ごうし栄一
【合志栄一後援会事務所】
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合志栄一スローガン
平成23年 一般質問項目
2月議会 6月議会 8月議会 11月議会
 
 
 ○2月定例県議会
 今年の2月22日に召集されました2月定例県議会では、二井県政の総仕上げと位置付けられた総額7464億円の当初予算案や、岡田総務部長を副知事に選任する人事案等が可決成立いたしました。
 私は、3月3日に一般質問に立ち、3項目質問いたしましたのでその概要をご報告いたします。
1.「介護サービス情報の公表制度について」
 「人としての尊厳」が保持される介護サービスの質の確保を制度上担保してきた介護サービス情報の公表制度が、平成24年度から廃止されるので、サービスの質の低下を招かないよう県の対応を求めたもの。
 前向きの答弁は得られませんでしたが、大事なことですので、関心を持ち続けていきます。
2.「森林づくりについて」
 百年先を見据えた森林づくりを、体感、実感できるモデル森林づくりへの取り組みを提案しました。
 二井知事から、「県内の森林すべてを、モデル森林としてとらえ、整備を適切に進めていきたい。」との答弁がありました。
3.「花粉交配用ミツバチの確保対策について」
 ミツバチが突然減少して、イチゴ等の施設園芸農家が花粉交配用ミツバチの確保に苦労しているとのことから、県に対応を求めたものです。
 本県では、必要なミツバチ確保の手当てはできているとの答弁でしたが、将来を見据えての対策は必要と思われます。
 
 
 
 ○6月定例県議会
 6月定例議会では、東日本大震災地支援を主たる内容とする3億5千万円の補正予算案等の議案が可決成立しました。
 私は、6月30日に一般質問に立ち、「上関原発建設計画への対応について」ということで、二井知事の考えを問い質しました。
 上関原発のことを取り上げたのは、東日本大震災に伴う福島原発第一事故の深刻な実態を目の当たりにし、原発について調べていくうちに、我が国の、原発推進のエネルギー政策は、原発への依存を減らしていくという意味での脱原発の方向に転換すべきであり、その転換を方向づけるものとして上関原発は中止すべきとの思いに至ったからで、3点質問いたしましたが、概要をご報告します。
1.「脱原発について」
 脱原発には、即刻すべての原発をとめる原理主義的脱原発と、原発の新設・増設はしないことから出発して、電力事情に応じて順次原発依存を減らしていく現実的脱原発の2通りがあり、山口県は、現実的脱原発の立場に立つべきと訴えました。
 知事からは、脱原発には確立された定義がないということから明確な答弁はありませんでした。
2.「エネルギー基本計画」の見直しと上関原発について
 2030年までに、上関原発を含む14基の原発を新設・増設して、総発電量において原子力発電が占める割合を50%にするとした国の「エネルギー基本計画」を、管首相は、原発依存を減らす方向で見直すとの方針を表明しているので、上関原発の計画中止が、その見直しに盛り込まれるよう知事として意見表明することを促しましたが、知事には、その考えはないとのことでした。
3.「上関原発と新エネルギー政策について」
  上関原発の計画では、平成30年3月からの営業運転開始予定となっていることから、それまでの間に、太陽光・風力・小水力等の自然再生エネルギーと蓄電技術、スマートグリッド等を組み合わせて家庭や地域の電力自給率を高める小規模分散自立型の電力供給体制をつくっていけば、上関原発を中止しても電力不足は生じないことを指摘し、産学官共同で小規模分散自立型の電力供給地域モデルの構築に取り組むよう提案いたしました。
 商工労働部長から、そういうことも視野に入れた産学公連携の「新エネルギー利活用プロジェクト」を推進していくとの答弁がありました。
 東日本大震災に伴う福島原発事故は、原発大国化路線からの転換を日本に促す天の警告であったように感じています。
 上関原発の中止は、その転換を方向づけるものとなりますが、電力事業者も含め関係者が納得してその転換が図られるよう県議として役割を果たしていきたいと考えております。

 
 
 ◆附記(一般質問関係)
「高レベル放射性廃棄物は、100万年の監視を要する」
  2009年2月、アメリカ政府は「高レベル放射性廃棄物は、百万年の監視を要する。」との見解を発表しました。
 高レベル放射性廃棄物とは、原子力発電所から排出されるもので、主に使用済み核燃料のことをいいます。
 この使用済み核燃料は、我が国では青森県の六ヶ所村再処理工場に搬入されることになっていまして、そこでは先ず溶かして液状にする処理がされます。
 その後、それをガラス状に固めてキャニスターという容器に納めて30年から50年間冷却保存した後、地層処分ということで300メートル以上深い地中に埋める計画になっています。
 問題なのは、このキャニスター1本の重量は500キログラムですが、猛烈に高い放射能を有していて、長期間それが残るということです。
 放射能の大きな単位に、キュリーというのがありまして、1キュリーの放射能があれば、1平方キロメートルが立ち入り禁止になるほどですが、キャニスター1本だけで、当初1ヶ月は392万キュリーの放射能があります。
 日本の面積は約38万平方キロメートルでありますので、その10倍強の面積が立ち入り禁止になるほどの放射能です。
 それが1万年たっても600キュリーの放射線が残っており、100万年立っても同量のウラン鉱石の500倍の放射能が残っています。
 アメリカ政府が、100万年の監視を要するとの見解を発表した背景には、こうした事実があります。
 キャニスターに納められた放射性廃棄物は、現在六カ所村に1300本以上貯蔵されていますが、現行の計画通り我が国の原子力発電が続けられれば、平成33年までに、その数量はキャニスター4万本に達すると推計されています。
 これらを地層処分するということは、後世に借金を残す以上に深刻な環境汚染の負の遺産を残すことになり、やってはならないことであります。
 私が、6月県議会で、原発への依存を減らすという意味での脱原発に国のエネルギー政策は転換すべきであり、山口県は上関原発中止の立場を明確にすべきと表明したのも、原発には安全性の確保問題と併せて、以上申し上げました放射性廃棄物処理の問題があるからです。(合志栄一)

◆法と経済ジャーナルに掲載される◆
 合志県議の6月定議会での一般質問「脱原発について」が、7月17日に、法と経済ジャーナルのトピックスに、山口県議の唱える「現実的脱原発」として掲載される。

 ○8月定例県議会

介護保険事業について

 我が国の分子生物学の草分けで、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏の師匠格に当る渡辺格氏は、「分子生物学者のことあげ」と副題したその著「人間の終焉」で、人類の未来について語り、人類は今後、強者が弱者を淘汰若しくは支配して恥多き生存を続けていくのか、それとも障害者や恍惚の老人等マイナスを背負った弱者と共に生きていき尊厳ある滅亡を選択するのか、と問いかけています。
 この問いかけは、人間社会が現状のまま変わらなければ、その二つの道しかないことを示し、これまでの社会、思想、価値観、倫理観を問い直すことを通して、人類が尊厳ある共存を可能にする社会、文明の建設に立ち向かうことを促しています。
 ただ、そのことに向けて問題とすべきは、人類という抽象的全体ではなく、多様な個々の一人一人が、どのようにすれば、うまく一生を終えられるかということであり、重要なのは一人一人ちがった人間が、その時々に直面する事柄に、その場その場でうまく対応できるようにすることである、と指摘して次のように述べています。
 「人類の生存のために」という大義名分は、ややもすれば今までの弱肉強食社会の存続のために使われ、マイナスを背負った人々の淘汰を正当化する危険が極めて多い。重要なのは、マイナスを背負った人間も含めた個々の一人一人の生活と生存なのであって、人類という名をかりた強者のみの生存ではない。多様な一人一人が生存できて、その結果初めて、種としての人類が生存できるのであって、抽象的な《人類》を先に考えるべきではない。
 私は、渡辺氏の分子生物学者としてのこうした「ことあげ」に賛同するものであります。そして、特に医療・福祉に関する制度は、このような考え方を基本に制度設計されるべきであると考えます。
 マイナスを背負った人々も含めて、現に生きている個々人が、それぞれに良い人生を全うできるよう、人生の各段階において直面する様々な問題に、よりきめ細かに対応できる医療・福祉制度にしていく、そういう方向での制度の進化を、少しずつ一歩一歩着実に実現していく、そうした積み重ねの先に、尊厳ある共存社会建設の可能性は見えてくるのではないでしょうか。
 平成12年にスタートした介護保険制度も、ある意味尊厳ある共存社会をめざす医療・福祉連携の制度でありまして、個別的な事情、課題に丁寧に対応しながら制度としての進化を実現していくことが求められています。
 そうした観点から、この度は、介護保険事業に関して質問をさせていただきます。

 第一は、介護サービスの質の確保と向上についてであります。
 介護保険法は、平成18年の改正において介護される者の「尊厳の保持」を、この法の目的を定めた第一条に明記しました。
 この目的を達するために、それにふさわしい水準の介護サービスを提供することが、介護保険の事業所若しくは施設に求められます。
 そこで先ず、そうした意味での介護サービスの質の確保と向上が、制度上どのようにして図られようとしているかを、見てみたいと思います。
 介護保険事業は、広く民間に門戸開放されていますので、事業者の考え方や経営理念、道徳観等に頼るのではなく、制度として介護サービスの質の確保と向上を担保する仕組みが重要と思われるからです。
 それでは、順次見ていきます。
 先ず、介護保険制度は、措置制度ではなく、利用者がサービスを選べる契約制度であることが挙げられます。契約制度のもとでは、事業者は、サービスの質の向上を図らなければ、利用者から選ばれなくなるので事業経営が成り立たなくなる、従って、事業者は事業経営のためサービスの質の向上に取り組むことになる、そう想定されています。
 このことは、デイサービスなど通所の在宅支援介護サービスでは、事業所なども数多くあって、想定のように利用者獲得の競争原理も働き、介護サービスの質の向上を促す効果が見られますが、特別養護老人ホームや老健施設など、入所施設の介護サービスにおいては、入所待ちの人達が、未だ数多くおられる現状にあって、契約制度が、施設の介護サービスの質的向上を促す契機とはなっていないように見受けられます。
 次に、指導監査があります。指導監査は、運営基準に関する指導も行われますが、事業者に法律上決められたことを守らせる効果はあっても、これに介護サービスの質の確保と向上を促す効果を期待することは、現状では無理のように思われます。
 その理由は、実施回数が少ないということであります。指導監査が、事業者に対して少なくとも2年に1回程度の実施が確保されれば、サービスの質の向上に資する効果も期待できるかもしれませんが、現状は4年乃至5年に1回実施というのが精いっぱいのようであります。介護保険の事業者の数が、県全体では2400もの多数に上っているにもかかわらず、監査に当たれる人員は限られているからです。
 監査ということでは、老人福祉法に基づく指導監査があります。これは、介護保険施設の中で、特別養護老人ホームだけが対象となるもので、原則2年に1回行われています。特養の介護サービスの質を一定水準に確保するために、それなりの役割を果たしているものと思われます。
 それから、医療監視があります。これは、医療施設を対象に行われるものですが、介護保険施設の中では、通常老人病院と見られている介護療養型医療施設に対して1年ないし3年に1回行われていて、介護療養サービスの水準を保持するために一定の役割を果たしていると思われます。
 事業の評価を通して質の向上を促すということでは、外部評価と第三者評価があります。ともに、調査員が、ほぼ一日事業所に居て、書類上だけではなく、実地に介護サービス事業の実情を見て評価するものでありますので、介護サービスの質の確保と向上には大きな効果があると思われます。
 ただ、外部評価は、グループホームと小規模多機能事業所に対して年1回の実施が義務付けられていますが、その対象となる事業所の数は、現在2000を超える介護保険事業所のなかで200ほどにすぎません。第三者評価は、義務付けはなく、その実施は介護事業者の任意に委ねられており、平成22年度に介護保険関係で第三者評価を受けた事業者は、特養の6施設にすぎません。
 外部評価を実施している事業所においては、年々サービスの質の向上が見られるとの報告を関係者から聞いておりますが、外部評価を義務付けられている事業者は、一部に限られており、第三者評価を受ける事業者もごく少数であります。地域としてトータルな介護サービスの向上を図っていくという観点からして、外部評価や第三者評価をどう活用していくかは、今後検討されるべき課題であると見ております。
 平成18年の介護保険法改正で導入された介護サービス情報の公表制度は、利用者がよりよい介護サービスを選択できるためにという目的で制度化されたものですが、事業者の介護サービスの質の保持向上を促すことが秘められた目的としてあったように思われます。
 この制度では、公表のために事業者が報告する介護サービス情報の客観的な正確性を確認するための調査が、各事業者に対して毎年1回、指定調査機関によって行われることになっていました。この調査は、介護事業者にとっては事務負担、調査費用負担がある割にメリットがないということで不評でしたが、少なくとも広く民間にも開放された介護事業の質的低下を防ぐ防波堤的な役割を、この調査は果たしていたのではないかと、私は見ております。
 そういうことで、先般6月に国会で可決された介護保険法の改正において、毎年1回、各事業者に対し行うことが義務付けられていましたこの調査が、都道府県知事が必要と認めるときは、行うことができると改められ、調査事業の財源となっていました各事業者の調査費用負担が廃止されて、これまで実施されて来た調査が、事実上行われなくなったたことは、我が国の介護事業の質の確保と向上という面からすれば、制度上の後退ではないかと思われ、この制度改正の影響を懸念しております。

 以上、見てきましたことを踏まえ、本県の介護施設及び事業所の介護サービスの質の確保と向上にむけて大事と思う4点につき、県の対応とご所見をお伺いいたします。
 
 第一点は、介護サービス情報の公表制度についてであります。今、述べましたように、これまでは事業者からの報告に基づいて公表される介護サービス情報の客観的な正確性を確認するための調査が、全ての事業者に対して毎年行われていましたが、この度の介護保険法の改正で、都道府県知事が必要と認めるとき、調査を行うことができると改められました。
 そこで今後は、この公表制度において知事が調査を必要と認めるのは、どういう場合なのか、ということが新たに問われることになり、そのことに関しての指針、判断基準が必要となってまいります。国も、この秋には指針を示す予定のようですが、それは、あくまでも各都道府県の判断基準づくりの参考に供すということであって、都道府県が、それぞれの考えで判断基準を設定することは、尊重するものと思われます。
 そこでお尋ねいたします。本県は、介護サービス情報の公表制度において、知事が必要と認める調査は、どういう場合に行われるべきとお考えなのか、その判断基準につきご所見をお伺いいたします。

 第二点は、介護老人保健施設、通称老健施設の介護サービスの質の確保と向上についてであります。
 ご案内のように、老健施設は、病院と家庭の中間施設と位置付けられ、要介護の高齢者が、自立した生活ができるよう回復するまで受け入れる介護保険施設であります。ただ、実情は回復して家庭復帰する利用者の割合は減っており、一方では、認知症の高齢者の入所割合が増加して、準特養化の傾向にあります。
 本県の老健施設の定員数は、平成22年度末で4628人であります。特養の定員数は、6450人でありますが、療養病床の再編成が、当初の計画通り行われていれば、平成23年度末には、その受け皿になる予定であった老健施設の定員が大幅に増加して7000人を超え、特養を定員で上回ることになる見通しでした。介護型療養病床の廃止が、6年間延期されたため、そうはなりませんでしたが、老健施設の定員が、将来的に増加する方向にあることは間違いないと思われます。
 現時点では、特養より定員は少ないとはいえ、5000人に及ばんとする多くの高齢者を受け入れている老健施設の介護サービスの質の確保と向上は、介護保険事業にとって重要な課題であります。
 この老健施設の介護サービスは、施設によって差があります。そのサービスの差とは、個別対応がどれほどできているかの差であります。例えば、食事についていえば、普通食、柔らかい食事、きざみ食等の複数メニューがあるか、食事時間は、普通より長くかかる人の場合は、その時間を確保しているか等々であります。
 こういうことに個別対応している施設もあれば、それができていない施設もあります。それが出来ていない施設では、入所者が充分に食事できず栄養失調状態になってしまったという事例も生じております。
 介護保険施設の利用者には、一人一人にケアプランが作成されて個別対応がされることになっているから、そういうことは生じないはずだとの見方もありますが、実際はそうではありません。
 こうしたことの背景には、特別養護老人ホームや老健施設などの介護保険施設は、待機者が多数いて、「受け入れていただいたら有り難い。」というのが現状でありまして、契約制度もとでの、利用者獲得のための競争原理が働いていないということが、先ずあります。
 よって、こういう入所の介護保険施設のサービスを向上させるためには、指導監査、外部評価、サービス情報の公表など、制度面から施設の介護サービスの質的向上を促す仕組みが、しっかりしていることが求められます。
 こういう点から見ますと、老健施設はその仕組みが不十分であります。
 特別養護老人ホームは、老人福祉法の関係で2年に1回指導監査が行われております。介護療養型医療施設は、指導監査とは別に、1年ないし3年に1回医療監視が行われておりまして、その施設サービスを一定の標準水準に保つ仕組みが、どうにか機能しているように思われます。
 しかし、老健施設は、指導監査が、老健施設の場合はこれを実地指導というようですが、それが4年ないし5年に1回、やっと行われているという状況です。その効果は、法律上決められたルールを守らせる域にとどまっていて、施設の介護サービスの質的向上を促すことまでは期待できません。その上、介護サービス情報の公表制度による調査も行われなくなりまして、施設の事業者をサービスの質的向上に向かわせる要因が、一層弱くなった感があります。
 介護保険法は、介護される者の尊厳の保持をその目的に明記しましたが、そうであれば、介護保険施設が提供するサービスが、どの施設においてもその目的にふさわしい標準的水準になるようにしていかなければなりません。
私 は、そうした方向での取り組みが、以上申し上げてきましたことから、特に老健施設において求められると考えております。
 そこでお尋ねいたします。本県の老健施設の介護サービスが、全ての施設において介護保険法の目的である介護される者の尊厳の保持にふさわしい水準のものとなるよう、制度として老健施設に介護サービスの質の確保と向上を促す取り組みが必要と考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

 第三点は、外部評価についてであります。
 現在、介護保険事業では、グループホームと小規模多機能事業所に対しては、年1回の外部評価の実施が義務付けられています。この二つは、サービスが外部の目にさらされにくく密室性が高いということが、その理由と思われますが、外部評価による介護サービスの改善、質的向上の効果は、年々顕著に見られるようです。
 私は、この外部評価を、特養や老健施設など入所の介護保険施設に対しても、何年かに1回は実施することを義務付ける、若しくは都道府県知事が必要と認めるときは行うことができるようにすることが、こうした施設の介護サービスの質的向上を図る上において望ましいと考えます。ただ、そのためには介護保険法の改正が必要と思われます。
 そこでお尋ねです。特養や老健施設など入所の介護保険施設に対しても、外部評価を、何年かに1回は実施することを義務付けるか、都道府県知事が必要と認める時は行うことができるようにするための介護保険法の改正を、国に要望すべきと考えますが、県のご所見をお伺いいたします。


 その四点は、マンパワーの確保についてであります。
 先日、しっかり個別対応もなされていて高い水準の介護サービスを実現していると思われる老健施設の理事長と話をする機会がありましたが、最も苦心するのはマンパワーの確保であると申しておられました。
 そして、より良い介護サービスも、マンパワーの確保があって可能となる。介護の仕事が社会的に評価されるようになり、介護の仕事の大切さを、子どもたちが学校教育において学び、体験する機会をもつようになれば、誇りと遣り甲斐をもって、介護の仕事に従事する人たちも増えるのではなかろうか、そういう趣旨のことを強調して語っておられました。
 私も、大事なことだなと思いつつ、その話をお聞きした次第です。これまで、指導監査や外部評価など、制度の面から事業者の介護サービスの質的向上を図るための取り組みについて質問して参りましたが、事業者がそのことに取り組もうとしても、マンパワーの確保がなければ絵にかいた餅に終わります。
 そこでお尋ねです。よりよい介護サービスは、マンパワーの確保があって可能となりますが、県はそのことに向けてどういう役割を果たそうとしているのか、ご所見をお伺いいたします。

 介護保険事業についての質問の第二は、介護サービスの提供体制についてであります。この質問では、施設サービスに限って3点お尋ねいたします。

 第一点は、介護施設整備の進捗状況についてであります。
 平成21年9月の定例県議会で、いずれも当時ですが木村県議の「介護サービスの充実について」の質問に答えて、今村健康福祉部長は、「高齢化の一層の進行や認知症高齢者の増加などによる介護施設の必要性はさらに高まると見込まれるため、平成21年度から23年度までを期間とする『第三次高齢者プラン』において、第二次プランを大幅に上回る2171人の定員増を図ることとしております。」と述べております。
 この介護施設の定員増計画は、平成22年度末実績では目標の2171人に対して376人の増にとどまっていて、計画達成は困難な見通しであります。そこでお尋ねです。第三次高齢者プランにおける介護施設の定員増計画が、想定したように進捗していないようでありますが、その理由は何なのかお伺いいたします。また、計画年度である平成23年度末までに、どの程度定員増を図れると見込んでおられるのか、併せお伺いいたします。

 第二点は、地域密着型介護老人福祉施設の整備についてであります。
 地域密着型介護老人福祉施設は、平成18年の介護保険法改正で導入されたもので、定員が29人以下の小規模特別養護老人ホームのことを言い、指定権限は市町村に在ります。
 介護等のサービスは、出来るだけ利用者に身近なところが行う方が望ましいとの考えでこの施設は構想されたものと思われますが、思ったほどにこの施設の整備が市町村で進んでいないようです。
 本県では、平成23年度末までに定員数で534人の整備を図る計画ですが、本年5月時点での定員数は273人で、整備計画の約半分であります。
 介護保険の事業関係者の話を聞くと、地域密着型の特養は、事業経営が難しいと見られており、その施設設置に手を挙げる事業者が少ないとのことでした。
 県は、3年を1期とする介護保険事業支援計画を定めることが義務付けられており、その中で、この地域密着型介護老人福祉施設についても必要入所定員総数の見込みを示すこととなっております。
そこでお尋ねです。平成24年度から26年度を計画期間とする本県の次期「介護保険事業支援計画」において、地域密着型介護老人福祉施設の必要入所定員総数をどの程度と見込んでおられるのか、また将来的に、特養全体の中における、地域密着型特養の定員割合を、どのように見通しておられるのか、お伺いいたします。

 第三点は、特別養護老人ホームの入所待機者の解消についてであります。
 平成22年3月末時点での、本県の特別養護老人ホームの入所待ち総数、即ち待機者総数は、8351名です。これは、特養への入所申し込みをしたが、入所できない人の数を市町別に調べ集計したもので、重複を除いた数であります。
 一方、平成21年度から23年度を計画期間とする「第三次高齢者プラン」では、特養の定員増計画は506人とされています。これは、必要定員数見込みに基づくものと思われますが、申し込み待機者数と定員増の計画数の差が、余りにも大きいことに愕然と致します。
 そこで、お尋ねです。特別養護老人ホームの必要定員数は、どのようにして算定しておられるのか、先ずお伺いいたします。
 さて、特養の入所申し込みの待機者数は、その必要性の度合いに差があるとはいえ、入所の必要があると見られている人の総数であることに間違いはありません。財源の問題があることは承知しておりますし、在宅支援の介護サービスを強化していく方向も妥当と思いますが、それでも、介護疲れによる家庭の悲劇が生じないようにしていくために、社会的入院等を減らして医療機関が本来の役割を果たせるようにしていくために、高齢化率が高い本県の実態に即した特別養護老人ホームの整備を計画的に行っていくことは、重要な政策課題であると考えます。
 つきましては、待機者解消に向けて、今後、特別養護老人ホームの整備を、どのように進めていくお考えなのか、ご所見をお伺いいたしまします。
 
 
 ○11月定例県議会
 私は、11月の一般質問に立ち、7項目質問いたしましたのでその概要をご報告いたします。

 TPPと本県農業について

 県政に携わる者の大事な役割は、地方の現場の視点から、地域と暮らしにかかわりの深い国の政策を検証し、それがより良いものになるよう発言し、行動していくことであります。
 そういう考えに立って、この度は「TPPと本県農業について」ということで質問いたします。
 ご案内のように、TPPに関しては、これに参加すれば日本の農業は壊滅し、諸制度はアメリカ化されて、日本は崩壊するとのTPP亡国論と、TPPに参加することによって日本はアジア・太平洋地域の成長を取り込み、経済的繁栄の道が拓けるとのTPP成長論があり、この二つの主張は激しく対立していて、未だ、我が国はTPPに関し国論は一つに収斂していない状況にあります。 
 そうした中、野田総理は、ホノルルAPEC首脳会合出席の前日、11月11日に記者会見し、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入ることを表明しました。事実上、TPP参加の方向を明確にしたものと言えます。
 私は、我が国がTPPに参加することについては慎重論であり、どちらかと言えば反対の考えを持っていました。
 しかし、TPP交渉参加の方向が明確になった今日、最終的にTPPに参加するかどうかは不確定とはいえ、その可能性は大きいと見なければなりません。よって、そうした現実を踏まえ、県としても、その場合に備えて特に影響が大きいと見られる農業分野において今から必要な施策を講じていくことが求められます。

 そのことにつき、以下7項目、県のご所見をお伺いいたします。

 質問の第一は、TPP交渉参加についてであります。尚、ここではTPP関係国との協議も、実質的な交渉参加と見做してお尋ねしていることをお断りしておきます。
さて。私は、TPP交渉に参加するに当たって、我が国は、二つの原則的立場を堅持すべきであると考えています。
 一つは、これまで貿易に関する国際会議の場で、我が国が主張してきた「多様な農業の共存」という理念を守る立場であります。
TPPは、「例外なき関税撤廃」を原則としており、センシティブ品目ということで配慮を例外的に認める品目についても、一定の猶予期間を経て、全て関税をなくすことを目標としております。
 しかし、人口増大による世界的な食糧不足が将来予測される今日、それぞれの国々が、適宜必要な農業生産基盤を確保しておくことは、食糧危機を回避する上からも重要なことであり、「例外なき関税撤廃」の原則は、「多様な農業の共存」という理念が求める実際上の要請に対して、運用上柔軟に対応することを認めるものであっていいと考えます。

 その二は、食とくらしの安心、安全を守る立場です。
 TPP関係省庁がまとめた「TPP協定交渉の概括的現状」という資料を見ますと、輸入食品の安全性や食品の安全基準については、「現在のところ、牛肉の輸入規制、食品添加物、残留農薬基準や遺伝子組み換え食品の表示ルール等、個別の食品安全基準の緩和は議論されていませんが、今後、提起される可能性も排除されません。」と報告されています。
 我が国は、流通する食品の残留農薬に関する制度を、2006年にネガティブリスト制度から、ポジティブリスト制度に切り替えました。ネガティブリスト制度では、指定された農薬だけが規制され、それ以外の農薬は、いわば野放し状態であったものを、ポジティブリスト制度では、指定された農薬は勿論、それ以外の農薬にも全て残留基準の規制が適用されます。
 こうした食品安全基準に関する規制の緩和が、TPP交渉では議論される可能性があることを、この資料は示唆していますが、その際、食とくらしの安心、安全を守る立場を堅持して交渉の望むべきであることは当然であります。
 そこでお尋ねです。以上TPP交渉参加にあたって、我が国が守るべき原則的立場について私の考えを申し上げましたが、知事は、本県の農業及び県民の食とくらしの安心、安全を守る立場にあるものとして、我が国のTPP交渉参加に対し、どういうことを望んでおられるのかご所見をお伺いいたします。また、そのお考えを、どのようにして国にお伝えになるのか併せお伺いいたします。第二の質問は、農業の6次産業化への取り組みについてであります。
 山口市阿東徳佐にある農事組合法人Kは、今年の秋、山口県農業振興賞を受賞いたしました。法人設立は平成19年で、農地面積は37ha、3分の2は、米をつくり、他に大豆、麦、玉ねぎ、白菜、キャベツなどの生産に取り組んでいます。
 法人構成員は9名で、年間粗収入は、補助金も含めて約5000万円です。作り手がいなくなった近隣集落の農地も、順次引き受けてきており、徳佐の地域農業を守る中核営農組織の一つとして、着実な歩みと続けております。
 私は、先般11月中旬、この法人Kを訪ねました。訪ねた目的は、TPPについてどういう思いを持っておられるか、率直な生の声を聞きたいと思ったからです。また、農事組合法人の実態もよく知りたいとの思いもありました。
 この法人の方々が、先ず語っておられたのは、法人が出来て、この地域と農業が守られていく基盤が出来たことの意義でした。また、法人が、コメ、大豆、麦、野菜の生産を、集積した農地を最大限活用する年間計画を立てて行うようになり、村の人たちには、時給ということではあるが周年働ける農事作業があって、賃金が支払われるので、法人化が農家の所得向上につながったことを強調しておられました。
 自慢は、「うちのコメは魚沼より、うまい。」ということ、法人の事務所は、メンバーの納屋で、そうしたハード面には極力お金をかけず、将来の投資に備えて利益を蓄積する堅実な農業経営を、K法人は続けております。
 以上、K農業法人を紹介したのは、現民主党政権が、農業政策の主要な柱に位置付けた「農業の6次産業化(これは、農業生産の1次と加工の2次と流通サービスの3次を足す若しくは掛けると6次になることからつくられた造語で、農業を生産のみならず、加工、流通サービスも含めたものにしていくことを云う)」を実現していくためには、こうした農業法人において6次産業化への取り組みがなされるようになることが大事で、そのためには、どういう政策が必要か、という視点から6次産業化の政策は検討されるべきと思うからです。
 現民主党政権は、昨年3月に策定した新たな「食料・農業・農村基本計画」において、「戸別所得補償制度の本格実施」「農山漁村の6次産業化」「食の安全と消費者の信頼の確保」の三つを、新たな農政の柱と位置づけました。
 そして、昨年11月には六次産業化法、正式な法律名は「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」ですが、これを国会で成立させ、12月に公布しました。
 さらに、政府は今年の10月25日に、TPP参加に対応する施策として「わが国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」を策定しましたが、ここで繰り返し強調されているのも、6次産業化であります。
 6次産業化の理論的裏付けになっていると思われるものの一つは、平成17年に行われた国内の飲食費のフローについてのトータルな調査分析です。この調査では、食材として供給された食用農水産物10兆6千億円が、加工・流通を経て最終消費額は73兆6千億円となることが分析結果として示されています。
 1次の生産物価格総額が、2次の加工、3次の流通を経て、最終消費額においては7倍強に拡大しています。そこで、1次生産の農業から、2次加工、3次流通の付加価値を取り込む農業に進化して、農業所得の向上確保を図る、これが、農業の6次産業化推進政策の背景にある考えであるといえます。
 私は、こうした農業の6次産業化の推進は、我が国の農政の方向として正しく、大いに力を入れていくべきだと考えるものでして、現政権が6次産業化に着目して、農業政策の柱に据えたことは評価するものであります。
 ただ問題は、6次産業化を実際担うのは農業法人であろうと思いますが、6次産業化に取り組む農業法人の在り方や、現在ある平均的な農業法人が、6次産業化していくための道筋が、具体的に示されていないということであります。
 そこで、私が訴えたいことは、国に頼ることなく、国の政策を待つことなく、本県農業の課題として、TPP参加の可能性等将来を見通した上で、本県農業の6次産業化に取り組んでほしいということであります。そして、私が訪ねたような農業法人が、6次産業化できる具体的な道筋と法人経営の在り方を追求してほしいと思います。
 ご承知の方も多いと思いますが、本県には、昭和60年頃から農業の6次産業化に着目し、それを実践して成功している農業法人があります。同じく、阿東徳佐にある船方農場が、それです。
 農業の6次産業化を、最初に提唱したとされる今村奈良臣東大名誉教授が、その着想を得たのは、昭和63年、船方農場が、朝日農業賞を受賞した際、同教授が、審査員として船方農場を視察したことがヒントになったのではないかという見方もあるほどです。
 昭和60年代から、農業の6次産業化を唱え、悪戦苦闘しながら、それを実践して、1次の農業生産業、2次の加工業、3次のサービス業を、それぞれ独立の事業体としつつ、グループとして統括する形態にして事業経営を軌道に乗せ、現在更に発展を続けている船方農場の歩みは、農業の6次産業化を考える上で、多くの参考事例に満ちています。
 私は、先般、船方グループの坂本代表から、同グループの、これまでの6次産業化への取り組みと成果につき説明を受け、その感を深くしました。
 そこでお尋ねです。私は、本県の先進事例も参考にしつつ、本県農業の6次産業化に取り組むべきと考えますが、県のご所見をお伺いいたします。

 質問の第三は、有機農業についてであります。端的にお伺いいたします。
 第一点は、有機農業の技術体系の確立についてお伺いいたします。
 本県は、平成19年に「山口県有機農業推進計画」を策定し、平成23年度までに、普通作物で1体系、園芸作物で1体系の有機栽培の技術確立に取り組むこととしました。普通作物は米で、園芸作物はホウレンソウと承知しているところでありますが、計画期限である本年度において、その技術体系の確立はどうなっているのか、お伺いいたします。

 第二点は、有機認定の農家数及び圃場面積についてであります。
平成22年度における山口県の有機認定の農家数は9戸、圃場面積は359aであります。これは、47都道府県の中で、いずれも少ない方から2位であります。最下位は、いずれも東京であります。全国平均を見ますと、農家数は85戸、圃場面積は19290aであります。山口県は、全国平均と比較しても、少ない方へ大きくかけ離れています。
 こうした数値から見ますと、本県は、有機農業への取り組みに熱心でないとの見方が成り立ちますが、県は、有機認定の農家数及び圃場面積の現状を、どう受け止めているのか、お伺いいたします。

 第三点は、今後の有機農業への取り組みについてであります。
農薬や化学肥料を使わない自然循環型の農法である有機農業は、健康な体をつくる安心・安全の農作物を求める消費者ニーズに答えるものであり、環境負荷が少なく、自然環境と調和した永続性のある農業であることから、大いにその普及が図られて然るべきと考えます。
 国が、平成18年「有機農業の推進に関する法律」を制定したのを受けて、県は平成19年に「山口県有機農業推進計画」を策定し、その取り組みを進めてきたところでありますが、普及の実は上がっていない感があります。
 ついては、今後本県は、有機農業の普及にどう取り組むお考えなのか、お伺いいたします。
 
 質問の第四は、土地改良事業についてであります。
 TPPを含む高いレベルの経済連携と農業再生を両立させるというのが、現政権の方針でありますが、農業再生ために強調されているのは、6次産業化であって、農業生産基盤の整備という観点からの具体的政策が伴っていないことは、残念であります。
 TPP対応のために10月25日に決定された「農林漁業再生のための基本方針」を見ても、既に区画整備されている水田を、畦畔除去等により更に大区画化を進めるとのことは述べられていますが、水田の汎用化についての言及がないことは納得がいきません。米、野菜、畑作の計画的作付が可能になる水田の汎用化は、農業経営を強化する上において不可欠の生産基盤整備であるからです。
 土地改良事業費は、国においても、県においても平成22年度から大幅に減っております。国の予算で見ますと、平成21年度は5772億円であったのが、平成22年度には半分以下の2129億円となっております。
 本県予算では、平成21年度は144億円であったのが、翌22年度には、108億円と、3分の1近く減っております。
 こうしたことの影響が、本県でも圃場整備事業に取り組んでいるところに及んでおり、当初計画通りの予算が確保できないため、事業の進捗が遅れて関係者が苦慮する事態が生じております。
 以上、土地改良事業が現在置かれている状況の一端を申し上げましたが、本当に強い農業をつくるというのであれば、ソフト、ハード両面からの取り組みが必要であり、ハード面での主たる施策となるのが、農業生産基盤を整備する土地改良事業であります。
 本県の、土地改良事業の整備目標は、「やまぐち食と緑のプラン21」に示されていまして、平成22年までに圃場整備率85%を達成することであります。

 そこで、一点目のお尋ねですが、現時点での圃場整備率はどうなっているのか、お伺いいたします。
 次に二点目は、本県の今後の土地改良事業の方針と計画についてお尋ねです。
 今後、県は、水田の汎用化や水田区画の拡大等について具体的に整備目標を定めた土地改良事業の方針と計画を策定して、本県の農業生産基盤の整備を強力に進めるべきと考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

 質問の第五は、自給率の向上についてであります。
 平成5年に94歳で逝去するまで40年近く世界経済調査会の理事長職にあって、戦後歴代内閣の経済指南番と呼ばれた木内信胤氏の代表的な著作の一つに「当来の経済学」というのがあります。
 私が、この本を買い求めたのは昭和55年で、30年ほど前、山口市議会議員になりたての頃ですが、以来折々にこの本を読んでは様々なことで示唆を受けてきました。
 この本に、「国民が求める農政の目標は何か」という文章があります。農業のことを考える上で参考になる内容ですので、先ずその一部を紹介したいと思います。

 「自給度は、あまり無理がなくて出来る範囲で、成るべく向上して欲しい。」
 「少数の優秀な専業農家があることはもちろん非常に望ましいが、日本農業の担い手は兼業農家であっていい。」
 「人間は天地の間に身を置き、天然自然の理に従って生きている。その事実をまともに表現しているのが農業だから、これに従事することによって人間は、自然自然に天然自然の道というものを会得して行く。」
 「零細な兼業農家が、なお農業を棄てないのは、農業のこのような性質による。だからこれからの日本の農業は、今の兼業農家主体をさらに一歩進めて、老若男女を問わず、できるだけ多くの日本国民が、一生のうち、一年のうち、一週間のうち、いくらかは農事に携わる機会を持つ″ということになればいい。」

 木内氏は、このような考え方を新しい意味での「国民皆農思想の登場」と呼び、「日本国民が真に求めている農政の目標」は、かくの如きものであるに違いない、との考えを表明しています。
 私は、こうした考え方に共感し、日本農業の目標として、その方向に進むことを支持するものです。
 国民の多くが、生活の一部に、土に親しむ農を取り込むようになることは、国民の暮らしの在り方が、より健康的なものとなり、国全体としても、健全で落ち着いた国になるように思われるからです。
 そして、そうした意味での国民皆農が、我が国の農地を守り、農政の目標である食料自給率の向上にもつながるように思う次第です。
 ご案内のように、現在の我が国農政の目標は、カロリーベースで食料自給率40%の現状にあるのを、50%までに引き上げようというものであります。
 目下、そのことに向けて様々な諸施策が推進されていますが、私は、そういう施策の一つとして、家庭の食料自給率を高める施策を推進してほしいと思っております。各々の家庭が、少しでも農に携わるようになれば、自ずと家庭の食料自給率は高まるでしょうから、このことは、木内氏の言う国民皆農に通ずる施策の推進であるとも言えます。
 先ほど紹介した船方グループ代表の坂本多旦(かずあき)氏は、自らの農業経営に打ち込む一方、農林水産省の農業・農村政策審議会委員として、多年国の農業政策の形成にかかわり、日本の農業はどうあるべきかの課題にも真剣に取り組んでこられました。そして最近、新たな農地利用体系の確立を提言した「日本農業の課題と対応策」というレジメをまとめられました。
 このレジメは、農地を、自然的な環境や社会的な環境の視点から、経済的には成立しなくても政策として守るべき「環境農地」と、経営活動としては活用しにくいが兼業及び自給農業に向いている「自給農地」と、農地の面的な集積をはかり経営的に活用できる「経営農地」の三つに分けて、我が国の農業を組み立てていくことを提案しています。
 坂本氏ならではの的確な提案で、早く国の農地政策として採用されたらいいと思いますが、この三つの農地の中で、農地を守るために支援と工夫を最も要するのは自給農地であります。自給農地の多くは中山間地であり、そこでの農業の担い手は、ほとんど兼業農家ですが、離農や耕作放棄地が増えていて、中山間地直接支払制度で何とか食い止めようとしているのが現状です。
 そこで、坂本氏が想定するように中山間農地の農業の担い手として兼業農家の外に、自給農業を楽しむ一般市民が新たに加わるようにすることは、謂わば国民参加で中山間地の農地を守るようにして行くことであり、家庭の食料自給率を上げ、ひいては国の食料自給率を上げることにもなり、誠に望ましい方向だと思います。

 そこでお尋ねです。以上申し上げてきましたことから、食料自給率の向上にもつながる施策として、中山間地の農地において、一般市民が自給農業を楽しむことができる環境の整備に取り組むことを提案したいと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

 質問の第六は、フードバレーの形成についてであります。
 農業を成長産業にすることに、世界の中で最も成功している国はオランダであります。オランダは、農業立国の農業大国であり、米国に次ぐ世界第二位の食料輸出大国であります。そうしたオランダ農業の核になっているのが、ワーヘニンゲン大学を中心とするフードバレーの存在です。
 フードバレーは、「農と食のシリコンバレー版」ともいうべきもので、「農と食と健康に関する科学と技術とビジネスの集積地」と理解していいと思います。
 私は、このことを平成22年11月県議会で取り上げ、本県農業を成長産業にし、新しい産業集積を実現していくために、フードバレーの形成に取り組むことを提案いたしました。
 これに対し、二井知事から「産学公が知恵や技術を持ち寄り、本県のポテンシャルを活かした魅力ある産業の形成を図っていくこと、いわゆるフードバレー的発想が重要であり、私もそのことが農林水産業の成長にもつながるものと考えております。」との答弁をいただきました。フードバレー的発想が重要であるとの認識を表明いただいたことで、この質問も意義があったと思っています。
 さて現政権は、農業を6次産業化して成長産業にするとの戦略を打ち出しておりますが、それもフードバレーの形成があって、本格的なものになると思われます。
 そこでこの度は、フードバレーの形成について、さらに一歩踏み込んだ具体的な提案をしたいと思います。
 私は、本県で新たな産業集積の可能性がある地域は、新山口駅の南部に広がる一帯であるとみております。現在、新山口駅から国道2号線までは市街化しておりますが、国道2号線から南に阿知須のきらら浜に至る一帯は、農業地帯が広がっております。私は、この地域が本県におけるフードバレーの形成地としてふさわしいのではないかとみております。
 この一帯は、近くに空港があり、新幹線の駅もあり、道路網も整っていて新たな産業の集積地としては高いポテンシャルを秘めております。
 ここに如何なる新たな産業の集積を図っていくかに、大げさに言えばこれからの山口県の将来がかかっていると私は見ておりますが、穀倉地帯が広がるこの一帯は、例えば自動車産業等の製造業の集積地としては相応しくなく、フードバレーの形成地として適地であるとみている次第であります。
 平成17年に、小郡町、阿知須町は合併により山口市となりましたので、この一帯はすべて山口市でありますが、山口市は今、商工会議所が中心になって、アクティブエイジングシティ構想の実現に取り組もうとしております。
 アクティブエイジングとは、1999年からWHO(世界保健機構)により提唱された取り組みで、健康寿命を伸ばし、すべての人々が、年を重ねても生活の質が低下しないように、健康で安全に社会参加できるよう促すことです。
 そういう方向で、山口市を世界一のアクティブエイジングシティにすることを目的に、山口アクティブエイジングシティ構想は策定され、その構想は、山口市の総合計画に盛り込む方向での検討と、もう一つは、この構想が、経団連の「未来都市モデルプロジェクト」に選定されており、日立製作所等経団連会員企業や山口大学、県立大学等を構成メンバーとする協議会で構想具体化の検討が始まろうとしております。
 私は、この構想とフードバレーの形成ということはマッチングしており、新山口駅の南から阿知須きらら浜方面に広がる一帯にフードバレーを形成していくということは、農振地域の土地利用計画の見直し等も必要になってくることから、すぐすぐにというわけにはいきませんが、将来に向けて長期展望の中で実現すべきビジョンとして、県・市共同して本格的な検討を始めていいのではないかと思う次第です。
つきましては、以上申し上げましたことを踏まえ、改めて本県におけるフードバレーの形成につき、ご所見をお伺いいたします。

 質問の第七は、志ある農業についてであります。
  「安全な食べ物という農業の原点に戻ろう。」 秋川実さんが、そう決意して秋川牧園を創業したのは、今から約40年前の昭和47年のことでした。
 当時は、昭和40年から始まった海外鶏いわゆる「青い目の鶏」の輸入攻勢で、国内に約千四百軒あった養鶏業者のほとんどが、廃業倒産か下請に追い込まれていました。
 秋川さんが、専務理事をしていた養鶏農協も、御多分にもれず、懸命に防戦するも力尽き、昭和42年倒産、以来秋川さんは10年間、負債整理の茨のむしろに座することになります。秋川牧園創業は、そうしたさなかのことでありました。
 「あれから40年」は、綾小路きみまろのブラックユーモアの常とう文句でありますが、あれから40年。創業以来、理想の農と食を追求し続けて秋川牧園は、現在年商は40億円を超え、農業の会社としては日本で初めて株式上場し、健康で安全な食べ物の提供を、生産者、消費者と共に実現するリーディング・モデルカンパニーとして、着実な発展を続けております。
 以上、山口市仁保にあります会社、秋川牧園を紹介いたしましたのは、農業においても大事なのは、原点の思い、そういう意味での志なのだ、ということをこの会社の歩みから感じたからであります。
 「食は、命なり。」「食正しければ、命正し。」と言われますが、正しい食事が、健康な人づくり、健康な地域づくり、健康な国づくりの基本で、そのことは健康な体をつくる食料の生産から始まります。
 戦後、国民を飢えさせないために食料増産を課題としてきた日本農業の、これからの課題は国民の体を健康にする農業への進化であります。」
 私は、そういう意味でこれからの日本農業は、「健康な体をつくる食料の生産と流通を実現する。」との志に立ち、そういう農業として世界一になることを目指すべきだと考えます。
 そういう日本農業は、たとえTPPに参加することになろうとも、日本国民の支持を得て守られ、世界の中で成長発展していくものと確信します。
 勿論、志ある農業も、技術と経営が伴って成り立つものですが、経済的利益が先立つのではなく、志が先立つことが重要だと思う次第です。
 「食料増産の農業から、健康な体をつくる農業へ。」「儲かる農業から、志ある農業へ。」、こうした方向で本県の農業が日本一になることを期待するものですが、このことにつきご所見をお伺いいたしまして、
 
今回の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。