平成29年9月定例県議会【1.岩国市の空母艦載機受け入れに伴う国と県の責務について】

岩国市は、米軍再編の目的は、厳しい安全保障環境の中で、抑止力を維持し、戦争を回避することで、我が国の安全を保障すると共に、国際的な平和と安定を維持する措置であるとの認識に立ち、これを受け入れる決断をしました。我が国の平和と安全のために、どこかが引き受けなければならない役割を、敢然と受けることにした岩国市の決断を、私は評価したいと思います。

ただ、指摘しておかねばならないことは、厚木基地から岩国基地への空母艦載機の移駐は、周辺住民が騒音被害を裁判に訴えた厚木基地騒音問題で対応を迫られていた日本政府が、米軍再編の日米協議において日本政府の意向として示し、それに米側が応えたものであるということであります。

この空母艦載機の移駐が完了すると、岩国基地の米軍機は、極東最大級の米空軍基地とされる沖縄県の嘉手納飛行場の約100機を越え、約120機が駐留することになります。このことにより岩国基地は、これまで以上に抑止力の維持に重要な役割を担うことになりますが、朝鮮半島有事が懸念されている今日、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威にさらされるリスクが高まることも想定しておかなければなりません。

そこで、私が強く訴えたいことは、国は、岩国市を北朝鮮の弾道ミサイルの脅威から守るため万全の措置を行う責務があるということであります。そして、県は、その国の措置が万全のものであるか確認し、不十分と思われたら万全の措置を国に求める責務があるということであります。

さらに、国がミサイル防御に万全の措置を取ったとしても、完全に防ぎきれない場合もあり得ることを想定して、国民保護の観点からそうした際の被害を最小限にするために警報発令や避難等の備えについては、岩国市の取組みがしっかりしたものとなるよう、県は必要な助言を行い支援する責務があると考えます。

県が、空母艦載機受け入れ容認を表明した後、関係市町と共に国に対して4項目の特別要望をしていますが、国に求めるべき第一のことは、朝鮮半島有事という事態になったとしても岩国市の安全が確保されるようにすることではないでしょうか。

以上申し上げたことを踏まえ、お伺いいたします。空母艦載機の移駐を受け入れた岩国市の安全確保に係わる国と県の責務について、どうお考えなのかご所見をお伺いいたします。

 

 

平成29年9月定例県議会【2.ペトリオットPAC-3の配備について】

今年の3月6日に北朝鮮が行った連続4発のミサイル実験は、岩国と佐世保の米軍基地を仮想標的にしたものであったと軍事専門家は分析しています。

我が国の弾道ミサイル防衛は、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を連携させて効果的に行う多層防衛を基本としています。具体的に述べますと、イージス艦により迎撃できなかったミサイルは、PAC-3が着弾前に迎撃破砕するという二段構えの多重防護システムでミサイル防衛に万全を期すということになっているのであります。

ただ問題なのは、イージス艦は3隻で我が国全域をカバー可能ですが、ペトリオットPAC-3がカバーできる範囲は、配備された地点から20キロ程の圏域にとどまるため、日本の国全域が、常時イージス艦とペトリオットPAC-3による多重防護体制にあるという訳ではないということであります。

ペトリオットPAC-3は、現在全部で34基あって、航空自衛隊管轄の28個高射隊のうち17個高射隊に2基ずつ配備されています。この高射隊は、6群に分けて全国に配置されていて、PAC-3を有する部隊は、事態に応じて機動的に移動・展開して大都市圏や重要拠点を、ミサイル攻撃から多重防護することを任務としています。このことから明らかなように、ペトリオットPCA-3の役割は、拠点防衛であります。

従って、今日のように北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が高まっている時には、そのリスクが高いと思われるところには、常時配備の措置が取られるべきであると考えます。なぜなら、北朝鮮からのミサイル攻撃が実際あるとしたら、それは突発的で前もって予測し備えることが困難な事態である可能性が高いことから、移動・展開の時間的余裕はなく、それに対応できるのは、現にPAC-3が配備されているところに限られると思われるからです。

以上申し上げたことから訴えたいことは、岩国基地に、ペトリオットPAC-3を配備すべきということであります。在日米軍の他の航空基地を見ますと、嘉手納基地では米軍自身がPAC-3の防空砲兵大隊をもっています。三沢基地は、自衛隊の航空基地があり、そこにPAC-3が配備されています。然るに岩国基地にはそういう備えはありません。PAC-3を有する高射隊がある最も近い基地と言えば北九州市に隣接する芦屋町の芦屋基地ですが、そこからの移動を待っていたのでは、突然のミサイル攻撃には対処できません。

そこでお伺いいたします。県は岩国市とともに、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威がある間は、岩国基地にペトリオットPAC-3の常時配備を求めるべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

 

平成29年9月定例県議会【3.避難対策について】

ア.武力攻撃事態に備えることについて

武力攻撃事態に備えるには、二つの壁があります。一つは、平和主義の壁であり、もう一つは、世論の壁です。

平和主義の壁について申しますと、現実を直視しようとせず、だから現実にコミットせず、現実の重みを背負おうとしない、単なるパフォーマンスとしての自己満足的な不毛の平和主義が、今なお我が国では、一定の影響力を持っていて、武力攻撃事態に備える壁になっています。その典型的な例が、長崎市国民保護計画であります。

国民保護計画とは、平成16年に有事法制関連のひとつとして成立した国民保護法に基づき、都道府県及び市町村に作成が求められたものです。国民保護法は、万一、我が国に対して武力攻撃や大規模なテロ等が発生した時、迅速に住民の避難を行うなど、国、地方公共団体、関係機関等が協力して、住民を守るための仕組みを制度化したものであり、都道府県及び市町村は、この法の成立後、国が示した基本指針や保護計画のモデルを参考にして、我が県、我が町の具体的な住民保護計画の作成に取り組むことになりました。その際、保護計画は、武力攻撃事態を上陸侵攻の場合、弾道ミサイルによる攻撃の場合等類型化して、それぞれの場合に、どう対処し措置するかを定めることになっています。そして、その武力攻撃事態には、核兵器による攻撃を受けた場合も想定されています。

ところが、こうした国民保護計画の作成は、戦争への備えをするものであり、「戦争の放棄」を定めた憲法のもとで、戦争に備える態勢をつくらせる訳にはいかないとの理由で、平和団体、平和主義者と見られている人達による強い反対の動きがありました。長崎市ではそうした動きが、市の取組みに直接及び、その結果、市が作成する国民保護計画から「核兵器による攻撃への対処」が、削除されました。こうした平和主義の壁は、偽りの平和主義以外の何ものでもありません。

危機管理のプロとして民間の立場から国民保護法の制定に協力された現参議院議員青山繁晴氏は、その必要性を、第二次世界大戦時における空襲による被害調査の分析を踏まえて明らかにしています。第二次大戦時、連合国から激しい空襲を受けたドイツと日本を比較した場合、投下された爆弾量に比しての犠牲者数は、圧倒的に日本の方が多いという事実を示し、その差は、あのナチス支配下のドイツといえども国民保護計画があったのに、日本には、それがなかったことに由るものであることを指摘して、青山氏は、戦後60年にして漸く不十分とはいえ我が国に国民保護法が成立し、国民保護計画が作られることになったことの意義を力説しています。

我々が、戦争を避け平和を求めるのは、私たちの生命、財産、生活を守るためです。そういう意味において、真の平和主義者は、国民保護法計画が、実効あるものになることを求めこそすれ、それに反対することはあり得ません。

そこでお尋ねです。国民保護法に基づき、全国の都道府県及び市町村が国民保護計画の作成に取り組んだことは、一歩前進であるとはいえ、国が示した基本指針や保護計画のモデルに沿って文書上の体裁を整えたにすぎない感もあり、実質、内実が伴った実効ある住民保護計画にしていくことが、次なる課題であります。そのためには、地方の現場からの発想で武力攻撃事態を想定して具体的に、真摯に住民保護の計画作成に取り組む必要があると考えます。ついては、本県の国民保護計画も、そういう観点から点検し、見直していく必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

武力攻撃事態に備えるには、もう一つ世論の壁があります。武力攻撃事態に備えて、避難行動の周知を図る、避難訓練を徹底する等の取組みは、かえって住民の不安をあおることになりはしないか、また本県の場合は、弾道ミサイルの脅威に備えようとすると、空母艦載機受け入れを容認した県や市の判断に対する批判が高まることになりはしないか等のことが、懸念されるところであります。しかし、世論がどうあろうとも住民保護のために、為すべきことは為していくことが政治、行政の責任であります。ついては、本県においては世論が如何にあろうとも、武力攻撃事態に対する備えについては、しっかり取り組まれるよう要望いたします。

イ.避難行動の周知について

国が定めた「国民の保護に関する基本指針」において、平素からの備えということで市町村は、武力攻撃事態に応じて複数の「避難実施要領」のパターンを作成しておくことが求められており、県は、その取組みに対して必要な助言を行うことになっています。

しかし、朝鮮半島有事の際、本県が直面するかもしれない武力攻撃事態として想定されるのは、岩国基地への弾道ミサイル攻撃であり、その被害が市民の及ぶという事態であります。こうした弾道ミサイル攻撃に対しては、「避難実施要領」のパターンをあらかじめ作成しておき、それに則って住民を避難誘導して被害を防ぐという対応は、時間的に不可能であります。

従って、弾道ミサイル攻撃から住民を守るための平素の備えとして徹底しておくべきことは、住民一人一人が、弾道ミサイルの脅威を警報等で知った時、身を守るために、どうすべきか的確に判断し行動できるよう、避難行動についての必要な知識や情報を、住民に周知しておくことであります。

そこでお尋ねです。万一弾道ミサイル攻撃があった場合、どう避難行動すべきかを住民に周知することについては、本県では特に岩国市において充分考慮されているものと思いますが、県も、岩国市に対して必要に応じて助言するというより、岩国市と一体となり、共同して取り組むべきであると考えます。

つきましては、このことにつきご所見をお伺いいたします。

 

ウ.避難施設の整備について

ミサイル攻撃からの避難のために最も望ましいのは、短時間のうちに避難できる地下施設等が、身近なところに整備されていることであります。

先般8月29日に北朝鮮が行なった弾道ミサイル発射の経緯を、時系列に整理しますと、発車時刻は5時58分で、Jアラートによる警報発令が6時2分、北海道の上空通過が6時5分から7分で、6時12分落下と見られています。

9月15日の弾道ミサイルは、発射時刻は午前6時57分でしたが、その後のJアラートや我が国の上空通過等の時間的経緯はほぼ同様で、時間差は1分以内です。

もし、8月29日に発射されたミサイルが北海道に着弾していたと仮定すれば、警報発令から着弾までの時間は、3分間程であり、住民は、Jアラートでミサイルの脅威を知って避難するための時間は2~3分間しかありません。Jアラート第一報では、「頑丈な建物や地下に避難してください」との指示メッセージが発されましたが、そういう事態に備えての避難施設が身近なところに整備されていなければ、咄嗟の場合、住民は、どう避難すればいいのか戸惑うであろうと思われます。

9月15日のミサイル発射に対して発令されたJアラートでは、避難についての指示メッセージの文言は、「建物の中、または地下に避難してください。」でした。8月29日のJアラートで避難先として例示されたのは、「頑丈な建物や地下」でしたが、9月15日のJアラートでは、それが「建物の中、または地下に」と改められ、「頑丈な」の文言がなくなっています。

これは、8月29日のJアラートでの避難指示の文言に対して、「頑丈な建物がない場合はどこに逃げればいいのか」「頑丈な建物を探そうと屋外に出てしまった」といった声が相次ぎ、それが見直されたからです。

こうしたことから明らかになって来るのは、我が国の国民保護計画は、ハード面の対策が伴っていないということであります。見直されるべきは、避難指示の文言が適切かどうか以上に、そういう点なのではないでしょうか。

そこでお尋ねです。岩国市のように在日米軍基地があって北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が想定されるところは、ハード面からの避難対策もしっかりしたものにする必要があります。特に、基地周辺の住宅民家、学校施設、大規模集客施設等において、地下への避難が素早くできるよう施設整備が図られるべきであると考えます。ついては、そうした避難施設の整備が早急に進むよう、県は岩国市とともに、国に対して財源措置を含めた支援の施策を強く要望すべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

 

 

 

 

平成29年9月定例県議会【4.破壊活動対策について】

朝鮮半島有事の際、想定される事態のひとつに、我が国に相当数潜伏していると目されている北朝鮮工作員による破壊活動があります。

これへの備えとしては、監視活動を強化して、未然防止に万全を期すことが重要と考えますが、このことにどう取り組まれているのかご所見をお伺いいたします。