正規雇用者のみならず、非正規雇用や自営業者、無職、学生なども対象にしており、養子縁組の親の場合も含まれていて普遍性のある制度となっています。

共働きが主流の我が国において、女性の5割が両立支援の柱である育休制度の対象外であるという現状を放置したまま、出生率の向上を図っていくことは困難であります。財源確保の課題があるとは云え、育休制度を普遍性ある制度にしていくことは、「一億人国家シナリオ」を実現していくために避けて通れない道であると考えます。

そこでお尋ねです。岸田政権が、これから進めようとする少子化対策である「こども未来戦略方針」を、真に実効性のある異次元の少子化対策にしていくためには、育休制度を普遍性のある制度にすることが、取り組むべき施策として盛り込まれる必要があります。つきましては、このことを国に提言すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)