令和5年6月定例県議会 地方創生について

3. 地方創生について

地方創生は、少子高齢化が進行する中で、東京圏への人口の過度な集中を是正し、地方において活力ある地域社会を実現していくための政策として、安倍政権のもと2014年から、国の重要政策として位置づけられ、担当大臣を置いてその取組が進められて来ました。

私は、2014年10月、当時自民党幹事長だった石破茂さんが、初代の地方創生担当大臣に就任されてから1か月余り経過した頃ですが、地方創生の事務局になっている内閣官房の「まち・ひと・しごと創生本部事務局」を訪ねたことがあります。その時、応対してくれた事務局の方は、地方創生の取組方針をペーパーにまとめたものを示して説明してくれたのですが、意外だったのは、その中に地方分権に関することがなかったことでした。そこで、そのことを指摘して理由を聞いたら、「地方分権を担当するところは別にあって、そちらでやります。」とのことでした。また、地方創生に向けての取組も、これまで言われてきたことの延長線上のように思われ、やや期待外れの感を持ちました。そこで思ったことは、安倍政権の地方創生への取り組みは、地方創生担当の大臣を置いて、地方創生を国の重要政策として位置づけたことに意義があり、地方創生の旗印は掲げられ、意気込みはあるものの、地方の力が発揮されるようになるための骨太の政策は伴っていないなということでした。その後の地方創生の事業推進を見ますと、それはそれなりに効果があった面もあると思いますが、基本的に補助金行政の域を脱していません。

2014年夏の骨太方針で、1億人の人口維持の国家目標が示され、その年の秋に地方創生が国の重要政策の柱として位置づけられたことから察するに、地方創生は、「一億人国家シナリオ」を実現するための国家戦略、ことに東京圏への人口の一極集中を是正する役割を担う戦略としての構想されたものと思われます。出生率が低い東京圏への人口の集中は、どうしても国全体の出生率を下げていく方に働くことから、これの是正は、「一億国家シナリオ」において重要な課題です。

そうした位置づけ、役割を担って地方創生の取組が開始された年の翌年の2015年以降も、7年連続して出生率の低下が続いていて、地方創生の推進が必ずしも出生率の向上に結び付いていない現状があります。その理由は、地方創生が、個々の補助政策メニューの提供の域にとどまっていることにあるのではないでしょうか。
これからの地方創生は、これまでの取組に加えて、地方が力をつけて自律的に魅力と活力に満ちた地域社会を実現していくための基盤となる国の仕組みの構築という方向に向かわなければなりません。私は、その基盤となる国の仕組みは、明治以来の中央集権型統治の国家社会から転換して、自律分散型統治の国家社会にしていくことで築かれるのではないかと考えています。

そこでお尋ねです。本当の意味での地方創生を実現していくためには、財源と権限において国と地方との関係をどうしていくのが最も望ましいのかという地方分権に係る課題にも併せて取り組んでいく必要があると考えます。ついては、このことを国に求めるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

また、明治以来の中央集権型統治を改めて、自律分散型統治の国家社会にしていくことが、地方創生の上からも望ましいこれからの国づくりの方向であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

(知事答弁)