平成29年6月定例県議会【1.県政への位置づけについて】

水力発電は、倍増できる。我が国では、電源構成において水力発電が占める割合は現在9%だが、これを20%以上にすることができる。国土交通省の元河川局長であった竹村公太郎氏は、その著「水力発電が日本を救う」で、そう述べて、日本の将来のために水力発電の推進に取り組むべきことを訴えています。
CO2を排出しないクリーンな純国産エネルギーである水力発電を、倍増して電源構成割合20%以上を実現できれば、私たちは、日本の将来に明るい展望を持つことができます。私は、竹村氏の著書を読み、このことは取り組むに値することだと思い、先ずは、竹村氏が主張しておられることを山口県において実現していこうと考え、ここ数か月そのことに関心を向けて、県の職員のご協力をいただきながら本県のダムを数カ所視察し、また国土交通省や資源エネルギー庁、本県において独自の水力発電システムを開発した田布施町の大晃機械工業などを訪ね、担当の方と意見交換を行い、さらには、著者の竹村氏本人にも直接お会いし疑問点をぶつけるなど、私なりに水力発電について理解を深めてまいりました。
そして、わかってきたのは水力発電の適地は、ほぼ開発され、事業化されているということであります。そうした現状を踏まえて如何にして水力発電を新たに開発していくのか。このことについて竹村氏は、①多目的ダムの運用変更、②既存ダムの嵩上げ、③発電に利用されていないダムでの水力発電の実施、④砂防ダム・農業用水路などにおける1000kW以下の小水力発電、以上四つの開発の方向を示しています。注目すべきは、その中に新たなダムの整備がないことです。竹村氏は、新たにダムをつくる必要はない、河川法が改正されて河川行政のスタンスが変われば、以上四つの方向の取り組みを推進することで、眠っている巨大電力を活かすことができるようになると力説しています。
水力発電は、水の流れが有するエネルギーを電力に変える仕組みです。従って、河川の水の流れが有するエネルギーを、可能な限り電力に変えて国民の生活と産業に資していく、このことが、河川行政を担当する者の重要な責務として認識され、その認識が共有されるようになることが、これからの水力発電の新たな開発のためには不可欠と思われます。勿論、このことは河川行政における治水の重要性を軽んずるものではありません。我が国の将来のことを考える時、これからの河川行政は、治水への取組みと同等に、河川の水力エネルギーの活用、ことに水力発電への活用が図られるべきだと考える次第です。
竹村氏は、河川管理者が水力発電のメインプレイヤーなることが大切で、そのため河川法第一条の目的に「水力エネルギーの最大活用」を入れるべきだと強調しています。
そういう趣旨の河川法の改正がなされるかどうかは、国政における今後の課題ですが、本県においては、再生可能エネルギーである水力発電の推進を県政の重要課題として位置づけることで、県の河川行政の担当者が、水力発電推進の役割を果たすようになることを期待するものです。
そこでお尋ねです。再生可能エネルギーの観点からも、特に水力発電の推進を、県政の重要課題として位置づけるべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
以下、竹村氏が示しておられる新たな水力発電開発の4つの方向について、順次お伺いいたします。

 

 

平成29年6月定例県議会【2.多目的ダムの運用変更】

その1は、多目的ダムの運用変更についてであります。

多目的ダムは、治水と利水の二つの目的のために整備されたダムです。治水の目的は、洪水予防が主ですが、利水の目的は、工業用水、水道用水、農業用の灌漑用水の供給及び水力発電などがあります。ところで、治水と利水は、それぞれがダムに求めることが相反しています。治水のためには、大雨や集中豪雨時に、雨水をダムにため込む容量、これを治水容量あるいは洪水調節容量と申しますが、これが大きい程いい訳で、そのためにはダムの水位を下げて、空き容量を大きくしておくことが求められます。一方、利水のためには、ダムには多くの水があった方が望ましい訳で、ダムの水位は出来るだけ高く保って、ダムの空き容量を少なくすることが求められます。

多目的ダムは、この治水、利水の相反する双方の求めを共に満たすために、治水容量と利水容量を合わせた規模のダムとして整備することが求められます。この場合ダムの水位は、ダムの治水容量及び利水容量が確保される水位に設定されることになります。従って、多目的ダムの場合、通常の水位は、水を実際ためることができる満水時の最高水位よりも、治水容量分ほど低く設定されています。この水位を常時満水位と言っていまして、この水位の時の水量が、ダムの利水容量であります。

また、ダム建設地の地形に係る制約等から年間を通して治水容量と利水容量の双方を満たす規模のダム整備が困難な場合、梅雨や台風などで大量の雨が降ることが予想される時期、即ち6月半ばから9月末頃までの洪水期の期間は、治水容量の確保を優先して、常時満水位より低く水位を設定し制限する、このことを制限水位と申しますが、その制限水位を設けることで治水、利水双方の目的を果たしている多目的ダムもあります。

このように多目的ダムでは、年間を通して、あるいは洪水期の数か月余、洪水予防の目的で治水容量が確保されていますが、その治水容量は、確率的に数十年に一度の大雨に対応できるマックスの空き容量であります。

こうした多目的ダムの水位の運用は、今日の発達した気象予報を活用することで、治水機能をしっかり確保しつつ、利水の機能を向上させる方向に改めることができるというのが、竹村氏の見解であります。

このことを水力発電で見てみますと、水力発電は、一般的に水量が多いほど発電量が増え、また同じ水量の場合、水位が高いほど電力は大きくなります。要するに、水を多く貯めれば水位も高くなり、より多くの発電が可能になるのであります。然るに現状は、数十年に一度の大雨に対応する治水容量を、年間を通して、あるいは洪水期の数か月余、固定的に確保する水位設定になっていまして、その分ダムが有する発電能力が、減じられる結果となっております。

大雨が予測される時、治水容量を確保して洪水の予防を図ることは、多目的ダムの最優先の役割であることは、論をまたないところであります。ただ、気象予報が発達した今日、年間を通して、あるいは数か月余、固定的に治水容量としてマックスの空き容量を確保しておく必要があるのかは、見直しの余地があるのではないでしょうか。このことは、洪水期とされる6月半ばから9月までの期間の中で、梅雨明け以降は、渇水期となり工業用水や上水等の確保に苦労して、度々節水を求める事態になる地域への対応という点からも考慮されていいと思われます。

現在、国では「既存ダムを有効活用するダム再生の取組をより一層推進していく」ため、「ダム再生ビジョン」の策定を進めており、先月5月17日に開催された第3回検討会では、「ダム再生ビジョン」の案が示されております。

それによりますと、「水力発電の積極的導入」として、「発電機能を低下させることなく治水機能を向上させる手法、治水機能を低下させることなく発電機能を向上させる手法、治水と発電の双方の能力を向上させる手法の検討に着手する。」「例えば、洪水後期に通常よりも放流量を減量してダムの貯留を続け発電に利用するなど、洪水調節容量の一部を活用するための操作ルール化に向けた検討を今年度中に実施する。」と明記されています。

そこでお尋ねです。竹村氏の指摘や国の「ダム再生ビジョン」策定への取り組みなどを踏まえ、本県の多目的ダムにおける水力発電を含む利水機能の向上を図るため、水位設定に係るダム操作規則の見直しなど運用変更の検討に着手すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

 

平成29年6月定例県議会【3.木屋川ダムの嵩上げ】

その2は、既存ダムの嵩上げですが、このことについては木屋川ダムの嵩上に関してお伺いいたします。

竹村氏の著書では、「ダムの嵩上げも、水力発電の潜在的な力を引き出す重要な手段である」と指摘して、「100mから110mに10%嵩上げすることにより、発電量は70%も伸びる。」と述べておられます。

本県では、木屋川ダムが平成41年の完成を目指してダムの嵩上げ工事を実施する予定になっていまして、この工事によるダムの嵩上げは10mであります。現在の木屋川ダムの堤高(ダムの高さ)は、41mですので、10mの嵩上げで伸びる発電量は、70%をはるかに上回ることは明らかであります。

従って私は、この嵩上げによって、木屋川発電所の発電量も大きく伸ばす計画になっているものと思っていましたが、そうではなく、この整備は、主に洪水予防のため治水容量を増やすためのものであることから、嵩上げした部分は水を貯めず常に空けておくことになり、嵩上げしても木屋川ダムの発電能力は変わらない旨の説明を受け、ある意味驚いた次第です。

木屋川水系では、治水事業として昭和30年に木屋川ダムが完成した以降も、度々洪水被害が発生しており、近年では平成22年7月に県西部が局地的な集中豪雨に見舞われたとき、木屋川の河川氾濫があり、浸水被害が生じたことは記憶に新しいところであります。

このように木屋川ダム完成以降も、数度にわたり洪水が発生している経緯からして、洪水調節機能強化のためのダム嵩上げ事業の実施は、当然優先的に行われるべき公共事業として理解し、速やかな事業の進捗と完成を願うものです。

ただ、私がこの事業に対して思うのは、ダムの嵩上げを利水面にも生かす、特に水力発電の能力向上に繋げるような運用を検討すべきではないかということであります。理由は簡単で、400億円もの巨額を投じて行われるこのダム嵩上げ事業は、洪水調節機能の向上と併せて、水力発電を大きく伸ばすことができるのに、それをしないのは勿体ないからです。

地球温暖化対策にも資するCO2を出さないクリーンで安定的な純国産エネルギーである水力発電を伸ばしていくことも、洪水調節機能の向上と同様に大事な将来の世代のための投資であります。また、先ほど紹介しましたように、国土交通省は「治水と発電の双方の能力を向上させる手法の検討」にも着手する旨、「ダム再生ビジョン」案に明記しています。

そこでお尋ねです。木屋川ダムの嵩上げは、洪水調節機能の向上と併せて、発電能力の向上を図るようなダムの運用を検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

平成29年6月定例県議会【4.未利用ダムの活用】

次に、未利用ダムの活用ということで、水力発電に利用されていないダムでの発電の実施についてお伺いいたします。

本県には、建設中の平瀬ダム等を含め土木建築部が所管するダムが24ダム、企業局が所管するダムが4ダムと、他県に比べ豊富なダム群を擁しておりますが、現在、水力発電の施設のないダムは半数近くに上っております。

ところで、平成29年2月に公表された資源エネルギー庁の「水力発電の開発・導入のための調査報告書」によりますと、本県の土木建築部が所管する発電未利用ダム12について、その発電ポテンシャルは最大出力で合計836kWと報告されております。

さらに出力100kW以上の地点が全国で32箇所あり、そのうち4つが本県内にあると報告されております。具体的には、柳井市の黒杭川上流ダム、周南市の川上ダム、岩国市の中山川ダム、山口市の荒谷ダムの4箇所であります。

荒谷ダムや県庁のすぐ裏にあります五十鈴川ダムは、実地に見に行きましたが常に一定量の水量と落差がありますので、発電可能ではないかと思います。

企業局では、昨年4月に運転を開始した宇部丸山発電所以降、現在、平瀬発電所の建設を進めておられますが、それ以外、新たな発電所の建設は表明されておりません。

先月示された国土審議会の答申において、今後の水資源政策のあり方として、これまでの需要主導型の「水源開発の促進」からリスク管理型の「水の安定供給」へ進化を図るべきとされ、また現在、国土交通省が策定に向けて検討を進めている「ダム再生ビジョン(案)」では、「ダム再生の発展・加速に向けた方策」として「水力発電の積極的導入」が謳われるなど、水力発電の新たな開発に向けた期待が高まりつつあります。

ただ水力発電のために新たなダムをつくることは、有望地点のダム化は、ほぼやり尽くされている今日、事実上困難と思われることから、現実的な取組みとして考えられるのが、既存ダムで水力発電をやっていない未利用ダムの活用であります。

そこでお尋ねです。本県は、水力発電を行っていない未利用ダムを多数擁しておりますが、こうしたダムにおいても発電への取組みが図られるべきと考えます。つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

 

平成29年6月定例県議会【5.小水力発電の推進】

最後にその4、小水力発電の推進についてお伺いいたします。

竹村氏が、これからの新たな水力発電の開発で、大きな可能性があると示しておられるのが、1000kW以下の小水力発電であります。しかし、本県における小水力発電への取組み状況を見ていきますと、小水力発電を伸ばしていくのは容易ではないことが窺えます。

本県は、平成24年度に策定した再生可能エネルギー推進指針において、中小水力発電は、平成32年度までに新たに9箇所設置し、発電能力を1119kW伸ばすとしていますが、これは太陽光発電の伸びの224分の1、風力発電の伸びの95分の1であります。

水力発電は、天候に左右される太陽光発電や風力発電と比べて安定的、持続的な電力供給が可能という点から、再生可能エネルギーの中で、もっと大きく伸ばすことが図られていいはずですが、そうなっていません。それは、小水力発電が、今後の水力発電の新たな開発の中で主役の役割が期待されているにもかかわらず、実際に民間事業者が取り組もうとすると、困難な課題が様々あり、事業として成り立っていく見通しが立たないというのが実情であるからです。

そうした中、本県では県企業局が「小水力発電導入ガイドブック」を作成すると共に、自ら先導的役割を果たすべく、平成26年5月に相原発電所を、平成28年4月には宇部丸山発電所を設置して、小水力発電の運転を開始しております。そして、今後小水力発電の開発に携わろうとする者の一助になればと言うことで、それぞれの発電所の計画から運転開始までの一連の流れを、冊子にまとめています。

また、農林水産部は、小水力発電を農業用ダムを利用して行うということで、水利権などの諸手続きを調整した上で発電事業を、民間事業者に委ね、発電で得られた利益の一部は、ダムがある地域に還元するなどの取組みを行っています。

こうした県の小水力発電への取組みが、固定価格買取制度もあるのに、なぜ民間事業者にまで広がって行かないのか、このことに関心を向け続けていく中で見えてきたのは、電力の送配電に係るシステム上の問題であります。具体的には、50kW以上の発電の高圧連系に伴う問題です。

発電設備を、送配電の系統に接続する場合、発電出力50kW未満の場合は、低圧連系ということで200V標準の送電線への接続となりますが、発電出力が50kW以上の場合は、6000Vの高圧送電線への接続、即ち高圧連系になります。

そこで、二つの問題が生じます。その1は、本県の場合、高圧連系に空き容量がほとんどないということであります。その2は、高圧連系のために変電設備等が必要となり、多額の費用負担が生じることであります。

こうしたことは、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー全般に共通する問題でありますが、特に、小水力発電を大きく伸ばすという観点から、対応策が国において講じられるべきものと考えます。

以上申し上げましたことを踏まえ、4点お伺いいたします。

ア.事業として成立発電出力について

第1点は、再生可能エネルギー固定価格買取制度のもと、小水力発電が事業として成立っていくには、一般的にどれほどの発電出力が確保される必要があると見ておられるのかお伺いいたします。

イ.高圧連系問題について

第2点は、小水力発電を推進していくためには、50kW以上の発電の高圧連系に伴う問題の解決が不可欠と考えますが、県は、このことをどう認識しておられるのか、ご所見をお伺いいたします。また、こうした問題の解決は、国において図られるべきものであることから、県は、そのことをしっかり国に要望すべきと考えますが、併せご所見をお伺いいたします。

ウ.50kW未満の小水力発電について

第3点は、現状の中で推進していくことが可能なのは、発電出力が50kW未満の小水力発電でありますが、このことにどう取り組んでいかれるお考えなのかお伺いいたします。

エ.山口県再生可能エネルギー推進指針における導入目標について

第4点は、色々困難な課題が多いことは分かりますが、本県の再生可能エネルギー推進指針の中に示されている中小水力発電の導入目標は、平成23年度に比して目標年度である平成32年度までの伸びが、わずか1%であり少ないと思います。水力発電推進の重要性に鑑み、もっと高い目標を掲げて推進を図るべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。