ごうし栄一
【合志栄一後援会事務所】
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合志栄一スローガン
平成26年 一般質問項目
3月議会 6月議会 9月議会 11月議会
  ○3月定例県議会
 
知事の政治姿勢について
   村岡新知事に、先ずお祝いを申し上げます。県知事選挙での御当選、そして山口県知事御就任、誠におめでとうございます。
 地方自治の仕事を、国の立場と地方の現場と双方で経験したキャリアを持ち、その優れた能力と資質で将来を嘱望されていた国の官僚としての地位をなげ打って本県のために身を投ぜられた村岡知事の決断に、改めて敬意と感謝の意を表し、山口県政史に名知事としての名を残す今後のご活躍を期待するものです。
さて、若き知事を得て山口県政は今、新たなスタート地点に立ちました。村岡新知事就任とともに始動し始めた県政が、県民の期待に応えて、順調かつ円滑に発展軌道に乗っていくためには、執行部と議会が、県政の目的と課題を共有し、それぞれの役割をしっかり果たしていくことが重要でありまして、県議会も県民の代表として、新知事のお考えをしっかり受け止めて政策論議をしていくことが求められます。
ついては、村岡知事は、これからどういう政治姿勢で県政運営に当たられるお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

 
上関原発建設計画の転換について
  上関原発の建設計画は、最先端の石炭火力発電所の建設計画に転換すべきであると考えます。
3.11の福島原発事故以後、上関原発の建設は事実上不可能になりました。
原発による町興しの旗印を掲げて原発誘致に多年にわたり変わることなく取り組んできた上関町、そして上関原発の建設を最重要の電源確保のための事業と位置づけ多くの労力と資金を投入してきた中国電力は、今なお国のエネルギー政策において上関原発の建設計画が位置づけられることを期待し、その実現を目指す姿勢に変わりはありません。
しかし、本年度内に閣議決定される予定の新たな国のエネルギー基本計画では、「原発依存度を可能な限り低減させる。」という政策の方向性が明記される見通しであります。このことが単なる言葉の上だけのジェスチャーではなく、福島原発の過酷事故を真摯に踏まえての政策意思の表明であるならば、上関原発の建設計画は、実際上困難になったと見るのが妥当だと思います。
勿論、上関原発の建設を、原発依存を減らす方向の中に位置付け、その意義を主張することも可能であります。上関は、我が国において原発の新設が可能な最後の場所と思われることから、それが建設されても長期的には原発依存を減らすという方向に変わりはなく、将来にわたってのエネルギーの安定的確保のために、そうすべきだとの見方も成り立つからです。
しかし、そうした考えは、今日の国民意識と大きく乖離しており、電力事業者の論理としては成り立ち得ても、国民意識と不可分の政治の論理とは成り得ず、政治判断に基づき国策民営で推進されてきた原子力発電の事業において、実現の見通しは殆どないといっても過言ではありません。
現在、11基の新規原発の計画がありますが、原発依存を減らすという方向の中で受け入れられる可能性があるのは、常識的に見て大方の建設が完了している島根3号機および建設の進捗率が4割近くの大間原発までだと思われます。上関原発の建設計画も、当然この新規原発の計画に含まれていますが、以下三点の理由により、繰り返し申し上げますように建設計画が受け入れられる可能性はないと見ております。
理由の第一は、上関原発は、新設の建設計画であるということです。原発の新規立地は、新設、増設、建て替えの三通りが考えられます。増設は、1号機、2号機の原発があるところに3号機を建設するというケースであり、建て替えは、1号機の原発が廃炉になった後に新規に原発を建設するといったケースであります。新設は、既存の原発がないところに全く新たに原発を建設するケースであり、上関原発の建設計画がこれに相当します。原発依存を減らすという方向の中で、許容される新規の原発があるとすれば増設ないし建て替えが限度で、新設はあり得ないと考えます。
理由のその2は、上関原発は未着工であるということです。上関原発は、準備工事の段階であり、未だ設置許可はおりておらず未着工であります。原発依存を減らすという方向に、未着工の新規原発の建設はあり得ないと考えます。尚、未着工の新規原発建設計画は8基ありますが、その中で新設は上関原発の計画だけで、他はすべで増設であることを付言しておきます。
理由のその3は、上関原発は、中国電力の原発依存度を大きく高めるということであります。平成23年度の中国電力における原子力発電の電源構成比は、8%ですが、島根3号機が稼働するようになると、これが16%ほどとなり、加えて上関原発の1号機、2号機が計画通り稼働するようになると、原発の電源構成比は30%になる見通しであります。これは、福島原発事故の前年、平成22年6月に策定されたエネルギー基本計画、それは2030年までに総発電量の5割を原子力発電とするという原発拡大路線の内容となっていまして、福島原発事故以後白紙に戻して見直すこととされたものですが、その計画にある原子力発電の目標を中国電力管内において実現することになります。かかることが、原発依存を減らすという方向の中で許容されるものでないことは明らかであります。
縷々申し上げましたが、これを一言に要約すれば何度も申し上げますように、「上関原発は、建設出来ない。」ということであります。安倍総理が、昨年の暮12月27日の山口放送の番組で、上関原発など原子力発電の新規立地の見通しについて、「過酷事故を経験した。今は考えていない。」と述べたのも、同様の認識があってのことだと推察されます。
では、上関原発の建設計画はどうしたらいいのか。私は、石炭火力への転換を検討すべきだと思います。石炭火力発電は、CO2の排出量が多いという問題があると一般的には見られています。ところが現在、石炭火力の発電効率を上げてCO2の排出量を減らし、究極的にはCO2の排出をゼロにするという地球温暖化対策にも適合した石炭火力発電の実用化に向けた実証実験の事業が行われています。
この事業に取り組んでいるのは、広島県大崎上島町にある大崎クールジェン株式会社で、中国電力と電源開発株式会社が折半出資で設立した会社であります。私は、先般この会社を訪ね、大崎クールジェンプロジェクトと称して取り組まれている事業概要の説明を受け、建設中の実証試験施設を視察してまいりました。
このプロジェクトは、第1段階が平成30年度までで、石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証実験を行います。現在、石炭火力のほとんどは、石炭を破砕して微粉炭にし、これを燃焼させる微粉炭火力発電方式ですが、IGCCは、石炭をガス化してガスタービンによる発電を行うとともに、その排熱を利用して蒸気タービンによる発電を複合して行うことにより高効率の発電を実現するものであります。IGCCには、石炭ガス化炉に酸素を吹き込む方式と空気を吹き込む方式の2種類ありますが、ここでは酸素吹IGCCの実証試験を行います。
第2段階は、第1段階の酸素吹IGCCに、CO2分離・回収設備を追設して、CO2ゼロエミッション発電の基盤となる実証試験を行うものです。期間は平成28年度から30年度までの予定です。
第3段階は、酸素吹IGCCに、石炭ガス化で生じた水素を燃料とする燃料電池を組み合わせた発電、これを石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)と申しますが、このIGFCによる発電をCO2分離・回収型で行おうとするもので、究極の高効率発電とCO2ゼロエミッションを目指す実証試験であります。期間は平成30年度から34年度までの予定です。
中国電力は、この実証試験を経て実用化の見通しが立ったならば、旧来の石炭火力発電所を、このIGCCもしくはIGFCの石炭ガス化複合発電所に更新していくことを計画していると思われますが、実際上計画実現が困難となった上関原発の建設予定地に、CO2分離・回収型IGCCもしくはIGFCを建設することを検討すべきではないでしょうか。
このことを、私に示唆されたのは、一橋大学の橘川武郎教授です。橘川教授は、電力事業を含め我が国の産業史に詳しく、国のエネルギー基本計画策定のために設けられた有識者会議、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員であります。私は、昨年秋この橘川先生を訪ねたのですが、その際新たに策定予定のエネルギー基本計画においては、「個々の原発計画について、どうすべきか判断できる基準となるものを示す内容とはならないであろう。」との見通しを述べられました。また、上関原発の建設計画については、その実現が困難との認識から、「中国電力は、元々石炭火力が強い。これまで原発建設に向けて協力してきた上関町のためには、世界最先端の石炭火力発電所をつくるのがいいのではないか。」との趣旨を語られ、酸素吹IGCCのことを紹介されました。
この話を聞いた後、私はその可能性をこの目で確かめたく、上関の原発建設予定地を視察し、IGCC、IGFCの実証試験施設の建設現場を訪ねた次第です。そして、素人目ではありますが、「中国電力がやる気になれば、上関の原発建設予定地に、石炭ガス化複合発電所、即ちIGCCもしくはIGFCを建設することは可能である。」との結論に至りました。
現在、我が国で実用化されている最高効率の石炭火力発電は、USCと言われる微粉炭式石炭火力発電で、従来の石炭火力では、発電効率が36%程度だったのが、USCでは41%まで向上し、燃料費とCO2の排出量が、1割以上低減されています。
2008年の主要国の電源別発電電力量構成比を見ますと、石炭火力の割合は日本は26.8%ですが、人口第一位の中国は78.9%、第二位のインドは68.6%、第三位のアメリカが49.1%でありまして、世界の中で人口上位3カ国において石炭火力発電の割合が高いことがわかります。しかも、この三カ国の石炭火力の発電効率は、我が国の石炭火力と比べると低いので、この三カ国に、USCのような日本で運転されている最新式の石炭火力発電が普及すれば、CO2排出量が年間13億4700万トン削減されると試算されています。
これは、鳩山元首相が、国連で2020年までに、我が国のCO2排出量を、1990年比で25%削減すると公約した量(3億2千万トン)の4倍強、1990年の日本の温室効果ガス総排出量の107%に相当します。先ほど紹介しました橘川教授は、このことを指摘して、我々が直面しているのは、「日本環境問題」ではなく「地球環境問題」であるから、我が国の世界トップレベルの石炭火力発電技術の海外移転を推進して、鳩山公約以上の地球温暖化防止に向けたCO2排出量の削減に、我が国は貢献すべきであると主張しておられます。
そのことはともかく、私が注目するのは、かように世界の中で抜きんでている我が国の石炭火力発電技術を、更に進化させて一層の高効率発電と低炭素化を実現しようとするのが、大崎クールジェンプロジェクトであるということです。先に触れました最新の微粉炭火力発電USCの発電効率は41%でありますが、このプロジェクトではIGCCでこれを48%までに、IGFCでは更に55%まで高める実証試験に取り組んでいます。発電効率が高まればCO2の排出量も低減されて、IGFCは、USCに比してCO2の排出量が25%削減される見通しです。しかも、その上で排出されるCO2は、全て分離・回収してゼロエミッションを実現することを、このプロジェクトは目指しています。
現在も、世界の電源の主力は石炭火力であり総発電量の4割を占めています。しかも、石炭は、人類社会の需要に向こう100年以上応え得る埋蔵量があると見做されていることから、このプロジェクトで取り組まれている石炭火力発電技術の実用化は、地球温暖化対策とエネルギー安定供給の両立を実現するものであり、21世紀の人類社会に希望と光明をもたらすものであります。
以上申し上げましたことを踏まえ、三点ほどご所見をお伺いいたします。

第一点は、中国電力への要請についてであります。
新たに策定予定の国のエネルギー基本計画では、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。」と記されており、上関原発の建設計画を、高効率の石炭火力発電の建設計画に転換することは、国の新たなエネルギー政策に沿うものです。また、先の県知事選挙で読売新聞が行なった世論調査では、上関原発に関しては、「建設を中止すべき」が45%、「建設を凍結すべき」が29%、「建設を続けるべき」が17%で、74%が上関原発の建設には否定的との結果が出ており、原発から高効率・低炭素石炭火力への計画転換は、こうした県民の意識に応えることになると思われます
そこでお尋ねです。県は、中国電力に対して、上関原発の建設計画を、大崎クールジェンプロジェクトで実用化予定の石炭火力発電所の建設計画に転換するよう要請し促すべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

第二点は、国への要望についてであります。上関町の原発建設計画が、石炭ガス化火力発電の計画に転換された場合は、懸念されることは原発立地予定の自治体ということで交付されていた電源三法による交付金が途切れることであります。電源三法交付金が交付されるのは、原子力・水力・地熱の発電所の立地が予定されている自治体であり、今後新たに計画される火力発電所については、立地地点が沖縄県にある場合しか交付されません。
従って、現行の電源三法交付金制度のもとでは、原発計画が火力発電に転換された場合、上関町は、財源の面から住民福祉サービスや行政水準を維持していくことが困難になります。
 そこで、私が訴えたいことは、上関町のように国のエネルギー政策に協力してきた自治体の原発建設計画が、別の電源による計画に変更された場合、それが国のエネルギー政策の方向に沿うものであれば、電源三法交付金制度の適用は、継続されるべきだということであります。
電源三法交付金制度は、原子力・水力・地熱による発電というCO2を排出しない発電用施設を、原則として交付対象にしていますが、これに大崎クールジェンプロジェクトで実用化予定の高効率・低炭素の石炭火力発電所も含めるようにすることは、広い意味で電源三法が目指す方向に沿うものであり、且つ新たに策定予定の国のエネルギー基本計画が、原発依存度を可能な限り低減させるとして、再生エネルギーの導入とともに火力発電所の効率化を挙げていることから、新たな国のエネルギー政策に対応した措置として当然に検討されてよい改正の方向であります。
ついては、県は、電源三法交付金制度の交付対象となる発電用施設に、高効率・低炭素の火力発電所も含めるよう、制度の改正を国に要望すべきであると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

第三点は、公有水面埋め立て免許の延長申請についてであります。
来月、4月11日には、一年間県の判断が先送りされた上関原発建設用地整備のための公有水面埋め立て免許延長申請に関する補足説明の回答期限が来ます。結論から申し上げて、県はこの延長申請を不許可とした上で、中国電力の原状回復義務を免除することが、法の趣旨に則り、且つ現状に適合した対応として望ましいと考えます。
中国電力は、平成24年10月5日に免許延長申請をした際の報道資料において、「この申請の目的は、当面の現状維持であって、準備工事を直ちに進めようとするものではない。」旨、明らかにしております。
察するに、中国電力は、上関原発の建設計画を進めていくという方針に変わりはないということを内外に示す意味と、国のエネルギー政策の動向等も含めて、実際建設計画を進めることができるかどうか判断できる状況が整うまでの間、現状維持を確保したいということで、埋立免許の延長申請をしたのだと思われます。前者は、延長申請をしたこと自体で目的を達していますし、原状回復義務が免除されれば、現状維持という後者の目的も達されます。また、埋立免許の失効は、将来の新たな免許を受ける可能性を排除するものではありません。
ついては、上関原発の建設計画に係る公有水面埋め立て免許の延長申請は不許可とし、原状回復義務は免除することが望ましいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 
  ○6月定例県議会
 
産業戦略の推進体制
 
県の職員録は、巻末に県庁組織の分掌事務を掲載しています。これを見ますと、各部局の分掌事務が、所属する課ごとに記されています。ところが、産業戦略部だけは、「産業に関する総合的な政策の企画及び推進に関すること。」と、記されているのみであります。
総合企画部の政策企画課は、8項目の分掌事務があり、その1の項目は、「県の総合的な政策の企画及び調整に関すること。」となっております。従って、この総合企画部の政策企画課の項目1の分掌事務を記した文言のうち、「県の」を「産業に関する」に、「調整」を「推進」に、言葉を置き換えますと、それが、産業戦略部の分掌事務を記した文言と、全く同様になります。
産業戦略部は、平成25年度から設置されていますが、これは、山本繁太郎前知事が、産業力増強を県政運営の最重要課題と位置付け全力を投入されたその強い思いに基づくものと思われます。その目的が、産業力強化に係る施策の推進体制の強化であることは当然でありますが、部の設置までに至った背景には、併せて産業力強化の政治姿勢を象徴的に示す意味合いもあったのではないでしょうか。
ただ産業力強化に関しては、そのことを直接的に担う部としては、商工労働部や農林水産部があり、産業インフラの整備に係ることは土木建築部が担当しています。よって、新設された産業戦略部が担うのは、結局のところ、それら三部の企画の部分や横断的連絡調整の役割ということになっています。それでも産業戦略部が設けられたのは、産業力増強という政策課題を特別的に重視して取り組む姿勢を示す意味と、そのことに短期的、集中的に取り組む体制強化のためであったと思われます。従って産業戦略部は、特例の部であって、恒常的な部ではないと見ております。
勿論、産業力強化が、県政運営の中心課題として常にあることは言うまでもありませんが、若い村岡知事におかれては、これから腰を据えて、しっかり本県の県政運営を担当していただきたいと思っていることから、産業振興も、特出しではなく、県政の全体計画の中に位置付けて強力に推進されることが望ましいと考えます。
以上申し上げましたことから、私は、現在の産業戦略部には、現に担っている役割をしっかり果たし任務を全うしていただくよう期待するものですが、この部を将来にわたって常設の部とするかどうかは、検討の余地があると思っております。
そこでお尋ねです。村岡知事は、産業戦略部のあり方も含め、産業戦略の推進体制は、今後どのようにあるのが望ましいとお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
 
酒米の産地拡大について
 
「米が足りない。」、酒造りの現場では、そういう状況が続いています。特に本県の日本酒業界は、全国の中でも元気で伸びており、勢いがありますので、酒米の需要が急増しており、それに見合った生産量が確保されず、酒米の不足が顕著になってきております。
そのため、山口県酒造組合は、去る4月30日、村岡知事に対して、「山田錦」や「西都の雫」などの酒米の生産拡大を要望いたしました。これに対し、村岡知事は、県としても積極的に取り組む考えを示し、早速にこの6月県議会に提案された補正予算で、「やまぐちの酒米緊急生産拡大支援事業」を、措置されたところであります。私は、こうした知事の迅速な対応を評価するものですが、酒米に関しては、もっと大胆な産地拡大の取り組みを行うべきと考えています。
酒米は、正式には酒造好適米と呼ばれ、日本酒を醸造する原料で、主に麹米として使われる米であります。この酒造好適米の代表的な品種が山田錦で、本県では、この山田錦と、山口県が独自に開発した品種である西都の雫が、主に生産されています。酒米には、麹米に加える掛け米も含める場合もあり、掛け米には酒造好適米だけではなく一般の食用米も使われますが、この質問では、酒米といえば酒造好適米のことであることをお断りしておきます。
では、そういう意味での酒米が、本県ではどれほど不足しているのでしょうか。県酒造組合は、基本的に全農県本部に酒米の希望数量を示し、全農県本部から生産された酒米の供給を受けていますので、その関係での平成25年度の生産実績と、平成26年度以降の希望見込数量を対比して見てみますと、山田錦の場合、平成25年度生産実績2062俵に対し、平成26年度の希望見込数量は、3878俵で、生産実績のほぼ2倍であります。さらに平成28年度希望申込数量は5083俵でありますので、生産実績の2.5倍であります。西都の滴の場合は、平成25年度生産実績は1908俵ですが、平成26年度の希望見込数量は4097俵で、これも二倍強であります。従って、端的に申し上げれば、県酒造組合の今年度の酒米の需要に応えるためには、山田錦も西都の雫もその生産量を昨年に比して倍増する必要があり、将来的には更なる生産増量が望まれているということであります。
ただ、ここで留意しておかなければならないことは、純米吟醸酒では全国首位の獺祭の蔵元旭酒造が使用している山田錦は、今お示しした数字には含まれていないということです。旭酒造は、全国から山田錦を確保しており、本県でも全農県本部を経由せず、直接契約で生産者から購入しています。その旭酒造の平成26年現在の生産能力は1万6000石(1石は、一升瓶100本)で、フル稼働すれば年間7万俵の山田錦が、必要になるようでして、平成25年には4万1000俵確保して生産したものの、獺祭の品薄状態は続いているようです。そこで、旭酒造は、生産能力を現在の3倍強の5万石にまで増強するための整備を行なっておりまして来年春完成の予定です。こうした生産能力の増強が図られた後、旭酒造にとって最大の課題は、獺祭の生産目標に必要なマックスで年間20万俵と見込まれる数量の山田錦を安定的に確保することであります。
旭酒造が獺祭の生産に使用する酒米は山田錦のみというこだわりは、獺祭が獺祭であるための根幹的な要素であることから、このことが変わるということはないと思われます。一方、そのこだわりの山田錦を確保する上において、旭酒造は、県産ということにはこだわっておらず、全国から求めています。ただ、今後生産能力の増強に伴う山田錦の需要増に対して、山口県が安定的に山田錦を供給することが出来るようになれば、それは旭酒造にとっても望ましいことであり、有り難いことであろうと思われます。
本県は、昨年10月に「やまぐち農林水産業再生・強化行動計画」を策定し、その中で「需要に即した品目の生産拡大」ということで、結びつき米、大豆、はだか麦、主要野菜(たまねぎ、キャベツなど)等、目標項目の品目の平成28年生産目標数量を示し、その実現に取り組むこととしています。私は、その「需要に即した品目の生産拡大」の行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加え、県酒造組合の要望に応えることと併せ、旭酒造の山田錦需要増にも対応する酒米の産地拡大に向けた行動計画を早急に策定して取り組むべきだと考えます。
それでは以下、酒米の産地拡大に向けて本県が取り組むべきと思う施策について申し述べ、県のご所見をお伺いいたします。
第一は、唯今述べたことであります。「需要に即した品目の生産拡大」の行動計画の中に、酒米の生産拡大を新たに加えるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第二は、酒米の作付面積の拡大目標についてであります。本県における酒米の作付面積は、本年度約180haであると推定されます。内訳は、全農県本部関係分が約100haで、酒造蔵元等が直接契約栽培している分が約80haであります。そこで、これからの酒米の作付面積の拡大についてですが、私は、先ず現状の180haを500haまで出来るだけ早期に拡大することに取り組み、当面する酒米の需要にこたえるべきだと考えます。そして、次のステップでは、酒米の需要の動向に即しつつ、1000haまで酒米の産地拡大に取り組んだらいいのではないでしょうか。そこでお尋ねです。県は、酒米の作付面積の拡大目標につき、どうお考えなのかご所見をお伺いいたします。
第三は、酒米の栽培技術の指導体制の強化についてであります。酒米は、食用の一般米とくらべて、栽培管理により細心の配慮と手間を要するようです。従って、酒米の産地を拡大するためには、酒米に初めて取り組む生産者に対して、行き届いた栽培技術の指導と、生育状況に応じたアドバイス等が適宜行われるよう、酒米の栽培技術の指導体制の強化が必要と思われます。ついては、このことにつき、どう取り組まれるのかご所見をお伺いいたします。
第四は、酒米生産に係る、農業用の機械や施設の整備についてであります。
山田錦を生産しておられる方から聞いたことですが、山田錦は、脱粒性といって実った籾が落ちやすい性質があるので、収穫作業もゆっくり丁寧に時間をかけて行う必要がある、そのためコンバインも通常より大型のものが必要となるとのことでした。また、収穫した籾を乾燥する作業も、山田錦の場合は、一般米より胴割れを起こしやすい性質があるので、同様に時間をかけてゆっくり丁寧に行う必要があり、乾燥調製施設は、通常の米とは別に整備することが求められるとのことでした。
このような酒米の生産に取り組むことに伴い、備えることが求められる農業機械や施設の整備に対する助成制度を、酒米の産地拡大に向けた施策の一つとして検討する必要があるのではないでしょうか。本県は、既に需要対応型産地育成事業ということで、麦や大豆、園芸品目等の生産拡大に向けて必要な機械や施設の整備に対する助成制度を設けています。ついては、酒米の需要に対応するということで、酒米の生産拡大につながる農業機械や施設の整備に対する助成制度を同様に設けるべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
第五は、リスク軽減対策についてであります。酒米の産地が拡大するためには、経営上酒米の生産に取り組むことはメリットがあると判断する農家や農業法人が増加する必要があります。逆に、酒米の生産は経営上リスクが高いということであれば、どんなに県が酒米の産地拡大の旗を振っても進展しないでしょう。そこで、酒米の産地拡大のためには、酒米の生産リスクを軽減する対策が講じられることが望まれます。
では酒米には、どういう生産リスクがあるのでしょうか。山田錦に関しては、先ず稲の背丈が一般の食用米より高く、倒伏しやすいということがあります。また収穫の時期が遅く、本県では10月10日ごろになるので、それだけ台風などの被害に見舞われるリスクが高いと言えます。加えて、せっかく収穫しても規格外になる割合が、通常米よりも多いようです。品質が保持された酒米は高値ですが、規格外となると通常米よりも安くなり、そのことが経営上のリスクとなります。
そこで、酒米の産地拡大のためには、特に初めて酒米の生産に取り組む農家や農業法人に対して、その栽培技術等に習熟するまでの一定期間、一般の食用米を生産した場合と同等の収入を保証する等のリスク軽減策を講ずることが有効であると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。
第六は、西都の雫についてであります。西都の雫は、本県が長年かけて開発したもので、山田錦にくらべて稲の背丈が20cmほど短く、その分だけ倒伏に耐える性質が強化された品種の酒米であります。酒米としての品質においても山田錦と比べて遜色はないようで、「五橋」の酒井酒造は、西都の雫を使った大吟醸酒でここ数年連続して全国新酒鑑評会で金賞を受賞しています。この西都の雫の生産は、これまで下関市の豊田の生産者が主に担って来られたようですが、酒米の需要増に応えるためには、これから全県的に産地を拡大していくことも必要ではないかと思われます。ついては、西都の雫の産地拡大に、今後どう取り組むお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
以上、酒米の産地拡大に関して6点ほどお伺いいたしましたが、要は、酒米の需要が急増している今日の状況を絶好の機会と受け止め、酒米の生産量、品質、生産技術において日本一の県を目指して、大胆に酒米の産地拡大に取り組んでほしいということであります。前向きのご答弁を期待しております。
 
食品産業の育成支援について
 
本県の農業や漁業の振興を将来に向けて展望する時、産業戦略上、重要な政策課題の一つは、県産の農産物や水産物を主原料として使用する食品産業を伸ばし、輸出産業にしていくことであると考えます。そこで、食品産業の育成支援ということで、そうした方向での政策課題の解決に向けて取り組むべき施策についてお伺いいたします。
その1は、「やまぐちブランド」についてであります。「やまぐちブランド」は、味や品質に優れる県産の農林水産物及び主な原料が県産100%の加工品を、独自の基準で厳選したもので、現在56の商品が「やまぐちブランド」として登録されています。
この「やまぐちブランド」の登録商品は、いわば県内産品の代表選手ともいうべきもので、それが県内はもとより全国の消費者に認知され、評価されるようになり、ブランド登録商品だけではなく、山口県の産品すべてのイメージアップにつながることを期待するものであります。
そこで、この「やまぐちブランド」というブランド戦略は、数的拡大と併せ質的向上の両面で展開されることが望まれます。「やまぐちブランド」の数的拡大ということでは、平成28年度までに登録商品数を100にするという目標が示されています。私は、このことと併せ、「やまぐちブランド」の質的向上ということで、「やまぐちブランド」登録商品を、「日本ブランド」の商品にしていくという方向での取り組みを期待するものです。
現在、「やまぐちブランド」として登録されている商品56のうち、20は加工食品でして、農産加工品が13商品、水産加工品が7商品であります。これら登録の加工食品が、「日本ブランド」の商品として認知、評価されるようになっていくことが、本県の食品産業の育成支援に大きなプラス効果をもたらします。
そこでお尋ねです。昨年スタートした「やまぐちブランド」は、県産農水産物を主原料とする食品産業を育成支援する上からも有効な施策であると見ておりますが、登録商品については、数的拡大と併せ、質的向上を図っていく必要があると考えます。ついては、このブランド戦略を、今後どう展開していくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。
次にその2,六次産業化の支援についてであります。農業や水産業の六次産業化を進め、これを発展させていく取り組みは、地元県産の農水産物を主原料とする食品産業の発展を包含しております。
このような農水産業の六次産業化を進めていく上で重要なのは、食品加工部門の質的向上であって、そのためには技術的支援が適切に行われることが必要であります。本県では、食品企業に対する研究開発や生産技術の支援ということでの仕組みや体制は、充実したものになって来ているように思われますが、同様に本県の農水産業の六次産業化を本格的に進展させていくために、特にその食品加工部門への技術支援が、適切に充分行われるよう体制強化を図る必要があると考えます。つきましてはこのことにつき、ご所見をお伺いいたします。
次にその3は、輸出への取り組みについてであります。先ず、国の取り組みですが、農林水産省は、農林水産物・食品の輸出額を、現在の約4500億円から、2020年までに1兆円規模に拡大する方針を打ち出し、その目標達成に向けての国別・品目別輸出戦略を、昨年8月に策定して推進しております。その輸出戦略によりますと、最も大きなウェイトを占めるのは加工食品で、現在の輸出額1300億円を、5000億円まで拡大する内容となっております。
この国の農林水産物・食品輸出促進戦略の一翼を、当然に本県も担うべきであると考え、以下3点お伺いいたします。
第1点は、本県の農水産物・食品の輸出の現状と課題、そして今後の取り組み方針についてであります。輸出の現状については、農産物、水産物、そして加工食品の内訳もお示しください。
第2点は、「やまぐちブランド」の輸出についてであります。先に、「やまぐちブランド」を「日本ブランド」へ、ということを申上げましたが、それは当然に輸出を想定してのことです。この場合、主力となるのは農水産物の加工食品であると思われます。「やまぐちブランド」の加工食品が、輸出商品として成長していくことは、その主原料となる農水産物を供給する県内の農家、農業法人、漁業者等に安定的収入をもたらすことになり、当然に目指すべき方向です。
また、県内の食品産業が、これから大きく成長していくためには海外にマーケットを求めていかなければなりません。「やまぐちブランド」の加工食品には、そのために輸出を通して海外に市場を獲得していくリーディング・プレイヤーとしての役割を果たしていくことが期待されます。
そこでお尋ねです。「やまぐちブランド」加工食品を、輸出商品に育てていくことが重要と考えますが、このことに今後どう取り組まれていくのか、ご所見をお伺いいたします。
第3点は、ミラノ博についてであります。来年5月から10月まで、イタリアのミラノ市で開催される「ミラノ国際博覧会」の日本館に、本県は5月の24日から27日までの4日間、出展することになりました。この博覧会は、「食」が中心テーマとしてあるようですので、この博覧会への出展は、本県の農水産物や食品を、全世界へ発信し輸出に繋げていく絶好の機会であります。
ついては、このミラノ博覧会の出展にどう取り組まれる方針なのか、ご所見をお伺いいたします。
 
  ○9月定例県議会
  新政クラブの合志です。通告に従い一般質問を行います。
先ずもって先月、岩国市・和木町及び広島市の大雨・土砂災害において犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げますと共に、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
さてこの度の広島大雨・土砂災害は、74名の方々がお亡くなりになるという大惨事になりましたが、その被災地となった広島市安佐南区・北区は、平成11年にも土砂災害に見舞われ、9名の犠牲者が出たところです。15年前のこの大雨・土砂災害では、広島市や呉市等で被害が顕著でしたが、広島県全体で32名の方々が犠牲になられました。
その後、このことが契機となり、土砂災害防止法が制定されました。しかし、それが功を奏することなく、再び広島市の安佐南区・北区において、70名を超える犠牲者を出す土砂大災害が発生したのであります。 
山口県は、平成21年7月防府市で14名の方々が亡くなられる土砂災害に見舞われていることから、この度の広島での土砂災害の経緯を真摯に受け止め、同様の大雨が降った場合でも、土砂災害の発生を防ぐ、また災害を減災して人の犠牲が生じないようにするとの決意のもと、本県における土砂災害の再発防止に取り組まなければなりません。そのような思いから、今回は「防災対策について」ということで、具体的な事例を示した上で、必要と思われる対策について一般質問を行います。
 
(1)土砂災害対策について
 
 先ず、土砂災害対策について4点お伺いいたします。第1点は、特別警戒区域の指定についてであります。
 広島市安佐南区八木3丁目に、今年4月、山際に建てられた小さなアパートがありました。そこには、昨年11月に結婚して今年の7月に引っ越してきた新婚夫婦や仲の良い母娘等、4世帯8人が入居しておられましたが、全員がこの度の土砂災害の犠牲となられました。
 仮定上のことでありますが、もしこの地域が土砂災害防止法の特別警戒区域に指定されており、アパートが土砂災害を防止・軽減するための基準を満たす構造になっておれば、彼らは助かっていたかもしれません。また、このアパートを宅建業者から紹介された際、必ず伝えなければならない重要事項として、アパートが立地しているところが土砂災害の特別警戒区域であることを知らされていれば、このアパートに入居することを避けて、災害にあうことがなかったかもしれません。
 ところがこの度、広島市で土砂災害が発生した箇所の76%は、土砂災害の警戒区域外で、このアパートが建てられたところもそうでした。そのため、特別警戒区域に指定されていれば為されていたであろう、アパート建築の構造規制や、土砂災害特別警戒区域であることの伝達は行われず、悲劇を招いてしまいました。
 平成11年、主に広島県で発生した土砂災害が契機になって制定された土砂災害防止法であるにもかかわらず、その法による警戒区域の指定が進捗せず、同じ地域で土砂災害が発生し、旧に倍する犠牲者が生じたことは、残念なことでした。
 そこで、山口県における土砂災害防止法に基づく警戒区域の指定についてでありますが、本県では、イエローゾーンといわれる土砂災害が発生するおそれがあることを住民に周知しなければならない土砂災害警戒区域の指定は、平成24年10月に、県下全市町において完了しております。このことは、本県が平成21年7月の土砂災害を真摯に受け止め、取り組んでいる証左として評価したいと思います。
 本県では、さらにその後、レッドゾーンといわれる土砂災害特別警戒区域の指定を平成29年度までに完了するとのスケジュールで作業を進めて来ました。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められる区域で、特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等が行われます。
現在、宇部市、山口市、防府市、下松市、周南市の5市で、その指定が完了していまして、未指定の市町も平成29年度までに完了する予定でありました。それを、村岡知事は今議会初日に、1年前倒し実施する旨、表明されたところであります。私は、このことを「土砂災害から県民を守る。」という強い決意のもと村岡知事が、決断し指導力を発揮された結果と受けとめ、高く評価すると共に、その確実な実施を期待するものです。
 そこで先ず、村岡知事が、土砂災害特別警戒区域の全県指定完了を、1年前倒し実施することを決断された真意についてお伺いいたしますと共に、その前倒し実施を、どのようにして確実にするのかご所見をお伺いいたします。また、このことに関連して、住民理解についてお伺いいたします。特別警戒区域の指定作業が加速化されることは、基本的に歓迎すべきことですが、住民理解を得る手続きが疎かになるようなことがあってはなりません。特別警戒区域に指定されると、その区域は住宅宅地分譲や社会福祉施設等の建築のための特定の開発行為が許可制となり、建築物の構造規制が行なわれます。また、災害リスクの公表による土地評価への影響等も懸念されることから、住民の理解を得る丁寧な説明が、指定実施に当っては求められると考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。

 次に第2点、砂防ダムの整備についてお伺いいたします。
 今回の広島土砂災害で、最も犠牲者が多かった八木地区では、平成19年から9基の砂防ダムを建設する計画が進められていたものの、砂防ダムの建設には1基当たり数億円かかり、予算上の制約があることや、急勾配の住宅密集地の近くに造成するには、時間がかかる等の理由で整備が遅れ、1基も完成していなかったことが明らかになっています。地元の自治会長は、「早く砂防ダムを整備してくれていれば、相当違ったはずだ。」と肩を落とした、と新聞で報じられています。
3時間雨量217.5ミリという観測史上最大の猛烈な大雨が原因で発生した土石流を、砂防ダムが整備されていれば、完全に防ぎ止め得たかどうかはわかりませんが、少なくとも減災の役割は果たして被害は相当軽減されたであろうと思われ、被災された八木地区の方々の無念さは、察するに余りあります。
 土砂災害には、ソフト対策としての土砂災害防止法に基づく取り組みと併せ、ハード対策として砂防ダム等を整備していくことが重要であることは、改めて申すまでもありません。広島市八木地区の砂防ダム整備は、平成11年の土砂災害後、国が直轄事業として計画したものですが、本県における砂防ダムの整備は、基本的に県事業として行なわれています。
 そこでお尋ねです。土砂災害対策として、砂防ダムの整備は、優先度の高い公共事業であると考えます。ただ本県は土砂災害危険個所数が全国第3位で、22,248箇所と数多くあり、一気に整備を行うことは困難で、危険度や住宅地への影響等から優先順位を定めて計画的に整備を行なっていくことが求められます。ついては、県は今後、どういう方針、計画で砂防ダムの整備を進めていくお考えなのか、ご所見をお伺いいたします。

次に第3点、急傾斜地崩壊対策事業についてお伺いたします。
 8月6日、岩国市・和木町に局所的に降った大雨により、岩国市新港町では、土砂災害が発生し家屋が倒壊して20代の男性一人が亡くなられました。この土砂災害が起こったところは、地元の同意があれば急傾斜地崩壊危険区域の指定を行い、急傾斜地崩壊防止工事を行うことになっていました。しかし、地元関係者全員の同意の取り付けが出来ず、着工が見送られていました。
 この岩国でのケースが、どうであったのかは分かりませんが、往々にしてあるのは、不在地主が地権者としておられ、その方と地元住民との間に感情的なトラブルが生じたりして、地元関係者全員の同意取り付けが困難になるというケースです。
こう云う問題の解決は、なかなか地元関係者だけでの努力では難しく、何らかの法的な対応が必要なのではないかと思っています。例えば、急傾斜地崩壊防止工事が必要と判断される場合は、県や市町が、不在地主の地権者の権利のうち、工事施行に係る部分については、代位出来るよう法整備を行う等のことであります。
 そこでお尋ねいたします。急傾斜地崩壊対策事業が円滑の行なわれるようにするためには、関係する地権者のうち不在地主については、必要に応じてその権利を県や市町が代位出来るよう法整備することが望ましいと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 
次に第4点は、防災能力の正確な周知についてであります。
私は先に、土砂災害の特別警戒区域の指定がなされていれば、新築のアパートは、土砂災害を防止・軽減する構造の建物になっていたであろうから、アパートの住人は助かっていたかもしれないと申し上げました。また、砂防ダムが整備されていれば、犠牲者数が最大であった八木地区の被害は相当程度軽減されていたであろうと述べました。
しかし、こうした見方は、観測史上最大の猛烈な雨によって発生した土石流の破壊力や規模からして、科学的な検証が必要であることを申し上げておかねばなりません。果たして新築アパートは、特別警戒区域の指定に基づく構造規制があれば、本当に今回の土石流に耐えることが出来たのか、また砂防ダムが整備されていたら、土石流は堰き止めることが出来て被害の発生は防ぐことが出来たのか、若しくは減災の役割を果たすことが出来たのか、専門的な見地からの科学的な検証が必要であります。
東日本大震災の時には、高さ10メートルの防潮堤が整備されているところの人たちが、襲来する津波の高さが10メートル以上あることを知らず、防潮堤があるから大丈夫と思って逃げずに、数多く亡くなられました。
私が申し上げたいことは、特別警戒区域の指定に基づいて建築物の防災力が強化されたとしても、また砂防ダムが整備されたとしても、そのことにより防ぎ得る土石流等の土砂災害は、どの程度までなのかということを、定量的に知っておくことが重要であるということです。そのことが分かっておれば、その限界を超える土砂災害発生の予測があるときは、避難する判断が出来て、身の安全を守る行動に繋がるからです。
そこでお尋ねです。特別警戒区域の指定に基づく建築物の構造規制や砂防ダムの整備により、防ぎ得る土石流等の土砂災害はどの程度までなのか、その防災能力について定量的で正確な情報を、関係する住民に周知することが重要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 
(2)防災意識の向上について
 
2点お伺いいたします。
第1点は、防災知識の普及についてであります。
自然災害に直面した時、どういう行動を取ることが身の安全を確保することに繋がるのかということに関する知識、これを防災知識と申し上げたいと思いますが、この防災知識の普及、周知が、災害が発生した時に人の犠牲が生じないようにする上において重要であると考えます。
 広島の土砂災害では、安佐南区山本地区に住んでいた小学校5年のサッカー少年と2歳の幼い兄弟2人の命が、家の一階に流れ込んだ土砂のために失われました。この兄弟は、最初は2階にいたのに、2階にいることが不安になったのでしょうか、一階に移動したため土砂に襲われてしまいました。
 土砂災害に対する防災上の知識としては、家から出て避難できない場合は、「家の2階で、山の反対側の部屋にいるようにする。」、というのがあります。
このことが、この兄弟の家族において防災上の知識として共有されていれば、あるいは、小学校における防災教育で、お兄さんが教えられていれば、この二人の尊い命は失われずに済んだかも知れません。
 東日本大震災の時、釜石市においては市内小中学校、全児童・生徒約3千人が即座に避難し、生存率99.8%という素晴らしい成果を挙げ、「釜石の奇跡」と言われました。この背景には、「津波てんでんこ」と言って、「津波が来るとわかったら、肉親にもかまわず、各自てんでんばらばらに一刻も早く高台に逃げて、自分の命を守れ。」という教訓に基づき、防災教育、避難訓練が徹底されていたことがありました。
こうした事実は、災害から身を守るための知識、そういう意味での防災知識を、日頃から身につけておくことの大事さを、私たちに教えています。
 そこで、お尋ねです。防災対策の一環として、県民に対して防災知識を普及し啓発していくこと、また学校教育において防災知識を教える防災教育を充実していくことが重要と考えますが、これらのことにどう取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いいたします。

 第2点は、災害の歴史の周知についてであります。
 岩手県にある普代村は、太平洋に面した人口3000人弱の小さな村ですが、東日本大震災では、死者はゼロで住宅への浸水被害もありませんでした。高さ15.5mの水門や防潮堤が、この村を津波から守ったからです。水門や防潮堤の建設が計画された時、高さが15.5mというのは高すぎるとの批判もあったそうですが、当時の和村村長は、15m以上を譲りませんでした。明治に15mの津波が来たという言い伝えが、村長の頭から離れなかったからです。災害の歴史についての記憶が、防災計画に生かされ効を奏した顕著な例であります。
 この普代村の事例から学ぶべき教訓は、災害の歴史を知っておくことの大切さです。土地、土地でどういう災害が過去あったのか、災害の歴史を知り、そのことを防災計画に生かすと同時に、住民に周知して災害に備える防災意識の向上に役立てていくことは、防災のソフト対策として大事なことであると考えます。
 では、私たちは、どうして過去の災害の歴史を知ることが出来るのでしょうか。先ず思いつくのは、昔からの言い伝えや地域に残る古文書、石碑等に記されている災害の記録を通して知ることです。
それから近年、特に土砂災害においては、地層の中で土石流等の土砂災害に係る堆積物中に残された樹木の炭化物を測定して、過去の土砂災害の発生年代を知ることが出来るようになりました。放射性炭素年代測定(AMS法)により土石流等の発生年代の推定を行うもので、山口大学大学院理工学研究科・准教授の鈴木素之先生が、その方面では先駆的な取組みをしておられます。
この方法によれば、災害の記録が残っていないところにおいても過去に土石流等が発生した年代を知ることができますし、古文書等に記録があれば、それと照合して「土石流災害発生年表」などの作成も可能となります。
この度の広島土砂災害を受けて、土砂災害防止法の改正が図られようとしていますが、その改正内容は、警戒区域指定の前提として都道府県が実施する地形や地質などの基礎調査の結果公表を義務付けて、住民への危険性周知を徹底することのようです。土砂災害防止法は、元々ソフト対策であり、制定趣旨は、関係する地域住民に土砂災害発生のリスクを認識してもらい、日頃から備えておいていただこうというものでありますから、その趣旨をより徹底する方向での改正であると思われます。
ただ、私に言わせれば、この改正は何とか対応しなければならないという苦肉の策で、ほとんど実質がない小手先のものであります。住民へ危険性周知を徹底するというのであれば、現時点での地形や地質等の基礎調査だけではなく、過去の土砂災害の履歴も調査して住民に周知するようにする方向での改正が望ましいと思われます。特に、特別警戒区域に指定されたところの住民に対しては、そのことが必要なのではないでしょうか。
そこでお伺いいたします。先ず、防災意識の向上という観点から、住民へ災害の歴史を周知する取り組みが重要と考えますが、このことにつきご所見をお伺いいたします。次に、土石流等の土砂災害については、AMS法により発生年代を調査することが出来るようになりましたので、特に土砂災害の特別警戒区域ではその調査を行い、その結果を防災計画に生かすと同時に、住民に周知するようにすることを検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 
(3)県施設の避難場所指定について
 
 県施設の避難場所指定については、県も前向きであるべきだとの趣旨でこの質問を行います。
 山口市の吉敷に山口県総合保健会館があります。6階建てのビルで2階には500人収容可能なホールもあり、近隣の住人からは、何かの災害で避難しなければならなくなった時、ここに避難出来れば安心だということで、避難場所として使えるようにしてほしい旨の要望があります。
 市町が指定して住民に周知する避難場所は、二通りあります。一つは、指定緊急避難場所で、災害が発生するおそれがある時や災害発生時に、緊急的に避難し、身の安全を確保する場所です。もう一つは、指定避難所で、災害発生時に、一時的に被災者の避難生活の場所となるところです。山口市の場合、149の施設が指定されていますが、その全てが緊急避難場所と避難所の双方を兼ねています。また、直接管理しやすいということでしょうが、指定されている施設の9割は、市の施設であります。
 思いますに、避難場所に求められる第一のことは、災害の危険を避けることが出来る安全な場所として、災害の危険が去るまでの間住民を受け入れることであることから、緊急避難場所と避難所は、必ずしも兼ねる必要はなく、緊急避難場所としてだけの指定施設があっていいと考えます。そして、緊急避難場所としてだけの指定であれば、応ずることが出来る県施設は、結構あるのではないかと見ております。総合保健会館もそうであります。
 避難場所の指定は、市町の事務ですが、災害時、住民の身の安全確保のためには、県施設も出来る限り使えるようにするという姿勢が、県に求められると思います。住民は、市民であると同時に県民であり、災害時その身の安全を確保するためには、県も市も同等の責任があり、共同して取り組むべきと考えるからです。
 そこでお尋ねいたします。県施設を、災害時の避難場所として指定することには、県も前向きに取り組むべきだと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 

県の見解について

 平成24年9月に、山口市の防災危機管理課が、災害時の避難場所としての指定を、県に打診したところ、「総合保健会館には健康福祉センターもあり、災害時には支援活動等の拠点になることが想定され、会館を部分的にも避難場所として指定することはなじまないものと思われる。」との回答があり、山口市もこれを了承して避難場所指定は見送られた経緯があります。
 
私は、この県の回答には、全く納得できません。避難場所の指定を断る理由として挙げられているのは、「健康福祉センターがあって、災害時支援活動の拠点になるから。」ということですが、支援活動の最たるものは、先ず住民の身の安全確保にたいする支援ではないでしょうか。
また、山口市では、各地区にある地域交流センターが、地区における災害対応、住民支援の拠点になっており、また避難場所にもなっております。災害支援の拠点になっているから避難場所にはなじまないなどということはあり得ません。
 
  ○11月定例県議会