平成28年2月定例県議会【大学と地域振興】(1)大学の知的資源を生かす仕組みづくりについて

大学と地域振興

­大学は今日、私立のみならず国立・公立大学を含め激しい競争の中にあります。その背景には、少子高齢化の進展により、将来的に学生数の減少が予想される中、大学の存続もしくは廃止を、国の判断ではなく、大学間の競争による自然淘汰のメカニズムに委ねるとの意図のもと、大学改革の施策が推進されているという現実があります。 本県では、国立山口大学が平成16年に、山口県立大学が平成18年に法人化されていますが、こうした国立・公立大学の法人化は、そのような方向での大学に関する制度改革の第一歩であったと言えます。 法人化が、大学経営にどう影響を及ぼしているかを山口大学において見ますと、特に顕著なのは大学運営のための交付金、即ち運営費交付金の減額で、法人化された平成16年から年々減額されており、平成27年までの11年間で、19億円の減となっております。 法人化により、大学は大学経営の自由度が増したことを生かして、大学運営の効率化を図り、外部資金の導入に務めるとともに、時代の社会的要請に応える大学としての機能の強化と特徴化に取り組むことが求められており、そういう意味での不断の自律的な改革の継続が要請されています。国立大学だからと言って安定的に大学運営費が交付され、大学の存続が保証される時代は終わったのであります。 国立大学の改革は、法人制度の「始動期」として平成16年度から21年度までの第1期中期目標期間、法人化の長所を生かして改革を本格化させる期間と位置づけられた平成22年度から27年度までの第2期中期目標期間を経て、平成28年度からは第3期中期目標期間に移行することになります。 文部科学省は昨年6月に、第3期中期目標期間における国立大学改革の方針を、「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」という通知で示し、その中で、世界最高水準の教育研究の展開、全国的な教育研究の展開、地域活性化の中核的役割等の機能強化に向けて、各国立大学が自らの特色を明示し、重視する取り組みを明確にするよう求めています。 この通知は、「国立大学改革プラン」や中央教育審議会、科学技術・学術審議会における各種提言等を踏まえたものですが、私が注目するのは、これら国立大学改革についての文部科学省通知及び各種提言等のいずれもが、共通して「大学の地域貢献」を、重要な柱として位置づけていることであります。 私は、そうした地域貢献を重視する方向での大学改革の取り組みを、県も積極的に支援していくことが県勢振興に繋がるとの観点から、「大学と地域振興」ということで、3点お伺いいたします。

1.大学の知的資源を生かす仕組みづくりについて

大学の地域貢献と言えば、これまでも行なわれてきていることであります。現に医療の分野では、大学附属病院が、先進的且つ中核的な地域医療機関としての役割を担っていますし、産業振興では、産学官連携ということでの取り組みが推進されています。また、県や市町の各種委員会や諮問会議に、学識経験者ということで大学の先生がメンバーとなり、地域課題の解決に向けた政策形成に寄与しておられることは、ご案内の通りであります。また、本県の医療、教育、行政、産業等の様々な各分野で活躍する人材の育成という面で、大学は大きな役割を果たしてきています。
このように、これまでも大学は地域貢献の役割をしっかり果たしてきている。それなのに改めて地域貢献が、これからの大学の在り方の重要な柱になっていることの意味は、何なのでしょうか。
はっきりしていることは、地方の人口減、衰退に歯止めをかけ、地方再生を実現していくことは、今日の国家的課題であり、そのために大学も、その知的資源を生かして地域課題の解決に貢献していくことが、これまで以上に求められており、そのことが大学への評価にもなるということであります。
こうした趨勢の中で、山口大学は、大学が地域のシンクタンクとして機能していくために地方創生に関するワンストップ相談窓口となる「地域未来創生センター」を、更には山口県が抱える今日的課題の解決に資するために「山口学研究センター」を開設して、地域貢献への取り組みを強化する学内体制を整えました。また、山口県立大学は、特に平成18年の法人化以来、「地域貢献型大学」になることを目指しており、平成25年度には、「知の融合と異世代交流による地域活力の創生」と題する事業が、文部科学省が推進する地(知)の拠点整備事業に採択されています。
このように大学が、地域貢献という方向で機能強化を図っていることは歓迎すべきことですが、問題は、そうした取り組みが実効ある成果を生みだし、持続していくために必要な財源が確保されるか、ということであります。
山口大学では、運営費交付金が年々減額されている中で「地域未来創生センター」や「山口学研究センター」の活動のために、どれほど財源措置が可能なのかが気になります。一方、山口県立大学の場合は、地(知)の拠点整備事業の採択を受けたことにより、平成25年度から年3000万円前後の補助が予算措置されていますが、これも最大5年間ということで平成29年度には終了します。従って、その後も同様に、地域貢献の事業を継続していくことができるのかどうかが問題になります。
大学の地域貢献への取り組みは、国が大学改革の方向として地域貢献を重視する考えを示したことへの対応という面もありますが、私は、こうした動きを、県も積極的に支援することを通して地域課題題を解決する力を強め、県勢振興につなげていくべきだと考えます。
本県は、昨年2月に山口大学との間で、「地方創生に係る包括連携に関する協定」を締結していますが、これは、両者の連携・協力関係を、包括的、一般的に確認した内容のものでありますので、今後はそれを、より具体的に踏み込んだものにしていく必要があります。
以上申し上げましたことを踏まえてお尋ねいたします。私は、県下の大学の地域貢献への取り組みを、県勢振興の観点から評価して、財源措置も含めて県が支援する仕組みを構築すべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。また、地域振興に係る寄附講座も前向きに検討されていいと思います。これまで、本県が設けた寄附講座は、山口大学医学部に地域医療に関する講座がありましたが、そのほかに本県の産業振興のために学術的な研究体制を強化することが望ましいと思われる課題について、県が寄附講座を設けて研究を委託するということが検討されていいと考えますが、併せご所見をお伺いいたします。