令和5年6月定例県議会 不妊治療について

4. 不妊治療について

我が国では、不妊を心配し治療を受ける夫婦が増えています。実際に不妊の検査や治療を受けた夫婦は全体で18.2%、つまり5.5組に1組の割合になっています。不妊治療の実施件数も年々増加していまして、日本産科婦人科学会の調査によると、2018年の体外受精による出生児数は5万6979人にのぼり、年間出生数としては16人に1人に相当しています。

不妊治療には、妊娠しやすい性行為の時期を指導するタイミング療法、妊娠しやすい時期に精子を直接子宮内に注入する人工授精、卵子を採って体外で受精させた受精卵を着床しやすい時期に子宮に戻す体外受精の3通りがあります。

一般的に不妊治療は、タイミング療法にはじまり人工授精に進み、それでも妊娠しない場合は体外受精へとステップアップしていくケースが多いようです。ただ、1年以上自然妊娠しなかったカップルが、タイミング療法により妊娠する確率は約5%、人工授精の場合も約10%までといわれています。3通りの不妊治療の中で最も妊娠確率が高いのは体外受精です。ちなみに、2018年に全国592施設で行われた体外受精の妊娠確率は31.9%でした。このように、体外受精は妊娠確率が高い不妊治療法なのですが、問題はその治療費が高額なことです。公表されている調査結果によれば1回あたりの治療費は、タイミング療法は数千円~2万円程度、人工授精は平均で約3万円程ですが、体外受精は平均約50万円です。そこで、有効な少子化対策の施策の一つとして、体外受精に対する助成を手厚くすることが考えられます。

令和4年度からタイミング療法だけではなく人工授精も体外受精も保険適用になったことは歓迎すべきことでありますが、本県の不妊治療に対する助成の在り方は、形だけで心がこもっていない感があります。その内容を見ますと、先ずタイミング療法は、元々保険適用があり夫婦一組に年間3万円を上限に助成がありました。それが現在も継続されています。人工授精は、夫婦一組につき年間3万円を上限に助成がありましたが、令和4年度以降は保険適用になり治療費負担が3割になったことを受けて助成の上限は年間9千円に減額されました。妊娠確率が低くて治療費負担も少ないタイミング療法への助成が、人工授精への場合より多額なのはどうしてなのでしょうか。さらに、私が疑問に思うのは、高額で最も助成を必要としている体外受精の不妊治療に対しては、何の助成措置もないことです。

県としては、体外受精に対して保険適用以前は、その高額な治療費の負担を軽減するために国と県で助成していたが、保険適用になり治療費の自己負担が3割に軽減されたので助成の必要はなくなったと考えているのではないか察していますが、不妊治療の実情についての認識を欠いた措置と断ぜざるを得ません。

私は、体外受精の不妊治療をしている方の話を聞きましたが、体外受精が保険適用になったとは云え、体外受精の一連の治療に要する費用の自己負担額は、1回につき20万円程になり、6回までは保険適用が認められるが、経済的に余裕がない人たちは途中で断念せざるを得なくなると語っていました。こうした現状に手を差しのべていくことこそ、本当の少子化対策ではないでしょうか。

そこでお尋ねです。体外受精と比べて妊娠確率が低くて大幅に治療費も安いタイミング療法や人工授精に対しては保険適用後も助成措置があるのに、妊娠確率が高い体外受精に対しては、保険適用後もなお治療費に高額を要するにもかかわらず助成がない現状は改めなければなりません。「やまぐち未来維新プラン」には、一般不妊治療(タイミング療法等)・人工授精・特定不妊治療(体外受精等)まで、不妊治療の流れの全てをカバーする治療費助成を実施すると記されています。

つきましては、速やかに体外受精の不妊治療に対してもしっかりした助成措置を講ずるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。また、人工授精に対する助成の上限も見直す必要があると考えますが、併せご所見をお伺いいたします。

(部長答弁)