令和4年11月定例県議会 (2)山口県地域公共交通計画の策定

1.公共交通政策

(2)山口県地域公共交通計画の策定

次に、先の質問と関連することでありますが県として地域公共交通計画、即ち山口県地域公共交通計画の策定に取り組むべきとの趣旨で質問を行います。

私は、令和元年9月県議会で「交通政策について」ということで一般質問を行い、「交通はネットワークとして機能するものであり、全体最適が図られるべきことに留意すれば、先ず、県全体の大綱的な交通計画があって、それと整合する形で各市町の個別的交通計画が作成されるというのが、望ましい。」ということで、山口県総合交通計画の策定に取り組むことを提案いたしました。これに対し、「(県下の)各市における計画は、隣接市町との交通ネットワークについても考慮し、策定されていることから、全県的な交通ネットワークの形成を目的に、山口県総合交通計画を策定することは考えていない。」旨の答弁がありました。

この質問当時は、令和2年の地域公共交通活性化再生法の改正以前でありましたので、国は、市町村に対しては地域公共交通網形成計画の策定を求めていましたが、都道府県に対してはそのことを求めていませんでした。従って、そのことを踏まえての答弁であったと理解したところです。それが、令和2年の改正で、地域公共交通網形成計画は、地域公共交通計画と名称も改められ、より実効性ある計画として策定することが、全ての地方公共団体に努力義務化されました。地方公共団体は、都道府県と市町村のことでありますので、山口県も県としての地域公共交通計画の策定に取り組むことが努力義務としてあることになりました。このことを受けて山口県地域公共交通計画の策定に取り組むかどうか村岡知事の判断が問われることになりますが、私は、是非取り組むべきだと考えます。以下、その理由を申し上げます。

その1は、国の公共交通に関する施策が、都道府県にも公共交通計画策定の努力義務を課し、そうすることが望ましいとの考えに立って推進されるようになってきていることであります。このことは、令和2年の活性化再生法の改正に伴い、国交省が今年の3月に示した「地域公共交通と乗合バスの補助制度の連動化に関する解説」においても明らかであります。この解説は、「今後、(乗合バスの運行費等に対する)補助事業の活用のためには、補助系統の地域の公共交通における位置付けや補助事業の必要性等について、原則補助系統が跨がるすべての市町村の地域公共交通計画又は都道府県の地域公共交通計画に記載が必要であり、〈中略〉特に、幹線系統については都道府県の計画への位置付けも想定しており、今後は都道府県による計画作成も重要となります。」と述べています。

その2は、県づくりと県の公共交通計画は密接不可分と思われるからです。
私は、先般11月10日、岡山市に両備グループ代表の小嶋光信氏を訪ねました。両備グループは、「交通・物流部門」「ICT部門」「まちづくり部門」等々44社1組合から成る岡山県を代表する企業グループです。そのグループ代表の小嶋氏は、自らバス・路面電車・タクシー等の公共交通の事業経営の当たるとともに、地方交通再生の請負人と言われるほどに、全国各地の危機に瀕したローカル鉄道や地方バス等の再生を成し遂げる一方、国における交通政策基本法や地域公共交通活性化再生法の制定・改正にも大きな影響を与え貢献しています。また、公共交通に関する優れた研究者、有識者、実務者を構成メンバーとする地域公共交通総合研究所を設立して自ら代表となり,公共に関する調査・分析・コンサルティング等を行うとともに、同研究会のメンバーは、国における交通政策の検討会等の委員になり寄与しています。

私は、親しくしている方が小嶋氏と慶應義塾大学の同窓で友人であることから小嶋代表を知り、訪ねまして、両備グループ本部の応接室で話を伺いました。そこで、小嶋代表が強調されたことの一つは、公共交通は、単に生活上必要な移動を確保するための手段の域にとどまるのではなく、住民の生活の質を高める地域づくり、まちづくりに資するものでなければならないということでした。そして、欧州連合(EU)が策定した都市交通計画の指針が、「脱炭素」「国民の健康」「都市の交通安全」を政策目標に掲げ、生活の質(QoL)に焦点をあてた人に優しい計画になっていることを紹介され、日本もこれに学び、その上で日本型の望ましい公共交通の確立を目指すべき旨、語っておられました。

平成19年に制定され、平成26年及び令和2年に改正された「地域公共交通活性化再生法」は、まちづくり・地域づくりと公共交通の連携を実効あるものにするために制度環境を整えてきています。そこで、欧州での取り組みや日本各地の先進事例等も参考にして、本県がある意味全国のモデルとなる地域公共交通計画の策定に取り組むことを期待するものです。

理由その3は、県の公共交通計画において本県のローカル鉄道を明確に位置付けることが、そのローカル鉄道を守り活用することに繋がると思われることです。

ご案内のようにJR西日本は、今年の4月に輸送密度2千人未満の線区においては、地域と輸送サービスの確保に関する議論や検討を行う方針を公表しました。また、7月には国の有識者検討会が、輸送密度が千人未満のローカル線は、利便性及び持続可能性が損なわれている危機的な状況の線区であるとして、国の主体的な関与により、都道府県を含む沿線自治体、鉄道事業者等の関係者からなる協議会を設置し、「廃止ありき」「存続ありき」といった前提を置かずに協議する枠組みを創設することが適当である旨、提言いたしました。

本県では、輸送密度が千人未満の線区は、山陰線の益田~長門市区間と長門市~小串・仙崎区間、山口線の宮野~津和野区間、小野田線の小野田~居能区間、美祢線の厚狭~長門市区間の4路線5区間ありまして、提言に沿って法整備が図られますと、これらの線区については、存廃も含め今後の在り方に関して議論を深め方針を見出すための公的な協議会が設けられることが予想されます。

こうした事態を受けて、沿線自治体及び山口県市長会は、県に対してJRローカル線の維持・確保に向けた支援を要望し、県のリーダーシップへの期待を表明しています。また、有識者検討会は提言の中で、国・地方自治体・鉄道事業者の責務について触れ、「特に、都道府県については、各市町村の区域を超えた広域的な見地から、一層、大きな役割を果たすべきである。」と指摘しております。

このような期待や要請に応え役割を果たすには、県は、公共交通に関して調整の域に甘んずるのではなく、全体的な構想、ヴィジョン、計画を持つ必要があるのではないでしょうか。

以上申し上げました理由から、山口県地域公共交通計画の策定に取り組むべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

→(部長答弁